155 / 156
寧々ちゃんまだまだ寵愛中
お名前
しおりを挟む
何でも鑑定団に出す為保管しているお宝ではなく、現役で活躍している黒電話が我が家にはある。
骨董屋で買ったんじゃないよ、おじいちゃんが昔使ってたの。
それでこの黒電話がジリジリジリジリジリって鳴る度に私の胸はワクワクしてしまうのだ。
家電と聞いて、思い出すのはうちの家電、最新のものじゃなかったけど、ナンバーディスプレイがあって、どこからかかってきたのか分かるのが当たり前の時代に私は生まれた。
携帯だってそうだ、出る前に誰からかかって来たのか当然のように知ってる。
しかも、出たくなければ指先一つで拒否してしまえるのが、私の知ってる電話なのだ。
だから、この黒電話が初めて家に響いた時、私は火災報知器が鳴ったのかと思って、泣いてしまった。辰巳さんち木造だし、燃えちゃうって怖かった。
そしたら「大丈夫電話だよ」って額にキスされて、てっきりアンティークとして置かれているんだと思っていた黒電話に辰巳さんの手が伸びた時は感動した。
え、それ本当に声聞こえるんですか?! って大きな声で言ってしまって、辰巳さんから、シーされてしまう。
それから、家の電話が鳴るのが楽しみで仕方ない、出るまで誰がかけてきたのかわからないのもいい。
それに【はい、辰巳です】って言えるのしゅき。
休みの日のお昼、家の中でジリジリジリジリって鳴り響て、私は走って受話器を取りに行った。
辰巳さんはお庭のチューリップに水をあげてる、去年の冬に色んな球根を一緒に植えたの。
ようやく芽が出てきたよ。
受話器を持って、相手が誰だか分からないから背筋を伸ばして耳を澄ませる。
「はい、辰巳です」
【ああ、花子?】
「あ……えっと……はいそうです」
【元気にしてる?】
「はい、元気です」
【良かった、一郎は?】
「えっと……今、お庭にいます」
【焚火はダメだぞ】
「お花にお水あげてます」
【おお、そうか。二郎は?】
「今日はバイトだけど、その後夕飯食べに家に来るって……いつもの感じだと泊まるのかな?」
【そうかそうか】
「急用ですか?」
【いや、ばーさんのアクセサリーとか服とか? また出て来たから暇ならうちにおいで、欲しいもん持ってっていいから】
「はい」
【俺、明日の午前中は家にいるから】
「はい、分かりました」
【じゃあ、花子ちゃんも風邪ひかないように気を付けろな】
「はい、おじいさまも」
チンっと電話を切れば、後ろから頭をなでなでされて見上げる、辰巳さんはタオルで肘まで拭きながら首を傾げた。
「おじいちゃん?」
「はい、そうです。おばあさまの形見? が出て来たそうなので取りに来いって」
「出て来たんじゃなくて、隠してたの出したんでしょ。寧々ちゃんに渡したくてずっとしまってたんだよ」
「??」
「だっておばあちゃんが死んだの十年前の話だし。どこかに保管してたんでしょう」
「そうなんですか」
「花子ちゃんに会いたくて仕方ないんだね。素直じゃないんだから」
辰巳さんは呆れ顔で言いながら携帯いじってる。
「誰に連絡するんです?」
「ん? 二郎」
って普通に言ってるけどお!!
「その! 一郎二郎花子って何です? 私かなって思って返事しちゃってますが」
一郎さんは、ああって携帯を弄るのをやめて、私を抱っこしてそのまま縁側に移動すると腰を降ろした。
水を撒いて、きらきら光るお庭を見ながら一郎さんは教えてくれる。
「ほら、家族の中でおじいちゃんだけが日本人の顔に名前でしょ?」
「言われてみれば……」
「今は寧々ちゃんがいるけど、昔は家族で揃うと、じいちゃん以外皆この系の顔だからね浮いてたんだよ彼は」
「そうですね……お写真で見ましたが、お父さんもアジア色薄いお顔でした」
「そうそう、でさ? 名前に関してとやかく言うじいちゃんじゃなかったんだけど、自分が呼ぶとして、この顔でロドニーだエロフェイだって言うのは抵抗があるって、突然僕を一郎って呼び出したんですよ。おばあちゃんは絶対アイビーって呼んでたけど」
「ほう」
「父は【おい、太郎】って呼ばれてましたよ。母はヨシ子、もちろん正式な場では本名で呼んでましたけど」
「…………」
じっと見つめ合って、思う。
いや私は寧々でいくない?
骨董屋で買ったんじゃないよ、おじいちゃんが昔使ってたの。
それでこの黒電話がジリジリジリジリジリって鳴る度に私の胸はワクワクしてしまうのだ。
家電と聞いて、思い出すのはうちの家電、最新のものじゃなかったけど、ナンバーディスプレイがあって、どこからかかってきたのか分かるのが当たり前の時代に私は生まれた。
携帯だってそうだ、出る前に誰からかかって来たのか当然のように知ってる。
しかも、出たくなければ指先一つで拒否してしまえるのが、私の知ってる電話なのだ。
だから、この黒電話が初めて家に響いた時、私は火災報知器が鳴ったのかと思って、泣いてしまった。辰巳さんち木造だし、燃えちゃうって怖かった。
そしたら「大丈夫電話だよ」って額にキスされて、てっきりアンティークとして置かれているんだと思っていた黒電話に辰巳さんの手が伸びた時は感動した。
え、それ本当に声聞こえるんですか?! って大きな声で言ってしまって、辰巳さんから、シーされてしまう。
それから、家の電話が鳴るのが楽しみで仕方ない、出るまで誰がかけてきたのかわからないのもいい。
それに【はい、辰巳です】って言えるのしゅき。
休みの日のお昼、家の中でジリジリジリジリって鳴り響て、私は走って受話器を取りに行った。
辰巳さんはお庭のチューリップに水をあげてる、去年の冬に色んな球根を一緒に植えたの。
ようやく芽が出てきたよ。
受話器を持って、相手が誰だか分からないから背筋を伸ばして耳を澄ませる。
「はい、辰巳です」
【ああ、花子?】
「あ……えっと……はいそうです」
【元気にしてる?】
「はい、元気です」
【良かった、一郎は?】
「えっと……今、お庭にいます」
【焚火はダメだぞ】
「お花にお水あげてます」
【おお、そうか。二郎は?】
「今日はバイトだけど、その後夕飯食べに家に来るって……いつもの感じだと泊まるのかな?」
【そうかそうか】
「急用ですか?」
【いや、ばーさんのアクセサリーとか服とか? また出て来たから暇ならうちにおいで、欲しいもん持ってっていいから】
「はい」
【俺、明日の午前中は家にいるから】
「はい、分かりました」
【じゃあ、花子ちゃんも風邪ひかないように気を付けろな】
「はい、おじいさまも」
チンっと電話を切れば、後ろから頭をなでなでされて見上げる、辰巳さんはタオルで肘まで拭きながら首を傾げた。
「おじいちゃん?」
「はい、そうです。おばあさまの形見? が出て来たそうなので取りに来いって」
「出て来たんじゃなくて、隠してたの出したんでしょ。寧々ちゃんに渡したくてずっとしまってたんだよ」
「??」
「だっておばあちゃんが死んだの十年前の話だし。どこかに保管してたんでしょう」
「そうなんですか」
「花子ちゃんに会いたくて仕方ないんだね。素直じゃないんだから」
辰巳さんは呆れ顔で言いながら携帯いじってる。
「誰に連絡するんです?」
「ん? 二郎」
って普通に言ってるけどお!!
「その! 一郎二郎花子って何です? 私かなって思って返事しちゃってますが」
一郎さんは、ああって携帯を弄るのをやめて、私を抱っこしてそのまま縁側に移動すると腰を降ろした。
水を撒いて、きらきら光るお庭を見ながら一郎さんは教えてくれる。
「ほら、家族の中でおじいちゃんだけが日本人の顔に名前でしょ?」
「言われてみれば……」
「今は寧々ちゃんがいるけど、昔は家族で揃うと、じいちゃん以外皆この系の顔だからね浮いてたんだよ彼は」
「そうですね……お写真で見ましたが、お父さんもアジア色薄いお顔でした」
「そうそう、でさ? 名前に関してとやかく言うじいちゃんじゃなかったんだけど、自分が呼ぶとして、この顔でロドニーだエロフェイだって言うのは抵抗があるって、突然僕を一郎って呼び出したんですよ。おばあちゃんは絶対アイビーって呼んでたけど」
「ほう」
「父は【おい、太郎】って呼ばれてましたよ。母はヨシ子、もちろん正式な場では本名で呼んでましたけど」
「…………」
じっと見つめ合って、思う。
いや私は寧々でいくない?
10
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる