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16.少し甘く見すぎていたのでは?
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速いくて、重い。ミツハが最初に持った印象はそれだった。本来なら、肉体強化を行う能力はエナジーを1度肉体の必要箇所に集める必要があるため、一瞬動きが遅れることがある。たが今回の対象である稲城カヤノは、その挙動を一度も見せずにフルパワーで向かってくる。数日の逃亡による疲労が残っている、との話だったが、まるでそれを感じさせない動きだった。
「...ハッ!」
稲城カヤノは右に降った拳の勢いを乗せたまま回転し、左手で裏拳を放った。ブオンッ!と空を切る音がミツハの頭上を駆け抜ける。
「まさか一人で来るとは...誰の命令か分かりませんが少し甘く見すぎていたのでは?」
稲城カヤノに今のところ息を切らせている様子はない。
「生憎と人手不足でな、あんたの相手は俺1人で十分だと判断されたわけだ」
一度距離をとったミツハは右手に正宗を構えつつ、左足のホルスターからMP5Kを引き抜く。
【躱せるものなら躱してみろ】
ストッパーを外し、引き金に指をかけた瞬間
ドッ、と地面を蹴る音が聞こえた。
間合いを詰められすぎたとミツハが考えた時には体が宙に浮いていた。
右拳をミツハの腹に打ち込んだ稲城カヤノは続けて体をひねりつつ左足で蹴りをねじ込んだ。肉体強化の恩恵もあり、ミツハは数メートル吹き飛んだ。
学校の校庭という広い空間では勢いを止めるものはなかった。
「ガハッッ!!」
猛烈な吐き気を堪え、何とか体制を立て直そうとする。幸い臓器などには影響は無さそうだが、足にうまく力が入らない。
稲城カヤノは既に地面を蹴り、追撃を行おうとしている。続く一撃をなんとか転がり避けたミツハは、正宗を横に凪ぐ。
稲城カヤノの左腕に小さな切り傷が出来た。
【MP5Kは...吹っ飛んだ時に手放しちまったか、思えばほとんど使ったことないんじゃないか?】
自分の武装を再確認する。刀の他に、フラググレネードが2つ。ナイフが1本。能力が使えるならもう少し幅が広がるか。
「この...っ!」
稲城カヤノは拳、蹴りを続けて振りかざしていく。間一髪のところでギリギリ受け流してはいるが、反撃に移れない。だが肉体強化を続けていることで、稲城カヤノのエナジー消費は中々のものだろう。加えて彼女の戦い方には統一性が無い。これは今までの戦闘経験の乏しさを表している。付け入るところと言えばそのあたりか。
【とはいえ、これじゃどっちみちジリ貧だ...!なんとか気を逸らすには...?】
先程、アビリティリバティと名乗ったミツハに「誰の命令か分かりませんが」と稲城カヤノは返していた。母親が依頼主であるということを彼女は知らない。
「今回の依頼は、あんたの母親から受けたものだ!抵抗せず、下る気はないか!?」
攻撃を受けつつ、ミツハは叫ぶ。
すると明らかに稲城カヤノの攻撃の手が弱まった。
「...嘘」
「嘘に決まってる。あの女は...あの女は私を利用したいだけ!!こんな能力#モノを私に押し付けて...!!」
一瞬の隙をついて距離をとるミツハ。どうやら稲城カヤノにとって母親は憎む対象となっているようだ。
「あんたの母親は今更村に戻そうとする気は無いそうだ。こちらの組織に来て、1度話がしたいだけだと...」
「黙れ...私はもう誰も信じない!あの女のことなど、思い出したくもないです!」
稲城カヤノにも思うところがあるのは当たり前のことである。だが、仕事は仕事。抵抗するならば、ミツハは彼女を無効化して連れ帰らなければならない。
「そうか、すまないがそれなら実力行使でいかせてもらうしかない」
「やってみて下さい。あなたに負けるようなら、村から逃げることなんて出来ない!」
夜空に、再び砂埃が舞った。
「...ハッ!」
稲城カヤノは右に降った拳の勢いを乗せたまま回転し、左手で裏拳を放った。ブオンッ!と空を切る音がミツハの頭上を駆け抜ける。
「まさか一人で来るとは...誰の命令か分かりませんが少し甘く見すぎていたのでは?」
稲城カヤノに今のところ息を切らせている様子はない。
「生憎と人手不足でな、あんたの相手は俺1人で十分だと判断されたわけだ」
一度距離をとったミツハは右手に正宗を構えつつ、左足のホルスターからMP5Kを引き抜く。
【躱せるものなら躱してみろ】
ストッパーを外し、引き金に指をかけた瞬間
ドッ、と地面を蹴る音が聞こえた。
間合いを詰められすぎたとミツハが考えた時には体が宙に浮いていた。
右拳をミツハの腹に打ち込んだ稲城カヤノは続けて体をひねりつつ左足で蹴りをねじ込んだ。肉体強化の恩恵もあり、ミツハは数メートル吹き飛んだ。
学校の校庭という広い空間では勢いを止めるものはなかった。
「ガハッッ!!」
猛烈な吐き気を堪え、何とか体制を立て直そうとする。幸い臓器などには影響は無さそうだが、足にうまく力が入らない。
稲城カヤノは既に地面を蹴り、追撃を行おうとしている。続く一撃をなんとか転がり避けたミツハは、正宗を横に凪ぐ。
稲城カヤノの左腕に小さな切り傷が出来た。
【MP5Kは...吹っ飛んだ時に手放しちまったか、思えばほとんど使ったことないんじゃないか?】
自分の武装を再確認する。刀の他に、フラググレネードが2つ。ナイフが1本。能力が使えるならもう少し幅が広がるか。
「この...っ!」
稲城カヤノは拳、蹴りを続けて振りかざしていく。間一髪のところでギリギリ受け流してはいるが、反撃に移れない。だが肉体強化を続けていることで、稲城カヤノのエナジー消費は中々のものだろう。加えて彼女の戦い方には統一性が無い。これは今までの戦闘経験の乏しさを表している。付け入るところと言えばそのあたりか。
【とはいえ、これじゃどっちみちジリ貧だ...!なんとか気を逸らすには...?】
先程、アビリティリバティと名乗ったミツハに「誰の命令か分かりませんが」と稲城カヤノは返していた。母親が依頼主であるということを彼女は知らない。
「今回の依頼は、あんたの母親から受けたものだ!抵抗せず、下る気はないか!?」
攻撃を受けつつ、ミツハは叫ぶ。
すると明らかに稲城カヤノの攻撃の手が弱まった。
「...嘘」
「嘘に決まってる。あの女は...あの女は私を利用したいだけ!!こんな能力#モノを私に押し付けて...!!」
一瞬の隙をついて距離をとるミツハ。どうやら稲城カヤノにとって母親は憎む対象となっているようだ。
「あんたの母親は今更村に戻そうとする気は無いそうだ。こちらの組織に来て、1度話がしたいだけだと...」
「黙れ...私はもう誰も信じない!あの女のことなど、思い出したくもないです!」
稲城カヤノにも思うところがあるのは当たり前のことである。だが、仕事は仕事。抵抗するならば、ミツハは彼女を無効化して連れ帰らなければならない。
「そうか、すまないがそれなら実力行使でいかせてもらうしかない」
「やってみて下さい。あなたに負けるようなら、村から逃げることなんて出来ない!」
夜空に、再び砂埃が舞った。
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