マイダーリン、この世の全ての怖いものから俺を守ってくれ!!!

すずなりたま

文字の大きさ
38 / 76

30 キス

しおりを挟む

(俺、なんで柴君とキスしてるんだろ……)

 今朝みたいな、霊力を吹き込まれるという色気もクソもない人口呼吸ではない。
   ──つまり柴が礼二郎にキスしたい、と思ってしているのだ。そして何故か礼二郎はそれを大人しく受け入れている。

「っふ……ぁ……」

 礼二郎が抵抗しないのが分かると、柴はぎゅっと手を強く握って角度を変え、何度も口づけてきた。チュッ、チュッと可愛らしいリップ音が狭いキッチンに響く。

(意味わかんな……けど、キモチイイ……これって相手が柴く、じゃなかった。京介だから、なのかな……)

「……礼二郎」
「えっ?」

 礼二郎はハッとして目を開けた。柴と至近距離で目が合う。

「鍋」
「なべ?」
「沸騰しまくってるよ」
「へっ……ああああっ!! やばいっ!!」

 レトルトカレーを温めている最中だった。



「ご馳走様でした。レトルトカレーって久しぶりに食べたけど、美味しいね」
「きょ、京介はレトルト食べないのか?」
「んー、うち鍋無いしなぁ……」
「レンジは? 最近はレンチンで温められるレトルトあるよ」
「そうなの? レンジはあるよ。じゃあ今度探してみようかな」
「一緒にスーパー行こうよ! 俺が教えてあげる」
「ありがとう」

 礼二郎は自分が柴に対してしてあげられることを見つけてウキウキだ。(既に食事という対価を支払っているのだが、何故か気付かない礼二郎であった)

 夕食を食べて終えても二人はさっきのキスについては一切触れなかった。
 礼二郎は照れくさくて口に出せないし、柴は既に好意を示しているので、あとは礼二郎の出方次第だと思っているからだ。

 礼二郎がシャワーを浴びている間に、柴が食器を洗ってくれていた。
   食後のコーヒーを淹れて、柴と礼二郎はベッドを背もたれにして並んで座った。ラグがもちもちしているので、クッションは持っていない。
   礼二郎は食事前からもずっとドキドキしていたが、不思議と悪くない緊張感だった。

 思い返せば今朝から誰かと二人きりという状況は、家族以外ではほとんどない経験だ。礼二郎はそれを素直に柴に話した。

「……俺、誰かとこうやって部屋で落ち着くのって初めてだ。兄ちゃ……兄貴とかは別だけど」

 思わず兄のことを『兄ちゃん』と言いかけて――ほぼ言ったようなものだが――礼二郎はカーッと赤面してしまった。
 さすがに大学生にもなって『兄ちゃん』呼びはあまりにも子どもっぽいかと思い、『兄貴』と呼ぶように心がけているというのに。(勿論ブラコンの兄にはひどく嘆かれた)

「え、そうなの? ……高校の時とかも?」
「うん。友達は何度か遊びに来てたけど、二人きりってことはなくて……来るのは何故かいつも複数人だったなぁ、約束してなくても急に三人目が来たりさ」
「そうなんだ。彼女は?」
「いることは、いたけどー……」

 礼二郎は柴になら霊関係のことは言っても大丈夫だということを思い出し、思い切って言った。

「……ちょっといい雰囲気になると、何故かいつも霊が現れてさ……俺がビビって泣くから彼女はみんなドン引きして帰るっていうパターンだよ」
「おお……」
「だから京介も噂で知ってるかもしれないけど、まだ童貞だし」
「風の噂で聞いたよ、ごめん」

   柴ははっきりと噂の内容──礼二郎がEDだという──は言わなかったが、普通に伝わった。

「ち、違うからな!? 一人でスるときはちゃんとできるから!!」

 説明するのも恥ずかしいが、柴に勃起不全だと思われていることは訂正しておきたかった。なんとなく、プライドの問題で。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

趣味で乳首開発をしたらなぜか同僚(男)が近づいてきました

ねこみ
BL
タイトルそのまんまです。

登山

むちむちボディ
BL
趣味として山登りを楽しむ中年男性に起こる物語です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

処理中です...