マイダーリン、この世の全ての怖いものから俺を守ってくれ!!!

すずなりたま

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32 トラウマ

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「「………」」

   しばし沈黙が訪れて、礼二郎は自分の早鐘のような心臓の音が柴に聞こえているのではないか、と心配になった。
   相手は自分と同じ男なのに、何故こんなにドキドキするのだろう。
   礼二郎は、自分はもうとっくに柴に懸想しているのではないか、と思った。

   ナンパから助けてくれたことも、ゴキブリを退治してくれたことも、霊を祓ってくれたことも、全部ひどく感謝している。
   昨日会ったばかりなのに、こんなにも世話になって……

(それとも勘違い、なのかな)

   柴に頼りたい気持ちを愛情と勘違いしているだけなのだろうか。でも、それではあまりにも単純すぎやしないか。

(けど俺は京介にときめいてる。こんなの初めてだけど……これは、恋じゃないのか?)

   礼二郎は自分から告白したことがない。せずとも、圧倒的に言われるほうだからだ。告白されて、自分も相手のことを『いいな』と思ったら付き合った。その後すぐに振られるのだが。
 柴からも昨日既に告白された。しかも礼二郎の情けない性格を知ったあとに、だ。

(それに男同士で付き合うって、今と関係変わらない気もするしな。でも……)

 礼二郎には今でも仲良くしてくれる元カノは一人もいない。皆、礼二郎と別れると判を押したようにすぐに別の彼氏を作り、そのまま疎遠になるのだ。

 (もしも京介と付き合ってその後別れたら、同じように疎遠になってしまうのかな。それは嫌だなぁ……おっと、)

   無意識に出そうになったため息を、慌てて飲み込んだ。

「……礼二郎はさ、」
「へっ!? な、何!?」

   突然柴が口を開いたので、礼二郎は心臓が飛び出しそうに驚いた。何を言われるのか分からず、思わず身構えてしまった。

(もう一回付き合おうって言われたら、俺はなんと答えればいいんだ……!!   二度も断ったら、もう後がないぞ!?)

「どうしてそんなに霊が苦手なの?」
「へ?」

 全然、見当違いの質問だった。礼二郎はえっと、その、と言いながら呼吸を整え、うーん……と考えるそぶりを見せてゆっくりと答えた。

「……んーと、うちの父親ってホラー映画監督なんだよ」
「えっ、そうなの!?」
「うん。あんまり有名な作品はないけど……『AVあぶない女優霊』とか聞いたことない?」
「あっ、ある! オカ研の先輩にその映画めっちゃ好きな人いるよ!」
「オカ研?」
「オカルト研究会」
「………」

 何故柴視える柴がわざわざそんなサークルに入っているのか……色々と突っ込みたいが、後回しにすることにした。
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