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13.パウパウのお昼ご飯と、父たまのグヌヌ
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「おや、薬草茶お嫌いでしたか」
何事もなかったようにウルジェドに尋ねられたガイアスは、慌ててカップの中身を煽った。
「い、いや、大丈夫だ。それより魔力が育たないとは」
ガイアスは二人の子供を思う。
いや、帝都にいるアーサーとパウパウ、四人とも大切な自分の子供だ。
「その、ウルジェド殿はご存知だろうが、俺は昔、呼ばれて帝都で学ぶ機会を得た。まだ小さいエリーラは分からないが、アーサーと同じようにテレスは芽があると思っているのだが」
ウルジェドは、すっと人差し指をあげて、形の良い唇の前に立てた。
「ん~…」
「時間切れですね。ガイアス様」
「んん~」もぞもぞ。パウパウがお昼寝から目を覚ました。
ぐりぐりとミっちゃんのカッポギに顔を擦りつける。
「ちょっとパウパウ、私の割烹着にヨダレ擦り付けてませんか?」
「ミ・チコちゃん…?」
はいはいとザッカヤさんは、ポンポンと幼児の背中を叩く。
お母さんだ。
お母さんがいる。と、ガイアスは思った。いや、落ち着け俺。この人、賢者。
それより、先ほどの恐ろしいエルフの王は何処に行ったのだろう。
そして、いつも上に着ていたのはカッポウギというのか。
パウパウがカッポギ、カッポギと言っていたが、正式名称が分かった。
いや、分かって何というものではないが。
ガイアスは若干、まだ混乱中だ。
「ミっちゃん。パウ、お腹すいた」
「その前にパウパウ、お手洗いは?」かけていた布を仕舞い、ミっちゃんが尋ねる。
「あ!」弾かれたようにパウパウが膝の上から飛び降りて、ガイアスに気づき
「あ!父たま?玄関あけて!」
「お。おぅ」慌ててガイアスがパウパウを小脇に抱えて、扉を開け「早く!早く!」の声に「まて!パウパウちょっと、我慢しろ」と、家の中に駆けこんでゆく。
そんな親子を見送るハイエルフの髪を、風が吹き揺らした。
「よろしかったらガイアス様も一緒にいかがですか?子供用なので甘口ですが、体に良い物でこしらえています」
にっこり笑うエルフを見て、本当にお母さんかとガイアスは思った。
用を足して前庭に戻った二人を迎えたのは、なんとも見事な料理だ。
パウパウの好きな肉団子入りのスープは素焼きの容器の中で湯気を立てている。
小さく切った野菜が煮込まれてトロトロだ。
当然、子供の口に合わせて団子は小さめだ。
小ぶりのナスの中身をくり抜き、細かく刻んだ野菜と雑穀を詰めて、出汁と薬草のスープで炊いたものは、仄白いガラスの容器の上。
冷やして味を染み込ませてある。
賽の目に切って茹でた白い芋と黄色い甘芋を、オレンジ色の小さな豆とヨーグルトクリームで合えたサラダは、皿替わりのチコリの葉の上に、香芹を散らして一口ずつ載せてある。
デザートの薄紅色のブドウに似た水菓子が、ガラスの器の中で涼し気だ。
ガイアスは一瞬、遠い目をして
何だこれ、都のレストランか?と思った。
せめて食費を雑貨屋に払うべきかと思案する。
「いたぁきます」
「あのな、パウパウ。その、場所がおかしくないか?」
父たまの言葉にパウパウは首を傾げる。
「ん?」
「いや、こういうときは父様の膝の上じゃないかなぁ。ウル…雑貨屋さんにも迷惑だろ?」
「いえ、私はかまいませんよ」
ナスを小皿に取り分けてミっちゃんが言う。
「パウ、ここがいい!椅子、ふたっつしか無いもんね~」
パウパウは頭をあげてミっちゃんを見る。ミッちゃんも一緒に「ね~」と笑う。
「そうですね。はい。パウパウの好きなナスの冷たいの」と言うとパウパウはパカリと口を開けた。
鳥の赤ちゃんが居るねぇと笑いながら、エルフがナスの頭を縫い留めているピックを摘まみ上げ、パウパウの口に運ぶのをみて、
いや、うちの子だから!うちの三男だからっ!と叫びそうになるのを我慢して、ガイアスはスープを飲む。
うまい。なんだか悔しいけど美味い。ものすごく美味い。目を見開くほどに美味い。
「これは…すごいな」溜息がでそうだ。
ナスをモツモツと食べていたパウパウが「ミッちゃんのご飯、おいしいよね」と笑う。
「それはよかった。お口に合いましたか」
「何の肉だろうか、家でも出来れば食べた「シーサーペントとワイバーンの合い挽きです」…はァ?」
払えない。食費でウネビ家は破産する。
ガイアスが固まっているのを気にもせず、ミっちゃんはチコリの葉に乗ったサラダをパウパウの口に運ぶ。
「お芋さん、美味しいねぇ」
キタノカムイモに、南方金芋。どちらも上品に甘く、栄養価が高い。
それをさっぱりと纏めているヨーグルトは、北方の見事な角を持った毛長牛の乳で作った物。
野生の牛なので、ウルジェドが乳をもらうための説得に、苦労した一品だ。
ナスはシーサーペントのアラと水魔天牛の骨の髄から取った合わせ出汁を使ったので、さっぱりとしながらコクがある。
薄味だが、パウパウも飽きずに食べられるだろう…って、ガイアス様がすごい食べてるな。口に合ったようで何よりだ。
締めの水菓子まで完食し、食後のお茶を飲んだガイアスが
「本当に美味かった。俺までこれほど馳走になってしまって」と頭を下げた。
「いえ、おかげでパウパウも沢山食べてくれましたので」ミっちゃんは満足気に微笑む。競り食いって効果あるなぁと内心、思っている。
いや、だから、それお母さんが云うこと。
その子、うちの子だから!とガイアスが下唇を嚙んでいると
パウパウが「とうたま、狩り、なに採れたの」と、尋ねてきた。
どうやら朝の会話を覚えていたらしい。
あっ、とガイアスが立ち上がりかける。
すっかり、忘れていた。
時間を取ってしまったため、今から出ても獲物は難しいだろう。
「あぁ、それなら丁度よかった」
ミっちゃんはポケットに手を入れて、ズルリと何かを取り出した。
黄色い葉にくるまれた大きな塊をテーブルの上に置く。
かなりの大きさだ。ドスンと音がした。
「牛肉、おすそ分けです」
「いや…ありがたいが…」怖い。なんの牛肉か聞くのがガイアスは怖い。
「わぁ、ミっちゃん、あいがとぉ!おっきいねぇ」パウパウが嬉しそうに雑貨屋さんの顔を見上げる。
「美味しい牛ですよ」
ハイエルフはガイアスを見て、人差し指を唇に立てて
「家族で仲良く、食べてくださいね」と微笑んだ。
何事もなかったようにウルジェドに尋ねられたガイアスは、慌ててカップの中身を煽った。
「い、いや、大丈夫だ。それより魔力が育たないとは」
ガイアスは二人の子供を思う。
いや、帝都にいるアーサーとパウパウ、四人とも大切な自分の子供だ。
「その、ウルジェド殿はご存知だろうが、俺は昔、呼ばれて帝都で学ぶ機会を得た。まだ小さいエリーラは分からないが、アーサーと同じようにテレスは芽があると思っているのだが」
ウルジェドは、すっと人差し指をあげて、形の良い唇の前に立てた。
「ん~…」
「時間切れですね。ガイアス様」
「んん~」もぞもぞ。パウパウがお昼寝から目を覚ました。
ぐりぐりとミっちゃんのカッポギに顔を擦りつける。
「ちょっとパウパウ、私の割烹着にヨダレ擦り付けてませんか?」
「ミ・チコちゃん…?」
はいはいとザッカヤさんは、ポンポンと幼児の背中を叩く。
お母さんだ。
お母さんがいる。と、ガイアスは思った。いや、落ち着け俺。この人、賢者。
それより、先ほどの恐ろしいエルフの王は何処に行ったのだろう。
そして、いつも上に着ていたのはカッポウギというのか。
パウパウがカッポギ、カッポギと言っていたが、正式名称が分かった。
いや、分かって何というものではないが。
ガイアスは若干、まだ混乱中だ。
「ミっちゃん。パウ、お腹すいた」
「その前にパウパウ、お手洗いは?」かけていた布を仕舞い、ミっちゃんが尋ねる。
「あ!」弾かれたようにパウパウが膝の上から飛び降りて、ガイアスに気づき
「あ!父たま?玄関あけて!」
「お。おぅ」慌ててガイアスがパウパウを小脇に抱えて、扉を開け「早く!早く!」の声に「まて!パウパウちょっと、我慢しろ」と、家の中に駆けこんでゆく。
そんな親子を見送るハイエルフの髪を、風が吹き揺らした。
「よろしかったらガイアス様も一緒にいかがですか?子供用なので甘口ですが、体に良い物でこしらえています」
にっこり笑うエルフを見て、本当にお母さんかとガイアスは思った。
用を足して前庭に戻った二人を迎えたのは、なんとも見事な料理だ。
パウパウの好きな肉団子入りのスープは素焼きの容器の中で湯気を立てている。
小さく切った野菜が煮込まれてトロトロだ。
当然、子供の口に合わせて団子は小さめだ。
小ぶりのナスの中身をくり抜き、細かく刻んだ野菜と雑穀を詰めて、出汁と薬草のスープで炊いたものは、仄白いガラスの容器の上。
冷やして味を染み込ませてある。
賽の目に切って茹でた白い芋と黄色い甘芋を、オレンジ色の小さな豆とヨーグルトクリームで合えたサラダは、皿替わりのチコリの葉の上に、香芹を散らして一口ずつ載せてある。
デザートの薄紅色のブドウに似た水菓子が、ガラスの器の中で涼し気だ。
ガイアスは一瞬、遠い目をして
何だこれ、都のレストランか?と思った。
せめて食費を雑貨屋に払うべきかと思案する。
「いたぁきます」
「あのな、パウパウ。その、場所がおかしくないか?」
父たまの言葉にパウパウは首を傾げる。
「ん?」
「いや、こういうときは父様の膝の上じゃないかなぁ。ウル…雑貨屋さんにも迷惑だろ?」
「いえ、私はかまいませんよ」
ナスを小皿に取り分けてミっちゃんが言う。
「パウ、ここがいい!椅子、ふたっつしか無いもんね~」
パウパウは頭をあげてミっちゃんを見る。ミッちゃんも一緒に「ね~」と笑う。
「そうですね。はい。パウパウの好きなナスの冷たいの」と言うとパウパウはパカリと口を開けた。
鳥の赤ちゃんが居るねぇと笑いながら、エルフがナスの頭を縫い留めているピックを摘まみ上げ、パウパウの口に運ぶのをみて、
いや、うちの子だから!うちの三男だからっ!と叫びそうになるのを我慢して、ガイアスはスープを飲む。
うまい。なんだか悔しいけど美味い。ものすごく美味い。目を見開くほどに美味い。
「これは…すごいな」溜息がでそうだ。
ナスをモツモツと食べていたパウパウが「ミッちゃんのご飯、おいしいよね」と笑う。
「それはよかった。お口に合いましたか」
「何の肉だろうか、家でも出来れば食べた「シーサーペントとワイバーンの合い挽きです」…はァ?」
払えない。食費でウネビ家は破産する。
ガイアスが固まっているのを気にもせず、ミっちゃんはチコリの葉に乗ったサラダをパウパウの口に運ぶ。
「お芋さん、美味しいねぇ」
キタノカムイモに、南方金芋。どちらも上品に甘く、栄養価が高い。
それをさっぱりと纏めているヨーグルトは、北方の見事な角を持った毛長牛の乳で作った物。
野生の牛なので、ウルジェドが乳をもらうための説得に、苦労した一品だ。
ナスはシーサーペントのアラと水魔天牛の骨の髄から取った合わせ出汁を使ったので、さっぱりとしながらコクがある。
薄味だが、パウパウも飽きずに食べられるだろう…って、ガイアス様がすごい食べてるな。口に合ったようで何よりだ。
締めの水菓子まで完食し、食後のお茶を飲んだガイアスが
「本当に美味かった。俺までこれほど馳走になってしまって」と頭を下げた。
「いえ、おかげでパウパウも沢山食べてくれましたので」ミっちゃんは満足気に微笑む。競り食いって効果あるなぁと内心、思っている。
いや、だから、それお母さんが云うこと。
その子、うちの子だから!とガイアスが下唇を嚙んでいると
パウパウが「とうたま、狩り、なに採れたの」と、尋ねてきた。
どうやら朝の会話を覚えていたらしい。
あっ、とガイアスが立ち上がりかける。
すっかり、忘れていた。
時間を取ってしまったため、今から出ても獲物は難しいだろう。
「あぁ、それなら丁度よかった」
ミっちゃんはポケットに手を入れて、ズルリと何かを取り出した。
黄色い葉にくるまれた大きな塊をテーブルの上に置く。
かなりの大きさだ。ドスンと音がした。
「牛肉、おすそ分けです」
「いや…ありがたいが…」怖い。なんの牛肉か聞くのがガイアスは怖い。
「わぁ、ミっちゃん、あいがとぉ!おっきいねぇ」パウパウが嬉しそうに雑貨屋さんの顔を見上げる。
「美味しい牛ですよ」
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