【R18】モブキャラ喪女を寵愛中

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寧々ちゃんまだまだ寵愛中

君の瞳

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 正直、感謝はしてる。


 昔、兄貴が好きだって女によく利用されてた。
 いや、利用とまではいかない「お兄さんが好きなんです……」みたいな本人に直接言わないで俺に言ってくる女がよくいた。
 別に好きじゃない女でも抱けてしまうのが男ってもんで、適当に丸め込んで一発やっておけば、体の関係持った女は大抵俺に心が靡く、で、その後こっ酷く振れば俺とヤッちゃってるのもあるし、そういう女は去って行った。
 へんだ! そんな簡単に弟に体売る女なんかにうちの兄貴をやれるかよ!! 
 体張って兄貴を守るとかお前どんだけブラコンだよって思うか、知らん、きっと全国の弟ってこんなもんだぞ。
 兄貴はバラが好きだった、でも母さんが棘でケガするって庭の手入れをしてた親父が死んでバラを切った。だから一生なくならないバラを胸に彫った、中学生になったら兄貴が挨拶のキスも日本だからという理由でしてくれなくなったから、寂しくなっていつでも頬にキスしてもらえるように肩に唇を彫った。
 おう、そんくらい全国の弟なら普通だぞ、覚えておけ。

 俺に興味ない女もいたけど、でもそんなヤツも兄貴のどこが好きかと聞けば、9割が外見で、あっそ、って溜め息だね。
 ハイハイ人は見た目が100%だけど、そんなお前が好きな金髪と緑の目を兄貴は心底恨んでるんだから、絶対本人の前で褒めてやるなよな、で、結局、お前が好きだった格好いい笑顔で振られてやんの。

 1割の性格が~って言ってる女も温厚とか紳士とかレディーファーストとか? 兄貴に洋画の主人公を求めてたよ。
 知らないんだろうな、兄貴がエッグイグロ小説読んでたり、マニアックなエロ本読んだりしてるのをさ。
 まあ、結局どの女も兄貴の心には一ミリだって触れさせてもらえなかった訳。

 で、感謝してるって言うのはさ。
 多分あの姉がいなきゃ俺、いつもどおり見向きもされずに、やっぱ日本に居場所ねえなってまたどっか他の国行ってたんだろうって思う。


「たった一人の兄弟で、大切な家族なんだから大事にしないとダメしょ!」 

 ってあのモブ眼鏡は言ったんだ。
 部屋の仕切りに足引っかけちまって、不本意に姉を押し倒してしまった夜、速攻で兄貴に首根っこ掴まれて殺す言われて泣いた。

 しかもその後、本読んでる兄貴の背中にヤツは抱き付いて「辰巳さんの金髪フワフワ大好きーお目めは綺麗な緑色~」って頭もしゃもしゃしてて、おいおい禁句って思ったのに兄貴は「寧々ちゃんに好かれたくてこの色で生まれてきました」って答えてたぞ、遺伝だからそれぇ!!
 俺のお気に入りのイケメンも悉く崩壊させて、顔ぶちゅーとかやってるし、エロだグロだに関しても、寧々の方が!!! ってまさかの眼鏡光らせて絵描いて張り合ってくるのがこの女だ。

 結論から言うと、この人間の影のような社会では空気に属してる女に勝てる気がしねえと言うわけだ。
 いくらなんでも玄関で盛ってるのはどうかと思うけど(兄貴達留守でコタツで寝て待ってたら、物音がして帰って来たのかなって覗くと、もう我慢できないって俺に気付かず鍵締めたと同時にしてた)。

 悔しい事に、兄貴の色んな顔が見れて俺も嬉しくて、二人には悪いと思うけど顔見たくて頻繁に実家に寄ってしまう。
 姉は姉で俺の過去の男性歴を滾る目で聞いてくるしな、こそこそ隠れたり偏見を気にしないで話せるのってなんか新鮮だった。

 そんな眼鏡は今、こたつで俺の前に座って近くの写真屋でプリントしてきた写真を眺めて頬擦りしてニヤニヤしてる。
「キンモ」
「ですよね! 私も神様格好良すぎて胸の奥からジワジワ燃えてきて口から何か出て来てしまいそうです!」

 んー!!! って写真の兄貴にキスしてて、何てことないポテト食ってる兄貴の写真だよ、えへへ格好いいな。
 で、それをアルバム? に入れてる。

「このご時世にフォトブックとは古風だな」
「古風とまではいかないでしょう? いいじゃないですか、写真!! 写真って携帯で記録されるデータより、その時の風景も人も空気や匂いも音も、感情も、この一枚に記憶されてる感じがして好きです」
「…………」
「っていうのを、上司の彼氏さんから、この一眼レフを譲ってもらった時に言われたんです。私はもっぱらデジタル派で書いても消しても自由な世界に住んでたから。一枚に闘魂するってあまりなくて」
「どーでもいーや、その話長い?」
「!!………………辰巳さんなら全部聞いてくれるのに」
「あ? 俺兄貴じゃねえから、お前の話なんかに興味ねえんだよ」
「はいはい、ドロ君が好きなのはお兄さんだけですもんね」
 眼鏡キリッ! されて否定しても仕方ないから目逸らして、置かれたフォトブックを手に取った。

 パラパラ捲って、ちょくちょくの写真の横にくっせーーポエムみたいの書いてあんだけど、これ兄貴の字だな?
「一月に貼るのは見開きずつって決めてるんです、じゃないと直ぐに一冊終わってしまうから」
「ふーん」
 庭でプールしてたり、ペアルックで恥ずかしそうにしてたり? 兄貴が屋根裏で寝てたり、みかんの皮剥いてたり……心を許した気取っていない日常の一コマがそこには溢れていた。
 そうか、だから手紙書くのも所々休憩してたのか、きっと兄貴はただの毎日が楽しくて忙しいんだ。

【お金があるより、有名になるより、明日が来るのが楽しみでワクワクしながら眠りにつける事が何より幸せだよ】ってばーちゃんとじーちゃんが言ってた、そんなひぐらしが鳴く夕方の縁側を、ふと思い出した。

 すげぇ綺麗な夕日を背景に、振り返って手を差し出して笑う兄貴を写真を見たから。

 次のページは誰も映ってない星空だった。
 二枚目はその星空の背景に金色の指輪が光る二人の手が指切りをしていた。

「星空見に行こうって約束してたのが、実現した記念写真」
「へえ」
 そんで次の写真は星空と二人だった。

「ガイドさんの話では、普段見られないくらい数の星が出てるって、きっと辰巳さん連れて行ったからです」
「綺麗だけどさ、その横のポエムが君の瞳に乾杯って……自分で書いてて恥ずかしくねえのかな、いや格好いいな」
「さりげなく39歳出ちゃうの可愛いでしょ!」
「ね? 可愛いよね寧々ちゃん」
「あん辰巳さん」
 顔を上げたら、写真と同じように兄貴は姉の体に覆いかぶさって、見つめ合った二人はキスしてた。

 ほう、指に星でも彫ろうかなあ。

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