ありきたりの異世界転生〜ラーニングスキルで異世界領主が世界を救う！？〜

0章 プロローグ

女神とスキル⑤

『今回は完全にクロノエル、及びに管理責任者の私の責任で御座います。』


そういうとルミエールは深々と頭を下げ、クロノエルも慌ててそれに続いた。


ははっ…急な展開すぎて流石に頭がついてきてないな。


もう誰にも会えないのか。

両親にも、友達にも。

実家の犬にも。隣の猫にも。

職場の人にも。お客さんにも。

まだ見ぬ恋人にも。


そんな事を思うと、さすがに胸が苦しくなり思わず頬を涙が伝うのが分かった。


「…家族や友人にとっては、私という存在自体が無かったことになっているのですよね。」


『…はい。非常に申し上げにくいのですが。』


「…ふぅ。ならいいです。」

涙を拭い、ひと呼吸おいて俺はそう答える。


『はい？』

（お、ルミエールさん。先ほどの怒った部下の方と同じリアクションしてますよ。）


「それならいいです。みんなには悲しみもなにもないって事ですよね。」


『……そう…なりますね。』


「なら大丈夫です。みんなにとっては見知らぬ誰かが一人いなくなっただけですからね。」


『…ほんどうにもうじわげありまぜぇぇんん！！』


四枚羽のクロノエルが俺に抱きついて来て、大粒の涙を流していた。


いやいや、君が泣いてたらまた怒られると思うよ？笑


『クロノエル！貴女が泣く事がありますか！』


…ほらね。


『…トキトウさん。重ねてですが、本当に申し訳ありませんでした。
ともかくは神に相談してどうにか対策を考えさせて頂きます。
どうしようもない場合でも、せめて望むべく未来を歩めるように魂の輪廻の交渉を致します。』


「…ご無理なさらずで大丈夫です。なんか諦めもついてますので！」


きっと、死ぬ時ってこんな感じなんだろう。


今のこの事態が本当に起きているのか、俺の夢なのかは分からないが…
少なくとも俺以外の人間が悲しまないというのなら死に方としてはある意味ベストだろう。

何故ならどのように死が訪れたとしても、必ず誰かしらは悲しませてしまう物なのだから。

その定めから外れたということはある意味では幸運なのかもしれないとすら思う。


そんな風に客観的に物事を捉えることで、俺は少し気持ちが楽になった気がした。