11 / 20
【番外編】ほしこよい 後編⠀
しおりを挟む
「付き合いませんっ――!」
一瞬固まった後で、きっぱりと否定した立花大雅。
「そう、なの?」
「『今は部活、バレー部に集中したいから』って、いつも通り断った」
「そっか――立花くん、『「次期正セッターの座」を、他の部員と争ってる』って言ってたよね?」
「うん!」
高木咲花の明るい声に、ほっと笑いながら大きく頷く。
「高木さんは、家庭科部だよね?
俺のせいで部活行くの、遅くなってごめん! 後やっとくから、先に行って?」
申し訳なさそうな言葉に、
「大丈夫! 今日は顧問の先生がいないから、休みなんだ」
ニッコリ返したけど――さっきの『いつも通り』って言葉が、『告白され慣れてます』って感じで、ちょっとカチンと来たから。
「立花くんは、きょうもモテモテでした」
わざとはっきり呟きながら、学級日誌にシャーペンを走らせる。
「ちょ、高木さんっ! 今のまさか――『今日の出来事』に、書かないよね!?」
「んー、どーしよっかな?」
にんまり笑いながら、幼馴染の慌てた顔に向かって、日誌をばっと開いて見せた。
「『理科の授業、『星の動き』が楽しかったです。今夜は「星今宵」。星空が見えるといいですね』……『ほしこよい』? って、何?」
日誌を読み上げた大雅が、少し傾げた首の後ろに右手を当てて尋ねる。
「『七夕』の別名。キレイな言葉でしょ? おばあちゃんに教えてもらったんだ!」
『首痛いポース』に見惚れながら、ちょっと得意気に、咲花は答えた。
「あっ、今日は7月7日かぁ……」
『今気が付いた』と日誌の日付を見下ろす、ファッション雑誌に載っていそうな横顔に、
「そうだ! 今夜うちの商店街で、『七夕まつり』があるんだよ?」
ワクワクと、高木玩具店の孫娘は告げた。
「へぇ――お祭りって、屋台とか?」
「屋台も出るし、各店舗が目玉商品を、お手頃価格で提供するし!」
「なるほど?」
「それにウチの店では、おばあちゃんとわたしが、浴衣で接客します!」
ばーんっ!と、指2本を立てた右手を上げて発表した、『七夕まつりの目玉』。
「なるほ――ゆか、た……?」
黒板をキレイに消した後、教室中の机と椅子を揃えながら、気の無い返事を返していた、大雅の動きがピタリと止まり。
ぎぎっと壊れたロボットの様に、ぎこちなく振り向いた。
「そうだよ! めっちゃレアな『おばあちゃんの浴衣姿』、立花くんも見たいよねっ!?」
『よっしゃ、食いついた!』と、目をキラーンと輝かせた咲花が、ここぞとばかりに言葉を重ねて。
「いや、ばあちゃんのは特に……」
「杏ちゃんもお母さんと、一時帰国してるお父さんと一緒に来るって言ってたし! それにあれやるよ、『ルービックキューブ大会』!」
ぼそぼそと否定する、大雅の声をかき消すように、びしりと宣言した。
「ほほう――それは、『前回王者』の俺に対する挑戦状かな?」
くいっと、かけていないメガネを押し上げる仕草をした大雅の、ダークブルーの瞳がキラリと輝く。
「そぉ! 10秒03! 王者の記録に、集え挑戦者!大会』。
もちろん――キングも出るでしょ?」
「出ましょう……!」
闘志丸出しで拳を握る姿に、『可愛いなぁ……』と、咲花はこっそり口角を上げた。
きっと、月野先輩は知らない。
一見クールな立花くんが、負けず嫌いで、ちょっと天然なところを。
家族思いで、特に妹の杏ちゃんに弱いところ。
それから――うちのおばあちゃんが、大好きなところも。
「いつか、おばあちゃんに勝てるといいな」
こっそり囁いたら、
「ん? 何か言った、高木さん?」
明るく透ける茶色の髪を揺らしながら、きょとんと首を傾げる。
「ううん。今夜は晴れるといいなって!」
「――だね?」
天の川を待ちわびるように、顔を見合わせて笑う、高木玩具店の乙姫と天然彦星。
2人が『両片思い』に気付くのは、まだ少し先のお話。
一瞬固まった後で、きっぱりと否定した立花大雅。
「そう、なの?」
「『今は部活、バレー部に集中したいから』って、いつも通り断った」
「そっか――立花くん、『「次期正セッターの座」を、他の部員と争ってる』って言ってたよね?」
「うん!」
高木咲花の明るい声に、ほっと笑いながら大きく頷く。
「高木さんは、家庭科部だよね?
俺のせいで部活行くの、遅くなってごめん! 後やっとくから、先に行って?」
申し訳なさそうな言葉に、
「大丈夫! 今日は顧問の先生がいないから、休みなんだ」
ニッコリ返したけど――さっきの『いつも通り』って言葉が、『告白され慣れてます』って感じで、ちょっとカチンと来たから。
「立花くんは、きょうもモテモテでした」
わざとはっきり呟きながら、学級日誌にシャーペンを走らせる。
「ちょ、高木さんっ! 今のまさか――『今日の出来事』に、書かないよね!?」
「んー、どーしよっかな?」
にんまり笑いながら、幼馴染の慌てた顔に向かって、日誌をばっと開いて見せた。
「『理科の授業、『星の動き』が楽しかったです。今夜は「星今宵」。星空が見えるといいですね』……『ほしこよい』? って、何?」
日誌を読み上げた大雅が、少し傾げた首の後ろに右手を当てて尋ねる。
「『七夕』の別名。キレイな言葉でしょ? おばあちゃんに教えてもらったんだ!」
『首痛いポース』に見惚れながら、ちょっと得意気に、咲花は答えた。
「あっ、今日は7月7日かぁ……」
『今気が付いた』と日誌の日付を見下ろす、ファッション雑誌に載っていそうな横顔に、
「そうだ! 今夜うちの商店街で、『七夕まつり』があるんだよ?」
ワクワクと、高木玩具店の孫娘は告げた。
「へぇ――お祭りって、屋台とか?」
「屋台も出るし、各店舗が目玉商品を、お手頃価格で提供するし!」
「なるほど?」
「それにウチの店では、おばあちゃんとわたしが、浴衣で接客します!」
ばーんっ!と、指2本を立てた右手を上げて発表した、『七夕まつりの目玉』。
「なるほ――ゆか、た……?」
黒板をキレイに消した後、教室中の机と椅子を揃えながら、気の無い返事を返していた、大雅の動きがピタリと止まり。
ぎぎっと壊れたロボットの様に、ぎこちなく振り向いた。
「そうだよ! めっちゃレアな『おばあちゃんの浴衣姿』、立花くんも見たいよねっ!?」
『よっしゃ、食いついた!』と、目をキラーンと輝かせた咲花が、ここぞとばかりに言葉を重ねて。
「いや、ばあちゃんのは特に……」
「杏ちゃんもお母さんと、一時帰国してるお父さんと一緒に来るって言ってたし! それにあれやるよ、『ルービックキューブ大会』!」
ぼそぼそと否定する、大雅の声をかき消すように、びしりと宣言した。
「ほほう――それは、『前回王者』の俺に対する挑戦状かな?」
くいっと、かけていないメガネを押し上げる仕草をした大雅の、ダークブルーの瞳がキラリと輝く。
「そぉ! 10秒03! 王者の記録に、集え挑戦者!大会』。
もちろん――キングも出るでしょ?」
「出ましょう……!」
闘志丸出しで拳を握る姿に、『可愛いなぁ……』と、咲花はこっそり口角を上げた。
きっと、月野先輩は知らない。
一見クールな立花くんが、負けず嫌いで、ちょっと天然なところを。
家族思いで、特に妹の杏ちゃんに弱いところ。
それから――うちのおばあちゃんが、大好きなところも。
「いつか、おばあちゃんに勝てるといいな」
こっそり囁いたら、
「ん? 何か言った、高木さん?」
明るく透ける茶色の髪を揺らしながら、きょとんと首を傾げる。
「ううん。今夜は晴れるといいなって!」
「――だね?」
天の川を待ちわびるように、顔を見合わせて笑う、高木玩具店の乙姫と天然彦星。
2人が『両片思い』に気付くのは、まだ少し先のお話。
73
あなたにおすすめの小説
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 180万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる