Childhood friend lover 【著 CHIYONE】

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Childhood friend lover14

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 苦しい。

 ハイジの【ごめんな】がなんか苦しい、アイツがケンカして謝るなんていつもの事なのに。




「あれ、どうしたのMy son電気もつけないで」

 リビングのソファーでクッションを抱えてぼーっと時計を見つめていた。
 勉強もゲームする気もおきなくて、ただただ溜め息ばかりがでた。
 気付けばもう11時だ、母さんがバイトが終わって帰ってきた、父さんは泊り。

「ご飯食べたの?」
「ん? 食ってない」
「ふぅん? てっきりハイジ君と何か食べたのかと思ってたけど……んじゃ適当なもんでいい?」
「いや、いいや別にそんな腹減ってねえし」

 冷蔵庫を少し開けていた母さんは、あらそう、っと頷いて閉めると、こっちに来てテーブルに置いたスーパーの袋からチューハイとお菓子を出してテレビを付けた、椅子を引いて定位置に座る。

 画面が光って、一通りチャンネルを回して、そうだそうだと母さんは笑った、始まったのは旅をすることになった見知らぬ男女達の恋愛を芸能人があーだこーだと言いながら視聴する番組、本当こういうの何が面白いんだかよくわかんねーな。
 冷ややかな視線を送っていたら母さんはチューハイ片手にテレビを指差して言う。

「この男の子、先週好きだった子に告白したんだけど、ごめんなさいて言われちゃったのよ。その理由がね、なんとその女の子がこの番組のADさんを好きになっちゃったからだったの。大分前から気になる人がいますって言ってて、てっきり告白した子と両想いなんだと思ってたら、全然違った方向に話が進んじゃって」
「へえ」
「番組的にはNGな訳よ、そりゃそうよねせっかく男女用意したのに番組スタッフもOKなんじゃ、やる気がおきないし」
「で? その子はどうなんの?」
「それは今日明かされるのよ。先週女の子が泣きながら、ごめんなさい私の好きな人はスタッフさんなんですって言った所で終わったから、どのスタッフが好きなのかも今日発表」
 母さんは興奮しながら、お酒をグイグイ煽って、そんな強くないからもう顔が赤くなってる。
 いつもならこんな会話に付き合ってないし、他人の恋路の、しかもやらせっぽいテレビの恋愛なんて更にどうでもいいのに、CMの前に先週のVTRで泣きながら謝る女の子を見て、少し気になってしまった。
 しかも、ズキっと胸が痛くて……腰を上げられない。
 興味のないCMを見てたら、母さんが突然、飲む? と飲みかけのチューハイを差し出してきた、この後ゲームもするしいらねーって言おうか迷ったけど今日はなんとなく貰っといた。
 一口飲んで、炭酸の入ったパイナップルの甘い酒だった、喉にカッとアルコールが滲みて何も入っていない胃に熱が落ちる、そしたら二本目を開けた母さんがオレが胸の内を心でも覗いたのかと思う勢いで言った。



「悲しいよねえ? 人を好きになるって素敵な事なのに、ごめんなさいって謝ってさ。好きになってごめんなさいなんて切なくない?」



「ああ」
 何か返事を求めていそうな視線に返す言葉もなくて酒を飲む、青春だわーって母さんはアーモンドチョコレートを食べて、一粒くれた、カリってかじった所でCMが明ける。
 また画面いっぱいに涙を流す女の子が映って、カメラマンがとりあえずその好きな人って誰なのかなと質問すれば、彼女は涙を袖で拭いてしゃくりあげながら名前を言った、オレは誰だかサッパリわからないのだが、母さんは、ええー?!!! っと前のめりなってテレビを凝視しワイプに映る芸能人は叫びながら立ち上がっていた。
 何だ何だと思ったら、画面にその現場にいたスタッフが一人映し出された、Tシャツとジーパンのカンペを持ったスタッフに、オレも思わず、え? と声を出した。
「わああ! そっちかぁー! まさかAD曽根ちゃんだったとは!!」
 母さんは酒を傾けながら目を輝かせて、オレはいつの間にか手に汗を握っていた、だって曽根ちゃんと呼ばれたその人は、



 小柄な女の人だったんだ。



「ああ、でも確か彼女この番組に応募したきっかけが、人を好きになったことがないから、遊びじゃなくて本気で恋愛を求めてる人に会ってみたい、みたいなそんな理由だったけど、そうか~そういう意味だったのか~」
「…………手の込んだ……ヤラセだな」
「またそんな事言って! あんたこそ20年も生きてて女の子一人好きになったことないって言ってるじゃないの」
 睨みながら嫌なら見るな! の一言を言われて、正直自分を誤魔化すために出た皮肉だと自覚はある。
 あの女優でもなんでもない女の子が拭いても拭いても零れるように泣いていたのは嘘じゃないと思うし、内側から溢れ出ちゃうような涙にこっちまでつられそうになった、画面が切り替わった先にいたスタッフの驚いた顔も演技にしては出来すぎてる。

 それで、その後彼女はどうなったかと言うと、曽我ちゃんにごめんなさいと頭を下げられていた、理由は彼氏がいますって、でも友達にはなれるからって手を握る、けれどその子は手を握り返しても頷かなかった。
 泣きながら笑ってありがとうございます、と言って、今はまだ曽我ちゃんを友達に見れる自信がないから、すみません、友達にはなれませんとまた謝っていた。
 ああ……って落胆した出演者の声がテレビから流れる、母さんも同じ反応だった。

 会えばいつも必ず声を掛けてくれて、優しくて、番組を盛り上げようと頑張ってる姿が、ここにいる誰よりも輝いていたと、他にも好きな所をたくさん言って、彼女の告白にいつの間にか曽我ちゃんも頷きながら泣いていた。本当の好きとは何かを気付かせてくれた、私にとって掛け替えのない旅でした。ありがとうございました、でも迷惑かけてしまってごめんなさいと、また泣きながら頭を下げた所で彼女の旅は終了フレームアウトした。

 彼女は実名も顔も年齢も出身地も職業も出していた訳で、番組の視聴者から、友達、親、親戚と今まで通りでいられるはずがない。
 嘘だとしても、やらせにしてはリスクが大きすぎるよなって考えながら泣いてる母さんにティッシュを渡す、今のオレの率直な気持ちは。
「でも彼女、家に帰ってどうするんだろうね、親とか……何て言って娘迎えるんだろう」
「そんなの頑張ったね、でいいじゃないの」
「いいのかよ、かなりのカミングアウトだと思うぞ」
「ああ……それは中々言えなくて辛かっただろうに、ってなるんじゃないの?」
「…………」
 ズビビッと母さんは鼻をかんで、それでまた涙を拭いて、はあー切ないって言ってる、おいおい、それはちょっと無理があるぞ?
「それって他人だからそう言えるんだろ? 自分の子供がこうなっても同じようなこと言えるのか?」
「んんー」
「もしオレが、恋人って男連れてきたら母さんどうするよ、笑顔でいられるか?」
 母さんは深呼吸してまたお酒を一口口に含んで。
「言うしかないでしょうよ。じゃあ逆に聞くけど、私達がその相手を、非常識だ、世間の目があるだ、気持ち悪いだと、一般的な正論盾にボロクソ言って別れろって言って別れられる?」
「…………」
「別れらないでしょう? 何も分かってくれない! って反発するだけだと私は思うよ」
 少し酔った母さんは普段より饒舌になって続ける。
「私達だって、お父さんゲームオタクで不愛想だし安定した仕事に就かないダメ男呼ばわりされて皆から結婚反対されたけど、大事なのはそこじゃないって勝手に籍入れたのよ。私は休みの日に寝落ちするまで一緒にゲームしてくれて、話も合って私だけに優しい、皆に無愛想な所が好きだったし、批判された所はもれなく私が好きな所だった。お金がないなら、私が働けばいいのであって何の問題も感じなかったわ。それが今じゃ唯一あの田舎から東京に一戸建て構えて年寄りだって知ってる大学まで息子行かせた男って言われてて、実家帰ればレジェンドよ」
 ふう! っと一息ついて、当たり前だけど両親にも歴史ありなんだよなって色々あったんだなって思った。
「へえ、母さん男の見る目あるじゃん」
「うん、もちろん翔だって格好いいよ、私が温めに温めたラブリーsonだしね」
「キモイ」
「それにハイジ君もいい男だなって思うよ」
「は?」
 何で急にハイジ? 瞬きしてたらいつの間にか母さんは三本目を開けながら意味深に笑ってる。

「またハイジ君とケンカしたんでしょう」

「…………ケンカっつーか」
「まあこんだけ一緒にいるんだから拗れるっしょ」
 母さんは缶を垂直に傾けながら喉を鳴らして、息を吐いた。
「大丈夫、必ず仲直りできるよ」
 と言って、次のカップルが映し出されて、オレ達の話は終わった。

 その言葉に安心したような、でも今回のケンカってそういうもんじゃない気もして。
 それに最後に見切りをつけたのはオレの方で、ごめんというのもおかしいし、何にごめんなのかもわからないし。











 それで【今までごめんな】の宣言通り、ハイジはあの以来オレの前に姿を現さなくなった。
 理由は、まあ障りない大学とバイトで忙しいからだと、だからオレも同じようにしてた、母さん達もさすがにこの時期は忙しいわよね、とオレ達が顔を合わせない事を気にしている様子はなかった。
 向こうとの付き合いは一応カレンダーに丸がしてあって、【新井家とBBQ】とか【新井さんと盆踊り】なんて書いてあったけど誘われなかったな。

 それでオレは大学院進学ではなく、就職の道を選んだ。
 ハイジが院に行きそうだったし、ここで道を別れておこうと思ったんだ。
 ちょうどその時、教授の伝手で友達の会社に何名か欠員があって頭の固まってないシステム関連強い学生いるなら、バイトがてら働いてそのまま就職しないかと、話がきていたのだ。
 正直オレがやりたいもんとか、夢では一切ないけど、皆が知ってるかなり優良な大手企業だったし、いいかなって頷いてしまった。
 そんで仕事を教わってくうちに、いつのまにか周りを囲まれてしまい、辞めるなんて言いずらくてその会社への正社員登用が決まった。
 結局就活もしてないし、いいのかこれでと思ったけど、もうなるようにしかならないよ、ここからまた就活なんてできねえし。
 春になって、一応入社式は出なさいと言われて行った恵比寿のガーデンプレイス、会長の話もそこそこにオレにはもう決まった仕事があるし、特に緊張感もなく式典に参加していた。
 閉会の言葉があって、仕事始めは明日から、でもオレは昨日も普通に出勤だったし、会社に戻ろうとしていたら人ごみの中で肩がぶつかった。
 いてーな、と舌打ちしつつ謝ろうと思ったら。







「翔?」
「……ハイジ」
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