Childhood friend lover 【著 CHIYONE】

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Childhood friend lover8

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 何が嫌いかなんて言い出したらキリがないんだよ。
 ハイジの誕生日は1月1日だから一緒に年越して当たり前のように新年と誕生日のおめでとうを言ってもらえて、プレゼントだってやってるのにオレの誕生日はいつになっても覚えない。
 飯食ってると一口くれって言うし、頭良い癖にバカで、歩くのはえーし、どこでも寝るしよ、そう言う小さいことだよ。
 でも、そういう小さい所が嫌なんだ、アクシデントがあって今嫌いなったんじゃない、日常的な小さな嫌いがいっぱい溜まってこいつとは気が合わないって言ってんだよ。
 だから、いつかはこうなる日が来るってオレは思ってた。
 そんなもん口に出しては言えないけど、今日はいつもの「まあもういいや、またな」が言えなかった。
 ハイジもオレが何にキレてるか分からないからだろう、何も言わない、いやオレだってどうしてこんなイライラしてんのかわからないけどさ。

 そんな中でハイジのばーちゃんが割烹着姿で出て来たんだオレ達は急いで涙を拭いた。
 いつもだったら、庭で大きな声出してたら「静かにしなさい!」って怒るのに、オレ達のただならぬ雰囲気を察知したんだろう、わざわざサンダル履いてこっちに来た。
 ハイジの背中叩いて、何したのアンタ翔ちゃんこんな怒らせてって叱ってハイジは黙ってる。
 二人を見て、いつの間にばーちゃんこんなに小さくなったんだろうって思った、薄くなった体に背中も曲がってる。
 それで、やっぱりオレの方まできて、理由も聞かずにごめんねって頭を下げてきた。
「またうちの孫が悪戯したんでしょう、おやつ食べていって? 美味しい水羊羹、冷やしてあるから、ね?」
 と申し訳なさそうな顔で見上げてきたけど、オレは一歩後退した。
「すみません、オレ達もう食いもんでどうこうなる年じゃないんで、失礼します」
「翔ちゃん」
 いつもは、しぶしぶ頷くから、意外なオレの言葉にばーちゃんは目を丸くしてたけど、しょうがねぇじゃん、仲直りって問題じゃないんだ。
 どっちが謝れば済む話じゃない。
 軽く頭を下げて、じゃあと立ち去ろうと思ったら。

「待って待って! じゃあ、うんと美味しいコロッケ買ってくるから!」
「いや、だから食いもんの問題じゃ」
「松坂牛入ったお肉屋さんのコロッケと、その前にあるパン屋さんのコッペパンで作ったコロッケパン、二人共大好きだったでしょう」
「ばーちゃんもういいよ」
「ダメよハイジ、たった一人の親友でしょう大事にしないと、ばーちゃん自転車で直ぐ買ってくるから。翔ちゃんもそこにいてね! 直ぐ! 今直ぐ帰ってくるからね!!」
「でもばーちゃん自転車は」
「ちょっとそこまでだから!」
 年を取ったか弱い背中が精一杯急いでて止められなかった、そのままハイジのばーちゃんは自転車で出て行ってしまった。
 二人で残されて……これは反則だろって思った、アレ無視して家に帰るとかオレ鬼かよ。
 ハイジがムカつくのと年寄り無下にすんのとは話が別だ、クソって舌打ちしたらハイジは何も言わずに汗拭ってまたボール蹴りだした。
 ボクは待つって意思表示だろ? 知ってるよ、お前オレとケンカするとオレが構うまで、いつまでもそうやってボール蹴ってうるせえもんな。
 オレは何も言わずに縁側に腰を降ろした、教科書開いて勉強だ、実際これ始めたら周りが目に入らなくなるし丁度いいや。
 畳と線香の匂い、杏色に照らされたハイジの背中と、遠くで鳴くひぐらし、ボールの音と、たまにそよぐ風鈴の音、それで本読んでるオレ、ってケンカしてなきゃいつのも夏なのにな。
 でもオレはハイジが嫌いだって言ってしまったんだ、もうオレに話かけるなって、だからアイツは黙ってる。
 これでばーちゃんが帰ってきたら、もうこういうのいらないですって断る決心をした。

 それで、そのコロッケパンは待っても待っても到着しなかった。
 お肉屋さんは、徒歩五分の商店街にある人気の店だ、この夕方の時間帯は一番混むけど、その分バイトも雇ってるから行列の割に人のはけはいい、パン屋は古くてコッペパンとコロネしか売ってないから、早々時間もかからない。
 でもばーちゃん話し好きだしな「実は今孫がお友達とケンカしてて~」なんて話してるんだろう、オレ達両方知ってる馴染みの店員も、また~? いくつになっても仲良しね、といつもの他愛のない会話で盛り上がってるのか。

 夕飯前にコロッケパンなんてご飯食べられなくなるから怒られそうだけど、実際オレ達の好物だし、ばーちゃんには夕飯食べれなくてもいいから今食わせたいと思ったんだろうな。

 でさ、どうしたんだよばーちゃん、早く帰って来いよ、日が暮れたぞ。
 もう電気つけなきゃ文字読めねえよ、ひぐらしも活動を終えた、どうすんだよって思ったらハイジん家の電話が鳴った。
 人間の第六感なんてないんだな、オレはその電話の主さえ想像しないで家の中に視線を向けてたら、ハイジが気付いて電話だって縁側に靴を脱ぎ捨てて、走ってった。
 オレは暇になってふとスマホを取り出した、学校だったからサイレントモードにしてた、見れば数件の不在着信と母さんからメッセージが着ていた、マナーモードを解いてその内容は。
【緊急! 電話に出て】
【今どこにいる?】
【ハイジ君と一緒?】
 と切羽詰まった文面に焦る、次のメッセージを見ようと思ったら、家の中からハイジの大きな声がした。
「え、ばーちゃんが!?」
 ビクッてして何事かと思ったけど、同時にオレの手の中のスマホも震えて画面には。

【新井君のおばあちゃんが交通事故にあったって、行けるなら直ぐ病院に行って】

 一瞬の静寂と夏の日にぞわっと背筋が凍る、その後に病院のURL、心臓が重く波打って血液の音が耳に響いて初めての動悸に変な汗、手が震えて、返事っていうより、今どうしたらいいか分からなくて。
 そしたら乱暴な足音が聞こえて、ハイジがこっちに走ってきた、オレの横の鞄取って踵を潰したままアイツは今にも飛び出しそうで。
「待ってハイジ」
手を掴む、
「…………」
「オレも行く」
「ありがとう」
 ハイジはもう既に泣きそうな顔をしてた、その顔を見てオレも泣きそうになってしまった。
 二人で大通りまで走って、救急車の音なんて全然耳に入ってなかった、交通事故って日に何千件ってあるのに身内には起こらないと思ってた。
 オレ……行く、なんて言ったけど、なんて声掛けたらいいんだよ、走ってたらハイジはオレの鞄を取って背負ってくれた。
「自転車」
「ん?」
「もう乗らないって約束してたんだ、腰も曲がってるし周り見えてないしさ」
「…………そっか」
 ごめんってオレは言うべきなんだろうか、いや言わないといけないよな、オレがケンカ吹っ掛けなければこんな事には……無意識に拳を握り込んでたらハイジが言った。
「ごめん翔」
「……」
「何で怒ってんのかわかんないけどさ、ボク直せるとこは直すから、もう少し話してほしい。言われないとわからなくて、本当にごめん」
 何でお前が謝るんだって言う前に、大通り出て直にタクシーが来た。
 タクシーの中では母さんに連絡したりで、いつの間にか病院に着いていた。

 結論から言うとばーちゃんは重症、オートバイとの接触事故だった。
 意識はあったみたいだけど、今は眠ってるって骨折と掠り傷、命に別状はないけど年も年だし、安心できる状態ではないとハイジのお母さんが血の着いたボロボロの割烹着握りしめて涙ながらに教えてくれた。
 自転車ダメだってあれほど言ったし、もう乗ってなかったのに何で…………と悔しそうに言えばハイジのお父さんが今はそんな事言っても仕方ないだろうと宥めて、泣いて。
 オレ達は……というか、オレは何も言えなくて。
 しばらくしたら、母さんも来て、感情的な母さんは泣きながらハイジのお母さんに抱き付いた。
 何も出来ないまま、時間がすぎてお母さん達はもう少し病院にいるからあなた達は帰りなさいと言われた。
 罪悪感いっぱいで、いやオレもいるよって言ったけど、ハイジのお母さんがだったら今お義母さんが一番して欲しいことはお仏壇にお線香あげることだと思うから帰ってあげて? と促して、ハイジはその言葉に素直に頷いた。
 なんとなくオレも、頷いて一緒に病院を出た。

 徒歩と、電車と、また徒歩と……。
 商店街を通ったけど肉屋もパン屋もしまってた、ばーちゃんはここにたどり着く前に事故ったって。
 息を殺しながら、無言のまま二人で歩いた、ごめんのタイミングが分からなくて言いたいのに言えない、ハイジはオレをどう思ってるんだろう。
 聞けなくて、もちろん鍵なんてかける余裕なかったから、ハイジの家はあのままだった、縁側から家に上がって畳の部屋、小さな電気を灯した。
 ハイジは仏壇のろうそくに火を点けて、その前に正座をした。
 じっと仏壇の奥を見つめてる、そう言えば人の家の仏壇なんて興味なかったなってオレも隣に座って真っ直ぐ中を見た。
 そしたら、何で今まで気が付かなかったんだろう、一枚の写真が目に止まった、それを聞く前にハイジが。
「ボクにはお姉ちゃんがいたんだよ」
「…………」
気になった赤ん坊の写真を手に取ってオレに見せてきた。
「名前はクララ」
「クララ?」
「そう、本当はウララだったんだけど、役所の人が読み間違えたって」
「ああ……」

「でもそのクララは立ち上がる前に死んじゃったんだ」
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