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始まらない救出劇
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俺の友達、樹を助けに行ったイブを探しに、俺とブルーノは山道の探索を続ける。
イブの目的は樹だから、『寄り人』の居場所が分かる感応器で樹を探すことができれば、自ずとイブも見つかるだろう。そういう考えだった。
「お前と友達……樹だったか。はぐれた場所の特徴はないか?」
「ん~……」
俺は考え、ふとブルーノに言っていなかったことに気づいた。
「緑肌種、だったっけ。多分、あいつらのテントみたいのが張ってある場所なんスけど」
「あいつらか! なるほど、イブが急いでたはずだ」
「場所、分かるんスか?」
「ああ。緑肌種は寄り人だの回収だのに関わらず、俺たち全員の問題だからな」
ブルーノは山道を外れて、藪の中を進み始めた。どうやら近道を知っているらしい。
「問題って?」
「あいつらはもともとここいらの先住民だったらしい。が、後から来た俺たちとは馬が合わなくてな。度々嫌がらせをしてくるんだ」
「仲、悪いんスか?」
「中立ってとこかな。こっちから仕掛けない限り襲いかかってきたりはしないが、あいつらの縄張りに入ればその限りじゃない」
「その、戦って追い払ったりしないんスか?」
「……難しい問題だな」
小さな小枝や蔦の葉を、邪魔そうにかき分けながらブルーノが言う。
「決して友好的な関係とはいかないが、それでもお互い生きるために住み分けをしてるんだと思うよ」
「……生きるため」
俺にとって『生きる』ってことは、起きて、学校に行って、友達とダベって、食って寝て、また起きてという毎日の繰り返しだ。ブルーノやイブにとってはそうじゃないんだろう、多分。
「見つけたぞ。あれか?」
ブルーノが木の影から指し示す。そこには、かつて見たテント群があった。
「あれだ……けど」
「ずいぶん数がいるな」
ブルーノが小さく舌打ちする。そう、初めてここを訪れたとき、緑肌種達は出払っていた。そして帰ってきたところに俺と樹が鉢合わせたんだ。
しかし今、奴らはここに戻ってきていた。テントの周りで休息している者、テントの中から出てくる者。ざっと見てもかなりの数がいるのは明らかだった。
「イブは、いるんスかね」
「分からん。騒ぎになっていないところを見ると、俺たちとは別の場所に潜んでいるのか……それとも」
その先は聞きたくなかった。だから俺はずっと口を噤んでいた。
「で、どうするんスか?」
「あいつらが居なくなるか数が減るまで待機しててもいいんだがな、せっかく二人いることだし」
ん?
つまり?
「……まさか俺も頭数に入ってないスよね?」
「当然だろ」
「は!? 俺は道案内……」
「ここまで来たんだ、つべこべ言うな。イブを助けたいと思うから来たんだろ?」
ブルーノの正論に俺はがんじがらめにされてしまった。最初のころは穏やかに俺の話を聞いてくれてたのに、ここに来て俺の逃げ道を塞ぐようなことを言ってくるのはずるいんじゃないか?
「男だろ」
その一言が頭に響いた。ブルーノを見つめ返すと、しっかりと頷いてくれた。
「ここって時だ。気張れ」
「……はい」
俺もしっかりと頷いた。ブルーノは満足そうだ。
「心配するな。危ないことをさせるつもりはない。俺が奴らを陽動するから、その間にイブがいないかどうか探してくれ」
「ど、どうやって?」
「それは任せる」
任せるって、おい!?
あんまりな投げっぷりに口を開けて呆ける俺を尻目に、ブルーノは背負った荷物の中から棒みたいなものを取り出して組み立て始める。あっという間に俺の身長くらいの槍ができた。
「じゃ、頼んだぞ」
「ちょ、待って……」
「うおーーーーー!!」
こっちにおざなりな敬礼をしたブルーノは、大声を上げながら緑肌種のテントへ向かって突撃していった。うおおい!
「そりゃっ」
突然のことに棒立ちになっている奴らをすり抜け、焚き火に当てていた鍋を蹴り倒す。蒸気が派手に吹き上がり、近くにいた奴らが大騒ぎを始めた。
「やあやあ、こっちだ!」
槍を振り回しながらブルーノが叫ぶ。遠巻きにしていた緑肌種たちが唸り声を上げ、武器を持って駆けつける者まで出始めた。ちょっと、ヤバいんじゃないかこれ?
「心配すんな、ちょっと一走りしてくる!」
俺に向けて言ったのは明らかだ。ブルーノはそのまま身を翻し、テントの間を縫うように走りぬけ、藪を飛び越えて走っていった。その後を緑肌種たちが一斉に追いかけていく。
そして後に残ったのは、もぬけの殻となったテントだった。
――『じゃ、頼んだぞ』
いや、頼まれても。
「頼まれてもおおおおお!?」
一人取り残された俺は、情けなく一人で呟くことしかできなかった。
イブの目的は樹だから、『寄り人』の居場所が分かる感応器で樹を探すことができれば、自ずとイブも見つかるだろう。そういう考えだった。
「お前と友達……樹だったか。はぐれた場所の特徴はないか?」
「ん~……」
俺は考え、ふとブルーノに言っていなかったことに気づいた。
「緑肌種、だったっけ。多分、あいつらのテントみたいのが張ってある場所なんスけど」
「あいつらか! なるほど、イブが急いでたはずだ」
「場所、分かるんスか?」
「ああ。緑肌種は寄り人だの回収だのに関わらず、俺たち全員の問題だからな」
ブルーノは山道を外れて、藪の中を進み始めた。どうやら近道を知っているらしい。
「問題って?」
「あいつらはもともとここいらの先住民だったらしい。が、後から来た俺たちとは馬が合わなくてな。度々嫌がらせをしてくるんだ」
「仲、悪いんスか?」
「中立ってとこかな。こっちから仕掛けない限り襲いかかってきたりはしないが、あいつらの縄張りに入ればその限りじゃない」
「その、戦って追い払ったりしないんスか?」
「……難しい問題だな」
小さな小枝や蔦の葉を、邪魔そうにかき分けながらブルーノが言う。
「決して友好的な関係とはいかないが、それでもお互い生きるために住み分けをしてるんだと思うよ」
「……生きるため」
俺にとって『生きる』ってことは、起きて、学校に行って、友達とダベって、食って寝て、また起きてという毎日の繰り返しだ。ブルーノやイブにとってはそうじゃないんだろう、多分。
「見つけたぞ。あれか?」
ブルーノが木の影から指し示す。そこには、かつて見たテント群があった。
「あれだ……けど」
「ずいぶん数がいるな」
ブルーノが小さく舌打ちする。そう、初めてここを訪れたとき、緑肌種達は出払っていた。そして帰ってきたところに俺と樹が鉢合わせたんだ。
しかし今、奴らはここに戻ってきていた。テントの周りで休息している者、テントの中から出てくる者。ざっと見てもかなりの数がいるのは明らかだった。
「イブは、いるんスかね」
「分からん。騒ぎになっていないところを見ると、俺たちとは別の場所に潜んでいるのか……それとも」
その先は聞きたくなかった。だから俺はずっと口を噤んでいた。
「で、どうするんスか?」
「あいつらが居なくなるか数が減るまで待機しててもいいんだがな、せっかく二人いることだし」
ん?
つまり?
「……まさか俺も頭数に入ってないスよね?」
「当然だろ」
「は!? 俺は道案内……」
「ここまで来たんだ、つべこべ言うな。イブを助けたいと思うから来たんだろ?」
ブルーノの正論に俺はがんじがらめにされてしまった。最初のころは穏やかに俺の話を聞いてくれてたのに、ここに来て俺の逃げ道を塞ぐようなことを言ってくるのはずるいんじゃないか?
「男だろ」
その一言が頭に響いた。ブルーノを見つめ返すと、しっかりと頷いてくれた。
「ここって時だ。気張れ」
「……はい」
俺もしっかりと頷いた。ブルーノは満足そうだ。
「心配するな。危ないことをさせるつもりはない。俺が奴らを陽動するから、その間にイブがいないかどうか探してくれ」
「ど、どうやって?」
「それは任せる」
任せるって、おい!?
あんまりな投げっぷりに口を開けて呆ける俺を尻目に、ブルーノは背負った荷物の中から棒みたいなものを取り出して組み立て始める。あっという間に俺の身長くらいの槍ができた。
「じゃ、頼んだぞ」
「ちょ、待って……」
「うおーーーーー!!」
こっちにおざなりな敬礼をしたブルーノは、大声を上げながら緑肌種のテントへ向かって突撃していった。うおおい!
「そりゃっ」
突然のことに棒立ちになっている奴らをすり抜け、焚き火に当てていた鍋を蹴り倒す。蒸気が派手に吹き上がり、近くにいた奴らが大騒ぎを始めた。
「やあやあ、こっちだ!」
槍を振り回しながらブルーノが叫ぶ。遠巻きにしていた緑肌種たちが唸り声を上げ、武器を持って駆けつける者まで出始めた。ちょっと、ヤバいんじゃないかこれ?
「心配すんな、ちょっと一走りしてくる!」
俺に向けて言ったのは明らかだ。ブルーノはそのまま身を翻し、テントの間を縫うように走りぬけ、藪を飛び越えて走っていった。その後を緑肌種たちが一斉に追いかけていく。
そして後に残ったのは、もぬけの殻となったテントだった。
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