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求婚

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学園生活は、繰り返しでできている。

授業とアルバイト。そして少しの試験。

眠気との戦い、少しの生成果。そう、平均的な結果。
手元には「まあまあでしょう」とも「セーフ!」とも言える点数の結果。

「どうだった?」「まあ変わらず。」「赤点は免れたぞ!」
クラスでも(以前に似たような会話があったなあ)という会話が繰り広げられている。
ちなみに、自分の成果がそれほど上下していない真ん中の層。
結果の確認して、試験の終わりとなった。

重圧からの開放感。


張り出された順位なんて、わたしには関係ない。
爵位の高い貴族様は、義務として順位を求められるらしい。

「順位下がったら夕飯抜きとかされるのかな?」
「…それって、あんたの経験でしょ。」

振り向けば、少々口の悪い友人リンリーからのツッコミだった。
一緒にランチを買いに食堂へ行く。試験後は大体の人が街に出るので、
食堂は空いている。

開放感に比例して、軽口を叩く。


「お貴族様は高い給料で先生を雇うんでしょ?
結果を出さなきゃ、お金がもったいないじゃない。」

「貧乏な男爵家では考えられない話ね。
「平民であるリリーが思いつくのは何故?」

「本で読んだのよ!」と質問しいていない事柄に答えられた。
こういう人の感情が読めるのはリンリーの能力よね。

「グレイテスって、わかりやすいからね!」
(そんなキッパリ言うのね)

幼馴染と結婚して、商売を手伝うという彼女は快活で元気だ。
この学園にも勉強というより、商売のタネや顔繋ぎに入学している。
情報通だし、貴族のルールにも対応できているからメイドに上がったり
するイメージがあった。

貴族の家に上がって、そこの主人に覚えてもらって商売に繋がるなんてこともあるそうだし。
うちはそのパターンで食料の配達をしてもらってた。

図書館で同じ本(恋愛もの)を借りていたと声をかけてくれたリンリーは
「宮廷のメイドになって、貴族の秘密を探ってみたいわ!」と朗らかだった。

(この娘、大丈夫かしら?)と無茶しそうな勢いに心配した当初とは一転、
「貴族も色々ね。」と貴族の世界のリアル★ドロドロに興味は失せたらしい。

わたしのような底辺貴族の実情に、劇のようなスリルは求められないとわかったらしい。

行動力がある分、メイドとして活躍できる反面
良いように使われて、ポイってパターンが…わたしには彼女の将来の破滅が見えた。

貴族の世界は危険がいっぱい。
特に下っ端は。


それをわかってくれたようで、下っ端貴族(わたし)に同情的だ。


「じゃ、街に繰り出しましょう!」

少し浮かれている。
アルバイトのお金もあるから、街で母への贈り物を探そうか。


「あの、グレイテスさん?」

名前を呼ばれ、居たのは同学年の…。

「ゲイル・サイモンスです。あの…俺と結婚を視野に入れて
お付き合いを考えてもらえませんか?」

突然、顔見知り程度の男子学生からの告白。
場所は中庭の見える廊下

隣には友人。彼の方にも様子を伺う人影が後ろにいる。

わたしは、『コケッコッコー!!』と実家に居たニワトリが…
頭の中で、鶏が叫んでいた。
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