魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜

八又ナガト

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第二部 剣神と呼ばれた男

45 ラピス遺跡へ

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 魔硬石採掘の依頼を受けてからの展開は早かった。
 俺たち四人は素早く準備を終えると、午後には出発のため北門に集まっていた。

 今回の依頼では大量の魔硬石を採掘することになる。
 ラピス遺跡から王都まで持って帰ってくるための要員が必要なのではないかと考えたが、すぐに必要がなかったことを知ることになる。

「うん。これで準備は完了だ!」

 どんっと、突然レオノーラの前に一つの馬車が現れる。
 何でも、収納魔術を用いて異空間に置いていたのを呼び出しただけなのだとか。
 馬を一頭だけ連れてきたときは、まさか四人乗りでもするのかと思ってしまったが、さすがにそんなことはなかったらしい。

 レオノーラ曰く、収納魔術を用いれば数十人分の魔硬石は持って帰ることができるだろうという話らしい。
 魔術を極めればここまで多種多様な場面で活躍できるのかと、俺は驚いていた。

「……とんでもないな」
「うん、次元が違うね」
「補助系魔術は便利ですね。そろそろ私も覚えるべきでしょうか」

 そう思ったのは俺だけではないようで、ユナやティナも尊敬の眼差しをレオノーラに向けている。
 特に純粋な魔術師であるティナは色々と思うところがあったようだ。
 ティナはこれまで戦闘系の魔術を優先して覚えていたからな。
 これをきっかけに幅を広げることができれば、大きな力になるだろう。

「うん。それでは出発するとしよう! さあ、ルーク師匠、号令を頼む!」
「えっ? 経験的にレオノーラがリーダーを務めるんじゃないのか?」
「何を言っているんだ。私がルーク師匠を差し置いて指示を出せるはずがないだろう」
「そういうもんなのか……ユナやティナはそれでも大丈夫か?」
「うん、もちろん! ルークがリーダーなら安心できるよ!」
「当然、私もお兄様に従いますわ」

 と、全員の賛同を頂けたことで、俺がリーダーを務めることになった。
 まあ、異世界(向こう)でも似たようなことをした経験はあるし、特に問題はないだろう。

「よし、それじゃあ皆、ラピス遺跡へ出発だ!」
「「「おー!(うん!)(はい!)」」」

 そんな号令を残し、俺たちは王都を出発した。


「ラピス遺跡までは暫くかかることだし、改めて自己紹介とでもいこうか」

 レオノーラが改造した特別製の馬車なため進む速度は非常に速いが、それでも五日程度はかかると予想している。
 この場にいる全員と関わりがあるのは俺だけだ。
 ユナ、ティナとレオノーラはそれぞれ面識がないに等しい。
 親睦を深める時間を取ったほうがいいだろう。

 そんな俺の提案に皆も頷いてくれ、いろいろな情報が行き交うことになった。
 得意な魔術などについて話しあった。
 それらをまとめると、だいたいこんな感じだ。


 ルーク・アートアルド
 得意魔術:なし
 苦手魔術:全て
 戦闘方法:極限まで修練した身体強化と剣技により敵を圧倒する。純粋な戦闘能力だけなら敵うものがいない。

 レオノーラ・フォルティス
 得意魔術:全て
 苦手魔術:なし
 戦闘方法:国内最強、万能の魔術師と称されるに相応しいほどに、ありとあらゆる魔術行使が可能。戦闘だけに限らず、補助魔法に至るまでカバーしている。ルークとの戦闘以降、身体強化の修練に励んでいる。

 ティナ・アートアルド
 得意魔術:大規模な攻撃魔術
 苦手魔術:補助魔術
 戦闘方法:莫大な魔力量、さらに100メートルにも及ぶ魔力操作範囲コントロールレンジを有効活用し、敵の意識外から強力な魔術を浴びせる。同世代には敵なし。

 ユナ・ミアレルト
 得意魔術:魔心(ましん)
 苦手魔術:長距離放出系魔術
 戦闘方法:ユナ特有の魔術、魔心を体に纏った上で身体強化を行い接近戦に持ち込む。魔力量などの事情から持続時間は限られているが、能力発動時はほぼ無敵。


 情報を整理しながら改めて思うが、やはりとんでもないパーティになっているみたいだ。
 このメンバーなら国の一つや二つ落とせるのではないだろうか?
 むろん、やるつもりはないけど。

 それにしても、皆の得意魔術などを聞くことによって、このメンバーは大きく二分できることを俺は把握した。
 レオノーラとティナは得手不得手や実力に差こそあれ、純粋に魔術師としての才能に恵まれたことにより現在の実力を誇っている。

 対する俺とユナは、この世界では本来認められない才能を持って生まれてきた。
 それがこうして二人とも無事にその才能を芽生えさせることができたのは、心から喜ばしいことだ。

 ……まあ、だからこそ少し、思うところもあるんだが。
 ユナだけが持つ力、魔心。
 俺はそれにとある思いを抱きながら、馬車に揺られるのだった。
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