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第1章 ファスティアの冒険者
第54話 虹色の輝きを手に
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「ふっ。勝算があるようだな? 何をすればいい?」
覚悟に満ちたエルスの表情を見て、ニセルは口元を緩める。
エルスは礼を言い――部屋の中央に根づいている、降魔の杖を指さす。
杖の頭部からは巨大な掌が生え、そこに開いた大きな目玉が虚空を見つめている。闇色に染まった床からは触手が伸び、その数は徐々に増すばかりだ。
「――俺が必ず、杖を倒すッ! だからニセル。アリサを連れて、先に脱出して欲しいんだ」
エルスに抱きかかえられたアリサは、いまも苦しげに顔を歪めている。これ以上、この場に彼女を留まらせるのは危険だろう。
「ああ、わかった。いい判断だ」
ニセルは頷く。エルスは再び礼を言い、抱えていたアリサを彼に託す。
「助かるぜッ! あとは――」
――エルスが言いかけた時、洞窟内に激しい振動が走る!
杖の方を見ると――それは長く伸ばした触手を、床や天井に食い込ませようとしていた!
その内の数本が、エルスらを捕捉したかのように、こちらを向く――!
「作戦会議中だッ! 邪魔するんじゃねェ!」
エルスは敵に向かって手をかざし、呪文を唱える!
――彼の銀髪と瞳が、仄かに青い光を放つ!
「マミュゼル――ッ!」
水の精霊魔法・マミュゼルが発動し、〝杖〟を取り囲む形で、複数の魔法陣が出現する! 魔法陣からは次々と巨大な氷の結晶が生まれ、そして弾け――敵の周囲全体を、魔法の氷で包み込んだ!
分厚い氷塊の中に、動きを止めた〝降魔の杖〟が透けて見える。エルスの魔法により、あの闇の触手も魔物を生むことなく、完全に消滅してしまったようだ。
エルスは魔力素の急激な減少による目眩を感じ、しばし呼吸を整える――。
「……悪ィ、大丈夫だ。あのさ、ニセル。もし俺が――」
そこで一旦言葉を切り――エルスは冒険バッグから、〝虹色の砂粒〟が入ったビンを取り出す。エルフ族のリリィナによると、これは紛れもなく〝虹色の精霊石〟の粉末で間違いないとのことだ。
「――もし俺が、俺じゃなくなったら……。そン時は、殺してくれねェか?」
「ああ、いいだろう。約束しよう」
「へへッ、助かるぜ……ッ!――これで安心して精霊石を使えるッ!」
「ふっ。だが、必ず生きて戻って来いよ? 死んだヤツは殺せんからな」
――ニセルは優しげに言い、ニヤリと口元を上げて笑う。
「おうッ! 必ず戻るぜッ!」
エルスは力強く帰還を宣言し――そして右手に持ったビンを掲げ、魔力を込めはじめた。やがて中の砂粒は輝き、彼の右腕も虹色の光を放つ――!
「頼むッ……上手くいってくれッ……! ウオオオォォ――!」
その目映い輝きが、頂点に達した時――
エルスは気合いと共に、ビンを握り潰した!
彼の躰には虹色の粉末が降りかかり、やがて全身が変異をはじめる!
髪は逆立って光を放ち――全身が七色に輝く、宝石のような姿に変化した!
「まさか……! 精霊か……!?」
「ううっ……。エル……ス……?」
虹色の光に照らされ、アリサは眩しげに目を開ける。
精霊と化したエルスは宙に浮いたまま、アリサの方を振り返った。
「アリサ、悪ィけど外で待っててくれよなッ! すぐに杖を片づけるからさ!」
「うん……。わかった。無事に戻ってきてね?」
「ああッ!」
彼らの背後では、氷の塊から破裂音があがり――
次第に亀裂も増えてゆく!
「おおっと! もう時間がねェな!」
――エルスは二人に手をかざし、呪文を唱える!
「リフレイト――ッ!」
風の精霊魔法・リフレイトが発動し、ニセルの足元に浮遊する魔法陣が出現する!
そして魔法陣から伸びた光が、彼らを風の結界で包み込んだ!
「ニセル、頼んだッ!――なんとか飛び方は慣れてくれ!」
「ふっ。任せておけ。またあとで会おう」
ニセルは壁際の――動かなくなった旧友を一瞥し、うまく移送魔法を制御しながら飛び去っていった。彼は魔法が使えないらしいが、以前は風の魔法の心得があったのかもしれない。
二人を見送ったエルスは、降魔の杖へと向き直る。
すでに氷には無数のヒビが入り、今にも砕け散りかけていた――!
「さあ、待たせたなッ! そンじゃ、最終決戦といこうぜ――ッ!」
覚悟に満ちたエルスの表情を見て、ニセルは口元を緩める。
エルスは礼を言い――部屋の中央に根づいている、降魔の杖を指さす。
杖の頭部からは巨大な掌が生え、そこに開いた大きな目玉が虚空を見つめている。闇色に染まった床からは触手が伸び、その数は徐々に増すばかりだ。
「――俺が必ず、杖を倒すッ! だからニセル。アリサを連れて、先に脱出して欲しいんだ」
エルスに抱きかかえられたアリサは、いまも苦しげに顔を歪めている。これ以上、この場に彼女を留まらせるのは危険だろう。
「ああ、わかった。いい判断だ」
ニセルは頷く。エルスは再び礼を言い、抱えていたアリサを彼に託す。
「助かるぜッ! あとは――」
――エルスが言いかけた時、洞窟内に激しい振動が走る!
杖の方を見ると――それは長く伸ばした触手を、床や天井に食い込ませようとしていた!
その内の数本が、エルスらを捕捉したかのように、こちらを向く――!
「作戦会議中だッ! 邪魔するんじゃねェ!」
エルスは敵に向かって手をかざし、呪文を唱える!
――彼の銀髪と瞳が、仄かに青い光を放つ!
「マミュゼル――ッ!」
水の精霊魔法・マミュゼルが発動し、〝杖〟を取り囲む形で、複数の魔法陣が出現する! 魔法陣からは次々と巨大な氷の結晶が生まれ、そして弾け――敵の周囲全体を、魔法の氷で包み込んだ!
分厚い氷塊の中に、動きを止めた〝降魔の杖〟が透けて見える。エルスの魔法により、あの闇の触手も魔物を生むことなく、完全に消滅してしまったようだ。
エルスは魔力素の急激な減少による目眩を感じ、しばし呼吸を整える――。
「……悪ィ、大丈夫だ。あのさ、ニセル。もし俺が――」
そこで一旦言葉を切り――エルスは冒険バッグから、〝虹色の砂粒〟が入ったビンを取り出す。エルフ族のリリィナによると、これは紛れもなく〝虹色の精霊石〟の粉末で間違いないとのことだ。
「――もし俺が、俺じゃなくなったら……。そン時は、殺してくれねェか?」
「ああ、いいだろう。約束しよう」
「へへッ、助かるぜ……ッ!――これで安心して精霊石を使えるッ!」
「ふっ。だが、必ず生きて戻って来いよ? 死んだヤツは殺せんからな」
――ニセルは優しげに言い、ニヤリと口元を上げて笑う。
「おうッ! 必ず戻るぜッ!」
エルスは力強く帰還を宣言し――そして右手に持ったビンを掲げ、魔力を込めはじめた。やがて中の砂粒は輝き、彼の右腕も虹色の光を放つ――!
「頼むッ……上手くいってくれッ……! ウオオオォォ――!」
その目映い輝きが、頂点に達した時――
エルスは気合いと共に、ビンを握り潰した!
彼の躰には虹色の粉末が降りかかり、やがて全身が変異をはじめる!
髪は逆立って光を放ち――全身が七色に輝く、宝石のような姿に変化した!
「まさか……! 精霊か……!?」
「ううっ……。エル……ス……?」
虹色の光に照らされ、アリサは眩しげに目を開ける。
精霊と化したエルスは宙に浮いたまま、アリサの方を振り返った。
「アリサ、悪ィけど外で待っててくれよなッ! すぐに杖を片づけるからさ!」
「うん……。わかった。無事に戻ってきてね?」
「ああッ!」
彼らの背後では、氷の塊から破裂音があがり――
次第に亀裂も増えてゆく!
「おおっと! もう時間がねェな!」
――エルスは二人に手をかざし、呪文を唱える!
「リフレイト――ッ!」
風の精霊魔法・リフレイトが発動し、ニセルの足元に浮遊する魔法陣が出現する!
そして魔法陣から伸びた光が、彼らを風の結界で包み込んだ!
「ニセル、頼んだッ!――なんとか飛び方は慣れてくれ!」
「ふっ。任せておけ。またあとで会おう」
ニセルは壁際の――動かなくなった旧友を一瞥し、うまく移送魔法を制御しながら飛び去っていった。彼は魔法が使えないらしいが、以前は風の魔法の心得があったのかもしれない。
二人を見送ったエルスは、降魔の杖へと向き直る。
すでに氷には無数のヒビが入り、今にも砕け散りかけていた――!
「さあ、待たせたなッ! そンじゃ、最終決戦といこうぜ――ッ!」
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