外れスキル【無限再生】が覚醒して世界最強になった ~最強の力を手にした俺は、敵対するその全てを蹂躙する~

八又ナガト

文字の大きさ
86 / 87

086 死を育むもの

しおりを挟む
 フールの手にある黒い靄――【黒の死齎】。
 その禍々しい気配にシンは思わず身構える。
 だがフールは不敵な笑みを浮かべたまま、その詳細を語り始めた。

「これはな、対象者を無条件で死に至らせる【霊宝具《ソウル・アーティファクト》】なんだよ。お前がこれまでに積み上げてきたレベルも、身につけた技術も、全部無意味。才能と努力の全てを冒涜する、史上最悪のアイテムってわけだ」

 フールの言葉は、シンの中に嫌な予感を呼び起こす。
 それはイネスが命を落とした理由への答えを示唆していた。

「いいか、シモン。抗おうとしても、逃げようとしても無駄だ。この瞳に睨まれた時点で、テメェの死は確定してるんだよ!」

 フールが叫ぶと同時に、シンの体が強張る。
 まるで見えない手に捕らえられたかのように一切の身動きが取れなくなっていた。
 それはレベルやステータスといった概念の埒外にある、絶対的な力だった。

「ははっ、どうしたシモン? 怖気づいたか? 無理もないな。これまでテメェが俺様に与えた屈辱を、数十倍にして返してやる。これで終わりだ!」

 勝利を確信したフールが、高笑いを上げる。
 その瞬間、シンの周囲に黒い靄が広がっていった。

「――――――」

 まるで生きているかのように蠢く闇が、一瞬にしてシンを呑み込んでいった。


 ◇◆◇


「ここは……」

 次の瞬間、シンは真っ黒な空間に閉じ込められていた。

 そこはありとあらゆる負の感情が渦巻く、まさに地獄のような場所だった。
 絶望、憎悪、憤怒、悲哀……普通の人間なら、数秒たりともここに留まることなどできないだろう。

 ――――だが、

「俺は、ここを知っている」

 そう、シンはかつてこの地獄を味わったことがあった。
 いや、正確には味わい続けてきたと言うべきだろう。

 ――彼が保有するユニークスキル【無限再生】によって。

 これまでシンは数え切れないほどの自死と復活を繰り返してきた。
 そしてその度に、シンの魂はこの空間に送られていたのだ。
 再生するたびここにいた記憶は消し去られていたが、この場所に戻ったことでシンは全てを思い出した。
 これまでにシンが受けてきた苦痛の全てと、たった一つの感情――復讐心を。

 その末に、シンはある確信を得る。
 ここは確かに地獄の窯だ。だが同時に、シンにとってはぬるま湯に過ぎない
 ここに存在するありとあらゆる苦しみなど、シン一人の復讐心にとって優に塗り替えられるものでしかなかった。

「……ん?」

 その時、シンは一つの異質な気配を感じた。

『……………』

 真っ黒な空間の中心に存在する、ひと際禍々しい気配。
 それは【黒の死齎】そのものの意思だった。
 シンを含む全てを殺そうとする冷たい殺意。

「お前が、俺をここに呼んだのか」

 シンはその意思と対峙する。
 これから自分はこの殺意によって死に至るのだろう。

 だが、それだけだ。
 シンはその意思に対し、真正面から堂々と告げる。

「この程度で、俺を止められると思うな」

 その言葉と共に、シンは自らの意思を解き放った。
 真っ黒な精神世界の中で、シンの意思が【黒の死齎】を蹂躙していく。

『――――――――――』

 その時、シンは【黒の死齎】の意思と繋がった気がした。
 【黒の死齎】はシンに対して何かを呟いたのち、ようやく能力を発動する。

 そして――――





『魂の再生成が行われます』





 ――死の末、シンの脳裏に響いたのは。
 幾度となく聞き続けてきた、再生を告げるその言葉だった。


 ◇◆◇


 一瞬のような、もしくは永遠のような時間を黒の世界で過ごした後、シンの意識が現実に引き戻される。

「……戻ってきたのか」

 シンは状況を理解した後、ゆっくりとその場から立ち上がる。
 そんな彼の前には、信じられない光景に絶句するフールの姿があった。


「……………………は?」


 起き上がったシンを見て、フールは完全に言葉を失っている。
 一方シンは、まるで何事もなかったかのように体の汚れを払いながら、独り言をつぶやく。

「時間が経っていない……そうか、復活後のクールタイムってのは、魂の体感時間を指していたんだな」

 そう告げるシンの視線は、【無限再生】の説明に向けられていた。


 ――――――――――――――

 【無限再生】
 ・ユニークスキル
 ・対象者が傷を負った際、自動で再生する。
 ・死後、魂の再生成を行うことで復活する。
  復活後、60分間は行動することができず、このスキルを再発動することもできない。

 ――――――――――――――


 ここで言う60分間行動することができないとは、現実の時間ではなく、あくまで魂のことを指しているのだろう。
 【無限再生】の効果を考えれば、納得のいく話だった。

『――――』
「ん? お前は……」

 その時、シンのもとに一つの影が近づいてくる。
 それは【黒の死齎】だった。フールから離れて近づいてくるその様子は、まるで新しい主人を見つけたかのようだ。

 その光景を見たフールが、慌てた様子で声を張り上げる。

「待て! いったい何がどうなってる!? なぜ俺様の【霊宝具】がテメェのもとにわたって……いや、そもそもどうしてまだテメェが生きているんだ!?」

 パニックに陥ったフールが、泣きそうな声で叫ぶ。
 その哀れな姿に、シンはギロリと鋭い視線を向けた。

「ひいぃ!」

 途端、フールはシンの圧に耐え切れずその場にしりもちをついた。
 そんなフールに対し、シンはゆっくりと近づいていく。

「待て、待ってくれ! これは違う、何かの間違いだ! そうだ、俺様を見逃してくれるのならお前にも【霊宝具】を幾つか譲ってやる! 全ての冒険者が、喉から手が出るほど求める品の数々だ! だ、だから、その……お願い、します……俺を、助けて、くれ……」

 これまでの傲慢な態度を捨て、フールは惨めな命乞いを始める。
 だがシンに、その言葉を聞く意思は一切なかった。

 同時に、脳裏に浮かんだのはシンが先ほどまでいた黒の世界。
 シンにとってはぬるま湯に等しかったが、この程度の殺気で惨めに暴れるフールからすれば、あそこ以上の地獄は存在しないだろう。
 さらに【無限再生】が発動したことからも、あそこで魂が過ごす体感時間は永劫に近いものだということが分かる。

 つまるところ、あの場所でなら肉体の生き死に関係なく、永遠に拷問を与え続けることができるのだ。

 シンは、従順になった【黒の死齎】に静かに命じる。


「奴を殺せ。そして永劫に続くあの世界で、地獄の苦しみを与え続けてやれ」
「い、いやだぁぁぁ! やめてくれぇぇぇぇぇ!」


 フールの絶叫。
 だがそれも、虚しく闇に呑まれていく。
 シンの命令を受けた【黒の死齎】が、容赦なくフールを絶命させたのだ。

 こうして全てが終わった。
 シンは空を見上げ、深く息をつく。

「……終わったか」

 そのつぶやきは、まるで自問するかのようだった。
 イネスを失い、そしてイネスを奪った者への復讐を果たした。
 だが、シンの心に安息は訪れない。
 いや、むしろ喪失感だけが増していくようにすら感じられた。

 シンは再び空を見上げる。
 雨は止み、暗雲が晴れゆく。
 だがシンの心に光が射すことはなかった。
 ただ冷たく重い空気だけが、シンを包み込むのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...