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第四章 海藤ベイビーがやってきたの巻
第三十一話 ようこそBaby
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「あ……」
「どうした?」
産休に入って暫くして、夕飯の準備をしている時に足元にふと目をやって思わず声をあげちゃった。キッチンで背中合わせで立っていた部長がビクッとなって慌てて振り返る。長野部長とお局様に部長の過保護っぷりは見ていると苛々する、そのうち愛海ちゃんが爆発するぞって厳重注意を受けてから勤めて冷静な振りをしているんだけど、もうバレバレだよ、しかも部長ったらビクビクしすぎ。
「つま先、お腹のせいで見えなくなって……」
これは自分で足の爪を切れなくなった時よりもショックだー。
「そのことか。脅かすなよ、破水したのかと思った……」
「そりゃいつ起きてもおかしくはないけど、部長、ビクビクしすぎー」
「仕方がないだろ。お前がどっしり構えすぎなんだ」
「そうかなあ」
私だって初めてのことだからドキドキしてるんだよ? あ、そう言えば胃を圧迫していた感じがなくなってご飯が食べられるようになったのって、赤ちゃんが下がってきたってことだよね。いよいよって感じ? けど、それを部長に言ったらきっとパニックだよね、黙ってよう。
「何ともないのか?」
「うん。なんとなく腰がだるい感じがするけど、痛いとか無いよ? あ、そう言えば今朝辺りからお腹がゆるい感じがするけど、それって何か関係あるのかな」
「ゆるいって……そのう、便秘の反対ってことか?」
「うん、そういう感じ」
お腹でも冷やしたかなと思って温かくて消化の良いものを献立にしてるんだけど。なんだろう、普段はこんなことないんだけどな。
「予定日は十一日だよな?」
「うん。あと一週間ちょっとだね。あくまでも目安だって先生は言ってたけど。部長、今からそんなにソワソワしていたら産まれるまでに疲れちゃうよ?」
「分かってるが、こればっかりは自分でもどうしようもない」
そんな状態で寝る前のお腹のマッサージも何処か上の空って感じだった。私より部長がそんなに緊張しちゃってどうするんだろう。産むのは私なんだけどなー。
「他のところの旦那さんも部長みたいになるのかなあ……なんだか部長だけが飛び抜けて過保護で心配性な気がするんだけど」
「多分、俺が飛び抜けてるんだと思う……」
「自覚あるならもうちょっと何とかならないの?」
「ならないから困ってるんだろ」
本当に困ったパパさんですねえ、君はこんな超過保護男にならないようにね?とこっそりとお腹の中の赤ちゃんに囁く。
そして、深夜にそれは突然やってきた。
「……ぶちょー?」
急な痛みに目が覚めて隣で寝ていた部長に声をかけた。
「どうした?」
「なんだか来ちゃったみたい」
「来た? 来たって陣痛?」
「うん……あ……」
パジャマのズボンが濡れていく感触に思わず下を見る。
「……これって破水、かも?」
「病院に連絡してくる」
「うん、お願い」
部長が電話をする為に部屋を出たところで、お互いのスマホに病院の電話番号を登録していたことに気がついた。慌てちゃってスッカリ頭から抜け落ちてちゃってた。痛みがひいたので布団から出ると濡れた布団とシーツをベッドから引き剥がす。そしてタオルを取ってきて少し濡れてしまったマットを拭いた。もしかして昨日の昼間から妙に腰がだるかったのって陣痛だったのかな……。
「愛海、病院の方は来て下さいってことだ……ってそんなことは後で俺がしておくから出掛ける準備をしないと」
「でも拭いておかないとシミになっちゃうから」
「ちゃんすとるから。着替えは?」
「えっと病院に持っていく荷物と一緒に置いてあるよ」
入院する時に持っていくつもりだったバックがしまってある場所は部長も知っていたので直ぐにバッグと着替えを持ってきてくれた。それから自分も着替え始める。
「痛みは?」
「今は平気」
「そうか」
「……ポッキーの日が誕生日ってのダメみたいだね。先生は狙ってたみたいだけど」
「今は読書週間だから本好きな子に育つかもな」
「意外なこと知ってるんだ……」
「昨日、立ち寄った本屋に広告が出てた」
「なーんだ、すごーいって感心したのにぃ」
「そりゃすまないな」
ガッカリだよって言ったら笑われちゃった。着替えを終えて出ようとした時に再び痛みがやってきたので、その痛みが引くのを待ってから出かけることにする。
「こんなに急にくるものなのかなあ」
「俺に聞くなよ? 俺も初めてなんだから」
「どのぐらいで産まれてくるかなー、赤ちゃんに早く会いたいね」
車で病院まで二十分程度。途中で痛くなってきちゃったけど運転している部長が慌てて事故起こしたら洒落にならないから黙って我慢する。信号待ちをしている時に手を握ってくれた様子からして気がついていたみたいだけど。
病院につくと先生が待っていた。あれ? どうして?
「今日は当直でね。さっきまでもう一人の妊婦さんの出産に立ち会ってたの。終わりかけの頃に海藤さんから電話があっていいタイミングだったわ」
「そちらの妊婦さんも無事に?」
「ええ。元気な女の子よ」
内診を終えた私は個室に入れてもらえた。陣痛のタイミングからしてもしかしたら今日中に産まれるかもよ?って先生が言ったので、そんなに早く?って驚いちゃった。会社で聞いた話だと陣痛が始まってもなかなか出てきてくれないことが多いみたいだし? 私の場合はどうやら違うみたい。なんでだろうって考えた末に出た理由は……。
「……分かった。パパが心配し過ぎて倒れないようにって、赤ちゃんが気を遣ってるんだ」
「なんだ、それ」
「だって長い時間かかったら絶対に部長の方が倒れちゃいそうなんだもん。だから赤ちゃんは早く出てこようと頑張ってるとか」
「もしかしてせっかちなチビ助ってことじゃないのか?」
「えー……せっかちな子よりパパ思いのいい子でしょー?」
部長はちょっと思案顔でお腹を撫でた。
「ママのお腹の中が一番平和で安心できる場所なんだぞ、チビ助。なにもそんなに急いで出て来なくても良いのに、お前……」
親孝行もほどほどにしないとってお腹に話しかけている。その親孝行の部分を過保護に差替えて部長に言ってあげたい気分になったのは私だけの秘密ね。
それからは痛みがある時とそうでない時が交互にやってきて、そのたびに部長が腰をさすってくれたり励ましたりしてくれてた。実のところ私、もしかして酷いこと言っちゃわないかって自分では心配してたんだよね、出産の時に旦那さんに悪態ついちゃったなんていう話を聞いていたから。だけど幸いなことに部長を罵ることはなかったみたいで、その点は後で思い出して安堵しちゃった。
そんな訳で先生の言ったとおり、その日の昼過ぎには海藤家に新しい家族がやってきました。
+++++
「ねえ、部長のあのニマニマ笑いは何とかならないわけ?」
入院中の私の元にやってきた千夏ちゃんの第一声がこれ。
「何とかって言われても仕方ないよ、初めての子供なんだもん」
退院を明日に控えて今日はお互いのお母さんが自宅であれやこれやと準備をしてくれている筈で、部長はその準備の為の運転手として駆り出されている。パワフルな二人に挟まれても変わらず超御機嫌なのはやはり息子が産まれて浮かれているからだよね。それは職場でも同じらしい。
「けどこうやって赤ちゃんみたらニマニマは納得は出来るね。男の子だけど愛海によく似てるもん」
「そお?」
「うん」
うちのお母さんと神戸のお義母さんも二人して、鼻は正樹さんかしら口元は愛海さんかしらとか好き勝手なこと言ってたっけ。私は部長に似ている気がするんだけどなあ。オッパイを飲んで満足したのかスースー寝ている坊やを見下ろす。
「愛海もなんだか急に母親の顔になったよね」
「そうなのかな、あまり意識してないけど」
「絶対にママの顔になってるよ」
「そう言われると嬉しいかも」
なんだか私も赤ちゃんほしくなってきたよぉって呟く千夏ちゃん。確か高校から付き合っている彼氏さんいたよね、同い年で医学部の四年生だったっけ? 結婚は彼氏が正式にお医者さんになってからって話しだし、赤ちゃんはもう少し先だね。
「名前はもう決まったんだよね?」
「うん。和樹っていうの。平和の和に、樹木の樹。男の子だったら部長の名前から一文字貰うってのは決めていたから」
「過保護な男の子にならなければ良いけど」
「あはは、それは私も考えたよ」
カノジョのことを大事にする子には育ってほしいけど度を過ぎた過保護な性格にはなって欲しくないなあ。部長も無事に出産を終えた後は少しましになったみたいだけど、たとえば二人目とか妊娠しても今回みたいになるんだったらちょっと困っちゃうかもしれない。
「結局のところ部長は出産に立ち会えたの?」
「ううん。外で待っててもらったよ。なんだか真っ青な顔してたし、途中で倒れちゃったら困るから先生が分娩室の外で待ってなさいって締め出しちゃったの」
「なるほどね。ねえ、自宅に戻って落ち着いたら皆で遊びに行って良い?」
「うん、是非とも」
その日の夜、ちょうどおっぱいをあげている時にお母さん達を自宅に送り届けた部長が顔を出した。
「おかえり。お母さん達、どうだった?」
「さすが経験者だな、あっという間に必要なものを揃えたぞ。こっちはただ荷物持ちでついて回っただけだった」
「二人ともパワフルだもんねえ」
部長はおっぱいを一生懸命に飲んでいる和樹の頭をそっと撫でた。
「食欲もりもりだな」
「うん。昼間もね、私のだけじゃ足りないみたいで別にミルク作ったんだよ」
「へえ……」
「あ、千夏ちゃんが、ニマニマ笑うの何とかしろって」
「瀬能が? そんな顔してたか?」
「らしいよ?」
きっと長野部長相手に親馬鹿発言を連発してるんだろうなあってことは容易に想像がつくよ。年をとってからできた子供に対しては誰もが似たような感じになるらしい。それは昨日病室に来てくれた奈緒先生も言ってたっけ。
「皆、真面目な海藤部長のイメージが崩壊するから見たくないんだってさ」
「ふむ」
まあうちの企画開発部に限って言えば私の妊娠期間中にそんなのは見事に崩壊しちゃってたみたいだけどね。
「どうした?」
産休に入って暫くして、夕飯の準備をしている時に足元にふと目をやって思わず声をあげちゃった。キッチンで背中合わせで立っていた部長がビクッとなって慌てて振り返る。長野部長とお局様に部長の過保護っぷりは見ていると苛々する、そのうち愛海ちゃんが爆発するぞって厳重注意を受けてから勤めて冷静な振りをしているんだけど、もうバレバレだよ、しかも部長ったらビクビクしすぎ。
「つま先、お腹のせいで見えなくなって……」
これは自分で足の爪を切れなくなった時よりもショックだー。
「そのことか。脅かすなよ、破水したのかと思った……」
「そりゃいつ起きてもおかしくはないけど、部長、ビクビクしすぎー」
「仕方がないだろ。お前がどっしり構えすぎなんだ」
「そうかなあ」
私だって初めてのことだからドキドキしてるんだよ? あ、そう言えば胃を圧迫していた感じがなくなってご飯が食べられるようになったのって、赤ちゃんが下がってきたってことだよね。いよいよって感じ? けど、それを部長に言ったらきっとパニックだよね、黙ってよう。
「何ともないのか?」
「うん。なんとなく腰がだるい感じがするけど、痛いとか無いよ? あ、そう言えば今朝辺りからお腹がゆるい感じがするけど、それって何か関係あるのかな」
「ゆるいって……そのう、便秘の反対ってことか?」
「うん、そういう感じ」
お腹でも冷やしたかなと思って温かくて消化の良いものを献立にしてるんだけど。なんだろう、普段はこんなことないんだけどな。
「予定日は十一日だよな?」
「うん。あと一週間ちょっとだね。あくまでも目安だって先生は言ってたけど。部長、今からそんなにソワソワしていたら産まれるまでに疲れちゃうよ?」
「分かってるが、こればっかりは自分でもどうしようもない」
そんな状態で寝る前のお腹のマッサージも何処か上の空って感じだった。私より部長がそんなに緊張しちゃってどうするんだろう。産むのは私なんだけどなー。
「他のところの旦那さんも部長みたいになるのかなあ……なんだか部長だけが飛び抜けて過保護で心配性な気がするんだけど」
「多分、俺が飛び抜けてるんだと思う……」
「自覚あるならもうちょっと何とかならないの?」
「ならないから困ってるんだろ」
本当に困ったパパさんですねえ、君はこんな超過保護男にならないようにね?とこっそりとお腹の中の赤ちゃんに囁く。
そして、深夜にそれは突然やってきた。
「……ぶちょー?」
急な痛みに目が覚めて隣で寝ていた部長に声をかけた。
「どうした?」
「なんだか来ちゃったみたい」
「来た? 来たって陣痛?」
「うん……あ……」
パジャマのズボンが濡れていく感触に思わず下を見る。
「……これって破水、かも?」
「病院に連絡してくる」
「うん、お願い」
部長が電話をする為に部屋を出たところで、お互いのスマホに病院の電話番号を登録していたことに気がついた。慌てちゃってスッカリ頭から抜け落ちてちゃってた。痛みがひいたので布団から出ると濡れた布団とシーツをベッドから引き剥がす。そしてタオルを取ってきて少し濡れてしまったマットを拭いた。もしかして昨日の昼間から妙に腰がだるかったのって陣痛だったのかな……。
「愛海、病院の方は来て下さいってことだ……ってそんなことは後で俺がしておくから出掛ける準備をしないと」
「でも拭いておかないとシミになっちゃうから」
「ちゃんすとるから。着替えは?」
「えっと病院に持っていく荷物と一緒に置いてあるよ」
入院する時に持っていくつもりだったバックがしまってある場所は部長も知っていたので直ぐにバッグと着替えを持ってきてくれた。それから自分も着替え始める。
「痛みは?」
「今は平気」
「そうか」
「……ポッキーの日が誕生日ってのダメみたいだね。先生は狙ってたみたいだけど」
「今は読書週間だから本好きな子に育つかもな」
「意外なこと知ってるんだ……」
「昨日、立ち寄った本屋に広告が出てた」
「なーんだ、すごーいって感心したのにぃ」
「そりゃすまないな」
ガッカリだよって言ったら笑われちゃった。着替えを終えて出ようとした時に再び痛みがやってきたので、その痛みが引くのを待ってから出かけることにする。
「こんなに急にくるものなのかなあ」
「俺に聞くなよ? 俺も初めてなんだから」
「どのぐらいで産まれてくるかなー、赤ちゃんに早く会いたいね」
車で病院まで二十分程度。途中で痛くなってきちゃったけど運転している部長が慌てて事故起こしたら洒落にならないから黙って我慢する。信号待ちをしている時に手を握ってくれた様子からして気がついていたみたいだけど。
病院につくと先生が待っていた。あれ? どうして?
「今日は当直でね。さっきまでもう一人の妊婦さんの出産に立ち会ってたの。終わりかけの頃に海藤さんから電話があっていいタイミングだったわ」
「そちらの妊婦さんも無事に?」
「ええ。元気な女の子よ」
内診を終えた私は個室に入れてもらえた。陣痛のタイミングからしてもしかしたら今日中に産まれるかもよ?って先生が言ったので、そんなに早く?って驚いちゃった。会社で聞いた話だと陣痛が始まってもなかなか出てきてくれないことが多いみたいだし? 私の場合はどうやら違うみたい。なんでだろうって考えた末に出た理由は……。
「……分かった。パパが心配し過ぎて倒れないようにって、赤ちゃんが気を遣ってるんだ」
「なんだ、それ」
「だって長い時間かかったら絶対に部長の方が倒れちゃいそうなんだもん。だから赤ちゃんは早く出てこようと頑張ってるとか」
「もしかしてせっかちなチビ助ってことじゃないのか?」
「えー……せっかちな子よりパパ思いのいい子でしょー?」
部長はちょっと思案顔でお腹を撫でた。
「ママのお腹の中が一番平和で安心できる場所なんだぞ、チビ助。なにもそんなに急いで出て来なくても良いのに、お前……」
親孝行もほどほどにしないとってお腹に話しかけている。その親孝行の部分を過保護に差替えて部長に言ってあげたい気分になったのは私だけの秘密ね。
それからは痛みがある時とそうでない時が交互にやってきて、そのたびに部長が腰をさすってくれたり励ましたりしてくれてた。実のところ私、もしかして酷いこと言っちゃわないかって自分では心配してたんだよね、出産の時に旦那さんに悪態ついちゃったなんていう話を聞いていたから。だけど幸いなことに部長を罵ることはなかったみたいで、その点は後で思い出して安堵しちゃった。
そんな訳で先生の言ったとおり、その日の昼過ぎには海藤家に新しい家族がやってきました。
+++++
「ねえ、部長のあのニマニマ笑いは何とかならないわけ?」
入院中の私の元にやってきた千夏ちゃんの第一声がこれ。
「何とかって言われても仕方ないよ、初めての子供なんだもん」
退院を明日に控えて今日はお互いのお母さんが自宅であれやこれやと準備をしてくれている筈で、部長はその準備の為の運転手として駆り出されている。パワフルな二人に挟まれても変わらず超御機嫌なのはやはり息子が産まれて浮かれているからだよね。それは職場でも同じらしい。
「けどこうやって赤ちゃんみたらニマニマは納得は出来るね。男の子だけど愛海によく似てるもん」
「そお?」
「うん」
うちのお母さんと神戸のお義母さんも二人して、鼻は正樹さんかしら口元は愛海さんかしらとか好き勝手なこと言ってたっけ。私は部長に似ている気がするんだけどなあ。オッパイを飲んで満足したのかスースー寝ている坊やを見下ろす。
「愛海もなんだか急に母親の顔になったよね」
「そうなのかな、あまり意識してないけど」
「絶対にママの顔になってるよ」
「そう言われると嬉しいかも」
なんだか私も赤ちゃんほしくなってきたよぉって呟く千夏ちゃん。確か高校から付き合っている彼氏さんいたよね、同い年で医学部の四年生だったっけ? 結婚は彼氏が正式にお医者さんになってからって話しだし、赤ちゃんはもう少し先だね。
「名前はもう決まったんだよね?」
「うん。和樹っていうの。平和の和に、樹木の樹。男の子だったら部長の名前から一文字貰うってのは決めていたから」
「過保護な男の子にならなければ良いけど」
「あはは、それは私も考えたよ」
カノジョのことを大事にする子には育ってほしいけど度を過ぎた過保護な性格にはなって欲しくないなあ。部長も無事に出産を終えた後は少しましになったみたいだけど、たとえば二人目とか妊娠しても今回みたいになるんだったらちょっと困っちゃうかもしれない。
「結局のところ部長は出産に立ち会えたの?」
「ううん。外で待っててもらったよ。なんだか真っ青な顔してたし、途中で倒れちゃったら困るから先生が分娩室の外で待ってなさいって締め出しちゃったの」
「なるほどね。ねえ、自宅に戻って落ち着いたら皆で遊びに行って良い?」
「うん、是非とも」
その日の夜、ちょうどおっぱいをあげている時にお母さん達を自宅に送り届けた部長が顔を出した。
「おかえり。お母さん達、どうだった?」
「さすが経験者だな、あっという間に必要なものを揃えたぞ。こっちはただ荷物持ちでついて回っただけだった」
「二人ともパワフルだもんねえ」
部長はおっぱいを一生懸命に飲んでいる和樹の頭をそっと撫でた。
「食欲もりもりだな」
「うん。昼間もね、私のだけじゃ足りないみたいで別にミルク作ったんだよ」
「へえ……」
「あ、千夏ちゃんが、ニマニマ笑うの何とかしろって」
「瀬能が? そんな顔してたか?」
「らしいよ?」
きっと長野部長相手に親馬鹿発言を連発してるんだろうなあってことは容易に想像がつくよ。年をとってからできた子供に対しては誰もが似たような感じになるらしい。それは昨日病室に来てくれた奈緒先生も言ってたっけ。
「皆、真面目な海藤部長のイメージが崩壊するから見たくないんだってさ」
「ふむ」
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