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19 礼二郎の優しさ
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今の時間帯の車内はわりと人は少なかったが、大学にはすぐに着くので、ふたりは出入り口付近に立って話を続けた。
「ふう……――詳しいことは帰ってから聞かせてもらうけど……あっ、聞かせてくれる、よね?」
「……どうしよっかなぁ~」
柴は言われなくても礼二郎の疑問には何でも答えるつもりでいたが、礼二郎が不安そうな顔をしたので少しからかった。
「や、やっぱり守秘義務とかそういうのがあるのか!? 一般人には言えない的な……!」
「うーん、まあソウダネ」
「お願い!! 誰にも言わないし、なんなら今日の晩御飯カレーにするし好きなだけご馳走するからぁ!!」
「まじで? 俺わりと何でも答えるよ」
あっさりとカレーに買収される柴だった。
「あっでも今日はバイトだから帰りが少し遅くなるけど……」
「全然いいよ、俺もゼミとかサークル活動あるし。待ってるね」
礼二郎は家の近くのコンビニで週に3回程度バイトしている。大学生にしてはわりと慎ましい生活をしているので、バイトをしなくても仕送りだけで十分やっていけるのだが──両親からの仕送りだけでなく、兄からもお小遣いを貰っているので、わりと懐は温かい──いわゆる社会勉強というやつである。
「あ、大学着く前にひとつだけ教えて欲しいんだけど……」
「何?」
「あの女の人、今度はおじさんに憑いてたけど……おじさんはどうなるんだ? まさか死んだりしないよな?」
礼二郎が知りたがっていたのは、自分のことよりもあのサラリーマンの行く末だったことに柴は驚き、思わず目を丸くした。
「……別に、くっ憑けただけだから彼女は物理的には何もできないと思うよ。もちろんおっさんが死ぬ可能性はあるけど、それは別に彼女のせいじゃなくておっさんの運次第っていうか……」
「そんな!」
「でも俺たちだってそうだよ? 運がいいから今も無事に生きてるだけなんだ。霊だって皆、元は俺たち同様普通に生きてた人間なんだよ」
「………」
(そんなこと、分かってる……。分かってる、けど……)
礼二郎はぎゅう、と両手を握りしめた。
そんなド正論を言われたら霊に怯えまくっている自分が滑稽だし、霊に対して失礼なんじゃないか、と思ったりもする。
でも、怖いものは怖いのだ。理屈で解決できるものではない。
「ごめん、えらそうに説教するつもりはなかったんだ。ちょっと妬いたっていうか……」
「妬いた?」
誰が、誰にだろうか。
「――まあ、あのおっさんが彼女に呪い殺されることは無いだろうけど、しばらくは夢見が悪くなったり、地味ぃ~な不運が重なったりはするだろうね。それくらいは別にいいんじゃない? 自分を殺した奴がまったくの無自覚なんて、ムカつくのも分かるし」
「地味な不運って……?」
「何もないところでコケたりとか、コンビニで買い物するときに10円足りないとか」
「あはっ、ほんとに地味だ……」
礼二郎が少し笑ったところで電車は大学の駅に着き、二人は降りた。
「ふう……――詳しいことは帰ってから聞かせてもらうけど……あっ、聞かせてくれる、よね?」
「……どうしよっかなぁ~」
柴は言われなくても礼二郎の疑問には何でも答えるつもりでいたが、礼二郎が不安そうな顔をしたので少しからかった。
「や、やっぱり守秘義務とかそういうのがあるのか!? 一般人には言えない的な……!」
「うーん、まあソウダネ」
「お願い!! 誰にも言わないし、なんなら今日の晩御飯カレーにするし好きなだけご馳走するからぁ!!」
「まじで? 俺わりと何でも答えるよ」
あっさりとカレーに買収される柴だった。
「あっでも今日はバイトだから帰りが少し遅くなるけど……」
「全然いいよ、俺もゼミとかサークル活動あるし。待ってるね」
礼二郎は家の近くのコンビニで週に3回程度バイトしている。大学生にしてはわりと慎ましい生活をしているので、バイトをしなくても仕送りだけで十分やっていけるのだが──両親からの仕送りだけでなく、兄からもお小遣いを貰っているので、わりと懐は温かい──いわゆる社会勉強というやつである。
「あ、大学着く前にひとつだけ教えて欲しいんだけど……」
「何?」
「あの女の人、今度はおじさんに憑いてたけど……おじさんはどうなるんだ? まさか死んだりしないよな?」
礼二郎が知りたがっていたのは、自分のことよりもあのサラリーマンの行く末だったことに柴は驚き、思わず目を丸くした。
「……別に、くっ憑けただけだから彼女は物理的には何もできないと思うよ。もちろんおっさんが死ぬ可能性はあるけど、それは別に彼女のせいじゃなくておっさんの運次第っていうか……」
「そんな!」
「でも俺たちだってそうだよ? 運がいいから今も無事に生きてるだけなんだ。霊だって皆、元は俺たち同様普通に生きてた人間なんだよ」
「………」
(そんなこと、分かってる……。分かってる、けど……)
礼二郎はぎゅう、と両手を握りしめた。
そんなド正論を言われたら霊に怯えまくっている自分が滑稽だし、霊に対して失礼なんじゃないか、と思ったりもする。
でも、怖いものは怖いのだ。理屈で解決できるものではない。
「ごめん、えらそうに説教するつもりはなかったんだ。ちょっと妬いたっていうか……」
「妬いた?」
誰が、誰にだろうか。
「――まあ、あのおっさんが彼女に呪い殺されることは無いだろうけど、しばらくは夢見が悪くなったり、地味ぃ~な不運が重なったりはするだろうね。それくらいは別にいいんじゃない? 自分を殺した奴がまったくの無自覚なんて、ムカつくのも分かるし」
「地味な不運って……?」
「何もないところでコケたりとか、コンビニで買い物するときに10円足りないとか」
「あはっ、ほんとに地味だ……」
礼二郎が少し笑ったところで電車は大学の駅に着き、二人は降りた。
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