10 / 12
第十話
しおりを挟む
いつの間にか追いついていた化け物が裕貴に向かってとびかかってきた。咄嗟に裕貴を押して庇えたけど…
(まずい…完全に抑えられて動けない…)
隙を見て抜け出そう思って入るけど、隙なんてものは無いし、力も相手の方が遥かに強いから無理矢理抜け出すこともできない。
「狙った方ではないが、まぁ人間の小僧であることに変わりはないか。ならば問題は無い。久しぶりの人間だ」
(俺をどうするのかは…まぁ、大体予想はつくけど、ろくな目に合わないのは間違いない。なんとかして、とにかく抜け出さないと…)
「何をしても無駄よ、お前程度の力では抜け出せまい。大人しくしていれば、無駄に痛い思いをせずに済む」
「ふざけるな…!誰が…!」
こんな所で死にたくないし、こんな奴に殺されるなんて真っ平だ!
そんな風に思っているとき「貴様、わしの大切な友人に何をしておるのじゃ?」と、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「桜…?」
「っ⁉何故お前が!お前は普段あの神社から動かぬではないか‼」
桜を見た化け物が、声を荒げてそう桜に問いかける。どうやら、かなり動揺しているらしい。
「そんなことはどうでもよい。わしの友人に何をしているのかと聞いておるのじゃ」
まっすぐ化け物を見つめながら、表情を変さえることなく静かに冷たく言い放つ。
「ともかく、そやつを離せ」
「くっ…」
そう言われた化け物は、案外あっさりと俺を開放した。桜と裕貴のいる方へ戻る時も、何かしてくる様子は無かった。桜も意外だったようで「なんじゃ、案外素直にじゃな」と呟いている。
「ともかく、もうこんなことはするでないぞ。次に同じことをすれば、その時は容赦せん」
そう言って、桜が背を向けた瞬間「背を向けたな、馬鹿め!!」と、桜に向かって行く。
「桜‼」
気がつけば、俺は桜を抱きしめていて背中に激痛が走る。
「チィッ…邪魔が入ったか…」
「何をやっておるんじゃ!お主は‼」
「よかった。怪我はしてなさそうだね」
桜は神様なんだし、俺が助けなくても無事だったのかもしれないけど。
「待っておれ、今あの愚かなものに神罰を与えてやる」
「うん、ありがとう…」
痛みで思考が回らない。何だか眠くなったきたし…俺、ここで死ぬのかなぁ。何だか一周回って冷静になってきた。
「貴様、よくも明を…もう許さぬ」
わしの大事な人を傷つけた。いやそれより腹立たしいのは、こんな奴の不意打ちにも気づけずに助けるはずの明に助けられてしまったわしの不甲斐なさじゃ。
「はっ…そいつが勝手に間に入っただけではないか、俺はお前を狙ったんだ」
「もう貴様は謝っても許さぬぞ‼」
その怒りも、全部こやつにぶつけてやろう。悪いが八つ当たりというやつじゃ。
それからは何も語ることは無い。奴に向けて神力をぶつけて消し去ってやっただけだ。何やら叫んでおったがもはやそんなことはどうでもいい、今は明が心配じゃ。
化け物を退治した桜は、急いで俺の方に駆け寄って来てくれた。でも、そろそろ喋るのも厳しい。
「大丈夫か⁉明!しっかりしろ!」
「とり…あえず…みんなの…所まで…」
体を動かそうとするけど、痛みでうまく動かせない。あぁ…意識も朦朧としてきた。いよいよヤバいかな…
俺が次に目を覚したのは、病院のベッドの上だった。どうやら他のみんなが運んでくれたらしい。目を覚したら、桜にめちゃくちゃ怒られた。
「心配させよって!わしより脆いお主がわしを庇ってどうするんじゃ!あと少しで死ぬところだったんじゃぞ!」
涙目になりながらポカポカと小突きながら怒る桜。その様子はただの女の子にしか見えない。
「痛い…謝るから小突かないで…」
「全く…」
「そういえば、他のみんなは?」
「栗美達は学校じゃ。あのキャンプ上のある山は、しばらく立ち入り禁止になっておる」
「皆、お主を心配しておったぞ」
(そっか。みんなに心配かけちゃったな…)
「後で謝らないとだな…でも、桜も裕貴も無事でよかったよ…」
「そうじゃな、お主のおかげじゃ。礼を言う、ありがとう」
少し微笑みながらそう言った桜に、俺は少しドキドキしてしまった。
(まずい…完全に抑えられて動けない…)
隙を見て抜け出そう思って入るけど、隙なんてものは無いし、力も相手の方が遥かに強いから無理矢理抜け出すこともできない。
「狙った方ではないが、まぁ人間の小僧であることに変わりはないか。ならば問題は無い。久しぶりの人間だ」
(俺をどうするのかは…まぁ、大体予想はつくけど、ろくな目に合わないのは間違いない。なんとかして、とにかく抜け出さないと…)
「何をしても無駄よ、お前程度の力では抜け出せまい。大人しくしていれば、無駄に痛い思いをせずに済む」
「ふざけるな…!誰が…!」
こんな所で死にたくないし、こんな奴に殺されるなんて真っ平だ!
そんな風に思っているとき「貴様、わしの大切な友人に何をしておるのじゃ?」と、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「桜…?」
「っ⁉何故お前が!お前は普段あの神社から動かぬではないか‼」
桜を見た化け物が、声を荒げてそう桜に問いかける。どうやら、かなり動揺しているらしい。
「そんなことはどうでもよい。わしの友人に何をしているのかと聞いておるのじゃ」
まっすぐ化け物を見つめながら、表情を変さえることなく静かに冷たく言い放つ。
「ともかく、そやつを離せ」
「くっ…」
そう言われた化け物は、案外あっさりと俺を開放した。桜と裕貴のいる方へ戻る時も、何かしてくる様子は無かった。桜も意外だったようで「なんじゃ、案外素直にじゃな」と呟いている。
「ともかく、もうこんなことはするでないぞ。次に同じことをすれば、その時は容赦せん」
そう言って、桜が背を向けた瞬間「背を向けたな、馬鹿め!!」と、桜に向かって行く。
「桜‼」
気がつけば、俺は桜を抱きしめていて背中に激痛が走る。
「チィッ…邪魔が入ったか…」
「何をやっておるんじゃ!お主は‼」
「よかった。怪我はしてなさそうだね」
桜は神様なんだし、俺が助けなくても無事だったのかもしれないけど。
「待っておれ、今あの愚かなものに神罰を与えてやる」
「うん、ありがとう…」
痛みで思考が回らない。何だか眠くなったきたし…俺、ここで死ぬのかなぁ。何だか一周回って冷静になってきた。
「貴様、よくも明を…もう許さぬ」
わしの大事な人を傷つけた。いやそれより腹立たしいのは、こんな奴の不意打ちにも気づけずに助けるはずの明に助けられてしまったわしの不甲斐なさじゃ。
「はっ…そいつが勝手に間に入っただけではないか、俺はお前を狙ったんだ」
「もう貴様は謝っても許さぬぞ‼」
その怒りも、全部こやつにぶつけてやろう。悪いが八つ当たりというやつじゃ。
それからは何も語ることは無い。奴に向けて神力をぶつけて消し去ってやっただけだ。何やら叫んでおったがもはやそんなことはどうでもいい、今は明が心配じゃ。
化け物を退治した桜は、急いで俺の方に駆け寄って来てくれた。でも、そろそろ喋るのも厳しい。
「大丈夫か⁉明!しっかりしろ!」
「とり…あえず…みんなの…所まで…」
体を動かそうとするけど、痛みでうまく動かせない。あぁ…意識も朦朧としてきた。いよいよヤバいかな…
俺が次に目を覚したのは、病院のベッドの上だった。どうやら他のみんなが運んでくれたらしい。目を覚したら、桜にめちゃくちゃ怒られた。
「心配させよって!わしより脆いお主がわしを庇ってどうするんじゃ!あと少しで死ぬところだったんじゃぞ!」
涙目になりながらポカポカと小突きながら怒る桜。その様子はただの女の子にしか見えない。
「痛い…謝るから小突かないで…」
「全く…」
「そういえば、他のみんなは?」
「栗美達は学校じゃ。あのキャンプ上のある山は、しばらく立ち入り禁止になっておる」
「皆、お主を心配しておったぞ」
(そっか。みんなに心配かけちゃったな…)
「後で謝らないとだな…でも、桜も裕貴も無事でよかったよ…」
「そうじゃな、お主のおかげじゃ。礼を言う、ありがとう」
少し微笑みながらそう言った桜に、俺は少しドキドキしてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる