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ああ週末は今日も雨だった
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朝ご飯を食べていたら、窓ガラスも向こうがどんより曇っていた。
母さんが今日はずっと雨だってと言いながら、オレの食パンの上に勝手に目玉焼きをフライパンから乗せてきた。
「あ、何すんだよ、オレはジャムで食いたかったのに」
「ええ? いーじゃないのこっちのが洗い物が減るでしょ? それになんだっけ、こういうの今流行ってるんじゃないの? ほら、あれハイジパンって」
「ラピュタパンだろ、ハイジパンってあの真っ白で中身スカスカで何も考えてないパンの事だから!!」
「あら随分ハイジパンに詳しい息子だこと~~」
「うるせえよ」
しょうがないからマヨネーズかけてハム乗っけて食ったけどよ、俺は甘いパンの気分だったのに!!
しかも朝から天敵の名前が出てくるし、なんだよハイジパンって止めてくれよ! たまにパン屋で売ってるけどさ。
俺ああいう白くてもちもちした何にでも合うパン好きなんだから勘弁してくれよ!!
そんで家を出て傘を開いて、
「あ、ボク傘忘れちゃったんだけど入れてくれない?」
「家の前だろ取りに帰れよ」
隣人が何やらほざいているがこれ以上は無視でいいな?
黙って傘差して先を歩いたら、ヤツは濡れるのお構いなしで小走りでこっち来て傘入ってきたよ。
「お前さ、帰りなら分かるよ? 朝は雨降ってなかったけど帰り降っちゃったから相合傘って。でも朝……しかも昨日の夜から降ってんのに、傘忘れてくるやつってこの世に存在するか??! すっげー可笑しいからな? 朝から一本の傘で男二人って」
「いーじゃん、うっわ! あいつらずっげー仲良いんだなって思うだけだろ」
「誰がだよ」
「ボクが」
「出てけ!」
どついたけど、一旦ハイジが傘持てばすっげー力で離してくれなくて、こんな……せっかくの金曜日なのにどうしてオレは朝から涙が出るんだろう……!!
赤信号で立ち止まって、ここの信号掴まると、いつもの電車に乗るのギリギリになるんだよなあって思っていたら。
「翔」
「あ?」
傘が傾いて、視界がシャットアウトした、何だ? って声を出すより先に口を塞がれてしまって……。
「おはようのキッス」
「殺す」
「いーじゃん、だってこのまま雨だったら週末の翔とのデートに出掛けられないかもしんないし」
「約束してねえよ」
「お前の予定なんて全部ボクのものだろ」
「は? 何だそ、んんッ……」
わかってた、一回キスした時に唇の離し方が近かったし、視線熱かったから絶対もう一回キスしてくるだろうなっとは思ってたけど、まさか舌入れてくるヤツだとは思わなかった。
だって、いくら傘でシャットアウトしてたって、何となく距離感で何してるか位分かるだろ?!
スーツのサラリーマン二人で朝から何してんだよ!! って跳ね退けたいけど二人で傘持ってたのに、いつの間にかハイジは傘から手離してオレの顎掴んで本気でキスしてくるし、向こうの手は鞄持ってるしで抵抗できない、傘離したらこの醜態を晒す事になるから。
朝の8時、駅前の信号待ちの交差点で何してくれたんだ、お前は!! な話だが、いい感じに雨がうるさくて唾液の絡む音が掻き消されて助かった、だって離してくれるのこいつが満足するまでだから応えるしかねえだろ。
「翔好き」
「死ね」
最後に軽くキスされて唇離して、恋人同士なら見つめ合って愛の告白だろうが、オレは達は幼馴染なので、二回も青信号を見送った怒りをハイジにぶつけておいた。
それで会社に着いたら、
「てるてるぼうず~てるぼうず~」
と尾台さんが(会社のマドンナ)てるてる坊主を作って窓に並べていた。
「尾台さんおはようございます、昔よく作ってましたねそういうの。運動会が雨予報だったりすると」
「沖田君おはよ、そうそう、明日袴田君とデートだから晴れますようにって、桐生さん坊主作ったら何で俺じゃないんですかって怒られちゃった。だって袴田君雨降らせそうな顔してるでしょう? お日様の赤いネクタイしてるうちの桐生部長の方がご利益ありそうって思ったのに」
「そうですね、うちの総務部長は雨って言っても鉄拳の雨って感じですもんね」
「だから、仕方なく私と眼鏡坊主君も作ってるんだ! あ、三人じゃ距離が近いとか袴田君怒りそうだから、沖田君坊主も作っておきますね」
「いや、オレ達作っても嫌な顔すると思いますけどね、あの上司は……」
尾台さんは、腕が鳴る~って言いながら、ティッシュを丸め出して、後で見たら窓にはてるてる坊主が五人並んでいた。
う! これじゃあ明日晴れて欲しいってオレが思ってる見たじゃないか!!
クッソ癪に障るが、袴田さんの彼女が作ったてるてる坊主勝手に捨てる訳にいかんしな!
で、就業時間が過ぎて人が帰り出した頃だ。
「かっける~かーえろ!」
「うるさい、あっち行けオレはまだやる事があるんだよ」
「え~ボクも手伝うよ!」
「いいよ、先帰れよ、っつか何抱き付いてんだよ! 散れ散れ!!」
手で払い除けた拍子に、PCの別のタブが開いてしまってオレは凍った。画面に表示された字をハイジが読み上げて、
「東京 雨 週末デート…………かけたんんんんん!!!!!」
「うおおおおぉおぉぉおおおおお!!!!!!!」
母さんが今日はずっと雨だってと言いながら、オレの食パンの上に勝手に目玉焼きをフライパンから乗せてきた。
「あ、何すんだよ、オレはジャムで食いたかったのに」
「ええ? いーじゃないのこっちのが洗い物が減るでしょ? それになんだっけ、こういうの今流行ってるんじゃないの? ほら、あれハイジパンって」
「ラピュタパンだろ、ハイジパンってあの真っ白で中身スカスカで何も考えてないパンの事だから!!」
「あら随分ハイジパンに詳しい息子だこと~~」
「うるせえよ」
しょうがないからマヨネーズかけてハム乗っけて食ったけどよ、俺は甘いパンの気分だったのに!!
しかも朝から天敵の名前が出てくるし、なんだよハイジパンって止めてくれよ! たまにパン屋で売ってるけどさ。
俺ああいう白くてもちもちした何にでも合うパン好きなんだから勘弁してくれよ!!
そんで家を出て傘を開いて、
「あ、ボク傘忘れちゃったんだけど入れてくれない?」
「家の前だろ取りに帰れよ」
隣人が何やらほざいているがこれ以上は無視でいいな?
黙って傘差して先を歩いたら、ヤツは濡れるのお構いなしで小走りでこっち来て傘入ってきたよ。
「お前さ、帰りなら分かるよ? 朝は雨降ってなかったけど帰り降っちゃったから相合傘って。でも朝……しかも昨日の夜から降ってんのに、傘忘れてくるやつってこの世に存在するか??! すっげー可笑しいからな? 朝から一本の傘で男二人って」
「いーじゃん、うっわ! あいつらずっげー仲良いんだなって思うだけだろ」
「誰がだよ」
「ボクが」
「出てけ!」
どついたけど、一旦ハイジが傘持てばすっげー力で離してくれなくて、こんな……せっかくの金曜日なのにどうしてオレは朝から涙が出るんだろう……!!
赤信号で立ち止まって、ここの信号掴まると、いつもの電車に乗るのギリギリになるんだよなあって思っていたら。
「翔」
「あ?」
傘が傾いて、視界がシャットアウトした、何だ? って声を出すより先に口を塞がれてしまって……。
「おはようのキッス」
「殺す」
「いーじゃん、だってこのまま雨だったら週末の翔とのデートに出掛けられないかもしんないし」
「約束してねえよ」
「お前の予定なんて全部ボクのものだろ」
「は? 何だそ、んんッ……」
わかってた、一回キスした時に唇の離し方が近かったし、視線熱かったから絶対もう一回キスしてくるだろうなっとは思ってたけど、まさか舌入れてくるヤツだとは思わなかった。
だって、いくら傘でシャットアウトしてたって、何となく距離感で何してるか位分かるだろ?!
スーツのサラリーマン二人で朝から何してんだよ!! って跳ね退けたいけど二人で傘持ってたのに、いつの間にかハイジは傘から手離してオレの顎掴んで本気でキスしてくるし、向こうの手は鞄持ってるしで抵抗できない、傘離したらこの醜態を晒す事になるから。
朝の8時、駅前の信号待ちの交差点で何してくれたんだ、お前は!! な話だが、いい感じに雨がうるさくて唾液の絡む音が掻き消されて助かった、だって離してくれるのこいつが満足するまでだから応えるしかねえだろ。
「翔好き」
「死ね」
最後に軽くキスされて唇離して、恋人同士なら見つめ合って愛の告白だろうが、オレは達は幼馴染なので、二回も青信号を見送った怒りをハイジにぶつけておいた。
それで会社に着いたら、
「てるてるぼうず~てるぼうず~」
と尾台さんが(会社のマドンナ)てるてる坊主を作って窓に並べていた。
「尾台さんおはようございます、昔よく作ってましたねそういうの。運動会が雨予報だったりすると」
「沖田君おはよ、そうそう、明日袴田君とデートだから晴れますようにって、桐生さん坊主作ったら何で俺じゃないんですかって怒られちゃった。だって袴田君雨降らせそうな顔してるでしょう? お日様の赤いネクタイしてるうちの桐生部長の方がご利益ありそうって思ったのに」
「そうですね、うちの総務部長は雨って言っても鉄拳の雨って感じですもんね」
「だから、仕方なく私と眼鏡坊主君も作ってるんだ! あ、三人じゃ距離が近いとか袴田君怒りそうだから、沖田君坊主も作っておきますね」
「いや、オレ達作っても嫌な顔すると思いますけどね、あの上司は……」
尾台さんは、腕が鳴る~って言いながら、ティッシュを丸め出して、後で見たら窓にはてるてる坊主が五人並んでいた。
う! これじゃあ明日晴れて欲しいってオレが思ってる見たじゃないか!!
クッソ癪に障るが、袴田さんの彼女が作ったてるてる坊主勝手に捨てる訳にいかんしな!
で、就業時間が過ぎて人が帰り出した頃だ。
「かっける~かーえろ!」
「うるさい、あっち行けオレはまだやる事があるんだよ」
「え~ボクも手伝うよ!」
「いいよ、先帰れよ、っつか何抱き付いてんだよ! 散れ散れ!!」
手で払い除けた拍子に、PCの別のタブが開いてしまってオレは凍った。画面に表示された字をハイジが読み上げて、
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