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〃
しおりを挟む『あいつ、視えてるぞ』
『視えてるな』
『おーい』
『おーい』
『おーい』
『こっちも視てくれー』
『おーい』
(見るな、俺を呼ぶな……! こわい、こわいよぉ……っ)
「池永ぁ、礼二郎ちゃん今日はどしたん~?」
「いや、それが体調悪いみたいで……帰れっつってんだけど、動かないんだよ」
「まじ? 礼二郎だいじょぶか?」
(こわい……柴君、助けて、柴君……っ)
友人たちが心配してくれているのに、霊の声が混じっていて怖くて顔が上げられない。顔を上げたらきっとそこには……
ワンッ!!
「!?」
唐突な犬の鳴き声に、礼二郎は俯いていた顔を上げた。心配そうな顔をした池永の頭の上に、何故か虎鉄がご機嫌な顔で乗っていた。
「こてっ……ちゃん……」
「え、何?」
ハッ!
(ヤバ、他の奴には視えないんだった!)
虎鉄は池永の頭を蹴って飛び上がり、礼二郎のそばの机の上に音もなく着地した。嬉しそうに尻尾を振っている。
まるで『大丈夫だよ』と言ってくれているように――。
虎鉄が一鳴きした途端、礼二郎を呼ぶ霊達の声はピタリと止んだ。
「……っ」
礼二郎は安心して、思わず涙が溢れそうになった。
「あ、先生来たよ」
「礼二郎、ほんとに大丈夫か~? 無理そうだったらすぐ言えよな、医務室連れて行ってやるから」
「ん……」
(でも、なんでこてっちゃんが俺に憑いてるんだろう。もしかして、柴君が俺を心配して寄越してくれたのかな……?)
ワフンッ
そのとおり、とでも言うように虎鉄が鳴いた。
(そっか……ありがとう)
虎鉄もまぎれもなく礼二郎が苦手な幽霊だというのに、何故かちっとも怖くない。怖いよりも可愛さの方が遥かに勝っているのだ。それと、柴の相棒だからだろうか……。
触れられないのは分かっているが、礼二郎は講義中に何度かこっそりと虎鉄の背中を撫でた。そのたびに池永に『礼二郎、その手はいったい何してんだ?』と突っ込まれたが、なんでもないと誤魔化した。
その日の講義やゼミの活動は、虎鉄のおかげで最後までこなすことができた。
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