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126.ミッちゃんのレトケレス探し22
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赤いレンガ造りの屋敷に転移して、ウルジェドは息を吐いた。
リヨスアルヴァより日の出が早い、この国の天は夜が既に淡くなっている。
間もなく日が昇る。
浴場の塔からならば海より昇る朝日が一望できるだろう。
静かに玄関扉を開けた魔道人形に塔へ行く事と、朝食の用意を頼んでウルジェドは浴場へと転移をした。
それは、リヨスアルヴァの汚れを、あの倉庫での死を、不穏な気配を持ち込みたく無かったというのが本音だ。
見事な板水晶の嵌め殺し窓から、見下ろす海は夜空を映して、まだ黒い。
「……結局、フィリ君を狙う実行組織は判らなかったが……」
落ちてきた前髪を、片手で後ろへかき上げながら独り言ちる。
怪しいとマールジェドが踏んだ所を、あれだけ引っ掻き回したのだ。
治安維持部隊を巻き込めたのは、幸運だった。
あの猟犬の目を掻い潜って、次の手を打つ暇は無いだろう。
と、すれば。
今、このプタフォタンに入っている不届き者を、排除するだけになる。
「ふぅー……」
湯舟に体を預けてウルジェドは息を吐く。
「祭りが終わっても、ここに居るのもいいかもなぁ」
気付けば、わずかの間に随分と知り合いが増えた。
パウパウに人族の友達も出来た。
グーリシェダが、まだリヨスアルヴァに係るというのなら、滞在を延長するのもいいだろう。
リヨスアルヴァの澱を流れ落としたウルジェドは、真っすぐに私室へと向かう。
誰もが未だに眠りに付いている静かな屋敷の中、自分の部屋の扉を静かに開けて、奥の寝室を覗く。
薄暗い寝台の上に小さな丸い膨らみが、心もとなく乗っていた。
掛け布をギュッと握りしめて、身を縮こまらせた子供が胎児のように眠っている。
気配に気づいた枕元の精霊猫が金色の目を開いて、じいっと凝視してくる。
「泣イテタ!水玉コロコロ!」
いきなり精霊猫の遠慮のない思念が頭に飛んできた。
「うん。守ってくれて有難う精霊猫」
ミッちゃんはパウパウの横に、静かに身を滑らせ、丸まった背中を胸に包み込むと、小さな握り拳に手を置いた。
「ただいまパウパウ」
小さな丸い耳に唇を寄せて、聞こえないほどに小声で囁くと、パウパウの強張りがフッと抜ける。
「チガウ!セイレイネコ違ウ!」
ハイエルフの頭を、また遠慮のない思念が叩く。
「バステト!我ガ名ハ バステト!」
ハイエルフは深く息を吐く。
それが安堵の溜め息ではないのが、我ながら残念だと思いながら。
パウパウが目を覚ました時、まず目に入ったのは銀色だった。
いつものようにミッちゃんの髪の毛が目に入り、自分が胸元に身を寄せているのに気が付いた。
「……ミッちゃん」
少し顔を上げて、ハイエルフの顔を見上げると、すぐに青紫色の柔らかい瞳が開いた。
「おはようパウパウ、帰りが遅くなってしまったよ」
「ううん、お帰りなさい。ぼく、一人でもだいじょぶよ」
「そっか、偉いねぇ」
ミッちゃんが額にキスを落としてくれたのを、口元をムニュムニュしてパウパウが受け止める。
「もうすぐ、五歳だから!大人だからね!」
泣きながら眠ったせいで、ゴワゴワしている顔で笑いながら子供が言うのを、ミッちゃんは微笑んで見つめた。
「今日は港に行くんだってマルトフくんが言っていたね」
そうだった!と、パウパウは掛け布を跳ねのけて、飛び起きた。
コロリと枕から黒い小さな猫が転がる。
「あ!猫さん」
「あぁ、そうだ。パウパウ、リヨスアルヴァで精霊猫を名前で呼んだ?」
ん~っとパウパウは腕を組んで、顎を上げて考え込む。
ハイエルフは、その姿を見て可愛らしいと思いながらも、どうか、名前を呼んでいませんようにと神祖の月に珍しく祈る。
「あ!うん。バステトに似てるなぁって思った!」
残念ながら祈りは通じなかった。
「そっかぁ、その名前ってどういう意味だい?」
「頭の中の記憶のね、ネコの神様!」
得意気な顔をした精霊猫──いや、バステト──がハイエルフを見上げて「ニィ」と鳴いた。
「パウパウと仲良くなりたくて来たようだよ」
「そうなの?ぼくパウパウだよ。仲良くしてねバステト!」
「にゃあぁん」
朝からミッちゃんは内心で悲鳴を上げた。
いや、パウパウの増えていく魔力が分散するのは良いのだ。
だが精霊猫と正式に眷属契約を出来た者など、今までは居ない。
グーリシェダすら、名を付けることは出来ずに、ご褒美で力を借りているのだ。
神獣の仔ハヤツ、毒蛇トヒルとギンちゃん。琥珀級のギガントハキリに精霊猫バステト。ナイナイ袋の宝玉には双頭竜に成りかけの魚もいる。
何よりも恐ろしいのは、これだけの友達が出来ても、枯渇していないパウパウの魔力だ。
──この子は、一体、何者なんだろう──
パウパウが成長して行けば、当代一の、いや神祖に並ぶと言われるウルジェドの魔力すら超えるかもしれない。
そうなったら、誰がこの子に真名を与えてあげられるだろう。
「ミッちゃん?」
「あぁ、ごめんね。ちょっと考えごとしてた」
「見て!ぼく、一人で着れた!」
パウパウは手を広げて、ハイエルフに自慢げにその姿を見せた。
仕立ては良いが、町の子供らしい姿だ。
「おぉ!すごいね」
どうやら中着が前と後ろが逆のようで、首元が苦しそうだ。
「もうすぐ五歳だから!」
「そうかぁ、あ!でも中の服は違う色の方が似合うと思うなぁ」
魔道人形を呼び出して、中着の色違いを出してもらいパウパウは着替えをする。
「うん。青いほうが、なんか楽チンだよ」
今度は前後ろが正しい状態であるから、窮屈さは感じないだろう。
「そっか、ラクチンなら良かった」
ご機嫌なパウパウの肩に黒猫がポンと飛び乗って、頬に顔を摺り寄せる。
「うふふ。朝ごはん、バステトも食べれる?」
「ニィ」
身支度を済ませると、二人で手をつないで、ダイニングへと向かった。
早朝のダイニングには、既に声が溢れていた。
ミッちゃんとパウパウが入って行くと、子供達とパティオル先生、それにマールジェドから朝の挨拶をされる。
「おはよう。ガルデンとフッバーは?」
「ウルジェドが剣をあげたでしょ?でね、魔道騎士と鍛錬しているわ。ガルデンは、魔道騎士の観察をするって」
「へぇ、そうなのか。プラエド=ピラタ派の足運び、見たかったな」
マールジェドの状態が、とりあえずは落ち着いているようで、ミッちゃんはホッとする。
朝からアレだと、子供の教育に悪いし、自分も何かが削られる気がするので、助かったと思う。
パウパウはサリレのメンバーと一緒に朝ごはんだ。
「おはよう、パウパウ、その肩の猫、どうしたの?」
フィリが早速気が付いた。
「おはよう。友達になった、バステトちゃん」
「へぇ、黒にゃんこ、メンケェなぁ」
「ニッ」愛想よく精霊猫が返事をした。
朝ごはんは、すっかり定番になった自分で作るサンドイッチで、好きな物を挟んでワイワイと食べる。
パウパウも、楽しくってお気に入りの朝食だ。
ダグラスは相変わらずの健啖っぷりで、具を積み重ねている。
マルトフは野菜と具材のバランスを考えているし、フィリは如何に奇麗に作れるかを追求している。
皆、性格が見えて面白い。
パウパウはといえば、目についた”美味しそう”を気分のままに挟んでいるので、案外、大雑把だ。
このままだと、脳筋まっしぐらである。
「で、今日は昼までに舟にさ、ほらパウパウが言ってた防水の錬金符を貼ろうと思うんだ」
コーンスープを飲み干して、マルトフが言う。
「フィリ、起動の錬金符も試作したんだべ?それも試そうぜ」
そう提案したのは口の端にパンくずを付けたダグラスだ。
言われたフィリは、早く自作の錬金符を試したくて仕方がない。
テールブルーの瞳をキラキラさせて、いつもの鞄を撫ぜている。
なんせ、ペルナおばぁちゃんに教えてもらった墨で描いたのだ。
楽しみで心臓が踊っている気がする。
明日には近隣から参加者がやってくる。
子供達の舟も、親船に引かれてくるのだ。
手の内を見せずに改造できるのは今日が最後だ。
「うん!錬金墨も改造したからね。今度こそ、打倒レカベット村のラキップだ!」
フィリが拳を握って言う。
優し気で奇麗な顔をしていても、気は強いのだろう。
錬金符では負けたくないと顔に書いてある。
そんな話をしながら賑やかな朝食を摂っていると、フッバーとガルデンが戻って来た。
「プールヴァの領都にドワーフの武器屋がある。あいつなら片刃曲剣の手入れも出来るだろうよ。客を選ぶ男だからよぅ。なんなら照会状を書いてやるわ」
「それは助かる、悪いなガルデン」
昨日、会ったばかりの二人だが、気心が知れたようで、年来の友のように話ながら入って来た。
「おつかれフッバー。おはようガルデン」
「おぅササ耳、帰ってたのか」
ショゲショゲでない、いつものガルデンを見て、ミッちゃんはホッとする。
「今日は、叔父上とリヨスアルヴァに行く予定か?」
「それがね、母上が来るなって言うから、ここに居るわ。パティオル先生と話したいことが一杯あるの!」
「ま、マール様、先生は」
薬草茶を飲んでいたパティオルが、慌てたように否定する。
「マアル!もしくはマールちゃん!」
叔父上、貴方いい年齢で、性別も一応は男性だから。
ちゃんは無いだろ。ちゃんは…と思いながらも、マールジェドとパティオルが熱心に、魔道具話を始めたのを見た。
パウパウはマルトフに、ダグラスの失敗話を教えてもらって、皆で笑っている。
ダグラスは怒ったふりをしながらも照れ笑いをしていた。
ガルデンとフッバーは、腕のいい鍛冶屋と武器屋の話をしているようだ。
精霊猫のバステトは魔道人形から貰ったミルクを飲んだ後、窓辺の桟に座って、朝の光を浴びながらで御機嫌に顔を洗っている。
こういう賑やかなのも悪くはないな、とハイエルフは微笑んだ。
リヨスアルヴァより日の出が早い、この国の天は夜が既に淡くなっている。
間もなく日が昇る。
浴場の塔からならば海より昇る朝日が一望できるだろう。
静かに玄関扉を開けた魔道人形に塔へ行く事と、朝食の用意を頼んでウルジェドは浴場へと転移をした。
それは、リヨスアルヴァの汚れを、あの倉庫での死を、不穏な気配を持ち込みたく無かったというのが本音だ。
見事な板水晶の嵌め殺し窓から、見下ろす海は夜空を映して、まだ黒い。
「……結局、フィリ君を狙う実行組織は判らなかったが……」
落ちてきた前髪を、片手で後ろへかき上げながら独り言ちる。
怪しいとマールジェドが踏んだ所を、あれだけ引っ掻き回したのだ。
治安維持部隊を巻き込めたのは、幸運だった。
あの猟犬の目を掻い潜って、次の手を打つ暇は無いだろう。
と、すれば。
今、このプタフォタンに入っている不届き者を、排除するだけになる。
「ふぅー……」
湯舟に体を預けてウルジェドは息を吐く。
「祭りが終わっても、ここに居るのもいいかもなぁ」
気付けば、わずかの間に随分と知り合いが増えた。
パウパウに人族の友達も出来た。
グーリシェダが、まだリヨスアルヴァに係るというのなら、滞在を延長するのもいいだろう。
リヨスアルヴァの澱を流れ落としたウルジェドは、真っすぐに私室へと向かう。
誰もが未だに眠りに付いている静かな屋敷の中、自分の部屋の扉を静かに開けて、奥の寝室を覗く。
薄暗い寝台の上に小さな丸い膨らみが、心もとなく乗っていた。
掛け布をギュッと握りしめて、身を縮こまらせた子供が胎児のように眠っている。
気配に気づいた枕元の精霊猫が金色の目を開いて、じいっと凝視してくる。
「泣イテタ!水玉コロコロ!」
いきなり精霊猫の遠慮のない思念が頭に飛んできた。
「うん。守ってくれて有難う精霊猫」
ミッちゃんはパウパウの横に、静かに身を滑らせ、丸まった背中を胸に包み込むと、小さな握り拳に手を置いた。
「ただいまパウパウ」
小さな丸い耳に唇を寄せて、聞こえないほどに小声で囁くと、パウパウの強張りがフッと抜ける。
「チガウ!セイレイネコ違ウ!」
ハイエルフの頭を、また遠慮のない思念が叩く。
「バステト!我ガ名ハ バステト!」
ハイエルフは深く息を吐く。
それが安堵の溜め息ではないのが、我ながら残念だと思いながら。
パウパウが目を覚ました時、まず目に入ったのは銀色だった。
いつものようにミッちゃんの髪の毛が目に入り、自分が胸元に身を寄せているのに気が付いた。
「……ミッちゃん」
少し顔を上げて、ハイエルフの顔を見上げると、すぐに青紫色の柔らかい瞳が開いた。
「おはようパウパウ、帰りが遅くなってしまったよ」
「ううん、お帰りなさい。ぼく、一人でもだいじょぶよ」
「そっか、偉いねぇ」
ミッちゃんが額にキスを落としてくれたのを、口元をムニュムニュしてパウパウが受け止める。
「もうすぐ、五歳だから!大人だからね!」
泣きながら眠ったせいで、ゴワゴワしている顔で笑いながら子供が言うのを、ミッちゃんは微笑んで見つめた。
「今日は港に行くんだってマルトフくんが言っていたね」
そうだった!と、パウパウは掛け布を跳ねのけて、飛び起きた。
コロリと枕から黒い小さな猫が転がる。
「あ!猫さん」
「あぁ、そうだ。パウパウ、リヨスアルヴァで精霊猫を名前で呼んだ?」
ん~っとパウパウは腕を組んで、顎を上げて考え込む。
ハイエルフは、その姿を見て可愛らしいと思いながらも、どうか、名前を呼んでいませんようにと神祖の月に珍しく祈る。
「あ!うん。バステトに似てるなぁって思った!」
残念ながら祈りは通じなかった。
「そっかぁ、その名前ってどういう意味だい?」
「頭の中の記憶のね、ネコの神様!」
得意気な顔をした精霊猫──いや、バステト──がハイエルフを見上げて「ニィ」と鳴いた。
「パウパウと仲良くなりたくて来たようだよ」
「そうなの?ぼくパウパウだよ。仲良くしてねバステト!」
「にゃあぁん」
朝からミッちゃんは内心で悲鳴を上げた。
いや、パウパウの増えていく魔力が分散するのは良いのだ。
だが精霊猫と正式に眷属契約を出来た者など、今までは居ない。
グーリシェダすら、名を付けることは出来ずに、ご褒美で力を借りているのだ。
神獣の仔ハヤツ、毒蛇トヒルとギンちゃん。琥珀級のギガントハキリに精霊猫バステト。ナイナイ袋の宝玉には双頭竜に成りかけの魚もいる。
何よりも恐ろしいのは、これだけの友達が出来ても、枯渇していないパウパウの魔力だ。
──この子は、一体、何者なんだろう──
パウパウが成長して行けば、当代一の、いや神祖に並ぶと言われるウルジェドの魔力すら超えるかもしれない。
そうなったら、誰がこの子に真名を与えてあげられるだろう。
「ミッちゃん?」
「あぁ、ごめんね。ちょっと考えごとしてた」
「見て!ぼく、一人で着れた!」
パウパウは手を広げて、ハイエルフに自慢げにその姿を見せた。
仕立ては良いが、町の子供らしい姿だ。
「おぉ!すごいね」
どうやら中着が前と後ろが逆のようで、首元が苦しそうだ。
「もうすぐ五歳だから!」
「そうかぁ、あ!でも中の服は違う色の方が似合うと思うなぁ」
魔道人形を呼び出して、中着の色違いを出してもらいパウパウは着替えをする。
「うん。青いほうが、なんか楽チンだよ」
今度は前後ろが正しい状態であるから、窮屈さは感じないだろう。
「そっか、ラクチンなら良かった」
ご機嫌なパウパウの肩に黒猫がポンと飛び乗って、頬に顔を摺り寄せる。
「うふふ。朝ごはん、バステトも食べれる?」
「ニィ」
身支度を済ませると、二人で手をつないで、ダイニングへと向かった。
早朝のダイニングには、既に声が溢れていた。
ミッちゃんとパウパウが入って行くと、子供達とパティオル先生、それにマールジェドから朝の挨拶をされる。
「おはよう。ガルデンとフッバーは?」
「ウルジェドが剣をあげたでしょ?でね、魔道騎士と鍛錬しているわ。ガルデンは、魔道騎士の観察をするって」
「へぇ、そうなのか。プラエド=ピラタ派の足運び、見たかったな」
マールジェドの状態が、とりあえずは落ち着いているようで、ミッちゃんはホッとする。
朝からアレだと、子供の教育に悪いし、自分も何かが削られる気がするので、助かったと思う。
パウパウはサリレのメンバーと一緒に朝ごはんだ。
「おはよう、パウパウ、その肩の猫、どうしたの?」
フィリが早速気が付いた。
「おはよう。友達になった、バステトちゃん」
「へぇ、黒にゃんこ、メンケェなぁ」
「ニッ」愛想よく精霊猫が返事をした。
朝ごはんは、すっかり定番になった自分で作るサンドイッチで、好きな物を挟んでワイワイと食べる。
パウパウも、楽しくってお気に入りの朝食だ。
ダグラスは相変わらずの健啖っぷりで、具を積み重ねている。
マルトフは野菜と具材のバランスを考えているし、フィリは如何に奇麗に作れるかを追求している。
皆、性格が見えて面白い。
パウパウはといえば、目についた”美味しそう”を気分のままに挟んでいるので、案外、大雑把だ。
このままだと、脳筋まっしぐらである。
「で、今日は昼までに舟にさ、ほらパウパウが言ってた防水の錬金符を貼ろうと思うんだ」
コーンスープを飲み干して、マルトフが言う。
「フィリ、起動の錬金符も試作したんだべ?それも試そうぜ」
そう提案したのは口の端にパンくずを付けたダグラスだ。
言われたフィリは、早く自作の錬金符を試したくて仕方がない。
テールブルーの瞳をキラキラさせて、いつもの鞄を撫ぜている。
なんせ、ペルナおばぁちゃんに教えてもらった墨で描いたのだ。
楽しみで心臓が踊っている気がする。
明日には近隣から参加者がやってくる。
子供達の舟も、親船に引かれてくるのだ。
手の内を見せずに改造できるのは今日が最後だ。
「うん!錬金墨も改造したからね。今度こそ、打倒レカベット村のラキップだ!」
フィリが拳を握って言う。
優し気で奇麗な顔をしていても、気は強いのだろう。
錬金符では負けたくないと顔に書いてある。
そんな話をしながら賑やかな朝食を摂っていると、フッバーとガルデンが戻って来た。
「プールヴァの領都にドワーフの武器屋がある。あいつなら片刃曲剣の手入れも出来るだろうよ。客を選ぶ男だからよぅ。なんなら照会状を書いてやるわ」
「それは助かる、悪いなガルデン」
昨日、会ったばかりの二人だが、気心が知れたようで、年来の友のように話ながら入って来た。
「おつかれフッバー。おはようガルデン」
「おぅササ耳、帰ってたのか」
ショゲショゲでない、いつものガルデンを見て、ミッちゃんはホッとする。
「今日は、叔父上とリヨスアルヴァに行く予定か?」
「それがね、母上が来るなって言うから、ここに居るわ。パティオル先生と話したいことが一杯あるの!」
「ま、マール様、先生は」
薬草茶を飲んでいたパティオルが、慌てたように否定する。
「マアル!もしくはマールちゃん!」
叔父上、貴方いい年齢で、性別も一応は男性だから。
ちゃんは無いだろ。ちゃんは…と思いながらも、マールジェドとパティオルが熱心に、魔道具話を始めたのを見た。
パウパウはマルトフに、ダグラスの失敗話を教えてもらって、皆で笑っている。
ダグラスは怒ったふりをしながらも照れ笑いをしていた。
ガルデンとフッバーは、腕のいい鍛冶屋と武器屋の話をしているようだ。
精霊猫のバステトは魔道人形から貰ったミルクを飲んだ後、窓辺の桟に座って、朝の光を浴びながらで御機嫌に顔を洗っている。
こういう賑やかなのも悪くはないな、とハイエルフは微笑んだ。
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