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始まらない恋心
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異様なマスクを脱いだ相手は美少女でした。
どっかのラノベにありそうな展開に戸惑いを隠せない。可愛い女の子を見たら少しは胸がときめきそうなものだが、俺はただ首を傾げるだけだった。
「聞いてました? 私の話」
俺のリアクションに気分を害したか、美少女は意志の強そうな瞳を神経質そうに細めてみせた。そんな表情も様になる。
「あ、うん」
「では、私の名前は?」
「え?」
「さっき自己紹介したの、聞いてましたよね?」
ぶわっと冷や汗が噴き出るのを感じる。授業中、あらぬことを考えてるとき先生に指名されて、似たようなことを聞かれる幾多の経験が俺を動揺させた。
「え、えーっと。い、いー……」
美少女は黙って続きを待っている。よし、「い」は合ってる。
「い、い、いー……」
「イヴェットです」
「い、べ?」
「ひょっとして発音しづらいですか? では、イブで結構です」
「いぶ。イブさんか」
見た目からして外人さんぽいけど、日本語は通じるみたいだ。
「俺は……」
「あ、あなたの名前は結構です。どうせ街に戻って色々調書を取らないといけませんから」
「ちょうしょ?」
「はい。落ち着いたなら付いてきて下さい」
そう言って美少女――イブは、さっさと歩き出してしまう。
「ちょちょ、ちょっと待てよ! ……くださいよ」
「敬語はなくて構いませんよ」
「じゃあ、待てよ。樹は? 俺と一緒にいた奴がいるだろ?」
「イツキ?」
「俺の友達だ」
イブは少し考えたようだが、相変わらずの無感情な調子で答えてきた。
「記憶にありませんね。ご存知の通り煙幕を使いましたから、あなたの手を引くだけで精一杯でした」
「見捨ててきたってことか!?」
「事実をねじ曲げないで下さい。あの煙の中では……」
「助けに行くぞ!」
俺は河原を背後にして走り出す。が、後ろが心細い気がして振り返った。イブは微動だにしないまま、冷めた目で俺を見つめていた。
「……来てくれないの?」
「どうして私まで行かなきゃならないんですか」
「迎えに来てくれたんだろ!?」
「迎えに来ましたよ。街に連れて行くとも言いました。でもあなたが友達を助けに行くというのなら、それに付き合う義理はありません」
「何で? じゃああんたは何で俺を迎えに来たんだ!」
「それが私の仕事だからです」
イブはこれ以上ないくらいにきっぱりと言い切ってみせた。
「しご、と……?」
「あなた達はある目的のため、この世界に招かれました。あなたのような人々を回収し、身柄を確保・管理するのが私の仕事です」
すらすらとイブの口から流れ出る単語に俺の脳みそはついていけず、とっくにフリーズしていた。それでも俺は諦めなかった。
「回収……確保、なら、樹だってそうなはずだろ?」
「残念ですが、こちらの人員には限りがあります。緑肌種に囲まれた非戦闘員をかばいながら無事に逃がせるような実力も装備も、私は持ち合わせていません」
イブの言葉がぐるぐると頭を回る。それって、つまりは……。
「助けられない、って、ことか?」
「まあ、お勧めはしませんね」
さっきまで俺の肩を掴んでいた樹の手の感触が、やけに生々しく蘇ってくるようだった。
――『ごめんな』
最後の言葉がそれなんてあんまりだ。
俺は泣いた。ここに来て初めての涙だった。
「うっ、ぐ、ああ、あ……」
「こんなとこで泣かないで下さいよ。男でしょう?」
「男だろうが何だろうが!」
俺はイブを睨みつけた。呆れたような物言いに腹が立ってしょうがなかった。
「悲しいもんは、悲しいんだよ」
「……そうですか」
返ってきたのは見下すような視線だった。
こんな女、大嫌いだ。
どっかのラノベにありそうな展開に戸惑いを隠せない。可愛い女の子を見たら少しは胸がときめきそうなものだが、俺はただ首を傾げるだけだった。
「聞いてました? 私の話」
俺のリアクションに気分を害したか、美少女は意志の強そうな瞳を神経質そうに細めてみせた。そんな表情も様になる。
「あ、うん」
「では、私の名前は?」
「え?」
「さっき自己紹介したの、聞いてましたよね?」
ぶわっと冷や汗が噴き出るのを感じる。授業中、あらぬことを考えてるとき先生に指名されて、似たようなことを聞かれる幾多の経験が俺を動揺させた。
「え、えーっと。い、いー……」
美少女は黙って続きを待っている。よし、「い」は合ってる。
「い、い、いー……」
「イヴェットです」
「い、べ?」
「ひょっとして発音しづらいですか? では、イブで結構です」
「いぶ。イブさんか」
見た目からして外人さんぽいけど、日本語は通じるみたいだ。
「俺は……」
「あ、あなたの名前は結構です。どうせ街に戻って色々調書を取らないといけませんから」
「ちょうしょ?」
「はい。落ち着いたなら付いてきて下さい」
そう言って美少女――イブは、さっさと歩き出してしまう。
「ちょちょ、ちょっと待てよ! ……くださいよ」
「敬語はなくて構いませんよ」
「じゃあ、待てよ。樹は? 俺と一緒にいた奴がいるだろ?」
「イツキ?」
「俺の友達だ」
イブは少し考えたようだが、相変わらずの無感情な調子で答えてきた。
「記憶にありませんね。ご存知の通り煙幕を使いましたから、あなたの手を引くだけで精一杯でした」
「見捨ててきたってことか!?」
「事実をねじ曲げないで下さい。あの煙の中では……」
「助けに行くぞ!」
俺は河原を背後にして走り出す。が、後ろが心細い気がして振り返った。イブは微動だにしないまま、冷めた目で俺を見つめていた。
「……来てくれないの?」
「どうして私まで行かなきゃならないんですか」
「迎えに来てくれたんだろ!?」
「迎えに来ましたよ。街に連れて行くとも言いました。でもあなたが友達を助けに行くというのなら、それに付き合う義理はありません」
「何で? じゃああんたは何で俺を迎えに来たんだ!」
「それが私の仕事だからです」
イブはこれ以上ないくらいにきっぱりと言い切ってみせた。
「しご、と……?」
「あなた達はある目的のため、この世界に招かれました。あなたのような人々を回収し、身柄を確保・管理するのが私の仕事です」
すらすらとイブの口から流れ出る単語に俺の脳みそはついていけず、とっくにフリーズしていた。それでも俺は諦めなかった。
「回収……確保、なら、樹だってそうなはずだろ?」
「残念ですが、こちらの人員には限りがあります。緑肌種に囲まれた非戦闘員をかばいながら無事に逃がせるような実力も装備も、私は持ち合わせていません」
イブの言葉がぐるぐると頭を回る。それって、つまりは……。
「助けられない、って、ことか?」
「まあ、お勧めはしませんね」
さっきまで俺の肩を掴んでいた樹の手の感触が、やけに生々しく蘇ってくるようだった。
――『ごめんな』
最後の言葉がそれなんてあんまりだ。
俺は泣いた。ここに来て初めての涙だった。
「うっ、ぐ、ああ、あ……」
「こんなとこで泣かないで下さいよ。男でしょう?」
「男だろうが何だろうが!」
俺はイブを睨みつけた。呆れたような物言いに腹が立ってしょうがなかった。
「悲しいもんは、悲しいんだよ」
「……そうですか」
返ってきたのは見下すような視線だった。
こんな女、大嫌いだ。
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