愛しのあなたにさよならを

MOMO-tank

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第11話

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目の前には、
女性が私の顔を見ながら膨らんだお腹を撫でている。

そして、その女性の耳には・・・・・・
ローガンの瞳の色によく似た宝石が、
ついていた。


“彼から贈られたアメジストの耳飾りを見て、いつも彼との情事を思い出す”

私は左手に持っていた手紙を握りしめた。


気づけは、私は執務室を出て歩いていた。

女性の声とマヤが何度も呼ぶ声が聞こえた気もしたが、
私はそのまま歩き続けた。



途中で使用人や護衛騎士が私を追ってきたのを・・・・・・

どうしたんだっけ・・・・・・・・・





大きな公園に行き着いて、

ベンチに座って、

人や鳥を眺めていたーー

視界にはいるものを、ただ、

眺めていたーーー



強い日が差して人が多かったはずの公園は、
いつしか雲行きがあやしくなると人は疎らになり、
本格的に雨が降り出すと誰もいなくなった。

明るかった空も暗くなり、
遠くからゴロゴロと音が聞こえてきた。
音が近づくにつれ、雨脚も強まってきた。
 

雨に打たれていると、
全てをきれいに洗い流されているような感覚になり、
不思議と心地よかった。



幼い頃ーー
雨の境界線をこの目で見たくて、空の色を見ながら雨の中を走った。

雨が降る度に、何度も何度も走った。

『バカなことするな!
お前が風邪ひくと俺が怒られるんだ』

兄に言われても、私は走った。
ただ、夢中に走った。

でも、結局一度も境界線を目にすることはなかったっけ。



幼い自分が雨の中を走っている姿が目に浮かぶ。

懐かしいなーー


次第に・・・・・・睡魔に襲われたようにぼんやりとして、意識が朦朧としてくる。


目を閉じて意識が遠のく中、ローガンが私を呼ぶ声が聞こえた気がした。





「・・・・・・ん・・・」

・・・・・・朝?

ベッドから起きあがろうと体を動かすと、頭がズキズキと痛んだ。

「・・・っ、痛ぁ・・・」

声を出すと喉も痛いし、身体も熱かった。
・・・・・・風邪?
そういえば・・・・・・。

あれだけ雨に打たれたら、風邪もひくだろう。 
見慣れた部屋はウォーカー伯爵家の客間だった。
喉が痛くて何か飲みたい私は立ち上がり、部屋を出て廊下をウロウロしているのを侍女に見つかり、すぐにベッドに戻された。

「お前、丸一日目を覚まさなかったんだぞ」

とにかく良かった。と、兄にしては珍しく心配してくれているようだった。

誰が公園から運んでくれたか聞くと、偶々通りかかった騎士だと教えてくれた。
 
お礼はしておいたから心配するな。  
と、消化の良い野菜スープを置いていってくれた。

それから二日間はベッドの住人になった。
四日目には熱も下がり、普通の生活に戻った。
五日目からは鍛錬を開始、ステーキを食べられるまでに回復した。



「ジャスミン、アイツとの離婚が正式に認められた」

六日目の朝、兄に報告を受けた。





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