総務の袴田君が実は肉食だった話聞く!?

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おしまいの後

尾台さんと2020年

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 尾台さんと付き合って始めてのクリスマスはまさかの平日であった。
 家のカレンダーは尾台さんが毎日クリスマスを見る度ハートを書くので、今朝ついに紙が耐えきれなくなってハート型にくり抜かれていた。

 そうかそんなに楽しみにしているのか、クリスマス……何か欲しい物ありますかって聞いたら「私もピアス開けてみたいとか思ってませんから!」って言うんだけど、うーんピアスはなあ。
 尾台さんの耳に穴開けるのやだなってイヤリングを探してる。

 それにしたって24日定時で上がるしても25日も26日だって仕事だし、あー面倒くせえな。

 ここは俺達が新たな時代を切り開かないといけないのでは?!!
 と今年のクリスマス、会社公式の休みにしない? なんか家族サービスとか適当な理由つけてさって部下に相談してみた所、自分が休みたいから会社そのものを休みにしちゃおうって王様かよ正気か? って全く取り合ってもらえなかった。

「会社休みなの嬉しくない?」
左を向けば新井君が、
「嬉しいけど、他の会社は普通にあるから、しわ寄せくるし。どうせ我々日本人は休みにしたって過半数の社員が、でも仕事がって出勤してくると思いますよ」
それで右から沖田君が、
「休日にする名目が家族サービスしましょうって家族いない俺等はどうすんですか」
「孤独死でもして下さい。君達の事はどうでもいいです」
「本当血も涙もない男だよね! 総務の袴田君ってさ!」
「やっぱり難しいかあ」

 クッソジジーからお前にプレゼントあげる気ないけど尾台さんに高級ディナー予約していいかって言われたから断っておいた。
 どうして初めてのクリスマスにジジーの息のかかったご飯食べないといけない訳? 俺の作ったサンドイッチの方が美味しいよ絶対。

 で、クリスマスに近付くにつれ、家の中が少しづつクリスマス仕様になっていくのが、尾台さんと同棲してるんだなって感じられて嬉しかった。ただ寝るだけだった家が、こんな帰りたくなる場所になるなんてな。

 玄関にかかったクリスマスリースに、窓ガラスにはサンタやトナカイのジェルシールが貼られてて、カウンターには雪だるまがいる。
 夕飯の後、ソファーで仕事をしてる俺の膝で寝っ転がって携帯弄ってる尾台さんはエロ漫画でもホモ漫画でもなくクリスマスディナーのレシピを検索をしていた。

「クリスマスって言ったらチキンだな! でもウズラの卵が入ったミートローフも作りたいしぃ、ローストビーフも食べさせたいよお。あ、後ビーフシチュー! ロールキャベツもイイネ☆」
「どんだけ俺に肉食わすの尾台さん」
「だってほら、袴田君っていつもにやってするけど、嬉しいとニパってするでしょ! 美味しい物食べた時のがニパが多いから、クリスマスは袴田君のニパってするとこいっぱい見たいの―」
「ちょっと止めてもらっていいですか、俺ニパとかしてないですから」
「してるよ! 知らないの? 今日の夕飯からあげだよって言うとニパってするんだよ!」
「してないです」
「してるよ、自分じゃ気付かないだけで。私のも食べていいよって言うと恐縮しながら超笑顔じゃん」

 クソ、なんか格好悪くてやだなそれ。

「いつもの私を煽るイキった笑顔じゃなくて素直な雄太可愛いね?」
「イキってないよ。なんかムカついたから今から尾台さんアヘ顔ダブルピースにでもしちゃおうかな」
「はいはい、これ終わってからね」

 俺のPC指差されて、尾台さんはわーいえっちだえっちだーってお風呂沸かしに行ってしまった。
 この俺の、眼鏡でクールな袴田君がそろそろ崩壊するのではと危機を感じながらPC叩いてたら、尾台さんは走って帰ってきて。

「ちゅーんちゅん?」
「はい」
「すーき」

 後ろから抱き付いてきて、頬にキスしてきて耳にもキスして、また好きって言いながら舌をねじ込んでくるから、一瞬で体温が上がってしまった。

「尾台さん悪戯しないで」
「愛しの眼鏡君とのスキンシップだよお」

 尾台さんの甘い香りと短い息使い、顔を竦めれば舌が引いて、逃がさないって顔を抱き締めてきて頭に胸を押し付けられて、もう仕事どころじゃないな。
 それでも、保存はしないととPCを操作してるんだけど、尾台さんは首を甘噛みしてくる。
 吸って、噛んで消極的な小さな赤い印をつけてきて、満足そうに唇を舐めて口にキス。

 視界に尾台さんの顔が広がって、濡れた瞳が私の事好き? なんて少し恥ずかし気に首を傾げて聞いてくるから、PC閉じて後頭部を掴んだ。

 眼鏡を直して、わざとらしくない笑顔で言う。

「大好き」

 尾台さんは瞬きをして嬉しそうに口をムズムズさせて首に抱き付いてくる。
 お風呂いこお風呂! ってジタバタ初めてそのまま抱き上げて風呂場に向かった。





 それでクリスマス、ご飯は私が作りたい! ってまさかの尾台さん気合いを入れて半休を取っていた。
 お昼過ぎに彼女は姿を消して、会社を出る時は連絡下さいね! だって。
 クリスマスツリーは一緒に買いに行った、尾台さんの背よりは少し低い立派なツリーで土日に一緒にオーナメントを作るのは楽しかった。

 それで帰りますのメッセージを送って、家に着けば玄関からクリスマスソングが流れてて、こういう恥ずかしいようなむず痒くなる演出尾台さん好きだよなっていつも思う。
 部屋に入ったら、メリークリスマスなバルーンとトナカイな尾台さんがいた。

「おかえりなさい! 袴田君」
「ただいま。あれ、サンタコスじゃないんですね?」

 角と赤い鼻、ベージュの編み上げビスチェにミニスカトナカイはとっても可愛いらしいけれど。

「はい、だってクリスマスにこんな頑張ってるのに、鼻が赤いってだけで皆から罵られて笑いものにされて、冬空の寒い下で速く走れ! って鞭で叩かれるんですよ! 私にあってないですか」
「うん、そうかな……そっか俺がサンタさんをやってお前が世界で一番役に立ってるよ、って慰めてあげればいいんですね」

 尾台さんは抱き着いて来て、袴田君のそういうところ本当好き! ってスリスリしてきた。

 それで驚くなかれ、夕飯はそれはもう、肉尽くしなのは予想できたとして、メインはこれです! って尾台さんシュラスコ出してきてびっくりした。
 アマゾンって本当なんでも売ってるよね! って鉄串買ったって、オーブンやコンロを駆使して固まり肉焼きました!! ってトナカイさんがお店顔負けのお肉をストップするまで削いでくれた。

 クリスマスプレゼントは尾台さんに選んでもらった、ピアッサーとイヤリング、エッチしてる時の尾台さん可笑しくなった時に開けるか、イヤリングかどっちにしますかって。
 尾台さんは悩んで、やっぱ痛いのやだ! って煌びやかに光るピンクゴールドのルーフタイプのイヤリングを選んでくれた、一応ピアスに見えるものを選んだ。




 それで尾台さんからのプレゼントはカメラだった。

 見て直ぐわかる高価なカメラ、いつか欲しいんだよなって一度だけ彼女の前で話した気がする。
 でももうカメラにお金はかけませんからって心配かけたくなく言った。
 高かったでしょうって聞けば、尾台さんは手作りのシュークリームを俺の口に押し当ててきて、


「これから家族も増えるんだし、袴田君の欲しかったカメラでいっぱい私達を撮ってね?」
「…………はい」
「あ、ニパってしたあ可愛いちゅんちゅん!!」

 ずっしりと手の平に乗るカメラに、目の前のにゃんちゃんトナカイの眩しさにもう心掻き乱されてしまって、今宵こそはと悦ばせないといけないなって、明日遅刻の勢いで尾台さんしゃぶってしまった。

 そこからは怒涛の年末忙殺スケジュールで、双方記憶がないレベルで忙しかったけど、帰ったらにゃんにゃんさんを抱き締めて眠れるってだけで頑張れたな。



 それで冬休み、肩の荷が下りて、1日目は二人でずっと寝てた。
 トイレ行く時尾台さん連れてって一緒にしてまたベッドに戻って寝て、うちは大掃除する程汚れてないし物もない、少し雑巾がけや年末の買い出しに行って、大晦日は、またアマゾンで尾台さんがお蕎麦の手打ちセットなる物を購入していたので(わかってたけど止めなかった)二人でそばを打った。
 彼女といればなんでも楽しいし美味しい、一緒の空間に居られるだけで幸せ。


 初めての年越しは、神社の境内だった、遠くから除夜の鐘が鳴っていた。
 焚火にあたりながら順番を待ってる間に、年が明けたのだ。炎に照らされる尾台さんの横顔はとても綺麗で、目が合えば笑ってくれて2020年元日1秒で、あ、この人好きってなった。
初詣のおみくじは二人揃って吉だった、2つあるから吉2倍になって大吉だねって手握ってくるの、愛しすぎて苦しくなってキスして抱き締めるだけだ。
「セックスがしたいです!」
「もうやだぁここ神社だよ! まだ年明けて10分だよ袴田君」

 家に着いて、体冷えてるから甘酒飲んでから寝よう? って首傾げてくるの、本当にこの人といれて幸せだなって思う。
 キッチンに向かう細い肩を引き寄せる。



「今年も宜しくね尾台さん大好き」
「ふふ、私も大好きだよ今年も宜しくね袴田君」
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