魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜

八又ナガト

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第二部 剣神と呼ばれた男

44 魔硬石採掘へ

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 レオノーラと戦ったすぐ翌日。
 もはや恒例となっている、学院長室への呼び出しがあった。

 いつもと違うのは呼び出されたメンバーだ。
 俺とユナとティナ。ここまではいつも通り。
 けれどこの場にはもう一人、何故か学院生ですらないはずのレオノーラがいた。

 レオノーラの姿を始めて見るユナとティナは、どこか戸惑っている様子だった。

「る、ルーク、あの人ってもしかして……」
「レオノーラだ。名前くらいは聞いたことあるんじゃないか?」
「も、もちろんだよ! でも、なんでそんな凄い人がこんなところにいるの!?」
「それは俺も分からないけど……」

 俺とユナの会話の横で、ティナが注意深くレオノーラを観察する。

「……噂には聞いていましたが、実物は格が違いますね。その場にいるだけで圧倒されてしまいそうなオーラです……もちろん、お兄様には敵いませんが!」

 どうやらティナも、その佇まいからレオノーラの実力を悟ったらしい。
 と、ここでようやくレオノーラが行動を起こす。
 彼女は俺たちのすぐ前までやってくると、満面の笑みを浮かべる。

「うん。ルーク師匠、昨日ぶりだ! 後で鍛錬に付き合ってくれ!」

 その言葉を聞いたユナとティナが、疑問に満ちた視線を俺に向けて口を開く。

「「師匠?」」
「ああ……二人には説明していなかったな」

 本当は昨日の出来事も二人に話そうとは思っていたのだが、学院に来てすぐに呼び出しがあったためまだ話せていなかったのだ。
 簡単に事情を説明すると、ユナとティナはそれぞれ反応を見せる。

「す、すごすぎるよ、ルーク。あのレオノーラさんに勝っちゃうだなんて!」
「私は疑う余地もなく、お兄様の方が強いと理解していましたが、それでも感動いたしますわ。まさか彼女ほどの実力者を弟子にするなんて……けど、少し納得いきません。お兄様はどこぞの泥棒猫よりも、私に構うべきだと思うのです!」
「その辺りの話は後にしよう。さっきから学院長の視線が痛い」

 不思議な流れになりかけたところで、俺は会話を断ち切る。
 そこでようやく、本来の流れに戻る。

「皆、集まったみたいね」

 会話が終わったのを確認してか、学院長アリアは小さく笑いながらそう告げる。

「戸惑っている人もいるみたいだし、さっそくだけど皆さんを集めた理由について説明していくわ。簡単に言ってしまうと、お願いしたいことがあるの」
「お願いしたいこと?」
「ええ、学院内外を含めてAランク以上の実力を持つ貴方たちにしか頼めないことよ。貴方たちは、近頃人間界に魔族が出現していることを知っているわね?」
「もちろんです」

 一度言葉を区切り、アリアは続ける。

「これまで、魔族を倒すことができたのはルークくんやレオノーラだけ。それ以外の場所では甚大な被害が出ている。これを防ぐためには人族の実力を底上げする必要があると考えたの」
「可能なんですか?」
「一人一人の実力を上げるのは、とてもじゃないけど不可能ね。けれど、つい最近嬉しい誤算があったの。個人の実力を高めるのではなく、これまでにない強力な魔道具なら生み出せるかもしれない――これを見てくれるかしら」

 アリアの手にあるのは、透明な魔石だった。
 綺麗な正方形をしている。
 俺はそれに見覚えがあった。

「それってもしかして、魔硬石ですか?」
「その通りよ。加工が非常に難しいことから魔道具には使用されてこなかった魔石だけど、ここ最近なぜか市場にこれだけ質のいい加工済みのものが出回るようになったの。出所を探ればすぐに辿り着いたわ。冒険者ギルド、晴天の桜にね」
「――――」

 となると、やはりこれは……
 誰によって魔硬石の加工がされたのか、アリアも察しはついているのだろう。

「これ以上、詳しい成り行きは必要ないわね。ルークくん、貴方には魔硬石の加工をお願いしたいの。これを素材にできれば、一気に魔道具の質が上がる」
「それは構いませんが、そんな大量に魔硬石は用意されているんですか?」
「ふふっ、よく気付いたわね。そう、それこそが貴方たち四人を呼び出した理由に繋がるの」

 疑問を浮かべる俺たちに、アリアは告げる。

「ルークくんの言葉通り、魔硬石の用意は少ないわ。これまで必要とされてこなかったのだから当然ね。そこで、皆には魔硬石の採掘をお願いしたいの」
「けれど、いま魔硬石が取れるのって、確か――」
「ええ、その通り。王都から馬車を用いて北に十日。そこに存在するSランクダンジョン、ラピス遺跡の踏破を貴方たち四人に依頼します!」

 ――そんな風にして。
 俺たちの次の目標が、ラピス遺跡に決まった。

 そこに待ち受けている数々の出来事を、今の俺は知る由がなかった。
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