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王子は魔女に説明を求めています
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(嵌められた。とは、こういうことか?)
もう何度そう思ったかわからないが、王子のベッドで、真ん中にゆったりと腰かける王子のすぐそばに私は座り、王子が言うところの"ご説明"をしていた。
今回王子が受けた呪いはとても強力だったため、おそらく私の寿命が20-30年延びたこと。王子に加護を与えてみたから、王子は今回以上の呪いでなければ今後呪いを受けないこと。呪いがなければ私と王子が会うことはないので、もう会うことはないだろうという結論に至ったことを話した。
「話の内容は分かりました。あなたの加護でおそらくもう呪いにかかることはない私は、もうあなたにとって用済みということですね」
端的に言うとそのとおりだが、本人の前だけに頷きにくい。
(まだこんなチンチクリンのクセになぁ)
大の大人でも言いにくいことをスラスラと言ってくる。人間の年齢などよく分からないが、10やそこらの子どもにわざわざ念を押すほど、大人気なくもないつもりだ。
模範回答が分からぬまま、結局だんまりしてしまった。
「けれど逆に言えば、今後、私がまた呪いにかかれば、あなたは私に会いに来てくれるということですよね?」
ニッコリ笑ってとんでもないことを言い出した。
「それはそうだが、そんなことはあり得ない」
「なぜそう言えるのですか?」
「呪いについて君がどれだけ理解しているかは分からないが、君が今回かかった呪いは特別だ。本来、交わることのない呪いが複雑に絡み合っていた。おそらく、持続性のある弱い呪いに、それなりに強い呪いと、強力な呪いがなぜか混ざり合い、術者達の能力以上の呪いになったんだ。こんな偶然、そうそう起こらない。500年生きている私でも、はじめてのものだった。同じ呪いでも不可能だろうに、それ以上のものなどできるわけがない」
私にしてはかなり親切に説明してやった。
してやったのに。
「あなたは今、500歳なんですか?」
見当違いのことを聞いてくる。
「なんだと?」
「あなたの年齢を聞いているのです。今、500歳ですか?」
王子の会話のペースが分からない。
今、拾うべきはそこではない。
が。
「おおよそ、そのくらいだ。私と君とでは時間の概念が違う。正確には数えていないから、分からない」
「そうですか。では、やはり今回以上の呪いに私がかかれば、あなたは私のもとにやってくるのですね」
あなたは私のもとにやってくるというところをやけに強調して、王子は言った。
いつだって、王子のかかる呪いは魅力的だ。今回以上のものとなれば、なおさら。
「有り得ないことだとは思うが、また来るだろうな。その時は。…!…」
心底嬉しそうな顔で王子は笑っていた。ニコニコと貼り付けたような笑みではなく、無意識にこぼれてしまったような蕩けるような笑顔。
「そうですか。ならいいです。今日はこれで。けれど、最後にもうひとつ」
やっと解放してくれるのかと思いきや、まだあるらしい。
「あなたと連絡をとるにはどうしたらいいですか?」
「なに?」
「連絡手段ですよ。れ・ん・ら・く・しゅ・だ・ん」
当然のように王子は言った。
(コイツはナニをイッテイル?)
「今回みたいにギリギリすぎるタイミングだと、次は私、死んでしまうかもしれないじゃないですか?あなたの加護を超える呪いなんて、あなたにとってもずいぶん魅力的なんでしょう?みすみす死なせて逃したくはないだろうと思いまして」
恐ろしいことをニコニコしながら言ってくる。
そのとおりだ。まさに王子の言うとおりなのだが。
「君は、なんというか…正気か?」
「正気に決まってるじゃないですか。私、今回、半分死にかけた、というか、ちょっと死んでたじゃないですか。ああいうのは、2度とごめんですね。それに私は基本、冗談が嫌いです」
ニコニコキラキラした笑顔で言われるが、私は気づいてしまった。目が、目が笑っていない。
「そ、そうか。それは失礼した」
「そうですよ。それで、連絡手段はなんですか?」
結局、私は折れて非常用ハンドベルを王子に渡してしまった。ひとふりすれば、私以外には聞こえないが、私にはどれだけ距離が離れていても一瞬で分かるというものだ。
このベルを渡してしまったことを、私はとても後悔している。
もう何度そう思ったかわからないが、王子のベッドで、真ん中にゆったりと腰かける王子のすぐそばに私は座り、王子が言うところの"ご説明"をしていた。
今回王子が受けた呪いはとても強力だったため、おそらく私の寿命が20-30年延びたこと。王子に加護を与えてみたから、王子は今回以上の呪いでなければ今後呪いを受けないこと。呪いがなければ私と王子が会うことはないので、もう会うことはないだろうという結論に至ったことを話した。
「話の内容は分かりました。あなたの加護でおそらくもう呪いにかかることはない私は、もうあなたにとって用済みということですね」
端的に言うとそのとおりだが、本人の前だけに頷きにくい。
(まだこんなチンチクリンのクセになぁ)
大の大人でも言いにくいことをスラスラと言ってくる。人間の年齢などよく分からないが、10やそこらの子どもにわざわざ念を押すほど、大人気なくもないつもりだ。
模範回答が分からぬまま、結局だんまりしてしまった。
「けれど逆に言えば、今後、私がまた呪いにかかれば、あなたは私に会いに来てくれるということですよね?」
ニッコリ笑ってとんでもないことを言い出した。
「それはそうだが、そんなことはあり得ない」
「なぜそう言えるのですか?」
「呪いについて君がどれだけ理解しているかは分からないが、君が今回かかった呪いは特別だ。本来、交わることのない呪いが複雑に絡み合っていた。おそらく、持続性のある弱い呪いに、それなりに強い呪いと、強力な呪いがなぜか混ざり合い、術者達の能力以上の呪いになったんだ。こんな偶然、そうそう起こらない。500年生きている私でも、はじめてのものだった。同じ呪いでも不可能だろうに、それ以上のものなどできるわけがない」
私にしてはかなり親切に説明してやった。
してやったのに。
「あなたは今、500歳なんですか?」
見当違いのことを聞いてくる。
「なんだと?」
「あなたの年齢を聞いているのです。今、500歳ですか?」
王子の会話のペースが分からない。
今、拾うべきはそこではない。
が。
「おおよそ、そのくらいだ。私と君とでは時間の概念が違う。正確には数えていないから、分からない」
「そうですか。では、やはり今回以上の呪いに私がかかれば、あなたは私のもとにやってくるのですね」
あなたは私のもとにやってくるというところをやけに強調して、王子は言った。
いつだって、王子のかかる呪いは魅力的だ。今回以上のものとなれば、なおさら。
「有り得ないことだとは思うが、また来るだろうな。その時は。…!…」
心底嬉しそうな顔で王子は笑っていた。ニコニコと貼り付けたような笑みではなく、無意識にこぼれてしまったような蕩けるような笑顔。
「そうですか。ならいいです。今日はこれで。けれど、最後にもうひとつ」
やっと解放してくれるのかと思いきや、まだあるらしい。
「あなたと連絡をとるにはどうしたらいいですか?」
「なに?」
「連絡手段ですよ。れ・ん・ら・く・しゅ・だ・ん」
当然のように王子は言った。
(コイツはナニをイッテイル?)
「今回みたいにギリギリすぎるタイミングだと、次は私、死んでしまうかもしれないじゃないですか?あなたの加護を超える呪いなんて、あなたにとってもずいぶん魅力的なんでしょう?みすみす死なせて逃したくはないだろうと思いまして」
恐ろしいことをニコニコしながら言ってくる。
そのとおりだ。まさに王子の言うとおりなのだが。
「君は、なんというか…正気か?」
「正気に決まってるじゃないですか。私、今回、半分死にかけた、というか、ちょっと死んでたじゃないですか。ああいうのは、2度とごめんですね。それに私は基本、冗談が嫌いです」
ニコニコキラキラした笑顔で言われるが、私は気づいてしまった。目が、目が笑っていない。
「そ、そうか。それは失礼した」
「そうですよ。それで、連絡手段はなんですか?」
結局、私は折れて非常用ハンドベルを王子に渡してしまった。ひとふりすれば、私以外には聞こえないが、私にはどれだけ距離が離れていても一瞬で分かるというものだ。
このベルを渡してしまったことを、私はとても後悔している。
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