パウパウは今日も元気

松川 鷹羽

文字の大きさ
62 / 178

62. パウパウの夏とカナヘビ探し

しおりを挟む
 本格的な夏になった。
 パウパウの住んでいる所は大陸の北寄りなので、帝都よりは涼しい。

 パウパウは、相変わらずミッちゃんの雑貨屋で暮らしていた。

 毎日、本を読んで、グーリシェダに色々な話を教えてもらったり、ハヤツ達と遊んでみたり。
 時々、帝都の温室に行って、トヒルやギンちゃんに会いに行ったりもしている。
 この前は、マールジェドに頼まれてギンちゃんの友達を種で連れてくるという、お仕事もした。
 いま、ギンちゃんの根元で植木鉢に入って、発芽を待っている。

 あとは、ウネビの家に誰も居ないときに転移をして、ヴィンテやニワトリと会ってもいる。
 ミッちゃんの鳥が、母様かぁさま兄様にぃさまが居ないときを教えてくれるので、そのときに転移をしている。
 ミッちゃんが用意してくれた魔道具でだ。
(……アキス ネライだっけ……みたいだけど)
 ヴィンテとニワトリ達には会いたいが、あの二人には会いたくないため仕方がない。

 サブロやアオメが付けている銀の足輪をパウパウ用に改良した物で、行ける場所は、ウネビの家の前と、雑貨屋の居間と、ギガントハキリの蟻塚に限定されている。

 ミッちゃんもグーリシェダも居ないときに、一人でハヤツと遊んでいるのも限度があった。
 もともと、パウパウはウネビ家の敷地内を独りでウロチョロしていたのだ、やはり、外遊びは必要だった。

 危ないことはしないという約束で、やっと貰えた魔道具は、パウパウの足首に付けてある。

 ということで、ハイエルフの二人ともが留守の今日、ウネビ家の前に転移をしてきて、西の雑木林へ行き、キノコの輪が健在だったのでアギーさんを呼んだ。
 キノコの輪に両手を付いて
「アギーさ~ん、あ~そ~ぼ~」

 遂に、遂に、憧れの”あ~そ~ぼ~”である!
 相手がアリだけど!それは、それ

 キノコの輪に光が立ち上り、ギガントハキリのアギーがやって来た。
「アギーさん!」
 
 いそいそとパウパウは敷物を敷いて、ナイナイ袋からオヤツを取り出す。
 アギーさんの好きな白玉団子の金蜜がけだ。
 魔蜜と花粉が使われている花の香がする白玉はパウパウもお気に入りだ。

「あとで、マムさんにも持って帰ってね」
 仲良く食べ終わってから、パウパウはアギーさんに今日の計画を打ち明けた。

「今日はカナヘビドロムスを探そうと思います」

 この前、読んだ図鑑に載っていたカナヘビドロムス。生息地は、土手とか草わらとか、石垣とか、何だか、その辺に居ると書いてあったので、自分でも見つけられるだろうとパウパウは思った。

 で、頑張って雑貨屋さんの裏庭とかを探したのだが、まったく見つけることが出来なかったのだ。

(やっぱり、夏なら、カナヘビドロムスとタガメとカブトムシとクワガタは外せない!)
 前世の記憶か、知識なのかは分からないが、謎の使命感に燃えたパウパウは、この夏にやることの一つをカナヘビドロムスを見るに決めてしまったのだ。

「ギチっ?」
 アギーさんは首を傾げた。
 いきなり、カナヘビドロムスって言われてもアギーさんには分からない。
 ギガントハキリは基本、キノコ菌しか食べないので、他の動物のことなど気にしないのだ。
 外敵以外は。

「探しに行きたいから、アギーさん、乗せてくれる?」

 パウパウのお願いにアギーさんは足をたたんで低くなってくれた。

 体の彼方此方あちこちに生えている棘を足場にして、パウパウはアギーさんの背によじ登る。
 最初は登れなかったけれど、練習して大分だいぶ、上手になったと自分では思っている。
 硬い毛が密集しているので滑る事はないし、棘の間に体を入れたら安定する。

 ついでに得意のおまじないで
「落ちませんように、あとアギーさんが怪我しませんように」と頭の中で思って準備完了だ。

「いいよ!アギーさん!あっち、海の方へ行こうか」
 そう、パウパウは崖の辺りならカナヘビが居ると考えたのだ。

 そんな過酷なとこまで行かなくても、餌の多い草わらの適度に日当たりが良い石の上とかに居るのだが。
 だが、足が速い小さな蜥蜴なので、なかなか見つかる事がないだけなのだ。

「きっとさ、崖のさけめ?穴?みたいなところに居ると思うの」
 魔蟻の足なら、どこでも登れるだろう。


  ウネビの家で裏庭の奥に行かないようにと言われていたパウパウは、崖を見るのも海を見るのも初めてだ。
 アギーさんの背に乗って、西の雑木林を抜けた先、目の前に広がったのは崖と、その下の海。
 深い青色をした海だった。
  重たい青色だ。
 (ん~、ニホンカイ?)
 記憶の中の海と照らし合わせて首をかしげた。
 今日は風もないからなのか、入り江になっている場所に立つ白波はない。

 崖はかなり険しく、ゴツゴツとした岩肌が荒々しかった。
 だが、両親の話から考えると、何か所か下に降りられる道があって、それを使って塩を炊く作業をしに海へ行ったりしているのだろう。
 パウパウはアギーさんにお願いして、もっと崖の縁まで近づいてもらう。

 右のウネビ家側を覗いてみると、やはり、家の裏庭から下の磯に降りる九十九折の道があった。
 だが、随分と使っていないようで、崩れていて道は途切れているようだ。

 左側を見ると、勾配は少し緩やかにはなっているが、道らしいものは見当たらない。
「う~ん。アギーさん、途中まで降りられそうなトコ、あるかなぁ?」
 アギーさんは、ウロウロと歩き回り、触角をピルピルさせて降り口を探し、やがて立ち止まった。

 もう、あまり面影は残っていないけれど、以前は道だった場所を見つけたようだ。
「アギーさん、下りられる?」
 カシリと牙を鳴らして、アギーさんが答える。
 頼もしい。
 ギガントハキリの力強い脚が崖を斜めに降り始めた。
(うわっ横Gがキツイかも…)
 最初はアギーの硬い毛を握りしめていられたが、やがて勾配が急になってきて首にしがみ付いた。
 出来るだけ足も魔蟻の腹に巻き付けようと頑張るのだが、足りない。
 それでも、ぶらぶらせずに座っていられたのは多分、おまじないが効いているのだろう。

 時折、小さくて黒い小鳥が文句を言うように「ヂュピピピ」と飛んでいく。

 ようやく、崖の中腹、岩の張り出している所に地点に辿り着いて、アギーさんは足を止めた。
 上を見ても、岩肌と空しか見えない。 
 パウパウは、崖のあちらこちらを眺めてカナヘビのいそうな穴を探した。

「ん?」
 少し斜め上の岩棚状になっている張り出しに亀裂を見つけた。
「アギーさん、あれ。あそこに行ける?」
「ギギギ」
 牙をガチガチさせて、警戒をするアギーさんをなだめて岩登りをしてもらい、岩棚に辿り着く。
(結構、お腹に力入れてないと、大変だったぁ…)
 フッキン?鍛えよう……そんなことを思いながら、岩肌に手を付いて亀裂に向かって声をかける。

「カナチョロ~いますかぁ?パウパウだよ~」

 それで出てくるわけがない。
 そんな声をあげたら、臆病なカナヘビはまっしぐらに逃げてしまう。
 

 だが、その亀裂に居た。
 逃げずにパウパウを見返すカナチョロと、目が合った。
 金色の眼だった。
(へぇ~この世界のカナヘビは、こんな色の眼なんだ)
 確か、住んでいる場所で体色などが変わるらしいので、こういう個体もいるのか…とパウパウは思う。

 初めて見るカナヘビドロムスは、図鑑で見たよりも、ちょっと大きかったけれど、ようやく見られたのでパウパウは大満足だ。
 「カナチョロ、見せてくれて、ありがとね」
 次は全身を見たいなぁと思いながら、その場でアギーさんと蟻塚に転移をした。

「アギーさん、今日はありがと。これ、マムさんにオミヤ持ってってね」
 マムさんの白玉団子を渡して、パウパウはミッちゃんの雑貨屋の2階に転移で帰る。

「ただいま!グーねぇ様」
「おぉ、お帰り、今日は何をして遊んだのかの?」
「アギーさんと、カナチョロ探し!」

 会話をしながら、パウパウの魔力の流れを見ているグーリシェダは、首をかしげた。
「パウ坊、他に何かしたかの?」
「ううん?カナチョロ探してただけだよ?あ、一匹見れたよ」
「そうか、よかったの」
「うん!ミッちゃんは?」
「厨房で、なにやら作っておるから見ておいで」

 は~いと嬉しそうに扉の向こうへ去って行くパウパウを見送って、グーリシェダは呟く。

「カナチョロ…?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。 勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。

王子様から逃げられない!

一寸光陰
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

転生聖賢者は、悪女に迷った婚約者の王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 全五話です。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

クズ王子から婚約を盾に迫られ全力で逃げたら、その先には別な婚約の罠が待っていました?

gacchi(がっち)
恋愛
隣国からの留学生のリアージュは、お婆様から婚約者を探すように言われていた。リアージュとしては義妹のいない平和な学園で静かに勉強したかっただけ。それなのに、「おとなしく可愛がられるなら婚約してやろう」って…そんな王子はお断り!なんとか逃げた先で出会ったのは、ものすごい美形の公爵令息で。「俺が守ってやろうか?」1年間の婚約期間で結婚するかどうか決めることになっちゃった?恋愛初心者な令嬢と愛に飢えた令息のあまり隠しもしない攻防。

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

うちの魔王様が過保護すぎる

秋山龍央
BL
主人公・折本修司(オリモトシュウジ)は転生恩恵女神様ガチャにはずれて異世界に転生して早々、つんでいた。 「異世界で言葉が分かるようにしてくれ」と頼んだところ、相手の言葉は分かるが自分は異世界の言葉は喋れない状態となり、 「平和な国に転生したい」と頼んだところ、平和で治安のいい国に転生をすることはできたものの、そこは人間のいない魔族だけの国だったのである。 困っていた主人公の元に、異世界の"魔王"である紅の髪と角を持つ男があらわれて―― 「まさか――そっくりだとは思ってたけれど、お前、本当にシュウなのか?」 異世界転生魔王様×異世界転生主人公 幼馴染年下攻めだけど年上攻めです

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

処理中です...