永遠故に愛は流離う

未知之みちる

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貪欲な彼は彼女を知っている

( 二 )

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「奏君、英語科は職員室違うのよ。こっち」
 そう塚田は言うと歩きだし、奏が後を付いて行く。村田と天音も隣の職員室の方へ歩きだした。
「奏、大丈夫かなあ」
 村田の後ろを歩きながら、ぽつりと天音が言った。
「心配症なんだね、天音ちゃんは」
「違います、先生。奏は絶対に友達少ないのよ」
 さっきから、やたらとそこにこだわるなと村田は可笑しくなって、また笑った。
 その様子に、天音はまるでどんぐりの背比べに等しい自尊心を得意げに顕にした。
「あたしは友達いますし、ちゃんと作るわ」
 村田は天音の振る舞いで、すっかり忘れそうになっていたことを思い出した。
「あ。忘れないうちに副担任の北野篤、紹介するよ」
「……忘れないうちにって、ひどい言い方」
 既に職員室の中で、天音は口元に手を当ててくすくす笑った。


「北野ー、お待ちかね連れて来たぞー」
 お待ちかねとはなんだと天音は首を傾げた。首を傾げたあと、どうしてか足が竦んだ。
 村田に連れてこられた机の並びの前で、何故か天音は不思議な感覚に襲われた。
 なんだろう、これ。あたし変だ。
 しかしどうして、何が変なのかがわからない。そんな自分に、天音は苛ついた。
 若い教師がじいっと自分を見ていることに漸く気付いた天音はらしくもなくひどく慌てた。
「気強そー、友達いなそー」
 そんな第一声を吐いた男を天音は思いっきり睨み付けた。
「失礼にもほどがあるわ」
 爽やかそうな風貌のくせになんて失礼な教師なんだと憤慨したくなるのをどうにか抑えて、しかし天音は突っかかり気味に言ってやった。
 ふたりの遣り取りに、田村は呆れ返っている。
「おい、北野。化けの皮剥がれてる」
 そう言った田村に篤は言った。
「こういうタイプにわざわざ爽やかに振る舞ったって損しかしない」
 こういうところは高校生の頃と全く変わらないと思うと、村田はため息を吐いた。
「それ、褒め言葉ですか?」
「好きに取れよ」
 篤がにやりと笑った。
「はいはい、北野先生、天音ちゃんを教室案内してきて。結構時間経ってた。天音ちゃんはまた放課後来て」
「はーい」
 篤は適当に返事すると、椅子から立ち上がった。そして楽しそうに「行くぞ」と言った。
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