Childhood friend lover 【著 CHIYONE】

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Childhood friend lover7

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 ああもう死にたい、死なないし明日も細々と生きるけど、メンタルは既に死んでるよ。
 笑ってくれ、オレはまだ笑えてないけど、笑い話にしてくれないと、本当太い縄とか高い所を探して彷徨い歩きそうだよ。

 なあ言ったか? オレよ、彼女は言ったか? 一言でも付き合って下さいと、 言ったか?
 言ってないよな、そうだよ、彼女はハイジが好きだった。
【一目見た時から好きになってしまって…………仲良くしてください】
 あの告白は、一目見た時から好きになってしまったのはハイジで、だから仲良くなりたいから、もっとハイジの話聞かせてくださいの略だった訳だ……わっかるかよお! わかんねえよ、そんなの。

 すげーさ、話熱心に聞いてくれてたんだよ、他には他にはっていつも目輝かせてな。
 オレってさ、悲しいかな、幼少期から今の今まで思い出9割くらいハイジに乗っ取られてるじゃん? 何話しても自然とハイジの話になる訳、そりゃキラキラした目で聞いてくれるよな。
 滑稽とはこの事だよ、滑稽の正しい使い方の例に自分がなってしまうとはな、そりゃこんなオレなんかとも一緒にいてくれるさ、だって彼女はずっとオレの後ろにいるハイジ見てたんだもん。
 彼女は半袖の制服を風に揺らしながら、初めて見た恥ずかしそうな顔で言ったんだ。

「それであの……沖田先輩ってハイジ先輩と仲いいんですよね? だったら今度一緒に帰れたりしませんか」

 って、オレは始め、その意味が分からなくて大きく瞬きを数回した後、え? 今一緒に帰ってるだろ? って言おうとしたんだ、そしたら彼女が、
「ほら、今日みたいに試験前後は部活……休みだしってゆうか先輩達受験でもう部活ほとんど出てないって聞いたんですけど」
 まだその後も何か言っていた気がするけど、オレはそこでああ、そうかそうかって理解して、苦しくなって言葉が続かなかった、でも一応。
「あの……でもさ、ハイジって彼女いるよ?」
 聞いたら、彼女は一瞬目を泳がせたけど、直に胸元のリボンを握って声を強めた。
「知ってますけど、先輩に彼女がいても、私が好きでいるのは自由ですよね」
 その真剣な眼差しに、オレは何も答えられなかった。
 明日、ハイジに一緒に帰ろうって言えば、いいよって勉強や部活があってもハイジはオレを優先するだろう、なぜならオレから一緒に帰ろうなんて誘った事ないから、アイツは何だ何だ、どうしたってバカなりに頭働かせてオレを迎えに来てくれると思う。
 ハイジとはただの友達関係じゃないから、家族ぐるみで付き合ってるからさ、オレ達がケンカしても家族関係は続くんだよ、もう新井君のお母さんと口利かないで、なんてそんな風に済ませられる関係じゃないんだ。
 だからハイジは来てくれるよ、オレが隣に暮らしてる限りな、でも一緒に帰ろうって言ってその隣に彼女がいたら、ハイジはどんな顔すんのかな。

「先輩……?」
「ああ……っと、うん、その受験さ、うん受験ね? オレ等いいとこ狙ってるからそういう恋愛とかアイツもやってないと思うから、あんま良い答え期待しないで?」
 これまでの数か月、一生懸命オレなりに彼女に面白い話をって昔話に笑い混ぜながら試行錯誤してたのに、初めて彼女にとってつまらない話をした。

 そう、だからしょうがない、つまらない話をしたのはオレの方だ、だから彼女は悪くない、オレの返答に彼女は一瞬眉間を寄せて。
「…………じゃあもういいです」
 と、不機嫌な視線を投げて自転車に跨って去って行った。
 いつもの、さようなら、ありがとうございますもないから、オレ達はきっとこれっきりだろう。
 普段は彼女の背中が見えなくなるまで一応見送っていたけど、その日は顔さえ上げられなかった。
 うん、彼女は悪くない、きっとあの告白の日もオレが舞い上がっちゃっただけで、きっと彼女はハイジが好きだって言っていたんだと思う。
 でもオレ嬉しくなっちゃって何も耳に入ってなかったんだ、そして彼女を責められない理由がもう一つ。
 ねえ、何でだろうな? あんなに彼女が出来たってはしゃいで興奮してた癖に、今フラれてその事実に恥ずかしくなって死にそうになってる割には、悲しくないんだよ。
 そう、そうなんだな、オレもまた彼女を好きではなかった、強がっているだけかもしれないけど、でもあの彼女がいて満たされていた感覚、あれは恋心が満たされていたんじゃない、ただオレのプライドが満たされていただけだったんだ。
 オレにだって彼女くらいできるんだって虚栄心、見栄、プライド、それを彼女で埋めていただけだ。
 そのために好きでもないのに一緒にいた、オレだって利用してた、オレも性格悪いな。

 夕暮れに、生暖かい風が吹いた、前髪がべったり額に張り付いて、全然涼しくなかった。

 よかった、浮かれて皆に彼女できたなんて言わなくて、オタクって暗黙のルールだらけだからな、皆を出し抜いて彼女なんて出来た日にはネトゲでシカトされてしまうから、黙ってた、うん、ハイジにしか言ってなかった。
 オレに彼女(偽)が出来た事。

 ひぐらしが鳴いていて、雛見沢村だったら殺人事件か失踪事件でも起きそうだが、ここは豊島区なので全く平和に家の近くまで来てしまった。
 さっさと家に入りたいのに、ある音が聞こえてオレはげんなりだよ。
 はいはいそうだよな、オレ今日の帰りハイジが一緒に帰ろうって来たのに断ったんだよ、だからアイツは一人で家に帰ってきて、きっと勉強の息抜きだろう、壁にサッカーボールぶつけてる、その音が道挟んで響いてた。
 体力減らした方がぐっすり眠れるからって暇ありゃ蹴ってる、運動不足のハムスターかお前ってイライラしながら見つかりませんようにってするんだけど、動物的感覚でヤツはオレに一瞬で気づきやがった。
「おお翔ぅ! 何だ用があるって別に遅くねえじゃん、ボク待ってたのに」
「待たなくていいよ、家くらい一人で帰れよ」
「ふうん? だって翔に渡したいものあったから」
「渡したいもの?」

 ハイジは制服のまんまでスラックスを膝まで折ってボール蹴ってて、縁側に置いてあった鞄から紙を取り出すとオレに見せてきた。
「これ、映画の試写会? ってヤツ、父さんに貰ったんだけど、ボクちょうどこの日後輩の試合でいけなくてさ、二人分なんだよ良かったら翔行かな」
「いらねえよ」
 タイトル見る前に振り払って、ああマジで本気で自分が嫌だ。
「何だよ、何怒ってんだよ」
「怒ってないし、そういうお節介スゲー迷惑だから」
「はあ? ただボクいけないからあげ」
「だからそういうのが迷惑だって言ったんだよ」
 もちろん、ハイジは何も悪くないんだ、彼女も悪くないだ、オレが悪いんだって頭では分かってる、分かってるけど、本当の事が言えなくて誰かを責めたい訳じゃないし、責めたって現状は何にも変わらないのに、イライラするんだよ。
 どうしようもなく、ハイジ見てるとムカついてムカついて堪らなくなる。
 こんな見てるだけで、腹立ってくるヤツ大嫌いなのにお隣同士だってだけで、関係続けていかなきゃならなくて、拷問だ。
 拷問だろ、こっちは地獄だ、そうだろ? お前さえいなければ、オレはモブでも普通にやってこれたんだ、お前が無駄に明るいからオレが真っ黒な影に見える、お前さえなければオレは誰の目にもつかずに、悪口言われずに、利用されずに済んだんだ、全部全部お前のせいなんだ。

 なんて、責めるとこ間違えて、オレ頭可笑しいってわかってるのに止まらなくて、
「おい、翔どした?」
「触んな!」
 触られそうになる肩の手を薙ぎ払って、罪のないハイジを睨んでしまった。
「翔?」
「お前なんて」
「ん?」
「お前なんて、大嫌いなんだよ……」
「…………」
「大嫌いだ! 初めから……会った瞬間からお前なんて嫌いだった! 明るくて優しくて人見知りしなくて勉強もスポーツもできて、人気者でオレはお前のそうゆう所全然憧れねぇし不快でしかないんだよ。ハイジのせいで何でオレが惨めな思いしなきゃなんねぇんだよ」
「翔……」
「もうオレに話しかけないでくれ」

 視界が歪んだ、ハイジが見た事ないような顔して唇を噛んだ、オレは素直な気持ちを言っただけだ。
 そしたらハイジもオレを睨んで言う。


「ボクだって、好きじゃないよ」


 弱い掠れた語気は力任せ怒鳴ったオレの声なんかより全然小さいのに、すげえ胸にグッサリきてしんどかった。
 どちらとも目を逸らせないで、オレ達何してんだろうって何か頬が冷たくなって擦ったら泣いてた、ハイジも泣いてた。

 思い出す、オレ達はいつもケンカすると最終的にはお互い泣いてたなって、プリンの取り合いでも逆上がりの回数競うのでも。
 それで、そんな時、毎回仲裁に入ってくれる人がいた、だからオレ達も心のままにぶつかりあえたんだ。
 でも何年ぶりのケンカだよ、今回は来るはずないよなって思ってたのに……。
 すげーなその人はやっぱり何かを察知して、おっとりした優しい声で一歩も引けないオレ達の緊張の糸を解きに来てくれた。



「大きな声がすると思ったら、どうしたのハイジ、翔ちゃんも……そんな恐い顔しないで上っておやつでも食べてきな?」
「…………ばーちゃん」
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