45 / 88
45.パウパウのキラキラとお友達 31
しおりを挟む
パウパウが目を覚ましたとき、ミッちゃんは台所で薬草茶を煎れている最中だった。
「ん……ミッちゃん?」
傍にミッちゃんが居ない。
「ミッちゃん。ミッちゃん!」
何故だか胸がモヤモヤして、パウパウは大きな声でハイエルフを呼んだ。
「大きな声を出して、どうした?」
ティーポットとカップを持ったミッちゃんが、少し驚いた顔を台所から覗かせた。
パウパウは掛けられていた布をグシャっとして、ソファーから飛び降り、ミッちゃんの元に駆け寄る。
「お?どうしたのパウパウ?」
ピトリと抱き着いてきたパウパウに、また驚く。
「う~」
ぐりぐりと|下腹に頭を擦りつけてくる。
「ちょっと、ちょっと待って、パウパウ。危ないから、お茶がこぼれるから」
(そこは、位置的にまずいから!)と、内心では思いつつ、
慌てて収納空間にティーポットとカップを突っ込んで、なんだか、ぐずっているパウパウの前に片膝を付いた。
「お目覚めだね、よく寝れたかい?」
何故だかパウパウは不機嫌そうに口を尖らせて、またミッちゃんに抱き着いて、今度は肩口に頭をぐりぐりし始める。
喉声で笑ったハイエルフが、パウパウの頭を撫ぜた。
「なにか飲む?お水?それとも、ライリがいいかな」
「イヤ」
「じゃ、なにがいい?桃もあるよ」
「ヤ」
「ふぅん、私は白ブドウの果実水を飲もうっと」
ミッちゃんは、パウパウを抱き上げてソファーに座らせると隣に腰を下ろした。
自分用のグラスとガラスの水差しを収納から取り出して、薄い緑がかった黄色の果実水を注ぐ。
「なんで?」
「ん~?
ミッちゃんは、態とにゆったりとした動作でグラスを口に運んだ。
なにが?」
「だって緑色なのに白ブドウって、変」
収納からグラスをもう一つ出して少し注いで、パウパウの前に置いた。
パウパウ用のガラスコップではなく、大人用のグラスだ。
「ほら、よく見て、なに色かな?」
幼子がまじまじと見ている隙に、グラスに軽量化の魔法を掛けた。
「透き通った緑?黄色だよミッちゃん」
「透き通った物を白って表現するらしいよ。あとブドウって小さいころ緑色だからね、区別したんじゃない?」
パウパウはふぅん、と気のなさそうな返事をしたが、白ブドウの良い匂いが鼻を擽ったのか、ハイエルフを伺いながらも、そっとグラスを両手で持って飲みだした。
ミッちゃんは愉快でたまらない。
寝起きにこんな不機嫌で我儘なのも初めて見たし、なんだか食って掛かるような言いぐさも初めてされた。
(ばぁちゃんの言っていた成長の芽かぁ……)
こうやって毎日、毎日、脱皮をするように変わっていくのだろう。
たまに会うだけでは気づけないことだ。
ハイエルフ族に幼児は居ない。
そうやって生まれてこない。
(パウパウと一緒にいるのは、楽しいなぁ)
「あ、そうだパウパウ。叔父上がね、お昼寝から起きたら温室に来てほしいって言ってたよ。どうする?」
「なんで?」
「どうしてもパウパウに、お手伝いしてほしいそうだよ」
「ぼくに、お手伝い?」
首を傾げるパウパウ。
「とりあえず、話を聞きに行く?ギンちゃんもトヒルも待っているよ」
「……うん、行く」
パウパウは飲み干したグラスをミッちゃんに渡して、ソファーからポンと降りる。
ミッちゃんは、それらを収納すると手を差し出したが、パウパウは何故か両手を上げて待っている。
どうやら、今は抱っこの気分らしい。
ミッちゃんは笑わないように注意してパウパウを抱き上げて、温室へ転移をした。
──────────────────────────────────────
ぐ~ったり、ドヨ~ン
温室に来てみたら、ぐったりしている。
植物が、ではなく、人々がミッちゃんの残していったダイニングテーブルに頭を乗せて、グッタリしている。
辺りの空気も重苦しくて淀んでドヨ~ンだ。
「ただいま、どうした?トヒル殿は?」
ミッちゃんはパウパウを抱き下ろしてから、淀んだ皆に声をかけた。
「一度、ギンちゃんの様子を見に行って、今はガルデンと一緒に、あっちよ」
マールが頭をあげて、門の方を見た。
「あぁ、ガルデンならば、あそこの魔素でも支障ないか。で、どうしたんだ、皆で脱力して」
「クソ奸臣どもめが、学問の何たるかも分からん脳みそカラッカラのくせに…実のない事をチュンチュンと囀るばかりで、陛下の周りを飛び回るゴク潰しが…」
光る頭を上げて、学長が地を這うような声で呪詛を吐く。
ミッちゃんの頭の上で、チュンスケが「ピ⁈」と鳴いた。
大丈夫だ、君じゃないとミッちゃんは首を少し振る。
「手紙を飛ばしましたら、やはり不敬だの何だのと…まぁ、予想してましたがねぇ」
オンブさんが大きく息を吐いた。
「たぶん、陛下のとこまで手紙は届いていないよ。途中で握りつぶされている。腹が立つなぁ」
フレーケン教授は頭すら上げずに、苦々しく言う。
どうやら温室をもっと高くするという要望は却下されたようだ。
「じゃあ、ギンちゃんは元の場所に帰すってことか?」
「それは、絶対だめっ!」
ミッちゃんの言葉に、いち早く反応したのは意外なことにマールだった。
「えっと、ギンちゃんは、なんだか本当に珍しい木なんですって、他に似たような仲間の樹もないんですって。ね?ね?学長、そうよね?」
「う、うむ。それは、そう」
なぜかマールの中身のない理由に押されている学長だ。
「ねぇ、マールちゃん。ぼく、何をお手伝いするの?」
「それ!パウちゃん、あのね、ギンちゃんが温室に居たいか、それとも元の所に帰りたいかを聞いてくれる?」
「いいけど、お手伝いって、それだけ?」
「もしかしたら、お手伝い増えちゃうかも、だけど…今は、それだけ。お願いしていい?」
「いいよ。じゃあ、ぼく、聞いてくる!」
パっと踵を返して駆けだすパウパウを、ミッちゃんが追いかける。
何故だか、椅子を倒して慌てて立ち上がったフレーケン教授が、その後を追いかけてきた。
「アハハ!ミッちゃん、はや~い」
白の打裂羽織を鳥の翼のように翻し、背割りから出ている緑の帯をヒラヒラと蝶のように揺らしながらパウパウが走る。
笑いながらギンちゃんの元まで駆けて行き
「いっちば~ん!」
両手を幹にペタリとして、嬉しそうに振り向いた。
「パウパウ、早くなったねぇ」
「ほんと⁈ヴィンテに勝てる?」
「…いや、馬と駆けっこは私だって勝てないなぁ」
「そっか~」
ケラケラと笑って、肩で息をしていたのが落ち着くと、パウパウは幹を撫ぜながら話しを始めた。
「ギンちゃん、ただいま!友達、見てきたよ。あのね~……」
フレーケン教授が、パウパウを見守っているミッちゃんに小声で話しかけた。
「ウルジェド殿、パウパウ殿は本当に、あの木と意志疎通をしているのですか」
「さぁ?」
「さぁって……」
「でも、パウパウは鶏だの馬だの、魔蟻だのと何となく話が通じているんでね」
あと、ハヤツの親もだとミッちゃんは思ったが、四才で砂漠オオネコを眷属にした真名ナシなんて知られたら、五月蠅いことになりそうなので黙っておく。
「……へぇ~。じゃあ、あっちの空気じゃなくても平気なんだ。あ!トヒルは?トヒルと一緒が嬉しい?」
(いや、それ、私が嬉しくねぇぇぇぇ!)
ミッちゃんはパウパウの話を止めるに止められず、また胃の腑がシクシクして来た。
あれ?毒蛇殿、常駐しちゃうの?
それ、下手したら帝都壊滅じゃないの?
「うん、持ってる!代わりに挿せばいいんだね、うん、ミッちゃんが連れて行ってくれるから、だいじょぶ」
幹から手を放してパウパウは、振り返って笑った。
「あのね、ギンちゃん。ここに居てもいいって」
いつの間にかパウパウとギンちゃんの様子を見に来ていた学長が、ちょっと涙目で嬉しそうにコクコクと頷き、オンブさんは、それを見てホッとした顔だ。
「あのね、ここに友達とか木とか鳥とか虫とかがいたら嬉しいって」
「あぁ、秘境の環境を、ここに一部でも再現出来たら素晴らしいね、役に立つ薬の研究も出来るし、大学の目玉になるよ」
フレーケン教授は自分の専門でないのに、なんだか嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、問題はここの高さねぇ。どうやって貴族を出し抜くか……」
マールジェドが技術者らしく、眉を顰めて天井を睨みながら物騒なことを呟く。
現在も、アマミン達はガラスドームの内側下段で元気にきゅこきゅこ中だ。
「……ねぇ、ミッちゃん、どうしたの?」
大人たちの様子を見たパウパウが、ミッちゃんを見上げて聞いた。
「うん、ギンちゃんが大きくなったら天井に頭がついてしまうからね。でも、ここの天井を高くしたらダメって偉い人に言われて困っているんだよ」
ふ~ん、と言ったパウパウは天井を見て、働くイモムシを見て、足元を見てから
「地面、掘っちゃダメなの?」
「え?」
「あのね、ミルメレオンみたく掘ったら?」
ミルメレオンは落ちた葉などの下に擂鉢状の穴を掘って、小さな虫が通りかかるのを待つ、罠を張る虫だ。
一見すると落ち葉しか見えず、その下に穴があるとは気が付かない。
父様たちの鍛錬で、やる事のないパウパウは落ちてる葉を引っくり返しては巣を探してヒマをつぶしていた。
だいたいは飽きてしまって、餌になる虫を捕まえる所を見たことはないけれど、ミッちゃんが貸してくれた虫の本にも載っていたのを覚えていた。
「ん……ミッちゃん?」
傍にミッちゃんが居ない。
「ミッちゃん。ミッちゃん!」
何故だか胸がモヤモヤして、パウパウは大きな声でハイエルフを呼んだ。
「大きな声を出して、どうした?」
ティーポットとカップを持ったミッちゃんが、少し驚いた顔を台所から覗かせた。
パウパウは掛けられていた布をグシャっとして、ソファーから飛び降り、ミッちゃんの元に駆け寄る。
「お?どうしたのパウパウ?」
ピトリと抱き着いてきたパウパウに、また驚く。
「う~」
ぐりぐりと|下腹に頭を擦りつけてくる。
「ちょっと、ちょっと待って、パウパウ。危ないから、お茶がこぼれるから」
(そこは、位置的にまずいから!)と、内心では思いつつ、
慌てて収納空間にティーポットとカップを突っ込んで、なんだか、ぐずっているパウパウの前に片膝を付いた。
「お目覚めだね、よく寝れたかい?」
何故だかパウパウは不機嫌そうに口を尖らせて、またミッちゃんに抱き着いて、今度は肩口に頭をぐりぐりし始める。
喉声で笑ったハイエルフが、パウパウの頭を撫ぜた。
「なにか飲む?お水?それとも、ライリがいいかな」
「イヤ」
「じゃ、なにがいい?桃もあるよ」
「ヤ」
「ふぅん、私は白ブドウの果実水を飲もうっと」
ミッちゃんは、パウパウを抱き上げてソファーに座らせると隣に腰を下ろした。
自分用のグラスとガラスの水差しを収納から取り出して、薄い緑がかった黄色の果実水を注ぐ。
「なんで?」
「ん~?
ミッちゃんは、態とにゆったりとした動作でグラスを口に運んだ。
なにが?」
「だって緑色なのに白ブドウって、変」
収納からグラスをもう一つ出して少し注いで、パウパウの前に置いた。
パウパウ用のガラスコップではなく、大人用のグラスだ。
「ほら、よく見て、なに色かな?」
幼子がまじまじと見ている隙に、グラスに軽量化の魔法を掛けた。
「透き通った緑?黄色だよミッちゃん」
「透き通った物を白って表現するらしいよ。あとブドウって小さいころ緑色だからね、区別したんじゃない?」
パウパウはふぅん、と気のなさそうな返事をしたが、白ブドウの良い匂いが鼻を擽ったのか、ハイエルフを伺いながらも、そっとグラスを両手で持って飲みだした。
ミッちゃんは愉快でたまらない。
寝起きにこんな不機嫌で我儘なのも初めて見たし、なんだか食って掛かるような言いぐさも初めてされた。
(ばぁちゃんの言っていた成長の芽かぁ……)
こうやって毎日、毎日、脱皮をするように変わっていくのだろう。
たまに会うだけでは気づけないことだ。
ハイエルフ族に幼児は居ない。
そうやって生まれてこない。
(パウパウと一緒にいるのは、楽しいなぁ)
「あ、そうだパウパウ。叔父上がね、お昼寝から起きたら温室に来てほしいって言ってたよ。どうする?」
「なんで?」
「どうしてもパウパウに、お手伝いしてほしいそうだよ」
「ぼくに、お手伝い?」
首を傾げるパウパウ。
「とりあえず、話を聞きに行く?ギンちゃんもトヒルも待っているよ」
「……うん、行く」
パウパウは飲み干したグラスをミッちゃんに渡して、ソファーからポンと降りる。
ミッちゃんは、それらを収納すると手を差し出したが、パウパウは何故か両手を上げて待っている。
どうやら、今は抱っこの気分らしい。
ミッちゃんは笑わないように注意してパウパウを抱き上げて、温室へ転移をした。
──────────────────────────────────────
ぐ~ったり、ドヨ~ン
温室に来てみたら、ぐったりしている。
植物が、ではなく、人々がミッちゃんの残していったダイニングテーブルに頭を乗せて、グッタリしている。
辺りの空気も重苦しくて淀んでドヨ~ンだ。
「ただいま、どうした?トヒル殿は?」
ミッちゃんはパウパウを抱き下ろしてから、淀んだ皆に声をかけた。
「一度、ギンちゃんの様子を見に行って、今はガルデンと一緒に、あっちよ」
マールが頭をあげて、門の方を見た。
「あぁ、ガルデンならば、あそこの魔素でも支障ないか。で、どうしたんだ、皆で脱力して」
「クソ奸臣どもめが、学問の何たるかも分からん脳みそカラッカラのくせに…実のない事をチュンチュンと囀るばかりで、陛下の周りを飛び回るゴク潰しが…」
光る頭を上げて、学長が地を這うような声で呪詛を吐く。
ミッちゃんの頭の上で、チュンスケが「ピ⁈」と鳴いた。
大丈夫だ、君じゃないとミッちゃんは首を少し振る。
「手紙を飛ばしましたら、やはり不敬だの何だのと…まぁ、予想してましたがねぇ」
オンブさんが大きく息を吐いた。
「たぶん、陛下のとこまで手紙は届いていないよ。途中で握りつぶされている。腹が立つなぁ」
フレーケン教授は頭すら上げずに、苦々しく言う。
どうやら温室をもっと高くするという要望は却下されたようだ。
「じゃあ、ギンちゃんは元の場所に帰すってことか?」
「それは、絶対だめっ!」
ミッちゃんの言葉に、いち早く反応したのは意外なことにマールだった。
「えっと、ギンちゃんは、なんだか本当に珍しい木なんですって、他に似たような仲間の樹もないんですって。ね?ね?学長、そうよね?」
「う、うむ。それは、そう」
なぜかマールの中身のない理由に押されている学長だ。
「ねぇ、マールちゃん。ぼく、何をお手伝いするの?」
「それ!パウちゃん、あのね、ギンちゃんが温室に居たいか、それとも元の所に帰りたいかを聞いてくれる?」
「いいけど、お手伝いって、それだけ?」
「もしかしたら、お手伝い増えちゃうかも、だけど…今は、それだけ。お願いしていい?」
「いいよ。じゃあ、ぼく、聞いてくる!」
パっと踵を返して駆けだすパウパウを、ミッちゃんが追いかける。
何故だか、椅子を倒して慌てて立ち上がったフレーケン教授が、その後を追いかけてきた。
「アハハ!ミッちゃん、はや~い」
白の打裂羽織を鳥の翼のように翻し、背割りから出ている緑の帯をヒラヒラと蝶のように揺らしながらパウパウが走る。
笑いながらギンちゃんの元まで駆けて行き
「いっちば~ん!」
両手を幹にペタリとして、嬉しそうに振り向いた。
「パウパウ、早くなったねぇ」
「ほんと⁈ヴィンテに勝てる?」
「…いや、馬と駆けっこは私だって勝てないなぁ」
「そっか~」
ケラケラと笑って、肩で息をしていたのが落ち着くと、パウパウは幹を撫ぜながら話しを始めた。
「ギンちゃん、ただいま!友達、見てきたよ。あのね~……」
フレーケン教授が、パウパウを見守っているミッちゃんに小声で話しかけた。
「ウルジェド殿、パウパウ殿は本当に、あの木と意志疎通をしているのですか」
「さぁ?」
「さぁって……」
「でも、パウパウは鶏だの馬だの、魔蟻だのと何となく話が通じているんでね」
あと、ハヤツの親もだとミッちゃんは思ったが、四才で砂漠オオネコを眷属にした真名ナシなんて知られたら、五月蠅いことになりそうなので黙っておく。
「……へぇ~。じゃあ、あっちの空気じゃなくても平気なんだ。あ!トヒルは?トヒルと一緒が嬉しい?」
(いや、それ、私が嬉しくねぇぇぇぇ!)
ミッちゃんはパウパウの話を止めるに止められず、また胃の腑がシクシクして来た。
あれ?毒蛇殿、常駐しちゃうの?
それ、下手したら帝都壊滅じゃないの?
「うん、持ってる!代わりに挿せばいいんだね、うん、ミッちゃんが連れて行ってくれるから、だいじょぶ」
幹から手を放してパウパウは、振り返って笑った。
「あのね、ギンちゃん。ここに居てもいいって」
いつの間にかパウパウとギンちゃんの様子を見に来ていた学長が、ちょっと涙目で嬉しそうにコクコクと頷き、オンブさんは、それを見てホッとした顔だ。
「あのね、ここに友達とか木とか鳥とか虫とかがいたら嬉しいって」
「あぁ、秘境の環境を、ここに一部でも再現出来たら素晴らしいね、役に立つ薬の研究も出来るし、大学の目玉になるよ」
フレーケン教授は自分の専門でないのに、なんだか嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、問題はここの高さねぇ。どうやって貴族を出し抜くか……」
マールジェドが技術者らしく、眉を顰めて天井を睨みながら物騒なことを呟く。
現在も、アマミン達はガラスドームの内側下段で元気にきゅこきゅこ中だ。
「……ねぇ、ミッちゃん、どうしたの?」
大人たちの様子を見たパウパウが、ミッちゃんを見上げて聞いた。
「うん、ギンちゃんが大きくなったら天井に頭がついてしまうからね。でも、ここの天井を高くしたらダメって偉い人に言われて困っているんだよ」
ふ~ん、と言ったパウパウは天井を見て、働くイモムシを見て、足元を見てから
「地面、掘っちゃダメなの?」
「え?」
「あのね、ミルメレオンみたく掘ったら?」
ミルメレオンは落ちた葉などの下に擂鉢状の穴を掘って、小さな虫が通りかかるのを待つ、罠を張る虫だ。
一見すると落ち葉しか見えず、その下に穴があるとは気が付かない。
父様たちの鍛錬で、やる事のないパウパウは落ちてる葉を引っくり返しては巣を探してヒマをつぶしていた。
だいたいは飽きてしまって、餌になる虫を捕まえる所を見たことはないけれど、ミッちゃんが貸してくれた虫の本にも載っていたのを覚えていた。
25
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
俺の居場所を探して
夜野
BL
小林響也は炎天下の中辿り着き、自宅のドアを開けた瞬間眩しい光に包まれお約束的に異世界にたどり着いてしまう。
そこには怪しい人達と自分と犬猿の仲の弟の姿があった。
そこで弟は聖女、自分は弟の付き人と決められ、、、
このお話しは響也と弟が対立し、こじれて決別してそれぞれお互い的に幸せを探す話しです。
シリアスで暗めなので読み手を選ぶかもしれません。
遅筆なので不定期に投稿します。
初投稿です。
ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!
或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」
***
日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。
疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。
彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界!
リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。
しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?!
さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……?
執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人
ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー
※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇♀️
※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです
※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます
朝or夜(時間未定)1話更新予定です。
1話が長くなってしまった場合、分割して2話更新する場合もあります。
♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております!
感想も頂けると泣いて喜びます!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
悪役の僕 何故か愛される
いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ
王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。
悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。
そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて…
ファンタジーラブコメBL
不定期更新
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
愛しい番に愛されたいオメガなボクの奮闘記
天田れおぽん
BL
ボク、アイリス・ロックハートは愛しい番であるオズワルドと出会った。
だけどオズワルドには初恋の人がいる。
でもボクは負けない。
ボクは愛しいオズワルドの唯一になるため、番のオメガであることに甘えることなく頑張るんだっ!
※「可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない」のオズワルド君の番の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる