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15.パウパウのキラキラとお友達 1
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アギさんが帰ったので、パウパウも帰ろうと思ったが木立の隙間から、まったく家は見えなかった。
「たいへん。お家、消えた」
歩いていたら出てくるだろうと、元の方向だと感じるほうへ歩き出す。
そのうちに、間伐がされていないのか、陽の光が入りにくくなった場所へ進んでいた。
「ソーナン?」ポロリと言葉がこぼれる。
どうしよう。
さすがに不安になって立ち止まっていると
「カァ」
「わぁ!」ビックリして尻もちを付いたパウパウの横に、白いカラスが舞い降りてきた。
「ミっちゃんトコのトィさん!」立ち上がり
「アーアッ!カァ」こっちだとカラスがピョンピョン歩くのに付いて行く。
少し進むと、やがて木々の切れ間から、光が見えてきた。
そのまま、カラスに付いて行くと、
「おかえり。大冒険したねぇ」ちょっとした開けた場所でザッカヤさんが待っていた。
「ミっちゃん!」
黒いマントに鈍色の剣を腰に差した、見たことのない姿だ。
後ろで縛った銀色の髪の毛がカッコいいとパウパウは思う。
「ミッチャン、それ剣?」初めて見たと、パウパウは目を輝かせる。
「うん、前にどこかで拾ったヤツだよ」
「パウも、パウもねっ、さっき拾った!」カッコイイ木の棒をミッチャンに見せてあげる。
「そっかぁ。じゃあ、お揃いだねぇ」
パウパウを抱き上げて、腕にのせて歩き出したミっちゃんに今日のことを一生懸命に話す。
尻尾がフサフサの生き物が木の枝をくれたこと。
トモラチと一緒に白玉団子を食べたこと。
ミっちゃんは楽し気に話を聞きながら、フサフサ尻尾は「キタノリス」といって、枯れた枝の木の皮や、中の虫を食べてくれる”木のお医者さん”なことや、
大きな蟻は「ギガントハキリ」という”自分のお家でキノコを育てる”種類なのだと教えてくれた。
「ほら、前に言っていた、パウパウのお家に悪いモノが入らないって事だけどね。
ギガントハキリは魔物なんだ。だから、パウパウのお家には入れません。で、このカラスのサブロも魔物です。」
白カラスは誇らしげに「カアッ」と鳴いた。
「でもサブロはパウの家に入れるよね」
「それは、私の、ん~…仲間だからね」
ミっちゃんの肩の白いカラスを見て、パウパウは首をかしげた。
「ナカマってトモラチ?」白カラスが首を曲げて「カァァ~?」と鳴いた。
「まぁ、そんなものかな」
「じゃぁ、アギさん、トモラチだから家に来れるね!」
「あれは、大きいからパウパウの家族がビックリしちゃうよ。お家に招待はやめておこうね」
あの道は塞いだから、ギガントハキリでは転移できないだろう。
楽しみにしているパウパウには可哀そうだが、もう大蟻と会う事はない、とミっちゃんは考えるがパウパウに気取られないように、話を続ける。
「だから、お家に入ってこられる魔物もいるんだよ。あと、毒のある動物や虫、悪い気持ちを持つ人は、家の人が招かない限り入れません」
昔、ウネビの家には、そういう魔法が玄関や窓などに掛けられたのだとミっちゃんが教えてくれた。
パウパウのお家が見えてきたところで、ミっちゃんが「おや、ガイアス様がお戻りですね、丁度よかったです」
門を潜ってヴィンテに乗ったガイアスが帰って来るところだった。
「ちょっとだけ目を瞑っていてね」パウパウに告げて、ウルジェドはガイアスの近くに転移する。
「父たま!ヴィンテ!」馬上の父親に手を伸ばすパウパウを、ガイアスのほうへ持ち上げて渡してやる。
「ただいまパウパウ」三男坊を抱き上げて、ガイアスは雑貨屋に会釈した。
「こんにちは、ガイアス様、すみませんが明後日の朝から、ご都合がよろしければ魔導具のドワーフと、エルフとで貴家を訪問させていただけますか」
ガイアスは鐙から足を外して、
「承った。感謝する」馬上から頭を下げた。
パウパウはヴィンテに乗れたのが嬉しくて笑っていたが、その後のミっちゃんの
「その後、パウパウと街へ行くことをお許し願いたい」との言葉に
「パウ、お出かけ?」パアっと顔が輝いた。
「ガイアス様のお許しが出たらね。魔導具の調整をかねて、お出かけしたいと思っているよ」
その言い方はズルイ。パウパウがキラキラした目で自分を見ている。
これで許さなかったら、俺が息子に恨まれるじゃないか!
外堀を埋められたガイアスは、当然これも了承した。
ウルジェドはパウパウ親子に別れを告げ、ウネビ家の敷地を出て、イ・カルサ領都のガルデンの工房に転移する。
久しぶりに工房の皆と食事するのも楽しみだと、扉を開けたウルジェドを迎えたのは、うずくまり、げんなり窶れたエルダードワーフと弟子たち。
そして、ブワァーンと音を立て飛び回るバッタ?イナゴ?
誰かの「外に出る!早く閉めろ」の声で慌てて扉を閉める。
「ガルデン!これ、どうしたんだ」攻撃をされるではないが、鬱陶しい虫を振り払いながらガルデンに問うた。
「…ササ耳ぃ、どうしたもこうしたも、あの女、なんとかしてくれや」
モジャ髪のあちこちにバッタが絡まっているのを、チュンスケといつの間にか呼ばれていた茶色い小鳥が外そうと奮戦している。
鳥、弱い!
「あの女?え…?」工房の奥、腕を組み仁王立ちのハイエルフ。第三礼装の着こなしが見事だ。
知者、賢者クラスに対するときの深い青のローブ、中着は右前合わせ。刺繍は青のキジカクゥシ⁼ムゥシクスの花。
その周りをブンブンと跳ぶ銀色の蝗。頭を抱えて蹲るドワーフ達。カオス。
「ウルジェドさ~ん、あの奇麗なご令嬢、どう見てもウルジェドさんの関係者ですよねぇ…」 半泣きで匍匐前進してきたドーライグが縋る目で見る。彼の髪にもバッタが絡まっている。
「すまん。私の叔父だ」
は?という声は、今は無視させてもらう。
「叔父上!マールジェド叔父上、この魔道具とめてください」虫を避けているため、しゃがんだ体勢で声をかける。
「この姿のときは、マールシェダと呼んで!」チョーカー型の変声機を使った可愛いらしい声が答える。
「どぉでもいいわっ!早く止めろってんだよ」
ツーンと横を向いた叔父を見て、ウルジェドがキレた。
「そうですかっ。んじゃ、排除な」
突剣を出し、半身の構え。ブンブン飛び回る蝗達を突きだす。
「ハッ!これ、アダマス合金製よ、突けるわけな…い「はい30匹め~」串焼きみたいになった剣を取り換えて、別な突剣で、突き、鞭のようにしならせて叩き落とす。
以前グーリシェダばぁちゃんの使っていた魔道具より、一回りは大きいから狙いやすい。
どんなに固い素材でも、結合部分を攻められたら弱いものだ。
キンッ、キンッと澄んだ金属音がするたびに、飛んでいた虫がポトポト落ちていく。
見る間に減っていく己の魔道具虫たちに
「イヤ~!やめて!私の可愛いチャンなのよぉ」無視してウルジェドは魔道具を叩き落とし続ける。
「そんな可愛いんだったら、自宅でやれ。自宅で。人様に迷惑かけるなっ」
「ウルジェドぉ、だって、止まらなくなったんだモン」
「いい年齢した男が、”だモン”じゃねぇわ!だモンじゃぁ!」
ようやっと隊長格の1匹を仕留められて、他の虫たちが稼働を止め、床に落ちたのを見てウルジェドは溜息をついた。
「ガルデン、本当にすまなかった」叔父を土下座させ、無理やり押さえつけて頭を下げさせる。
「おぉう、いきなり入ってきて、”これが私の力よ!”って始まったときは驚いたがよ。なんだってんだ」
「マールジェド。私の叔父なんだが、魔具作りの腕は一級品だ」
今はマールシェダ!と異議を唱える叔父を無視して、ウルジェドが言った。
落ちてた蝗を拾い上げて、マジマジと見たガルデンが「確かに凄いな。恐ろしい程だ」
その声にガバリと顔を上げたマールシェダは、キラキラとした瞳をガルデンに向けて
「このカラクリは、今回、新しい試みとして魔石の動力を使うことなく外部からの魔力によってのみの稼働をしておりますの。そのため命令に対する思考部分を隊長機に一任させた並列思考によって軽…
はいはい。と、ウルジェドが口を塞ぐ。
ん゛~ん゛と聞こえるが無視だ。
いっそ鼻も塞ぐか。いや、流石にダメか。
「今日、私の家に来るように伝えていたんだが、そのな…お前と仕事が出来るのが嬉しす…ん゛~ん゛~が激しくなり、土下座していたマール叔父がガタガタ暴れだし、しまいには頭を床に叩きつけ出した。
どうした叔父。怖いぞ。
思わず、抑えていた手を離すとマール叔父は大声で
「言うなっウルジェド!私が泣くぞ!」
「女声で叫ぶな、言うから泣けよメンドくせぇ。ガルデン、叔父は、あんたの作る魔道具の大ファンなんだよ」
やめて~いわないでぇ~と真っ赤にした顔を両手で覆い、横座りに項垂れる叔父。
はみ出した長い耳まで真っ赤。
「あれで叔父」ドワーフたちが言う
「あの絶世の美女が叔父」ドーライグがダメ押しする。
項垂れているエセ美人を放置して、ウルジェドがガルデンに
「叔父上が作ったパウパウ用の魔導具を、念のためガルデンに検証してほしくてな。その話をしたかったんだが」
「あぁ~、まぁ、ここを掃除してからだな」
「私の家に来てもらうつもりだったのだが、大人しく待ってくれなかったわ。本当にすまん」
モジャ髪をバリバリやったらイナゴが出てきて、ガルデンが「うへぇ」と言った。
とりあえず、散らかった工房を片付けようと、拾ったバッタは300機。
”なにやってんの、この人”
先ほどまでとは打って変わって、ペコペコ頭を下げながら掃除するエセ美女ハイエルフに、皆、どんよりとした目を向けた。
「たいへん。お家、消えた」
歩いていたら出てくるだろうと、元の方向だと感じるほうへ歩き出す。
そのうちに、間伐がされていないのか、陽の光が入りにくくなった場所へ進んでいた。
「ソーナン?」ポロリと言葉がこぼれる。
どうしよう。
さすがに不安になって立ち止まっていると
「カァ」
「わぁ!」ビックリして尻もちを付いたパウパウの横に、白いカラスが舞い降りてきた。
「ミっちゃんトコのトィさん!」立ち上がり
「アーアッ!カァ」こっちだとカラスがピョンピョン歩くのに付いて行く。
少し進むと、やがて木々の切れ間から、光が見えてきた。
そのまま、カラスに付いて行くと、
「おかえり。大冒険したねぇ」ちょっとした開けた場所でザッカヤさんが待っていた。
「ミっちゃん!」
黒いマントに鈍色の剣を腰に差した、見たことのない姿だ。
後ろで縛った銀色の髪の毛がカッコいいとパウパウは思う。
「ミッチャン、それ剣?」初めて見たと、パウパウは目を輝かせる。
「うん、前にどこかで拾ったヤツだよ」
「パウも、パウもねっ、さっき拾った!」カッコイイ木の棒をミッチャンに見せてあげる。
「そっかぁ。じゃあ、お揃いだねぇ」
パウパウを抱き上げて、腕にのせて歩き出したミっちゃんに今日のことを一生懸命に話す。
尻尾がフサフサの生き物が木の枝をくれたこと。
トモラチと一緒に白玉団子を食べたこと。
ミっちゃんは楽し気に話を聞きながら、フサフサ尻尾は「キタノリス」といって、枯れた枝の木の皮や、中の虫を食べてくれる”木のお医者さん”なことや、
大きな蟻は「ギガントハキリ」という”自分のお家でキノコを育てる”種類なのだと教えてくれた。
「ほら、前に言っていた、パウパウのお家に悪いモノが入らないって事だけどね。
ギガントハキリは魔物なんだ。だから、パウパウのお家には入れません。で、このカラスのサブロも魔物です。」
白カラスは誇らしげに「カアッ」と鳴いた。
「でもサブロはパウの家に入れるよね」
「それは、私の、ん~…仲間だからね」
ミっちゃんの肩の白いカラスを見て、パウパウは首をかしげた。
「ナカマってトモラチ?」白カラスが首を曲げて「カァァ~?」と鳴いた。
「まぁ、そんなものかな」
「じゃぁ、アギさん、トモラチだから家に来れるね!」
「あれは、大きいからパウパウの家族がビックリしちゃうよ。お家に招待はやめておこうね」
あの道は塞いだから、ギガントハキリでは転移できないだろう。
楽しみにしているパウパウには可哀そうだが、もう大蟻と会う事はない、とミっちゃんは考えるがパウパウに気取られないように、話を続ける。
「だから、お家に入ってこられる魔物もいるんだよ。あと、毒のある動物や虫、悪い気持ちを持つ人は、家の人が招かない限り入れません」
昔、ウネビの家には、そういう魔法が玄関や窓などに掛けられたのだとミっちゃんが教えてくれた。
パウパウのお家が見えてきたところで、ミっちゃんが「おや、ガイアス様がお戻りですね、丁度よかったです」
門を潜ってヴィンテに乗ったガイアスが帰って来るところだった。
「ちょっとだけ目を瞑っていてね」パウパウに告げて、ウルジェドはガイアスの近くに転移する。
「父たま!ヴィンテ!」馬上の父親に手を伸ばすパウパウを、ガイアスのほうへ持ち上げて渡してやる。
「ただいまパウパウ」三男坊を抱き上げて、ガイアスは雑貨屋に会釈した。
「こんにちは、ガイアス様、すみませんが明後日の朝から、ご都合がよろしければ魔導具のドワーフと、エルフとで貴家を訪問させていただけますか」
ガイアスは鐙から足を外して、
「承った。感謝する」馬上から頭を下げた。
パウパウはヴィンテに乗れたのが嬉しくて笑っていたが、その後のミっちゃんの
「その後、パウパウと街へ行くことをお許し願いたい」との言葉に
「パウ、お出かけ?」パアっと顔が輝いた。
「ガイアス様のお許しが出たらね。魔導具の調整をかねて、お出かけしたいと思っているよ」
その言い方はズルイ。パウパウがキラキラした目で自分を見ている。
これで許さなかったら、俺が息子に恨まれるじゃないか!
外堀を埋められたガイアスは、当然これも了承した。
ウルジェドはパウパウ親子に別れを告げ、ウネビ家の敷地を出て、イ・カルサ領都のガルデンの工房に転移する。
久しぶりに工房の皆と食事するのも楽しみだと、扉を開けたウルジェドを迎えたのは、うずくまり、げんなり窶れたエルダードワーフと弟子たち。
そして、ブワァーンと音を立て飛び回るバッタ?イナゴ?
誰かの「外に出る!早く閉めろ」の声で慌てて扉を閉める。
「ガルデン!これ、どうしたんだ」攻撃をされるではないが、鬱陶しい虫を振り払いながらガルデンに問うた。
「…ササ耳ぃ、どうしたもこうしたも、あの女、なんとかしてくれや」
モジャ髪のあちこちにバッタが絡まっているのを、チュンスケといつの間にか呼ばれていた茶色い小鳥が外そうと奮戦している。
鳥、弱い!
「あの女?え…?」工房の奥、腕を組み仁王立ちのハイエルフ。第三礼装の着こなしが見事だ。
知者、賢者クラスに対するときの深い青のローブ、中着は右前合わせ。刺繍は青のキジカクゥシ⁼ムゥシクスの花。
その周りをブンブンと跳ぶ銀色の蝗。頭を抱えて蹲るドワーフ達。カオス。
「ウルジェドさ~ん、あの奇麗なご令嬢、どう見てもウルジェドさんの関係者ですよねぇ…」 半泣きで匍匐前進してきたドーライグが縋る目で見る。彼の髪にもバッタが絡まっている。
「すまん。私の叔父だ」
は?という声は、今は無視させてもらう。
「叔父上!マールジェド叔父上、この魔道具とめてください」虫を避けているため、しゃがんだ体勢で声をかける。
「この姿のときは、マールシェダと呼んで!」チョーカー型の変声機を使った可愛いらしい声が答える。
「どぉでもいいわっ!早く止めろってんだよ」
ツーンと横を向いた叔父を見て、ウルジェドがキレた。
「そうですかっ。んじゃ、排除な」
突剣を出し、半身の構え。ブンブン飛び回る蝗達を突きだす。
「ハッ!これ、アダマス合金製よ、突けるわけな…い「はい30匹め~」串焼きみたいになった剣を取り換えて、別な突剣で、突き、鞭のようにしならせて叩き落とす。
以前グーリシェダばぁちゃんの使っていた魔道具より、一回りは大きいから狙いやすい。
どんなに固い素材でも、結合部分を攻められたら弱いものだ。
キンッ、キンッと澄んだ金属音がするたびに、飛んでいた虫がポトポト落ちていく。
見る間に減っていく己の魔道具虫たちに
「イヤ~!やめて!私の可愛いチャンなのよぉ」無視してウルジェドは魔道具を叩き落とし続ける。
「そんな可愛いんだったら、自宅でやれ。自宅で。人様に迷惑かけるなっ」
「ウルジェドぉ、だって、止まらなくなったんだモン」
「いい年齢した男が、”だモン”じゃねぇわ!だモンじゃぁ!」
ようやっと隊長格の1匹を仕留められて、他の虫たちが稼働を止め、床に落ちたのを見てウルジェドは溜息をついた。
「ガルデン、本当にすまなかった」叔父を土下座させ、無理やり押さえつけて頭を下げさせる。
「おぉう、いきなり入ってきて、”これが私の力よ!”って始まったときは驚いたがよ。なんだってんだ」
「マールジェド。私の叔父なんだが、魔具作りの腕は一級品だ」
今はマールシェダ!と異議を唱える叔父を無視して、ウルジェドが言った。
落ちてた蝗を拾い上げて、マジマジと見たガルデンが「確かに凄いな。恐ろしい程だ」
その声にガバリと顔を上げたマールシェダは、キラキラとした瞳をガルデンに向けて
「このカラクリは、今回、新しい試みとして魔石の動力を使うことなく外部からの魔力によってのみの稼働をしておりますの。そのため命令に対する思考部分を隊長機に一任させた並列思考によって軽…
はいはい。と、ウルジェドが口を塞ぐ。
ん゛~ん゛と聞こえるが無視だ。
いっそ鼻も塞ぐか。いや、流石にダメか。
「今日、私の家に来るように伝えていたんだが、そのな…お前と仕事が出来るのが嬉しす…ん゛~ん゛~が激しくなり、土下座していたマール叔父がガタガタ暴れだし、しまいには頭を床に叩きつけ出した。
どうした叔父。怖いぞ。
思わず、抑えていた手を離すとマール叔父は大声で
「言うなっウルジェド!私が泣くぞ!」
「女声で叫ぶな、言うから泣けよメンドくせぇ。ガルデン、叔父は、あんたの作る魔道具の大ファンなんだよ」
やめて~いわないでぇ~と真っ赤にした顔を両手で覆い、横座りに項垂れる叔父。
はみ出した長い耳まで真っ赤。
「あれで叔父」ドワーフたちが言う
「あの絶世の美女が叔父」ドーライグがダメ押しする。
項垂れているエセ美人を放置して、ウルジェドがガルデンに
「叔父上が作ったパウパウ用の魔導具を、念のためガルデンに検証してほしくてな。その話をしたかったんだが」
「あぁ~、まぁ、ここを掃除してからだな」
「私の家に来てもらうつもりだったのだが、大人しく待ってくれなかったわ。本当にすまん」
モジャ髪をバリバリやったらイナゴが出てきて、ガルデンが「うへぇ」と言った。
とりあえず、散らかった工房を片付けようと、拾ったバッタは300機。
”なにやってんの、この人”
先ほどまでとは打って変わって、ペコペコ頭を下げながら掃除するエセ美女ハイエルフに、皆、どんよりとした目を向けた。
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