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59 .パウパウのキラキラとお友達 45
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二人は逃げるように雑貨屋に帰って来た。
「……やぁ、まいったねぇ」
ミッちゃんは腕の中のパウパウに笑いかける。
「フフフ、なんだか変だったねっ!」
目的の動物園でなかったけれど、とても大きい牛を見れた。
パウパウは外出なんてしたことがなかったのだから、今日の魔獣園だって楽しかった。
ミッちゃんはパウパウをソファーに座らせて、収納してあるライリの果実水をパウパウ用のグラスに注いでテーブルに置いた。
「ミッちゃん、お腹空いた!」
「あぁ!そうだね、お昼ご飯が遅くなってしまったね」
「あ、ぼく、奇麗にしてなかった」
「ふふ、ズルっこしようか」
両手を突き出して言うパウパウに、浄化と洗浄の魔法を掛けながらと笑う。
「ばぁちゃんには、内緒だよ」
「ん~奇麗になるなら、いいと思う」
サッパリと洗った感じはしないが、これでも奇麗になるなら構わないとパウパウは思う。
ミッちゃんはパウパウの前に全粒粉を混ぜたパンケーキとスクランブルエッグとソーセージ。
サラダほうれん草と小さいトマト、チシャのグリーンサラダを出した。
「あまり甘くないパンケーキだからね、甘いのも出す?」
「ううん、だいじょぶ」
スクランブルエッグにはマプチェ鳥の卵を使った。
ソーセージは柑橘の皮と様々なハーブが入った羊と豚の合いびき肉のグリルだ。
一応、アセルの樹液と魔蜜も出しておく。
「スープとヨーグルトも出そうか?」
「だいじょぶ」
応接テーブルの床にクッションを出して、ソファーに凭れながら二人で、いただきますをした。
あまり、お行儀がよろしくない姿だ。
「この格好、グー姉様、怒るかな?」
「ばれなきゃイイのさ」
ミッちゃんが悪戯を思いついた子供みたいに口角をあげて笑うのを、パウパウは初めて見た。
「えへへ、ばれなきゃいいのさ!」
パウパウも真似して片方の口角を上げて笑ってみたけど失敗して、ニーって顔になった。
ミッちゃんはアセルの樹液をかけたパンケーキとソーセージを一緒に食べている。
パウパウは甘いとしょっぱいが一緒は好きでないので、別々に食べる。
「このソーセージ、不思議な味だけど美味しい」
「口に合ってよかった。羊肉だから少し癖があるだろ?」
「良い匂いで美味しいよ」
「あぁ、燻製してあるからね。ところでパウパウ、この後どうする。どこか行こうか?」
二人で相談して、ギガントハキリに会いたいというパウパウの希望で西の森へ行くことにした。
眷属の確認もあるので、丁度いい。
雑貨屋から歩いて30分ほどだが、転移をすることにした。
ウネビ家の近くだから、出来るだけ家人に合うような危険は減らしたかった。
「あ、ちょっとだけ待ってくれる?」
ミッちゃんは紙とペンを取り出して、手紙をしたためる。
もちろん、ウネビ家の当主ガイアス宛てだ。
【ウネビ家の次男が、雑貨屋の前で友人に対して揉め事を起こしたこと。
それを止めようとしたところ、ここはウネビの土地だから、商売が出来ないようにしてやると暴言を吐かれたこと。
今後の入店をご遠慮いただくように伝えたが、少年とはいえ家の名を出してきたからには、当方に対し何か問題を起こした場合は、そちらが厳正なる態度で対処することを願う】
走り書き程度だが”そちらで厳正なる態度で対処”としたのは、ミッちゃんなりの譲歩だ。
ウネビの当主ならば、この地が畝傍の物では無いと知っている。
ハイエルフに対して決して言えない言葉だ。
ちゃんと次男の躾をして手綱を握るようにという通告だった。
少し考えて、追伸にパウパウは元気で楽しく過ごしていることを書き添えた。
パウパウと遊んでいるサブロに手紙を渡すと、心底イヤそうな顔で「ゲッ」と鳴いた。
カラスなんだから「カァ」と鳴け!
どうやら、パウパウと遊んでいたかったらしい。
その不機嫌そうな顔をマジマジと覗き込むようにパウパウは見つめる。
「サブロちゃん、お仕事イヤなら僕、変わってあげようか?」
その言葉にピルピルと首を振って、慌てたようにサブロは手紙を嘴に咥え、足輪の転移魔法を起動した。
そして、二人でウネビ家西側の、パウパウが魔蟻と出会った林に転移する。
(あの後、こっそりと結界を張ったからギガントハキリは来られないだろうけど)
流石にハイエルフといえども、キノコの道の微細な魔素を辿るのは難しいので、大雑把で力技を信条としているミッちゃんは、出口になっているキノコの輪の地面に結界を掛けておいたのだ。
つまり、パウパウ言うところのドヒョーの上に円い板ガラスを置いた状態だ。
手入れの足りていない雑木林の一角、ぽっかりと開いた空間にある、白いキノコの輪。
ミッちゃんはそこに、何度も何度も結界を破ろうとした痕跡を見つける。
(ふむ、ここに何度も来て、外に出られなかったということか……)
雨も降った事もあって白いキノコは急成長していた。
「前に見たときより、キノコ大きいね」
パウパウが跨いで輪の中に入る。
「アギーさん、来ないかなぁ」
あの時ギガントハキリがやったように、一周くるりと回ってみた。
当然、そんな事で転移が出来るわけもない。
次にパウパウは
「アギーさぁん」
魔蟻を呼びながら、両手でパンパンと地面を叩く。
ミッちゃんは結界を今、解くから待ってねと言おうとし……
「⁈」
パウパウを抱き上げて後ろに飛んだ。
(結界が熔けた?)
輪の中に眩い光が立ち上がる。
煌々とした白い光が徐々に収まったあと
「アギーさんだぁ!」
嬉しそうにパウパウが笑う。
ミッちゃんは作り笑いを浮かべた。
キノコの輪の中の魔蟻。
それはいい。
問題なのは、
「……ねぇ、パウパウ?蟻さん、大きくなっていないかい?」
ハイエルフが知っているギガントハキリの働きアリとは違っていた。
大きさも。
牙の鋭さも。
通常なら赤茶色の外骨格が赤金色に輝いている。
そして、頭、胸、腹のそれぞれの棘が鋭く太くなっていた。
「うん!アギーさん、もっとカッコよくなったねっ!」
あはははは……
ハイエルフは乾いた笑い声をあげた。
「そっかー、カッコよくなったのかぁ」
(こいつ、ギガントハキリの亜種に進化しかけていますけど⁈)
赤金色の頭、大きめの黒い複眼の間に琥珀色の小さな目を認めて、ミッちゃんは頭を抱えそうになった。
「……やぁ、まいったねぇ」
ミッちゃんは腕の中のパウパウに笑いかける。
「フフフ、なんだか変だったねっ!」
目的の動物園でなかったけれど、とても大きい牛を見れた。
パウパウは外出なんてしたことがなかったのだから、今日の魔獣園だって楽しかった。
ミッちゃんはパウパウをソファーに座らせて、収納してあるライリの果実水をパウパウ用のグラスに注いでテーブルに置いた。
「ミッちゃん、お腹空いた!」
「あぁ!そうだね、お昼ご飯が遅くなってしまったね」
「あ、ぼく、奇麗にしてなかった」
「ふふ、ズルっこしようか」
両手を突き出して言うパウパウに、浄化と洗浄の魔法を掛けながらと笑う。
「ばぁちゃんには、内緒だよ」
「ん~奇麗になるなら、いいと思う」
サッパリと洗った感じはしないが、これでも奇麗になるなら構わないとパウパウは思う。
ミッちゃんはパウパウの前に全粒粉を混ぜたパンケーキとスクランブルエッグとソーセージ。
サラダほうれん草と小さいトマト、チシャのグリーンサラダを出した。
「あまり甘くないパンケーキだからね、甘いのも出す?」
「ううん、だいじょぶ」
スクランブルエッグにはマプチェ鳥の卵を使った。
ソーセージは柑橘の皮と様々なハーブが入った羊と豚の合いびき肉のグリルだ。
一応、アセルの樹液と魔蜜も出しておく。
「スープとヨーグルトも出そうか?」
「だいじょぶ」
応接テーブルの床にクッションを出して、ソファーに凭れながら二人で、いただきますをした。
あまり、お行儀がよろしくない姿だ。
「この格好、グー姉様、怒るかな?」
「ばれなきゃイイのさ」
ミッちゃんが悪戯を思いついた子供みたいに口角をあげて笑うのを、パウパウは初めて見た。
「えへへ、ばれなきゃいいのさ!」
パウパウも真似して片方の口角を上げて笑ってみたけど失敗して、ニーって顔になった。
ミッちゃんはアセルの樹液をかけたパンケーキとソーセージを一緒に食べている。
パウパウは甘いとしょっぱいが一緒は好きでないので、別々に食べる。
「このソーセージ、不思議な味だけど美味しい」
「口に合ってよかった。羊肉だから少し癖があるだろ?」
「良い匂いで美味しいよ」
「あぁ、燻製してあるからね。ところでパウパウ、この後どうする。どこか行こうか?」
二人で相談して、ギガントハキリに会いたいというパウパウの希望で西の森へ行くことにした。
眷属の確認もあるので、丁度いい。
雑貨屋から歩いて30分ほどだが、転移をすることにした。
ウネビ家の近くだから、出来るだけ家人に合うような危険は減らしたかった。
「あ、ちょっとだけ待ってくれる?」
ミッちゃんは紙とペンを取り出して、手紙をしたためる。
もちろん、ウネビ家の当主ガイアス宛てだ。
【ウネビ家の次男が、雑貨屋の前で友人に対して揉め事を起こしたこと。
それを止めようとしたところ、ここはウネビの土地だから、商売が出来ないようにしてやると暴言を吐かれたこと。
今後の入店をご遠慮いただくように伝えたが、少年とはいえ家の名を出してきたからには、当方に対し何か問題を起こした場合は、そちらが厳正なる態度で対処することを願う】
走り書き程度だが”そちらで厳正なる態度で対処”としたのは、ミッちゃんなりの譲歩だ。
ウネビの当主ならば、この地が畝傍の物では無いと知っている。
ハイエルフに対して決して言えない言葉だ。
ちゃんと次男の躾をして手綱を握るようにという通告だった。
少し考えて、追伸にパウパウは元気で楽しく過ごしていることを書き添えた。
パウパウと遊んでいるサブロに手紙を渡すと、心底イヤそうな顔で「ゲッ」と鳴いた。
カラスなんだから「カァ」と鳴け!
どうやら、パウパウと遊んでいたかったらしい。
その不機嫌そうな顔をマジマジと覗き込むようにパウパウは見つめる。
「サブロちゃん、お仕事イヤなら僕、変わってあげようか?」
その言葉にピルピルと首を振って、慌てたようにサブロは手紙を嘴に咥え、足輪の転移魔法を起動した。
そして、二人でウネビ家西側の、パウパウが魔蟻と出会った林に転移する。
(あの後、こっそりと結界を張ったからギガントハキリは来られないだろうけど)
流石にハイエルフといえども、キノコの道の微細な魔素を辿るのは難しいので、大雑把で力技を信条としているミッちゃんは、出口になっているキノコの輪の地面に結界を掛けておいたのだ。
つまり、パウパウ言うところのドヒョーの上に円い板ガラスを置いた状態だ。
手入れの足りていない雑木林の一角、ぽっかりと開いた空間にある、白いキノコの輪。
ミッちゃんはそこに、何度も何度も結界を破ろうとした痕跡を見つける。
(ふむ、ここに何度も来て、外に出られなかったということか……)
雨も降った事もあって白いキノコは急成長していた。
「前に見たときより、キノコ大きいね」
パウパウが跨いで輪の中に入る。
「アギーさん、来ないかなぁ」
あの時ギガントハキリがやったように、一周くるりと回ってみた。
当然、そんな事で転移が出来るわけもない。
次にパウパウは
「アギーさぁん」
魔蟻を呼びながら、両手でパンパンと地面を叩く。
ミッちゃんは結界を今、解くから待ってねと言おうとし……
「⁈」
パウパウを抱き上げて後ろに飛んだ。
(結界が熔けた?)
輪の中に眩い光が立ち上がる。
煌々とした白い光が徐々に収まったあと
「アギーさんだぁ!」
嬉しそうにパウパウが笑う。
ミッちゃんは作り笑いを浮かべた。
キノコの輪の中の魔蟻。
それはいい。
問題なのは、
「……ねぇ、パウパウ?蟻さん、大きくなっていないかい?」
ハイエルフが知っているギガントハキリの働きアリとは違っていた。
大きさも。
牙の鋭さも。
通常なら赤茶色の外骨格が赤金色に輝いている。
そして、頭、胸、腹のそれぞれの棘が鋭く太くなっていた。
「うん!アギーさん、もっとカッコよくなったねっ!」
あはははは……
ハイエルフは乾いた笑い声をあげた。
「そっかー、カッコよくなったのかぁ」
(こいつ、ギガントハキリの亜種に進化しかけていますけど⁈)
赤金色の頭、大きめの黒い複眼の間に琥珀色の小さな目を認めて、ミッちゃんは頭を抱えそうになった。
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