寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank

文字の大きさ
20 / 25

第20話 クライブ

しおりを挟む
「ルグラン子爵令嬢、さぁ水を飲むんだ」

目の前のワインを一気に飲み干した彼女の様子がおかしい。
こちらを見る目は潤んでいて、頬に赤みがさし、全体的にぽわ~んとしている。
そして、笑っている。
これは、間違いなく酔っているだろう。

とにかくアルコールを中和させようと水を飲ませ、その間にも給仕に水を注いでもらう。

「ふふっ、大丈夫ですよ」

ニコニコして笑いながらグラスに口をつけて、大きな瞳がこちらを向く。

こんな彼女の姿、誰にも見せられない。     
自分以外には見せたくない、そう強く思った。



婚約者以外の女性と親しくなり、勝手に婚約破棄をし、激怒したベルナール侯爵である父上から絶縁され辺境で騎士として今までやってきた。

婚約に対して前向きに考えてくれているルグラン子爵令嬢に、過去の出来事を話した。
俺の耳には入らないが、団長に多少の噂話になっているから自分の口から伝えておけと、アドバイスを受けたのもある。

でも、この説明が世間の噂する内容と相違があることを俺は忘れていた。

この時は、学生時代に婚約者が噂話[男を誑かす女]を信じて婚約解消された過去を持つルグラン子爵令嬢が、自分の話を聞いてどう感じるか。
そのことで頭が一杯だった。

「・・・・・・そうですか」

それしか言わない彼女に、そして、会う度に色々な質問をしてくる明るい彼女に安心しきっていた。
5度目の外出時に、ルグラン子爵令嬢から『婚約の話、お受けします。よろしくお願いします』と了承を得て、舞い上がるような気分になった。


そして、ルグラン子爵にご挨拶へ行き、3ヶ月後に結婚した。


毎日同じベッドで最愛の女性シドニーと愛し合い、目覚めれば隣に眠る愛おしい存在が居る。
ただただ幸せを感じていた。

仕事を続けているシドニーを毎朝離宮まで送り届け、可能な限り帰宅時間も合わせた。
そんな姿を見て、幼い頃からの俺を知るサンディーが嬉し涙を流しているのを見かけた。

全てが順調に進んでいた。 



「2年ぶりの夜会なの」

夜会で嫌な思いばかりしてきたシドニーは、明日の夜会が不安でため息ばかりついている。

「俺は12年、いや、13年ぶりだ」

明日は、そばにいるから。
大丈夫。

ノックス男爵夫妻として出席しなければならないその夜会で、もう二度と会うことはないだろう、その存在すら忘れかけていた人物と顔を合わせることになるなんて、この時は思いもしなかった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

君に愛は囁けない

しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。 彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。 愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。 けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。 セシルも彼に愛を囁けない。 だから、セシルは決めた。 ***** ※ゆるゆる設定 ※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。 ※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

悪役令嬢として、愛し合う二人の邪魔をしてきた報いは受けましょう──ですが、少々しつこすぎやしませんか。

ふまさ
恋愛
「──いい加減、ぼくにつきまとうのはやめろ!」  ぱんっ。  愛する人にはじめて頬を打たれたマイナの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。  甘やかされて育ってきたマイナにとって、それはとてつもない衝撃だったのだろう。そのショックからか。前世のものであろう記憶が、マイナの頭の中を一気にぐるぐると駆け巡った。  ──え?  打たれた衝撃で横を向いていた顔を、真正面に向ける。王立学園の廊下には大勢の生徒が集まり、その中心には、三つの人影があった。一人は、マイナ。目の前には、この国の第一王子──ローランドがいて、その隣では、ローランドの愛する婚約者、伯爵令嬢のリリアンが怒りで目を吊り上げていた。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

処理中です...