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第16話 名案
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3人での夕食を終えた後、落ち着きを取り戻した紫音は、千代と2人で話し合っていた。
話題は、アルスが流した涙に関することだ。
「ねえ、千代。アルスくんは美味しすぎて涙を流していたとおっしゃっていましたが、本当にそうだと思いますか?」
「……どうでしょうか。最後まで残さず食べていたので、美味しく思っていただけたのは事実だと思いますが、それが理由だとは考えにくいですね」
「ならばなぜ……」
「一つだけ、考え付くことがあります」
「なんですか!?」
身を乗り出した主を両手で制した後、千代は言う。
「もしかしたらですが、アルス様は人の温もりに飢えているのではないでしょうか?」
「人の温もり?」
「はい。アルス様にも事情があると思い理由までお聞きしませんでしたが、異世界からやってきたかと思えば、誰にも会わずたった一人で暮らしていこうとするなど普通ではありません。アルス様自身には何の目的もないのに地球にやってきたということはつまり――」
「――元いた世界から、追い出された?」
紫音が言うと、千代はこくりと頷く。
その予想を聞き、紫音も納得した。
「アルスくんの力は本物です。例え異世界であったとしても、それは変わらないでしょう。だけど飛びぬけた力を持った人間は、周囲から疎まれます」
それは紫音自身もよく理解していることだ。
「はい、お嬢様のおっしゃる通りです。何らかの理由で、アルス様は異世界から追放された。アルス様は、そのようなことをされるような環境で生きていたということでしょう。これまで彼の周囲に味方がいなかったとすれば、新しく得たこの環境に思うところがあってもおかしくはありません」
これまで周囲に味方がいなかったから、心から彼を尊敬する紫音や千代と一緒に過ごす時間を好ましく思ったのではないか。
そう千代は推測した。
それはこちらに都合のいい妄想なのかもしれない。
けど本当にそうであるなら、どうにかして彼の役に立ちたいと紫音は思った。
「私に何かできることはないでしょうか?」
「……アルス様が人の温もりに飢えているということが前提ですが、私に一つ名案がございます」
「っ、なんですか!?」
希望を見つけたかのように、目を輝かせる紫音。
そんな主に向かって、千代は満面の笑みで言った。
「アルス様は今、お風呂に入っています。そこでお嬢様は――」
「ふむふむ――っ!!!」
ごにょごにょと、小声でその方法を伝える千代。
それを聞いた紫音は顔を真っ赤にした。
「ほほほ、本気で言っているんですか!?」
「もちろんですお嬢様。この千代、生まれてこの方、嘘や冗談を言ったことはございません」
堂々と告げる千代。
その姿を見たら、彼女の方が正しく思えてしまった。
一度だけ深呼吸をした後、紫音は覚悟を決めて立ち上がる。
「分かりました。目の前に好機があるのなら、それを逃さないのが一ノ瀬家の女です。今すぐ実行して見せましょう!」
そして、高らかにそう宣言するのだった。
話題は、アルスが流した涙に関することだ。
「ねえ、千代。アルスくんは美味しすぎて涙を流していたとおっしゃっていましたが、本当にそうだと思いますか?」
「……どうでしょうか。最後まで残さず食べていたので、美味しく思っていただけたのは事実だと思いますが、それが理由だとは考えにくいですね」
「ならばなぜ……」
「一つだけ、考え付くことがあります」
「なんですか!?」
身を乗り出した主を両手で制した後、千代は言う。
「もしかしたらですが、アルス様は人の温もりに飢えているのではないでしょうか?」
「人の温もり?」
「はい。アルス様にも事情があると思い理由までお聞きしませんでしたが、異世界からやってきたかと思えば、誰にも会わずたった一人で暮らしていこうとするなど普通ではありません。アルス様自身には何の目的もないのに地球にやってきたということはつまり――」
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紫音が言うと、千代はこくりと頷く。
その予想を聞き、紫音も納得した。
「アルスくんの力は本物です。例え異世界であったとしても、それは変わらないでしょう。だけど飛びぬけた力を持った人間は、周囲から疎まれます」
それは紫音自身もよく理解していることだ。
「はい、お嬢様のおっしゃる通りです。何らかの理由で、アルス様は異世界から追放された。アルス様は、そのようなことをされるような環境で生きていたということでしょう。これまで彼の周囲に味方がいなかったとすれば、新しく得たこの環境に思うところがあってもおかしくはありません」
これまで周囲に味方がいなかったから、心から彼を尊敬する紫音や千代と一緒に過ごす時間を好ましく思ったのではないか。
そう千代は推測した。
それはこちらに都合のいい妄想なのかもしれない。
けど本当にそうであるなら、どうにかして彼の役に立ちたいと紫音は思った。
「私に何かできることはないでしょうか?」
「……アルス様が人の温もりに飢えているということが前提ですが、私に一つ名案がございます」
「っ、なんですか!?」
希望を見つけたかのように、目を輝かせる紫音。
そんな主に向かって、千代は満面の笑みで言った。
「アルス様は今、お風呂に入っています。そこでお嬢様は――」
「ふむふむ――っ!!!」
ごにょごにょと、小声でその方法を伝える千代。
それを聞いた紫音は顔を真っ赤にした。
「ほほほ、本気で言っているんですか!?」
「もちろんですお嬢様。この千代、生まれてこの方、嘘や冗談を言ったことはございません」
堂々と告げる千代。
その姿を見たら、彼女の方が正しく思えてしまった。
一度だけ深呼吸をした後、紫音は覚悟を決めて立ち上がる。
「分かりました。目の前に好機があるのなら、それを逃さないのが一ノ瀬家の女です。今すぐ実行して見せましょう!」
そして、高らかにそう宣言するのだった。
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