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14.パウのお友達とキラキラ
しおりを挟むパウパウに友達は居ない。
この集落のウネビ家の近くに、パウパウと同じ年ごろの子供が居ないのだ。
一番近いのが三才上のテレス。次が四つ年上のタンジだ。
当然、遊んではくれない。
「タンジは俺の友達だから、俺と遊ぶの!」と言われて、今日もパウパウは置いていかれた。
「ヨテーチョーワ」パウパウは呟く。
最近はヴィンテも遊んでくれるが、今日は父たまとお仕事に行ってしまっている。
母たまは、エレーラ赤ちゃんに付きっきりで、いつもどおりパウパウは一人だ。
「シャカイセーカイム」パウパウの口から、頭に湧いた言葉が漏れる。
朝ご飯を食べた後、この頃パウパウは一人で家の周りを探検するのが日課だ。
家の裏庭の奥は、パウパウの背丈より高い草が生い茂っている。
その先はガケだそうだ。
危ないので行ってはいけないと言われているので、当然、パウパウは行かない。
右へ歩いて行くとヴィンテのお庭へ着くが、留守なので今日は左へ進んでみる。
鍛錬所を左手に、林のほうへと歩く。
子どもの足では結構、遠い。距離がある。
途中で、斜めにかけたナイナイ袋から小さい水袋を出して喉を潤す。
リンゴの果汁を柑橘系の果汁と合わせて水で薄めてある。ミっちゃんが入れてくれた。サラリと飲みやすい。
水袋を仕舞い、紐をキュっとしてナイナイ袋に「あいがと」とポンポン叩く。
緑の石の中の魚がクルリと回って返事をくれたみたいで、パウパウは嬉しい。
「ナイナイちゃんと魚はパウパウとトモラチ?ヴィンテ、ニワトイさんはトモラチ?」
ミっちゃんと、たまに来るガルデンおじちゃんはどうだろう。パウパウのトモラチだろうか。
歩きながら考える。
兄ちゃは、いつもタンジくんと遊びに行く。
タンジくんは「テ~レス、あ~そ~ぼ」って、兄ちゃを連れて行くのだ。
ミっちゃんもカルデンおじちゃんも「パウパウ、あ~そ~ぼ」って迎えには来ない。
友達は、あ~そ~ぼって来るものだと、パウパウは思いついた。
そして、遊ぶのだ。
なにをするのか分からないが、遊ぶらしいのだ。
あれ?頭に浮かんだ言葉がこぼれる。
「ボッチ」
よく分からないけど、なんだかイヤな響きだとパウパウは思った。
ようやく林に着いて、あたりを見渡す。
人の手が入っている林は、間隔が空いていて日差しが入り、パウパウでも歩きやすい。
もちろん、小さいパウパウはそんな事、知らないけど。
振り向くと、木々の向こうにパウパウのお家が見えるから怖くない。
丁度いい場所をみつけ、ナイナイ袋からミっちゃんが入れてくれた敷物とクッションを木の根元に出し、オヤツのクッキーも出す。
「ボッチキャンプ」
いや、違う。
なんだか言葉が、またこぼれたが、パウパウは首を振る。
ピピピチチチとどこかで鳥が鳴いている。
さっきとは違う味の水袋から、白ブドウの果汁水を飲みクッキーを齧っていると、カサカサと上の方で音がした。
「ん?」見回すと、灰色のフサフサ尻尾の生き物が、向かいの木の張り出した枝の上で、自分の足元の枝をガリガリと齧っている。
ときどき顔を上げた口が忙しそうに動く。木の皮を食べているのだろうか。
ガリガリやるフサフサ尻尾を見ながら、パウパウもクッキーをボリボリしていると、やがてポトリと枝が落ちた。
パウパウが拾い上げてみると、長さも太さも丁度いいし、形も中々真っすぐで何故だか葉っぱも付いていない。
さっきの生き物が剝いだのか、木の皮が無くて持ちやすい。
「おぉっ」自分にピッタリだと、パウパウは目を輝かせた。
パウパウはブンブンと枝を振り、木の上を見上げて「あいがと~」と礼をした。
もう見えなくなってしまったフサフサ尻尾へクッキーを一枚、木の根元にお礼に置いておく。
「パウ、強くなった」枝を頭上にかかげる。
「テレレテッテッテテ~」頭に浮かんだ音が口からこぼれた。
無敵パウパウは林の中を突き進む。
木の枝を手に入れたパウパウは強くなったのだ。四才児の思考では、そうなのだ。
ブンブンと枝を振り振り進んでいくと、可愛い白くて丸いキノコがポチポチと生えているのを見つけた。
強いパウパウはキノコを辿って、ますます奥に進む。
と、広く開けた場所に着いた。
広々とした空き地の一か所に白いキノコが集まり、踊りの輪のように丸く円を描いて生えている。
まん丸だ。
遮る木が無いので、上からの日光がキノコの輪を照らしていて奇麗だ。
「…ドヒョー」変な言葉がまた漏れた。
と、その円の中の地面が一瞬、キラリっと光った。
そこだけ日差しが強く当たったのか、一瞬、白く輝いて見えた。
「…え?」パウパウは首をかしげる。
「ギ?」あちらも首をかしげた。
どこかで、チチッチチチチッと鳥が鳴いてパタパタと羽ばたいた。
さっきまで何も無かったキノコの輪の中に、突然、現れたのは
「…アギさん?」
赤っぽいツヤツヤの体にトゲトゲの六本足、強そうな立派なアゴと黒い小さい目。
カキッと折り曲げた触角がピルピル動く。
ギガントハキリ。かなり大きな蟻だった。
小さな普通の蟻しか知らないパウパウは、あまりにも大きな蟻にいきなり出会って
「ぼく、パウパウ。こんにちは!」と、たいへん元気に良いご挨拶をした。
「ギチっ」大蟻が首を傾げる。
「アギさん、おおきいねぇ」
巨ニワトリ、巨大馬に慣れてしまった弊害が、今、こんな所で出た。
村の中に魔物は入ってこない。パウパウは父たまから、そう教わっている。
だが、人間が知らないだけで魔蟻のギガントハキリは、キノコの道を使って転移が出来る。
特定のキノコの胞子にある魔素を伝って、キノコの輪がある処に現れるという、珍しいスキルを持つ蟻だ。
なぜ、人間に知られていないかというと、そのキノコもギガントハキリも、自然豊かな地にしか生息しないからだ。
そして、パウパウの住んでいる所は、ドがつく田舎だ。
普通のキノコだって、特定のキノコだって、ヤバイのだって、ポポポポと、実はそこら辺に生っているのだ。
いま、偶然パウパウが出会った大蟻も、その力を使って餌を探しに来た働き蟻の1匹だった。
目の前にいる大蟻を魔物だとは思いもしないパウパウは
「ねぇねぇ、アギさん。オヤツ食べる?」カッコイイ大きい蟻が嬉しくて話しかける。
ナイナイ袋から取り出したのは白玉団子だ。
「パウね~お団子すきなの。アギさんも食べて」
金色の蜜が掛けられた白玉団子を、ギガントハキリの前に置いた。
「ギギギチッ」顎をガチガチさせて、大蟻は警戒音を出していたのだが、パウパウは、カッコイイ大きい蟻に自慢のオヤツを食べてもらえるとウキウキしていた。
お皿替わりのホウの葉の上の白玉団子に、頭の触角を近づけてピコピコしていた大蟻は、ピンッと触角を立てたかと思ったらズルンと顎の下から舌みたいなのを出して
懸命に小さな団子を舐めはじめた。
「そんな、お口なんだぁ。すごいねぇ」
面白いなぁ。ニコニコしながらご機嫌でパウパウは自分の分を取り出して、白玉団子を一つ口に入れる。
「おいしいねぇ。ミっちゃんが作ってくれたんだよ」
団子を楽しむ幼児と大蟻、たまに聞こえる小鳥の声は、何故か悲鳴のように甲高い。
アギさんの皿がピッカピカに奇麗になったのを見て、お替りのダンゴを出す。
「いっぱい、あるから食べてね」ミっちゃんが沢山ナイナイ袋に入れてくれたのだ。
大蟻は「ギギッ」と首を傾げていたが、新しい団子の皿を大事そうに顎に挟んで、パウパウの頭を触角でサワサワと触れた。
「なあに?」
アギさんはパウパウから、触角をそっと離してキノコの輪の中でクルリと一周、体を回した。
「あ!」
輪の内側にキラキラと光が立ち上がる。
「アギさん、帰る?バイバイ」お土産の白玉団子を顎で咥えて、ギガントハキリアントは光の中に消えた。
パウパウは一生懸命に手を振ってから、「ムフ~」と満足気に鼻息をひとつ。
「トモラチできた」
ダンジョンで素材を採取していたウルジェドは、眷属の鳥の目からパウパウの様子を見て
「そっかぁ、蟻さんお友達かぁ…ギガントハキリ…攻撃性が低くて本当に良かった…」と遠い目をした。
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