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でも、と榛名は俯いた。
「結婚ってそんな簡単じゃないですよね。家族とか職場にも報告しないといけないですし」
「そんな決まりはないだろ? いわゆるケジメってやつなんだろうけど。あとは総務関係か……ま、俺はどっちでもいいけどね。カミングアウトしても、しなくても」
霧咲は、榛名の前髪をくしゃりと撫でて、形のいい額に軽くキスをした。
榛名はくすぐったそうに首をすくめて顔を上げた。
「でも俺、親には一応言いましたよ。昔から男の人しか好きになれなかった、今も東京に男の恋人がいるって」
「へえ……それで?」
「冗談だと思われて軽く流されましたよ」
そういえば、まだ携帯の充電は切れたままにしてある。
復活させたときの着信履歴を見るのが少し恐い。
「うーん、せっかく宮崎まで行ったんだから御両親にご挨拶くらいすれば良かったね」
「そんなのいつでもできますから。仕事のほうがよっぽど大事ですよ」
榛名がそう言ったあと霧咲は数秒間無言になり、声のトーンを落として榛名を呼んだ。
「……暁哉」
「ハイ?」
先程とは少し雰囲気の異なる霧咲の態度に、榛名は少し身構えて返事をした。
自分は何かマズイ事でも言っただろうか? 考えても何も思い付かない。
霧咲は、榛名の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「俺は、仕事よりも君の方が大事だよ」
「え?」
「君が俺の知らない場所で泣いていると思ったら、本当に胸が痛かった」
「……」
榛名は、霧咲が結婚していると聞いて死ぬほど泣いたあの夜のことを思い出した。
あの日からの数日間は……本当に、本当に辛かった。
不倫されていると思って……自分は二番目、愛人の立場なんだと思って……
死ぬ気なんかなかったけれど、今までの人生の中で一番生きているのが辛かった。
「……っ」
思い出したら涙が出そうになってきたので、榛名は唇をきゅっと結んでぐっとこらえた。
霧咲はそんな榛名の表情を見ながら、続けた。
「君を失うくらいなら、本当に仕事なんてどうでもいいと思ったんだ。だから宮崎まで会いに行った。君の居場所なんて分からないのに、居てもたってもいられなくて」
「……」
返事を返さないといけないのに、口を開こうとすると代わりに涙が出そうなので榛名は何も喋れない。
「君に関することでね、どうでもいいことなんて俺には一つもないんだよ」
(……もう、ダメだ……)
霧咲のその言葉で、榛名の瞳からはついに涙が零れた。
そして、少しヤケクソ気味に霧咲に言い返した。
「……っもう! なんでそんなに泣かせようとするんですか!? そんなの、俺の方がよっぽどです! 不倫でも愛人でもいいって……将来捨てられても構わないから、今だけは貴方のそばに居たいって、そう思ったんですからね!!」
「うん。君は俺を罵倒していいよ。言いたかったこと、もっとあるだろ?」
ある。言いたかったことが山程ある。
結局のところ霧咲は独身だったし、何も悪くはないのだけど。
それでも……
「ばか! ばか! ばか!! 霧咲さんの馬鹿! もうっ……ほんとに、おれはほんとに……っ貴方が結婚してると思って馬鹿みたいに泣いたんだ……もうあんなになるまで泣きたくない」
「泣かせないよ」
「今泣かせてるでしょう!」
激しく突っ込んだ。
しかし霧咲は穏やかな表情のままで、言い直した。
「一人では泣かせないよ。でも俺の前では沢山泣いて欲しいんだ。泣いてる君は、世界一可愛いから」
「なんだっ、それ……意地悪……ほんと、馬鹿やないと?」
「あ、宮崎弁」
「聞きたかったっちゃろ……今だけやかい」
「ふふっ、やっぱりすごく可愛いね。ねえ暁哉、愛してるよ」
「俺も……っ、愛してる……」
ヒックヒックと子供のようにしゃくりあげながらも、榛名は自分の気持ちをはっきりと霧咲に伝えた。
そして榛名の不意を突いて、霧咲は榛名をソファーに押し倒した。
いきなり世界がぐるりと反転した榛名は、目を白黒させて霧咲を見つめ返す。
「え……何で、押し倒してるんですか?」
「君の泣き顔を見てたら我慢できなくなった」
霧咲は微笑みながら榛名に言う。まるでこうしているのが当然のように。
「は? あの、今夜はしないって言ってましたよね? それにここ、リビングだし……亜衣乃ちゃん、いますし」
「前言撤回ってやつだね。それに寝室は亜衣乃が使ってる」
「や、あの、だから……声聞こえたら……」
「君が我慢すれば解決だ」
「解決って! まだ解決してな……あっ……!」
霧咲の手が、ズボンの上から榛名のモノをつうっと撫でた。
「君だって、さっきキスした時から期待していた癖に」
その言葉と霧咲のいやらしい手つきに、榛名自身はズクン、と熱くなった。
榛名は顔を赤くしたまま霧咲を下から睨み付ける。
「せっかく……やり過ごそうとしてたのにっ」
涙で濡れた顔でそんなことを言われても、霧咲には煽っているようにしか見えない。
「俺の前では我慢しなくてもいいよ。というか、我慢できないのは俺の方だから。少し付き合ってくれないか?」
「……」
「ね?」
「……そういう言い方、なんかズルいです」
「何もズルくないさ。俺が君としたいだけなんだからね」
「俺だって……」
そこで榛名は、霧咲に言わされたことに気付いた。
「~~っ!」
「じゃ、主任さんのお許しも頂けたことだし……頂きます」
「もぉお!」
ニヤニヤと笑いながら馬鹿丁寧に言う霧咲の胸を軽く小突いたあと、榛名は抵抗するのをやめて霧咲に手を伸ばした。
「結婚ってそんな簡単じゃないですよね。家族とか職場にも報告しないといけないですし」
「そんな決まりはないだろ? いわゆるケジメってやつなんだろうけど。あとは総務関係か……ま、俺はどっちでもいいけどね。カミングアウトしても、しなくても」
霧咲は、榛名の前髪をくしゃりと撫でて、形のいい額に軽くキスをした。
榛名はくすぐったそうに首をすくめて顔を上げた。
「でも俺、親には一応言いましたよ。昔から男の人しか好きになれなかった、今も東京に男の恋人がいるって」
「へえ……それで?」
「冗談だと思われて軽く流されましたよ」
そういえば、まだ携帯の充電は切れたままにしてある。
復活させたときの着信履歴を見るのが少し恐い。
「うーん、せっかく宮崎まで行ったんだから御両親にご挨拶くらいすれば良かったね」
「そんなのいつでもできますから。仕事のほうがよっぽど大事ですよ」
榛名がそう言ったあと霧咲は数秒間無言になり、声のトーンを落として榛名を呼んだ。
「……暁哉」
「ハイ?」
先程とは少し雰囲気の異なる霧咲の態度に、榛名は少し身構えて返事をした。
自分は何かマズイ事でも言っただろうか? 考えても何も思い付かない。
霧咲は、榛名の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「俺は、仕事よりも君の方が大事だよ」
「え?」
「君が俺の知らない場所で泣いていると思ったら、本当に胸が痛かった」
「……」
榛名は、霧咲が結婚していると聞いて死ぬほど泣いたあの夜のことを思い出した。
あの日からの数日間は……本当に、本当に辛かった。
不倫されていると思って……自分は二番目、愛人の立場なんだと思って……
死ぬ気なんかなかったけれど、今までの人生の中で一番生きているのが辛かった。
「……っ」
思い出したら涙が出そうになってきたので、榛名は唇をきゅっと結んでぐっとこらえた。
霧咲はそんな榛名の表情を見ながら、続けた。
「君を失うくらいなら、本当に仕事なんてどうでもいいと思ったんだ。だから宮崎まで会いに行った。君の居場所なんて分からないのに、居てもたってもいられなくて」
「……」
返事を返さないといけないのに、口を開こうとすると代わりに涙が出そうなので榛名は何も喋れない。
「君に関することでね、どうでもいいことなんて俺には一つもないんだよ」
(……もう、ダメだ……)
霧咲のその言葉で、榛名の瞳からはついに涙が零れた。
そして、少しヤケクソ気味に霧咲に言い返した。
「……っもう! なんでそんなに泣かせようとするんですか!? そんなの、俺の方がよっぽどです! 不倫でも愛人でもいいって……将来捨てられても構わないから、今だけは貴方のそばに居たいって、そう思ったんですからね!!」
「うん。君は俺を罵倒していいよ。言いたかったこと、もっとあるだろ?」
ある。言いたかったことが山程ある。
結局のところ霧咲は独身だったし、何も悪くはないのだけど。
それでも……
「ばか! ばか! ばか!! 霧咲さんの馬鹿! もうっ……ほんとに、おれはほんとに……っ貴方が結婚してると思って馬鹿みたいに泣いたんだ……もうあんなになるまで泣きたくない」
「泣かせないよ」
「今泣かせてるでしょう!」
激しく突っ込んだ。
しかし霧咲は穏やかな表情のままで、言い直した。
「一人では泣かせないよ。でも俺の前では沢山泣いて欲しいんだ。泣いてる君は、世界一可愛いから」
「なんだっ、それ……意地悪……ほんと、馬鹿やないと?」
「あ、宮崎弁」
「聞きたかったっちゃろ……今だけやかい」
「ふふっ、やっぱりすごく可愛いね。ねえ暁哉、愛してるよ」
「俺も……っ、愛してる……」
ヒックヒックと子供のようにしゃくりあげながらも、榛名は自分の気持ちをはっきりと霧咲に伝えた。
そして榛名の不意を突いて、霧咲は榛名をソファーに押し倒した。
いきなり世界がぐるりと反転した榛名は、目を白黒させて霧咲を見つめ返す。
「え……何で、押し倒してるんですか?」
「君の泣き顔を見てたら我慢できなくなった」
霧咲は微笑みながら榛名に言う。まるでこうしているのが当然のように。
「は? あの、今夜はしないって言ってましたよね? それにここ、リビングだし……亜衣乃ちゃん、いますし」
「前言撤回ってやつだね。それに寝室は亜衣乃が使ってる」
「や、あの、だから……声聞こえたら……」
「君が我慢すれば解決だ」
「解決って! まだ解決してな……あっ……!」
霧咲の手が、ズボンの上から榛名のモノをつうっと撫でた。
「君だって、さっきキスした時から期待していた癖に」
その言葉と霧咲のいやらしい手つきに、榛名自身はズクン、と熱くなった。
榛名は顔を赤くしたまま霧咲を下から睨み付ける。
「せっかく……やり過ごそうとしてたのにっ」
涙で濡れた顔でそんなことを言われても、霧咲には煽っているようにしか見えない。
「俺の前では我慢しなくてもいいよ。というか、我慢できないのは俺の方だから。少し付き合ってくれないか?」
「……」
「ね?」
「……そういう言い方、なんかズルいです」
「何もズルくないさ。俺が君としたいだけなんだからね」
「俺だって……」
そこで榛名は、霧咲に言わされたことに気付いた。
「~~っ!」
「じゃ、主任さんのお許しも頂けたことだし……頂きます」
「もぉお!」
ニヤニヤと笑いながら馬鹿丁寧に言う霧咲の胸を軽く小突いたあと、榛名は抵抗するのをやめて霧咲に手を伸ばした。
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