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67.パウパウの夏とタガメ探し 5
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玄関の扉を魔道人形が開く。
屋敷の前庭に出たミッちゃんは、グーリシェダに文句をブツブツと言っていた。
「グーはないでしょ、グーは」
「いい年して、はしゃいでおるのが悪い。パウ坊が呆れておったぞ」
「グー?」
「拳だね。ほらジャンケンのグーだよ、知らない?」
首を傾げたパウパウに、ミッちゃんが片手を握って見せた。
グーチョキパーと手を動かしてくれた。
この世界にジャンケンがあったんだ。
友達がいないパウパウは、やる機会こそなかったけど知識としては知っている。
「ほらほら、話しておると遅くなるぞ。ウルジェド、リヨスアルヴァの入国門近くまで飛ぶ。そこから馬で行くとしよう」
グーリシェダの転移で移動をする。
着いたのは、土の道の傍らに作られた開けた場所だ。
馬車などの転回場所だろうか。
石畳を踏んでいた感触が一瞬で変わるのは、いつも違和感がある。
ミッちゃん達はもちろん、ガルデンも平気そうなのを見てパウパウは、
(自分も大きくなったら平気になるのかなぁ)と思う。
「ガルデン、俺の馬でいいか?それとも自分のを使うか?」
「俺の馬を使うわ。やっぱ鞍の形がなぁ」
そう言ってガルデンが出した馬は、ヴィンテよりも大きかった。
「ジェントル・ジャイアント……」
記憶の中にあるブラバント種の、輓馬に使われることもある軍馬の子孫にそっくりだった。
とても魔道馬には見えない。
近寄っても生き物の匂いや温度を感じないのが、かえって不思議なくらいだ。
「これ、ガルデンおじちゃんが作ったの?」
「そうだな。昔、うちで飼っていた馬をモデルに作ったんだ」
「へぇ~、すごいなぁ」
青毛馬に見とれていると今度は、ミッちゃんが収納空間から出したらしい馬が、少し離れた場所に白い光の粒子とともに現れた。
ガルデンの馬より一回り小柄な細身の馬型魔道具。
「アハルテケ…?」
月毛の馬は光の加減で金色に輝く。
「ミッちゃん、すごい美人さんの馬だねぇ……」
「そうかい?私たちの里に本物が住んでいるよ。興味があるなら今度、見に行くかい?」
「やめよ!ウルジェド!このバカを止めよ!」
こくこくと頷くパウパウの耳にグーリシェダの悲鳴が聞こえてきた。
何事かと振りむくと
「……マールちゃん」
マールジェドが騎獣を出していた。
騎獣。いや、騎虫か。
「あ~、これは酷い」
ミッちゃんが、低い声で呟いた。
巨大な蜘蛛型魔道具。
全身が金属で出来た蜘蛛。
動くたびにギシッガシャッと鳴るのが、鳴き声みたいで怖さが倍増だ。
「大丈夫です、母上。武装は外してあります」
「そういう問題ではないわ!」
銀の蜘蛛の背に跨ったマールジェドを見上げてグーリシェダが叫ぶ。
足踏みするようにガシャッガシャッと8本脚が動く。
たとえ武装していなくても、そんなのが国に近づいただけで、戦意アリと見なされそうだ。
「おい、マール。その蜘蛛、すげぇけどよ」
「ガルデン!分かる?脚8本の稼動バランスがねっ……
「おぅ、凄いけどよ、それだと俺の馬と高さが合わねぇから、話がしづらいだろ。横幅があるから並べねぇしよ」
「えっ…あ、そ、そうね。そうよね」
グーリシェダが小さい声で「おぉ…」と呟いた。
マールジェドが素直に蜘蛛型魔道具を仕舞って、アハルテケに似た馬型魔道具を出したからだ。
「ガルデン殿がマール使いになってきておるわ…」
「マール使い…?」
首を傾げたパウパウをミッちゃんが二人用の鞍の前側に乗せてくれた。
「二人乗りの鞍ってあるんだね」
「うん、パウパウと乗る事があると思って用意していたんだ」
座ってみると、思ったよりも安定している。
疲れたら後ろのミッちゃんに寄りかかればいい。
「これラクチン!」
「あはは、そうか、楽チンか」
グーリシェダも魔道馬に騎乗し、荷馬車2台程度の幅の道を、のんびりと4頭の魔道馬でリヨスアルヴァ国へと向かう事になった。
日差しがウネビより強い。
「リボンに遮光の術を施してあるけど、暑かったら言うんだよ」
「ありがと、だいじょぶ。なんか涼しいよ」
多分、色々な暑さと日光に負けない魔法が施されているんだろうなぁと、パウパウは思う。
草原の中に作られた道を、ポックリポックリと進む。
ときどき、林のような場所が出てきて、パウパウの住んでいる場所とは植生が違うのか、生えている木の色が違う。
セミの鳴き声のような虫音が、あちらこちらから響くが、パウパウには、あまり知らない音に聞こえる。
「ミンミンじゃないなぁ……」
「ミンミン?」
後ろで手綱を操るミッちゃんが聞いてきた。
「ミンミンゼミ……こっちには居ないのかなぁ」
もしかしたら、ウネビ領から随分と離れた場所なのかもしれない、今度、地図をミッちゃん見せてもらおう、とパウパウは思った。
「セミ?よく分からないな、ゴメンね」
「ううん、違う名前かもしれないから、あとで図鑑見てみるね」
進み始めて暫くしてから、前方に城壁のような人工物が微かに見えてきた。
「あんまり道を通る人がいないねぇ」
農作業をしている人も見かけない。
「あぁ、こちら側は辺境に続く道だからね、逆側なら、もっと賑やかだと思うよ」
「ふぅん」
隣を進んでいたグーリシェダが少し馬を寄せて
「賑やかな道を選んでいたら、これほど距離を稼げてはいないし、のどかに楽しめなかっただろうよ」
「まぁ、少し前から、こっちを見ているのは居るけどねぇ」
「一応の防衛はしておるという事じゃな」
何故か馬鹿にしたようにグーリシェダが鼻で笑った。
小川に架かる橋を何度か渡り、左右の林が無くなると、何かの野菜を植えた畑が見え始め、ポツポツと民家が畑の向こうに見えてくる。
やがて左右に広がったのは奇麗に高さの揃った鮮やかな緑のマット。
水田だ。
四角い区分けはされていない水田が広がっていた。
周りには用水路が掘られている。
少し広めの畦道は住民の生活道路だろうか。
パズルのように組み合わさった、柔らかな緑色が奇麗だ。
「ミッちゃん、田んぼ、奇麗だねぇ」
「あぁ、こうして、ちゃんと見るのは初めてかもしれないな……奇麗なものだ」
「水が奇麗なら、タガメいるかなぁ」
「ばぁちゃんの薬師ギルドでの仕事が終わったら、探しに行こうね」
「さっさと済ませて、パウ坊の虫取りに行かねばのぅ」
話をしていると、彼方から巻き上がる土埃が見えた。城壁の方から来たようだ。
「なにか近づいて来てるよ、グー姉様」
「あら、やっぱり来ちゃったのね。ガルデン、済まないけど母上の後ろに付いて貰っていい?」
「おう、分かった」
そう言って、マールジェドがグーリシェダの右隣に付き、言われたとおりにガルデンの青毛の巨馬はグーリシェダの後ろに位置取りをする。
此方に向かって、みるみるうちに大きくなっていく土煙を上げているのは、騎馬兵が10騎ほどで、先頭の一人を除いて、揃いの白い鎧姿のようだ。
間違いなく、こちらを目的として駆けてくる騎馬兵に対して、ハイエルフ達は馬を止めることなく進む。
こちらが止まって待つことは決してない。
今までのとおり、ゆっくりと散策を楽しみながら魔道馬を歩かせていくだけだ。
「ばぁちゃん、念のため結界を張る」
「うむ。おぉ、そうじゃ、パウ坊、あちらから来る馬達の土埃が汚らしいから、お呪いをしてはくれぬかの?」
「ん?もっと、ゆっくり走ってねって?」
「おぉ、それがいいの」
パウパウはグーリシェダに頼まれたとおりに鞍上からお願いをしてみる。
近づいて来る騎兵がパウパウも怖かったので丁度いい。
(あっちの馬さん、怖いから、お願い。ゆっくり来てね……)
振り向いて後ろのミッちゃんを見上げて
「お呪いしてみた!どうかなぁ……あっちの馬さん、お願い聞いてくれるかなぁ」
「ははは……うん、驚いたな。随分とゆっくりになったようだよ」
「なんとまぁ、効果覿面じゃの、パウ坊のお呪いが、ここまで効くとは、凄いのぅ」
グー姉様が褒めてくれて、パウパウは嬉しくなって口角が上がる。
見ると騎馬兵の馬達は、叱咤しても、腹を蹴っても速度が並足から上がらないようだ。
(本当の馬が可哀そうだから、あまり やらないで欲しいなぁ……)
諦めて、トコトコと来ればいいとパウパウは思う。
「ププっ、あとは道を開けてくれるといいんだけれどねぇ、邪魔だわぁ」
「まぁ、そこはマールジェド叔父上の威光で一つ、お願いしますよ」
「ふふ……まぁかせて。叔父上の凄さを見せてあげよう」
マールジェドは握りこぶしの親指をグッと上げて莞爾と笑った。
サムズアップだ。
そんなのも、同じなのかとパウパウは驚いた。
騎馬兵の先頭に居た男が、ハイエルフ一行に声を上げた。
「お待ちください。ハイエルフ族の方々とお見受けいたします!」
貴族服なのだろうか、奇麗な色のタブレットに短いマント姿の壮年の男だった。
金髪で耳が尖っている。
(あれが、エルフ……?)パウパウは内心で首を傾げる。
マールジェドが馬を停めた。併せて皆も馬の足を停める。
「それを知って、なお、馬上より我らに声を掛けるか」
静かな、それでいて凛とした声が響いた。
「あ…」
「下馬せよ、無礼である」
マールジェドの声は静かだ。だが、不思議と騎馬兵たちに伝わった。
慌てたように男が後ろの騎馬兵の一人に声を掛け、他の者達が、ガシャリゴソリと無粋な音を立てながら下馬をした。
「リヨスアルヴァは、道を開けよと言わねば分からぬのか」
10騎の騎馬兵は、アタフタと漸くハイエルフ達のために馬を道の両端に並べた。
マールジェドが少し顎を引き、それを合図に一行は馬を進める。
と、
「お、お待ちください。ハイエルフの皆さま」
「我らの進むを阻むは不敬ぞ!」
弦音のようにキンッと緊張を孕んだマールジェドの声が響く。
「ご、御無礼は重々に承知しております。が、」
金髪のエルフは、深く深く膝を折り、額が地面に付きそうなほどに頭を下げた。
男に習うように騎馬兵たちも、片膝を地面について、頭を下げる。
「我が王が、王城にて歓待の栄を賜りたく、皆様をお待ちしております」
「不要であると王に伝えよ。出迎え大義であった」
屋敷の前庭に出たミッちゃんは、グーリシェダに文句をブツブツと言っていた。
「グーはないでしょ、グーは」
「いい年して、はしゃいでおるのが悪い。パウ坊が呆れておったぞ」
「グー?」
「拳だね。ほらジャンケンのグーだよ、知らない?」
首を傾げたパウパウに、ミッちゃんが片手を握って見せた。
グーチョキパーと手を動かしてくれた。
この世界にジャンケンがあったんだ。
友達がいないパウパウは、やる機会こそなかったけど知識としては知っている。
「ほらほら、話しておると遅くなるぞ。ウルジェド、リヨスアルヴァの入国門近くまで飛ぶ。そこから馬で行くとしよう」
グーリシェダの転移で移動をする。
着いたのは、土の道の傍らに作られた開けた場所だ。
馬車などの転回場所だろうか。
石畳を踏んでいた感触が一瞬で変わるのは、いつも違和感がある。
ミッちゃん達はもちろん、ガルデンも平気そうなのを見てパウパウは、
(自分も大きくなったら平気になるのかなぁ)と思う。
「ガルデン、俺の馬でいいか?それとも自分のを使うか?」
「俺の馬を使うわ。やっぱ鞍の形がなぁ」
そう言ってガルデンが出した馬は、ヴィンテよりも大きかった。
「ジェントル・ジャイアント……」
記憶の中にあるブラバント種の、輓馬に使われることもある軍馬の子孫にそっくりだった。
とても魔道馬には見えない。
近寄っても生き物の匂いや温度を感じないのが、かえって不思議なくらいだ。
「これ、ガルデンおじちゃんが作ったの?」
「そうだな。昔、うちで飼っていた馬をモデルに作ったんだ」
「へぇ~、すごいなぁ」
青毛馬に見とれていると今度は、ミッちゃんが収納空間から出したらしい馬が、少し離れた場所に白い光の粒子とともに現れた。
ガルデンの馬より一回り小柄な細身の馬型魔道具。
「アハルテケ…?」
月毛の馬は光の加減で金色に輝く。
「ミッちゃん、すごい美人さんの馬だねぇ……」
「そうかい?私たちの里に本物が住んでいるよ。興味があるなら今度、見に行くかい?」
「やめよ!ウルジェド!このバカを止めよ!」
こくこくと頷くパウパウの耳にグーリシェダの悲鳴が聞こえてきた。
何事かと振りむくと
「……マールちゃん」
マールジェドが騎獣を出していた。
騎獣。いや、騎虫か。
「あ~、これは酷い」
ミッちゃんが、低い声で呟いた。
巨大な蜘蛛型魔道具。
全身が金属で出来た蜘蛛。
動くたびにギシッガシャッと鳴るのが、鳴き声みたいで怖さが倍増だ。
「大丈夫です、母上。武装は外してあります」
「そういう問題ではないわ!」
銀の蜘蛛の背に跨ったマールジェドを見上げてグーリシェダが叫ぶ。
足踏みするようにガシャッガシャッと8本脚が動く。
たとえ武装していなくても、そんなのが国に近づいただけで、戦意アリと見なされそうだ。
「おい、マール。その蜘蛛、すげぇけどよ」
「ガルデン!分かる?脚8本の稼動バランスがねっ……
「おぅ、凄いけどよ、それだと俺の馬と高さが合わねぇから、話がしづらいだろ。横幅があるから並べねぇしよ」
「えっ…あ、そ、そうね。そうよね」
グーリシェダが小さい声で「おぉ…」と呟いた。
マールジェドが素直に蜘蛛型魔道具を仕舞って、アハルテケに似た馬型魔道具を出したからだ。
「ガルデン殿がマール使いになってきておるわ…」
「マール使い…?」
首を傾げたパウパウをミッちゃんが二人用の鞍の前側に乗せてくれた。
「二人乗りの鞍ってあるんだね」
「うん、パウパウと乗る事があると思って用意していたんだ」
座ってみると、思ったよりも安定している。
疲れたら後ろのミッちゃんに寄りかかればいい。
「これラクチン!」
「あはは、そうか、楽チンか」
グーリシェダも魔道馬に騎乗し、荷馬車2台程度の幅の道を、のんびりと4頭の魔道馬でリヨスアルヴァ国へと向かう事になった。
日差しがウネビより強い。
「リボンに遮光の術を施してあるけど、暑かったら言うんだよ」
「ありがと、だいじょぶ。なんか涼しいよ」
多分、色々な暑さと日光に負けない魔法が施されているんだろうなぁと、パウパウは思う。
草原の中に作られた道を、ポックリポックリと進む。
ときどき、林のような場所が出てきて、パウパウの住んでいる場所とは植生が違うのか、生えている木の色が違う。
セミの鳴き声のような虫音が、あちらこちらから響くが、パウパウには、あまり知らない音に聞こえる。
「ミンミンじゃないなぁ……」
「ミンミン?」
後ろで手綱を操るミッちゃんが聞いてきた。
「ミンミンゼミ……こっちには居ないのかなぁ」
もしかしたら、ウネビ領から随分と離れた場所なのかもしれない、今度、地図をミッちゃん見せてもらおう、とパウパウは思った。
「セミ?よく分からないな、ゴメンね」
「ううん、違う名前かもしれないから、あとで図鑑見てみるね」
進み始めて暫くしてから、前方に城壁のような人工物が微かに見えてきた。
「あんまり道を通る人がいないねぇ」
農作業をしている人も見かけない。
「あぁ、こちら側は辺境に続く道だからね、逆側なら、もっと賑やかだと思うよ」
「ふぅん」
隣を進んでいたグーリシェダが少し馬を寄せて
「賑やかな道を選んでいたら、これほど距離を稼げてはいないし、のどかに楽しめなかっただろうよ」
「まぁ、少し前から、こっちを見ているのは居るけどねぇ」
「一応の防衛はしておるという事じゃな」
何故か馬鹿にしたようにグーリシェダが鼻で笑った。
小川に架かる橋を何度か渡り、左右の林が無くなると、何かの野菜を植えた畑が見え始め、ポツポツと民家が畑の向こうに見えてくる。
やがて左右に広がったのは奇麗に高さの揃った鮮やかな緑のマット。
水田だ。
四角い区分けはされていない水田が広がっていた。
周りには用水路が掘られている。
少し広めの畦道は住民の生活道路だろうか。
パズルのように組み合わさった、柔らかな緑色が奇麗だ。
「ミッちゃん、田んぼ、奇麗だねぇ」
「あぁ、こうして、ちゃんと見るのは初めてかもしれないな……奇麗なものだ」
「水が奇麗なら、タガメいるかなぁ」
「ばぁちゃんの薬師ギルドでの仕事が終わったら、探しに行こうね」
「さっさと済ませて、パウ坊の虫取りに行かねばのぅ」
話をしていると、彼方から巻き上がる土埃が見えた。城壁の方から来たようだ。
「なにか近づいて来てるよ、グー姉様」
「あら、やっぱり来ちゃったのね。ガルデン、済まないけど母上の後ろに付いて貰っていい?」
「おう、分かった」
そう言って、マールジェドがグーリシェダの右隣に付き、言われたとおりにガルデンの青毛の巨馬はグーリシェダの後ろに位置取りをする。
此方に向かって、みるみるうちに大きくなっていく土煙を上げているのは、騎馬兵が10騎ほどで、先頭の一人を除いて、揃いの白い鎧姿のようだ。
間違いなく、こちらを目的として駆けてくる騎馬兵に対して、ハイエルフ達は馬を止めることなく進む。
こちらが止まって待つことは決してない。
今までのとおり、ゆっくりと散策を楽しみながら魔道馬を歩かせていくだけだ。
「ばぁちゃん、念のため結界を張る」
「うむ。おぉ、そうじゃ、パウ坊、あちらから来る馬達の土埃が汚らしいから、お呪いをしてはくれぬかの?」
「ん?もっと、ゆっくり走ってねって?」
「おぉ、それがいいの」
パウパウはグーリシェダに頼まれたとおりに鞍上からお願いをしてみる。
近づいて来る騎兵がパウパウも怖かったので丁度いい。
(あっちの馬さん、怖いから、お願い。ゆっくり来てね……)
振り向いて後ろのミッちゃんを見上げて
「お呪いしてみた!どうかなぁ……あっちの馬さん、お願い聞いてくれるかなぁ」
「ははは……うん、驚いたな。随分とゆっくりになったようだよ」
「なんとまぁ、効果覿面じゃの、パウ坊のお呪いが、ここまで効くとは、凄いのぅ」
グー姉様が褒めてくれて、パウパウは嬉しくなって口角が上がる。
見ると騎馬兵の馬達は、叱咤しても、腹を蹴っても速度が並足から上がらないようだ。
(本当の馬が可哀そうだから、あまり やらないで欲しいなぁ……)
諦めて、トコトコと来ればいいとパウパウは思う。
「ププっ、あとは道を開けてくれるといいんだけれどねぇ、邪魔だわぁ」
「まぁ、そこはマールジェド叔父上の威光で一つ、お願いしますよ」
「ふふ……まぁかせて。叔父上の凄さを見せてあげよう」
マールジェドは握りこぶしの親指をグッと上げて莞爾と笑った。
サムズアップだ。
そんなのも、同じなのかとパウパウは驚いた。
騎馬兵の先頭に居た男が、ハイエルフ一行に声を上げた。
「お待ちください。ハイエルフ族の方々とお見受けいたします!」
貴族服なのだろうか、奇麗な色のタブレットに短いマント姿の壮年の男だった。
金髪で耳が尖っている。
(あれが、エルフ……?)パウパウは内心で首を傾げる。
マールジェドが馬を停めた。併せて皆も馬の足を停める。
「それを知って、なお、馬上より我らに声を掛けるか」
静かな、それでいて凛とした声が響いた。
「あ…」
「下馬せよ、無礼である」
マールジェドの声は静かだ。だが、不思議と騎馬兵たちに伝わった。
慌てたように男が後ろの騎馬兵の一人に声を掛け、他の者達が、ガシャリゴソリと無粋な音を立てながら下馬をした。
「リヨスアルヴァは、道を開けよと言わねば分からぬのか」
10騎の騎馬兵は、アタフタと漸くハイエルフ達のために馬を道の両端に並べた。
マールジェドが少し顎を引き、それを合図に一行は馬を進める。
と、
「お、お待ちください。ハイエルフの皆さま」
「我らの進むを阻むは不敬ぞ!」
弦音のようにキンッと緊張を孕んだマールジェドの声が響く。
「ご、御無礼は重々に承知しております。が、」
金髪のエルフは、深く深く膝を折り、額が地面に付きそうなほどに頭を下げた。
男に習うように騎馬兵たちも、片膝を地面について、頭を下げる。
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