41 / 55
第二部 剣神と呼ばれた男
44 魔硬石採掘へ
しおりを挟む
レオノーラと戦ったすぐ翌日。
もはや恒例となっている、学院長室への呼び出しがあった。
いつもと違うのは呼び出されたメンバーだ。
俺とユナとティナ。ここまではいつも通り。
けれどこの場にはもう一人、何故か学院生ですらないはずのレオノーラがいた。
レオノーラの姿を始めて見るユナとティナは、どこか戸惑っている様子だった。
「る、ルーク、あの人ってもしかして……」
「レオノーラだ。名前くらいは聞いたことあるんじゃないか?」
「も、もちろんだよ! でも、なんでそんな凄い人がこんなところにいるの!?」
「それは俺も分からないけど……」
俺とユナの会話の横で、ティナが注意深くレオノーラを観察する。
「……噂には聞いていましたが、実物は格が違いますね。その場にいるだけで圧倒されてしまいそうなオーラです……もちろん、お兄様には敵いませんが!」
どうやらティナも、その佇まいからレオノーラの実力を悟ったらしい。
と、ここでようやくレオノーラが行動を起こす。
彼女は俺たちのすぐ前までやってくると、満面の笑みを浮かべる。
「うん。ルーク師匠、昨日ぶりだ! 後で鍛錬に付き合ってくれ!」
その言葉を聞いたユナとティナが、疑問に満ちた視線を俺に向けて口を開く。
「「師匠?」」
「ああ……二人には説明していなかったな」
本当は昨日の出来事も二人に話そうとは思っていたのだが、学院に来てすぐに呼び出しがあったためまだ話せていなかったのだ。
簡単に事情を説明すると、ユナとティナはそれぞれ反応を見せる。
「す、すごすぎるよ、ルーク。あのレオノーラさんに勝っちゃうだなんて!」
「私は疑う余地もなく、お兄様の方が強いと理解していましたが、それでも感動いたしますわ。まさか彼女ほどの実力者を弟子にするなんて……けど、少し納得いきません。お兄様はどこぞの泥棒猫よりも、私に構うべきだと思うのです!」
「その辺りの話は後にしよう。さっきから学院長の視線が痛い」
不思議な流れになりかけたところで、俺は会話を断ち切る。
そこでようやく、本来の流れに戻る。
「皆、集まったみたいね」
会話が終わったのを確認してか、学院長アリアは小さく笑いながらそう告げる。
「戸惑っている人もいるみたいだし、さっそくだけど皆さんを集めた理由について説明していくわ。簡単に言ってしまうと、お願いしたいことがあるの」
「お願いしたいこと?」
「ええ、学院内外を含めてAランク以上の実力を持つ貴方たちにしか頼めないことよ。貴方たちは、近頃人間界に魔族が出現していることを知っているわね?」
「もちろんです」
一度言葉を区切り、アリアは続ける。
「これまで、魔族を倒すことができたのはルークくんやレオノーラだけ。それ以外の場所では甚大な被害が出ている。これを防ぐためには人族の実力を底上げする必要があると考えたの」
「可能なんですか?」
「一人一人の実力を上げるのは、とてもじゃないけど不可能ね。けれど、つい最近嬉しい誤算があったの。個人の実力を高めるのではなく、これまでにない強力な魔道具なら生み出せるかもしれない――これを見てくれるかしら」
アリアの手にあるのは、透明な魔石だった。
綺麗な正方形をしている。
俺はそれに見覚えがあった。
「それってもしかして、魔硬石ですか?」
「その通りよ。加工が非常に難しいことから魔道具には使用されてこなかった魔石だけど、ここ最近なぜか市場にこれだけ質のいい加工済みのものが出回るようになったの。出所を探ればすぐに辿り着いたわ。冒険者ギルド、晴天の桜にね」
「――――」
となると、やはりこれは……
誰によって魔硬石の加工がされたのか、アリアも察しはついているのだろう。
「これ以上、詳しい成り行きは必要ないわね。ルークくん、貴方には魔硬石の加工をお願いしたいの。これを素材にできれば、一気に魔道具の質が上がる」
「それは構いませんが、そんな大量に魔硬石は用意されているんですか?」
「ふふっ、よく気付いたわね。そう、それこそが貴方たち四人を呼び出した理由に繋がるの」
疑問を浮かべる俺たちに、アリアは告げる。
「ルークくんの言葉通り、魔硬石の用意は少ないわ。これまで必要とされてこなかったのだから当然ね。そこで、皆には魔硬石の採掘をお願いしたいの」
「けれど、いま魔硬石が取れるのって、確か――」
「ええ、その通り。王都から馬車を用いて北に十日。そこに存在するSランクダンジョン、ラピス遺跡の踏破を貴方たち四人に依頼します!」
――そんな風にして。
俺たちの次の目標が、ラピス遺跡に決まった。
そこに待ち受けている数々の出来事を、今の俺は知る由がなかった。
もはや恒例となっている、学院長室への呼び出しがあった。
いつもと違うのは呼び出されたメンバーだ。
俺とユナとティナ。ここまではいつも通り。
けれどこの場にはもう一人、何故か学院生ですらないはずのレオノーラがいた。
レオノーラの姿を始めて見るユナとティナは、どこか戸惑っている様子だった。
「る、ルーク、あの人ってもしかして……」
「レオノーラだ。名前くらいは聞いたことあるんじゃないか?」
「も、もちろんだよ! でも、なんでそんな凄い人がこんなところにいるの!?」
「それは俺も分からないけど……」
俺とユナの会話の横で、ティナが注意深くレオノーラを観察する。
「……噂には聞いていましたが、実物は格が違いますね。その場にいるだけで圧倒されてしまいそうなオーラです……もちろん、お兄様には敵いませんが!」
どうやらティナも、その佇まいからレオノーラの実力を悟ったらしい。
と、ここでようやくレオノーラが行動を起こす。
彼女は俺たちのすぐ前までやってくると、満面の笑みを浮かべる。
「うん。ルーク師匠、昨日ぶりだ! 後で鍛錬に付き合ってくれ!」
その言葉を聞いたユナとティナが、疑問に満ちた視線を俺に向けて口を開く。
「「師匠?」」
「ああ……二人には説明していなかったな」
本当は昨日の出来事も二人に話そうとは思っていたのだが、学院に来てすぐに呼び出しがあったためまだ話せていなかったのだ。
簡単に事情を説明すると、ユナとティナはそれぞれ反応を見せる。
「す、すごすぎるよ、ルーク。あのレオノーラさんに勝っちゃうだなんて!」
「私は疑う余地もなく、お兄様の方が強いと理解していましたが、それでも感動いたしますわ。まさか彼女ほどの実力者を弟子にするなんて……けど、少し納得いきません。お兄様はどこぞの泥棒猫よりも、私に構うべきだと思うのです!」
「その辺りの話は後にしよう。さっきから学院長の視線が痛い」
不思議な流れになりかけたところで、俺は会話を断ち切る。
そこでようやく、本来の流れに戻る。
「皆、集まったみたいね」
会話が終わったのを確認してか、学院長アリアは小さく笑いながらそう告げる。
「戸惑っている人もいるみたいだし、さっそくだけど皆さんを集めた理由について説明していくわ。簡単に言ってしまうと、お願いしたいことがあるの」
「お願いしたいこと?」
「ええ、学院内外を含めてAランク以上の実力を持つ貴方たちにしか頼めないことよ。貴方たちは、近頃人間界に魔族が出現していることを知っているわね?」
「もちろんです」
一度言葉を区切り、アリアは続ける。
「これまで、魔族を倒すことができたのはルークくんやレオノーラだけ。それ以外の場所では甚大な被害が出ている。これを防ぐためには人族の実力を底上げする必要があると考えたの」
「可能なんですか?」
「一人一人の実力を上げるのは、とてもじゃないけど不可能ね。けれど、つい最近嬉しい誤算があったの。個人の実力を高めるのではなく、これまでにない強力な魔道具なら生み出せるかもしれない――これを見てくれるかしら」
アリアの手にあるのは、透明な魔石だった。
綺麗な正方形をしている。
俺はそれに見覚えがあった。
「それってもしかして、魔硬石ですか?」
「その通りよ。加工が非常に難しいことから魔道具には使用されてこなかった魔石だけど、ここ最近なぜか市場にこれだけ質のいい加工済みのものが出回るようになったの。出所を探ればすぐに辿り着いたわ。冒険者ギルド、晴天の桜にね」
「――――」
となると、やはりこれは……
誰によって魔硬石の加工がされたのか、アリアも察しはついているのだろう。
「これ以上、詳しい成り行きは必要ないわね。ルークくん、貴方には魔硬石の加工をお願いしたいの。これを素材にできれば、一気に魔道具の質が上がる」
「それは構いませんが、そんな大量に魔硬石は用意されているんですか?」
「ふふっ、よく気付いたわね。そう、それこそが貴方たち四人を呼び出した理由に繋がるの」
疑問を浮かべる俺たちに、アリアは告げる。
「ルークくんの言葉通り、魔硬石の用意は少ないわ。これまで必要とされてこなかったのだから当然ね。そこで、皆には魔硬石の採掘をお願いしたいの」
「けれど、いま魔硬石が取れるのって、確か――」
「ええ、その通り。王都から馬車を用いて北に十日。そこに存在するSランクダンジョン、ラピス遺跡の踏破を貴方たち四人に依頼します!」
――そんな風にして。
俺たちの次の目標が、ラピス遺跡に決まった。
そこに待ち受けている数々の出来事を、今の俺は知る由がなかった。
1
あなたにおすすめの小説
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる