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45.パウパウのキラキラとお友達 31
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パウパウが目を覚ましたとき、ミッちゃんは台所で薬草茶を煎れている最中だった。
「ん……ミッちゃん?」
傍にミッちゃんが居ない。
「ミッちゃん。ミッちゃん!」
何故だか胸がモヤモヤして、パウパウは大きな声でハイエルフを呼んだ。
「大きな声を出して、どうした?」
ティーポットとカップを持ったミッちゃんが、少し驚いた顔を台所から覗かせた。
パウパウは掛けられていた布をグシャっとして、ソファーから飛び降り、ミッちゃんの元に駆け寄る。
「お?どうしたのパウパウ?」
ピトリと抱き着いてきたパウパウに、また驚く。
「う~」
ぐりぐりと|下腹に頭を擦りつけてくる。
「ちょっと、ちょっと待って、パウパウ。危ないから、お茶がこぼれるから」
(そこは、位置的にまずいから!)と、内心では思いつつ、
慌てて収納空間にティーポットとカップを突っ込んで、なんだか、ぐずっているパウパウの前に片膝を付いた。
「お目覚めだね、よく寝れたかい?」
何故だかパウパウは不機嫌そうに口を尖らせて、またミッちゃんに抱き着いて、今度は肩口に頭をぐりぐりし始める。
喉声で笑ったハイエルフが、パウパウの頭を撫ぜた。
「なにか飲む?お水?それとも、ライリがいいかな」
「イヤ」
「じゃ、なにがいい?桃もあるよ」
「ヤ」
「ふぅん、私は白ブドウの果実水を飲もうっと」
ミッちゃんは、パウパウを抱き上げてソファーに座らせると隣に腰を下ろした。
自分用のグラスとガラスの水差しを収納から取り出して、薄い緑がかった黄色の果実水を注ぐ。
「なんで?」
「ん~?
ミッちゃんは、態とにゆったりとした動作でグラスを口に運んだ。
なにが?」
「だって緑色なのに白ブドウって、変」
収納からグラスをもう一つ出して少し注いで、パウパウの前に置いた。
パウパウ用のガラスコップではなく、大人用のグラスだ。
「ほら、よく見て、なに色かな?」
幼子がまじまじと見ている隙に、グラスに軽量化の魔法を掛けた。
「透き通った緑?黄色だよミッちゃん」
「透き通った物を白って表現するらしいよ。あとブドウって小さいころ緑色だからね、区別したんじゃない?」
パウパウはふぅん、と気のなさそうな返事をしたが、白ブドウの良い匂いが鼻を擽ったのか、ハイエルフを伺いながらも、そっとグラスを両手で持って飲みだした。
ミッちゃんは愉快でたまらない。
寝起きにこんな不機嫌で我儘なのも初めて見たし、なんだか食って掛かるような言いぐさも初めてされた。
(ばぁちゃんの言っていた成長の芽かぁ……)
こうやって毎日、毎日、脱皮をするように変わっていくのだろう。
たまに会うだけでは気づけないことだ。
ハイエルフ族に幼児は居ない。
そうやって生まれてこない。
(パウパウと一緒にいるのは、楽しいなぁ)
「あ、そうだパウパウ。叔父上がね、お昼寝から起きたら温室に来てほしいって言ってたよ。どうする?」
「なんで?」
「どうしてもパウパウに、お手伝いしてほしいそうだよ」
「ぼくに、お手伝い?」
首を傾げるパウパウ。
「とりあえず、話を聞きに行く?ギンちゃんもトヒルも待っているよ」
「……うん、行く」
パウパウは飲み干したグラスをミッちゃんに渡して、ソファーからポンと降りる。
ミッちゃんは、それらを収納すると手を差し出したが、パウパウは何故か両手を上げて待っている。
どうやら、今は抱っこの気分らしい。
ミッちゃんは笑わないように注意してパウパウを抱き上げて、温室へ転移をした。
──────────────────────────────────────
ぐ~ったり、ドヨ~ン
温室に来てみたら、ぐったりしている。
植物が、ではなく、人々がミッちゃんの残していったダイニングテーブルに頭を乗せて、グッタリしている。
辺りの空気も重苦しくて淀んでドヨ~ンだ。
「ただいま、どうした?トヒル殿は?」
ミッちゃんはパウパウを抱き下ろしてから、淀んだ皆に声をかけた。
「一度、ギンちゃんの様子を見に行って、今はガルデンと一緒に、あっちよ」
マールが頭をあげて、門の方を見た。
「あぁ、ガルデンならば、あそこの魔素でも支障ないか。で、どうしたんだ、皆で脱力して」
「クソ奸臣どもめが、学問の何たるかも分からん脳みそカラッカラのくせに…実のない事をチュンチュンと囀るばかりで、陛下の周りを飛び回るゴク潰しが…」
光る頭を上げて、学長が地を這うような声で呪詛を吐く。
ミッちゃんの頭の上で、チュンスケが「ピ⁈」と鳴いた。
大丈夫だ、君じゃないとミッちゃんは首を少し振る。
「手紙を飛ばしましたら、やはり不敬だの何だのと…まぁ、予想してましたがねぇ」
オンブさんが大きく息を吐いた。
「たぶん、陛下のとこまで手紙は届いていないよ。途中で握りつぶされている。腹が立つなぁ」
フレーケン教授は頭すら上げずに、苦々しく言う。
どうやら温室をもっと高くするという要望は却下されたようだ。
「じゃあ、ギンちゃんは元の場所に帰すってことか?」
「それは、絶対だめっ!」
ミッちゃんの言葉に、いち早く反応したのは意外なことにマールだった。
「えっと、ギンちゃんは、なんだか本当に珍しい木なんですって、他に似たような仲間の樹もないんですって。ね?ね?学長、そうよね?」
「う、うむ。それは、そう」
なぜかマールの中身のない理由に押されている学長だ。
「ねぇ、マールちゃん。ぼく、何をお手伝いするの?」
「それ!パウちゃん、あのね、ギンちゃんが温室に居たいか、それとも元の所に帰りたいかを聞いてくれる?」
「いいけど、お手伝いって、それだけ?」
「もしかしたら、お手伝い増えちゃうかも、だけど…今は、それだけ。お願いしていい?」
「いいよ。じゃあ、ぼく、聞いてくる!」
パっと踵を返して駆けだすパウパウを、ミッちゃんが追いかける。
何故だか、椅子を倒して慌てて立ち上がったフレーケン教授が、その後を追いかけてきた。
「アハハ!ミッちゃん、はや~い」
白の打裂羽織を鳥の翼のように翻し、背割りから出ている緑の帯をヒラヒラと蝶のように揺らしながらパウパウが走る。
笑いながらギンちゃんの元まで駆けて行き
「いっちば~ん!」
両手を幹にペタリとして、嬉しそうに振り向いた。
「パウパウ、早くなったねぇ」
「ほんと⁈ヴィンテに勝てる?」
「…いや、馬と駆けっこは私だって勝てないなぁ」
「そっか~」
ケラケラと笑って、肩で息をしていたのが落ち着くと、パウパウは幹を撫ぜながら話しを始めた。
「ギンちゃん、ただいま!友達、見てきたよ。あのね~……」
フレーケン教授が、パウパウを見守っているミッちゃんに小声で話しかけた。
「ウルジェド殿、パウパウ殿は本当に、あの木と意志疎通をしているのですか」
「さぁ?」
「さぁって……」
「でも、パウパウは鶏だの馬だの、魔蟻だのと何となく話が通じているんでね」
あと、ハヤツの親もだとミッちゃんは思ったが、四才で砂漠オオネコを眷属にした真名ナシなんて知られたら、五月蠅いことになりそうなので黙っておく。
「……へぇ~。じゃあ、あっちの空気じゃなくても平気なんだ。あ!トヒルは?トヒルと一緒が嬉しい?」
(いや、それ、私が嬉しくねぇぇぇぇ!)
ミッちゃんはパウパウの話を止めるに止められず、また胃の腑がシクシクして来た。
あれ?毒蛇殿、常駐しちゃうの?
それ、下手したら帝都壊滅じゃないの?
「うん、持ってる!代わりに挿せばいいんだね、うん、ミッちゃんが連れて行ってくれるから、だいじょぶ」
幹から手を放してパウパウは、振り返って笑った。
「あのね、ギンちゃん。ここに居てもいいって」
いつの間にかパウパウとギンちゃんの様子を見に来ていた学長が、ちょっと涙目で嬉しそうにコクコクと頷き、オンブさんは、それを見てホッとした顔だ。
「あのね、ここに友達とか木とか鳥とか虫とかがいたら嬉しいって」
「あぁ、秘境の環境を、ここに一部でも再現出来たら素晴らしいね、役に立つ薬の研究も出来るし、大学の目玉になるよ」
フレーケン教授は自分の専門でないのに、なんだか嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、問題はここの高さねぇ。どうやって貴族を出し抜くか……」
マールジェドが技術者らしく、眉を顰めて天井を睨みながら物騒なことを呟く。
現在も、アマミン達はガラスドームの内側下段で元気にきゅこきゅこ中だ。
「……ねぇ、ミッちゃん、どうしたの?」
大人たちの様子を見たパウパウが、ミッちゃんを見上げて聞いた。
「うん、ギンちゃんが大きくなったら天井に頭がついてしまうからね。でも、ここの天井を高くしたらダメって偉い人に言われて困っているんだよ」
ふ~ん、と言ったパウパウは天井を見て、働くイモムシを見て、足元を見てから
「地面、掘っちゃダメなの?」
「え?」
「あのね、ミルメレオンみたく掘ったら?」
ミルメレオンは落ちた葉などの下に擂鉢状の穴を掘って、小さな虫が通りかかるのを待つ、罠を張る虫だ。
一見すると落ち葉しか見えず、その下に穴があるとは気が付かない。
父様たちの鍛錬で、やる事のないパウパウは落ちてる葉を引っくり返しては巣を探してヒマをつぶしていた。
だいたいは飽きてしまって、餌になる虫を捕まえる所を見たことはないけれど、ミッちゃんが貸してくれた虫の本にも載っていたのを覚えていた。
「ん……ミッちゃん?」
傍にミッちゃんが居ない。
「ミッちゃん。ミッちゃん!」
何故だか胸がモヤモヤして、パウパウは大きな声でハイエルフを呼んだ。
「大きな声を出して、どうした?」
ティーポットとカップを持ったミッちゃんが、少し驚いた顔を台所から覗かせた。
パウパウは掛けられていた布をグシャっとして、ソファーから飛び降り、ミッちゃんの元に駆け寄る。
「お?どうしたのパウパウ?」
ピトリと抱き着いてきたパウパウに、また驚く。
「う~」
ぐりぐりと|下腹に頭を擦りつけてくる。
「ちょっと、ちょっと待って、パウパウ。危ないから、お茶がこぼれるから」
(そこは、位置的にまずいから!)と、内心では思いつつ、
慌てて収納空間にティーポットとカップを突っ込んで、なんだか、ぐずっているパウパウの前に片膝を付いた。
「お目覚めだね、よく寝れたかい?」
何故だかパウパウは不機嫌そうに口を尖らせて、またミッちゃんに抱き着いて、今度は肩口に頭をぐりぐりし始める。
喉声で笑ったハイエルフが、パウパウの頭を撫ぜた。
「なにか飲む?お水?それとも、ライリがいいかな」
「イヤ」
「じゃ、なにがいい?桃もあるよ」
「ヤ」
「ふぅん、私は白ブドウの果実水を飲もうっと」
ミッちゃんは、パウパウを抱き上げてソファーに座らせると隣に腰を下ろした。
自分用のグラスとガラスの水差しを収納から取り出して、薄い緑がかった黄色の果実水を注ぐ。
「なんで?」
「ん~?
ミッちゃんは、態とにゆったりとした動作でグラスを口に運んだ。
なにが?」
「だって緑色なのに白ブドウって、変」
収納からグラスをもう一つ出して少し注いで、パウパウの前に置いた。
パウパウ用のガラスコップではなく、大人用のグラスだ。
「ほら、よく見て、なに色かな?」
幼子がまじまじと見ている隙に、グラスに軽量化の魔法を掛けた。
「透き通った緑?黄色だよミッちゃん」
「透き通った物を白って表現するらしいよ。あとブドウって小さいころ緑色だからね、区別したんじゃない?」
パウパウはふぅん、と気のなさそうな返事をしたが、白ブドウの良い匂いが鼻を擽ったのか、ハイエルフを伺いながらも、そっとグラスを両手で持って飲みだした。
ミッちゃんは愉快でたまらない。
寝起きにこんな不機嫌で我儘なのも初めて見たし、なんだか食って掛かるような言いぐさも初めてされた。
(ばぁちゃんの言っていた成長の芽かぁ……)
こうやって毎日、毎日、脱皮をするように変わっていくのだろう。
たまに会うだけでは気づけないことだ。
ハイエルフ族に幼児は居ない。
そうやって生まれてこない。
(パウパウと一緒にいるのは、楽しいなぁ)
「あ、そうだパウパウ。叔父上がね、お昼寝から起きたら温室に来てほしいって言ってたよ。どうする?」
「なんで?」
「どうしてもパウパウに、お手伝いしてほしいそうだよ」
「ぼくに、お手伝い?」
首を傾げるパウパウ。
「とりあえず、話を聞きに行く?ギンちゃんもトヒルも待っているよ」
「……うん、行く」
パウパウは飲み干したグラスをミッちゃんに渡して、ソファーからポンと降りる。
ミッちゃんは、それらを収納すると手を差し出したが、パウパウは何故か両手を上げて待っている。
どうやら、今は抱っこの気分らしい。
ミッちゃんは笑わないように注意してパウパウを抱き上げて、温室へ転移をした。
──────────────────────────────────────
ぐ~ったり、ドヨ~ン
温室に来てみたら、ぐったりしている。
植物が、ではなく、人々がミッちゃんの残していったダイニングテーブルに頭を乗せて、グッタリしている。
辺りの空気も重苦しくて淀んでドヨ~ンだ。
「ただいま、どうした?トヒル殿は?」
ミッちゃんはパウパウを抱き下ろしてから、淀んだ皆に声をかけた。
「一度、ギンちゃんの様子を見に行って、今はガルデンと一緒に、あっちよ」
マールが頭をあげて、門の方を見た。
「あぁ、ガルデンならば、あそこの魔素でも支障ないか。で、どうしたんだ、皆で脱力して」
「クソ奸臣どもめが、学問の何たるかも分からん脳みそカラッカラのくせに…実のない事をチュンチュンと囀るばかりで、陛下の周りを飛び回るゴク潰しが…」
光る頭を上げて、学長が地を這うような声で呪詛を吐く。
ミッちゃんの頭の上で、チュンスケが「ピ⁈」と鳴いた。
大丈夫だ、君じゃないとミッちゃんは首を少し振る。
「手紙を飛ばしましたら、やはり不敬だの何だのと…まぁ、予想してましたがねぇ」
オンブさんが大きく息を吐いた。
「たぶん、陛下のとこまで手紙は届いていないよ。途中で握りつぶされている。腹が立つなぁ」
フレーケン教授は頭すら上げずに、苦々しく言う。
どうやら温室をもっと高くするという要望は却下されたようだ。
「じゃあ、ギンちゃんは元の場所に帰すってことか?」
「それは、絶対だめっ!」
ミッちゃんの言葉に、いち早く反応したのは意外なことにマールだった。
「えっと、ギンちゃんは、なんだか本当に珍しい木なんですって、他に似たような仲間の樹もないんですって。ね?ね?学長、そうよね?」
「う、うむ。それは、そう」
なぜかマールの中身のない理由に押されている学長だ。
「ねぇ、マールちゃん。ぼく、何をお手伝いするの?」
「それ!パウちゃん、あのね、ギンちゃんが温室に居たいか、それとも元の所に帰りたいかを聞いてくれる?」
「いいけど、お手伝いって、それだけ?」
「もしかしたら、お手伝い増えちゃうかも、だけど…今は、それだけ。お願いしていい?」
「いいよ。じゃあ、ぼく、聞いてくる!」
パっと踵を返して駆けだすパウパウを、ミッちゃんが追いかける。
何故だか、椅子を倒して慌てて立ち上がったフレーケン教授が、その後を追いかけてきた。
「アハハ!ミッちゃん、はや~い」
白の打裂羽織を鳥の翼のように翻し、背割りから出ている緑の帯をヒラヒラと蝶のように揺らしながらパウパウが走る。
笑いながらギンちゃんの元まで駆けて行き
「いっちば~ん!」
両手を幹にペタリとして、嬉しそうに振り向いた。
「パウパウ、早くなったねぇ」
「ほんと⁈ヴィンテに勝てる?」
「…いや、馬と駆けっこは私だって勝てないなぁ」
「そっか~」
ケラケラと笑って、肩で息をしていたのが落ち着くと、パウパウは幹を撫ぜながら話しを始めた。
「ギンちゃん、ただいま!友達、見てきたよ。あのね~……」
フレーケン教授が、パウパウを見守っているミッちゃんに小声で話しかけた。
「ウルジェド殿、パウパウ殿は本当に、あの木と意志疎通をしているのですか」
「さぁ?」
「さぁって……」
「でも、パウパウは鶏だの馬だの、魔蟻だのと何となく話が通じているんでね」
あと、ハヤツの親もだとミッちゃんは思ったが、四才で砂漠オオネコを眷属にした真名ナシなんて知られたら、五月蠅いことになりそうなので黙っておく。
「……へぇ~。じゃあ、あっちの空気じゃなくても平気なんだ。あ!トヒルは?トヒルと一緒が嬉しい?」
(いや、それ、私が嬉しくねぇぇぇぇ!)
ミッちゃんはパウパウの話を止めるに止められず、また胃の腑がシクシクして来た。
あれ?毒蛇殿、常駐しちゃうの?
それ、下手したら帝都壊滅じゃないの?
「うん、持ってる!代わりに挿せばいいんだね、うん、ミッちゃんが連れて行ってくれるから、だいじょぶ」
幹から手を放してパウパウは、振り返って笑った。
「あのね、ギンちゃん。ここに居てもいいって」
いつの間にかパウパウとギンちゃんの様子を見に来ていた学長が、ちょっと涙目で嬉しそうにコクコクと頷き、オンブさんは、それを見てホッとした顔だ。
「あのね、ここに友達とか木とか鳥とか虫とかがいたら嬉しいって」
「あぁ、秘境の環境を、ここに一部でも再現出来たら素晴らしいね、役に立つ薬の研究も出来るし、大学の目玉になるよ」
フレーケン教授は自分の専門でないのに、なんだか嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、問題はここの高さねぇ。どうやって貴族を出し抜くか……」
マールジェドが技術者らしく、眉を顰めて天井を睨みながら物騒なことを呟く。
現在も、アマミン達はガラスドームの内側下段で元気にきゅこきゅこ中だ。
「……ねぇ、ミッちゃん、どうしたの?」
大人たちの様子を見たパウパウが、ミッちゃんを見上げて聞いた。
「うん、ギンちゃんが大きくなったら天井に頭がついてしまうからね。でも、ここの天井を高くしたらダメって偉い人に言われて困っているんだよ」
ふ~ん、と言ったパウパウは天井を見て、働くイモムシを見て、足元を見てから
「地面、掘っちゃダメなの?」
「え?」
「あのね、ミルメレオンみたく掘ったら?」
ミルメレオンは落ちた葉などの下に擂鉢状の穴を掘って、小さな虫が通りかかるのを待つ、罠を張る虫だ。
一見すると落ち葉しか見えず、その下に穴があるとは気が付かない。
父様たちの鍛錬で、やる事のないパウパウは落ちてる葉を引っくり返しては巣を探してヒマをつぶしていた。
だいたいは飽きてしまって、餌になる虫を捕まえる所を見たことはないけれど、ミッちゃんが貸してくれた虫の本にも載っていたのを覚えていた。
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