結いの約束~記憶に残る蜜の香り【異能覚醒編】

蓮華(れんげ)

文字の大きさ
125 / 192
第二十一章 異能力者、始動

母という人

しおりを挟む
どんちゃん騒ぎが過ぎる。








田舎だからなのか、南の地方だからなのか、家系的に酒が強いからなのか、










既に大騒ぎだ。









フミさんに促され、輪に入ると吾郎さんがお酒の入ったグラスを持って来てくれた。








仮眠を取っていたリョウも美味しそうな香りにつられて起きて来た。





「ワッ!パリピだらけ。」






第一声目は中学生らしい驚き方だった。







「その言い方(笑)みんなずっと今日はパリピだよ。宴、始まると長いからね(^-^;」


「これがめんどくさいのよね(笑)」


「ばばちゃま、どんちゃん騒ぎ苦手なんだもんね、何かすべてが異色(笑)」


「そうなの、だからはみ出すのよ(笑)」


「(笑)」





そう、母は【異色】なのだ。





『異能を好まず、群れを好まず、宴は騒がず、家系を慮おもんばからず』







ばぁちゃんが強烈すぎて、母は反骨精神で育ったと思われる。


私の小さい頃は、なるべく異能から私を遠ざけ育てたせいでばぁちゃんとは対立していた記憶がある。





(母と父はひとかけら同志だったのに蓮の花は確か......咲かなかったとばぁちゃんは言っていた。)





そこに関しては、どうしてなのか?は知りたいようだが、自分が咲かなかった事には全く興味を示さない。





父とは大恋愛の末、一緒になった。

その際にばぁちゃんの反対を受けたことが後々の反発の理由、らしい。





遠ざけていた異能力の世界だったが、母の願いを踏みにじり、私とリョウはどっぷり浸かっている。


こと、リョウは至っては多分異能力が強いし、日常の中で自然に受け入れるように私は育ててきた。






母は柔軟な人で、自分の思想を押しつけたりしないので物事に対して反対をされたことはほとんど、ない。





が、二つだけ、







今回の件に関わる事については慎重に。という事と、深澤くんを巻き込まないように。だった。







(深澤くんについては、口調が強めだったけど.....何か理由が?)







そもそも、蓮の花が咲いた事を知った時点で異能関連については口を出さなくなった。





(我が家系にとって、蓮の花が咲く事がすべてにおいて強くなる。.....理由を誰も知らないんだよね。やっぱり蓮の花の秘密、知りたいな。)






ふと見ると、リョウは宴の真ん中で延々と食事をしていた。






「美味しい?」



「うん!超美味しい!ヤバい、水が合うかも。」





難しい言葉を知っている頭でっかちな娘。





「そりゃ、そうよね、彼女のルーツだし、リョウは最強の異能力を持つ可能性を秘めているから代々から守られている。」



「そうね、加護のパワーを感じるものね。ねぇ、母ちゃま?なぜ、リョウの異能については反対しなかったの?」






タバコをくゆらせながら母は言った。





「あなたが、母親だから。レンはレンのやり方でちゃんとリョウを護ろうとしてる。私はあなたを護る為、遠ざけた。あなたはリョウを護る為、強くなった。鍛練は簡単じゃないし、努力を要する。それをちゃんとリョウの為に行っているでしょ、だから。」






母はいつだって大きい。


その大きさは、父に愛され、守られ、父が亡くなった今でも、父のぬくもりに包まれて日々を過ごしているからなのだ。






「......母ちゃまにはかなわないな(笑)」

「ふふっ、今更?(笑)」

「今更(笑)」





気になるあの事を聞いて見た。





「深澤くんの事をすごく気にするけど・・・何で?」





一瞬困った顔をしたが、「うん。」とうなずき話し始めた。






「父ちゃまの事。の事と関係あるの。」

「父ちゃま?なんで?」

「ばぁちゃんと揉めた事でっていうか、異能のせいで彼を大けがさせたから。」

「大けが!初めて聞いたよ、それ。」

「うん、初めて言った。」











――――――――事の顛末はこうだった。





父との交際を反対されていたが、過去世からの縁を感じ取っていた母は賛成に転じると思い強引に父との付き合いを押し進めた。


やがて、ばぁちゃまも”ひとかけら”である事を知り、賛成した。



が、蓮の花は待てども待てども咲かなかった。



もちろん母にとって「そこ」は関係ないので幸せに暮らしていたのだが
その事で、ばぁちゃんと対立してしまい、間に入った父がケガをしてしまったようだ。



そのことで母は大激怒、ほぼ絶縁に近い状態、異能の世界を自分の中で封印してしまったらしい。










――――――――なぜ、蓮の花は咲かなかったのか?




(結局、ここでも蓮の花がキーになる.....)




どうしても、調べなければならない事のようだ。





(私は咲いた、母は咲かない.....何の違い?多分、深澤くんも父ちゃまも異能力の持ち主ではない...あ、でも深澤くんは少しあるんだ。)







考え込んでると、母が言った。





「レン、あなたの名前は分かっているとは思うけど、蓮の花から取っているの。父ちゃまが思いを馳せて付けた名前。それだけ、家系には蓮の花が大きく意味を成す。私は、咲いても咲かなくても特に気にしなかったけど、父ちゃまはこの件をずっと気にしていたから・・・・あなたに思いを託したのかもしれない。この言葉の意味を分かるわよね......」



「わかるわ。わかるけど、なぜ今この年で(笑)」



「深澤くんと会ったからよ。で、なければあなたに蓮の花が咲かなかったから。しかも、多分だけど交わっただけじゃダメね。カラダ的な相性というか...そういうものも関係あると私は思っているの。レンが調べるのも宿命なのかもしれないね。」









ふと.....宴の喧騒の中、深澤くんに会いたくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

トキメキの押し売りは困ります!~イケメン外商とアラフォーOLの年末年始~

松丹子
恋愛
榎木梢(38)の癒しは、友人みっちーの子どもたちと、彼女の弟、勝弘(32)。 愛想のいい好青年は、知らない間に立派な男になっていてーー 期間限定ルームシェアをすることになった二人のゆるくて甘い年末年始。 拙作『マルヤマ百貨店へようこそ。』『素直になれない眠り姫』と舞台を同じくしていますが、それぞれ独立してお読みいただけます。 時系列的には、こちらの話の方が後です。 (本編完結済。後日談をぼちぼち公開中)

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヘンタイ好きシリーズ・女子高校生ミコ

hosimure
恋愛
わたしには友達にも親にも言えない秘密があります…。 それは彼氏のこと。 3年前から付き合っている彼氏は実は、ヘンタイなんです!

隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛

冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...