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53 心霊動画
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礼二郎が特定の女子──しかも姫とかいうふざけた名称(では無いのだが)──を呼んだことで、講義室内が軽くザワついた。
しかし当の姫子はイヤホンで何か動画を見ているらしく、礼二郎の呼びかけに無反応だった。
礼二郎が女の子に無視されたことで、またまた講義室がザワついた。
「え、あの子が姫ちゃん……? 顔は知ってるけど、え、姫って名字か何かか? どう見ても姫って感じじゃ……」
「中西姫子ちゃんっていうんだ。今朝俺と一緒に大学に来てくれた親切な子だから、失礼なこと言ったらぶっ飛ばすからな!」
「マジか。ていうか今朝は迷子にでもなったんでちゅか? 礼二郎君は」
「なるかぁ! 趣味はちょっとアレだがとにかく親切なんだ!」
「よくわかんねぇけど、礼二郎が懐くってことはいい子なんだろうな」
「うむ、そういうことだ。じゃ、今朝のお礼がてら親交を深めてくる」
礼二郎はレジュメ一式を持って姫子のところへ向かった。今日は姫子の隣で講義を聴くつもりらしい。
「おーい姫ちゃん」
「え? あ、礼二郎君!?」
姫子は礼二郎が隣に座るなり、動画から目を外してイヤホンを外した。
「今朝はありがとう、隣いい?」
「え? 私何もしてないけど……って、なんかメッチャ見られてるぅ!?」
今、二人は講義室中の注目の的だった。
遅れて講義室に来た平尾も驚きを隠せず、池永に話しかける。
「なー池永、今礼二郎が話してるのってダレ? あんな子いたっけ」
「俺も詳しくは分からんが、姫ちゃんだと」
「は? 姫とかふざけてんのか」
「本名らしいぞ。礼二郎が言うには、今朝親切にしてもらって友達になったらしい」
「ふーん……?」
謎は深まるばかりだった。
姫子は注目を浴びまくっているせいでアタフタしていたが、見られることには慣れている礼二郎が言った。
「皆が見てるのは俺が美しいせいだから姫ちゃんは気にしなくていいよ。ところで何の動画を真剣に観てたんだ?」
「(ポジティブだなぁ~)今急上昇の心霊動画だよ、一緒に観る?」
「ヒッ!? いや、俺は見ない!」
礼二郎は目の前で両手を振って激しく拒否した。
「この人たちは霊能力者のミーチューバーで、全員霊が視えてるみたいなんだけど……礼二郎君にも視える? ここに髪の長い女の人の霊がいるらしいんだけど」
「み、見たくない……」
「そう言わずに見てくださいよ、旦那」
目の前にずいっとスマホを差し出された。
「キャアァッ!! あ……?」
思わず女の子のように叫んで顔を覆ったが、指の間からチラッと見えた動画には、霊らしきものは何も映っていなかった。
「んん……? 俺には何も視えないぞ」
動画の中のよく喋る若者たちは、古びた建物──多分廃墟の中で、皆同じ方向を指差して怖がっている。しかしそこにはなんの霊も映っていないのだった。
「なーんだヤラセか~。がっかり」
「俺に視えてないだけかもしれないけどな。……ていうか今ってこういう動画が人気あるんだな。何、心霊スポット巡り? こいつら全員頭おかしいの?」
礼二郎は思い切り怪訝な顔をして姫子に問いかけた。
「そ、そう言わないで。心霊動画は視えない人からすると人気なコンテンツなんだよぅ。その分ヤラセも多いけど……そういうのって素人じゃわかんないしね」
「視えないって幸せだな。──ていうか姫ちゃん、やっぱりこういうのが好きなんだな……」
「オカ研所属だからねえ。能天気にはしゃいじゃってごめんね」
「いや、別に謝ることはないけど……」
両親や兄もこういうのが大好きなので、共感は出来ないが理解は出来る礼二郎であった。
しかし当の姫子はイヤホンで何か動画を見ているらしく、礼二郎の呼びかけに無反応だった。
礼二郎が女の子に無視されたことで、またまた講義室がザワついた。
「え、あの子が姫ちゃん……? 顔は知ってるけど、え、姫って名字か何かか? どう見ても姫って感じじゃ……」
「中西姫子ちゃんっていうんだ。今朝俺と一緒に大学に来てくれた親切な子だから、失礼なこと言ったらぶっ飛ばすからな!」
「マジか。ていうか今朝は迷子にでもなったんでちゅか? 礼二郎君は」
「なるかぁ! 趣味はちょっとアレだがとにかく親切なんだ!」
「よくわかんねぇけど、礼二郎が懐くってことはいい子なんだろうな」
「うむ、そういうことだ。じゃ、今朝のお礼がてら親交を深めてくる」
礼二郎はレジュメ一式を持って姫子のところへ向かった。今日は姫子の隣で講義を聴くつもりらしい。
「おーい姫ちゃん」
「え? あ、礼二郎君!?」
姫子は礼二郎が隣に座るなり、動画から目を外してイヤホンを外した。
「今朝はありがとう、隣いい?」
「え? 私何もしてないけど……って、なんかメッチャ見られてるぅ!?」
今、二人は講義室中の注目の的だった。
遅れて講義室に来た平尾も驚きを隠せず、池永に話しかける。
「なー池永、今礼二郎が話してるのってダレ? あんな子いたっけ」
「俺も詳しくは分からんが、姫ちゃんだと」
「は? 姫とかふざけてんのか」
「本名らしいぞ。礼二郎が言うには、今朝親切にしてもらって友達になったらしい」
「ふーん……?」
謎は深まるばかりだった。
姫子は注目を浴びまくっているせいでアタフタしていたが、見られることには慣れている礼二郎が言った。
「皆が見てるのは俺が美しいせいだから姫ちゃんは気にしなくていいよ。ところで何の動画を真剣に観てたんだ?」
「(ポジティブだなぁ~)今急上昇の心霊動画だよ、一緒に観る?」
「ヒッ!? いや、俺は見ない!」
礼二郎は目の前で両手を振って激しく拒否した。
「この人たちは霊能力者のミーチューバーで、全員霊が視えてるみたいなんだけど……礼二郎君にも視える? ここに髪の長い女の人の霊がいるらしいんだけど」
「み、見たくない……」
「そう言わずに見てくださいよ、旦那」
目の前にずいっとスマホを差し出された。
「キャアァッ!! あ……?」
思わず女の子のように叫んで顔を覆ったが、指の間からチラッと見えた動画には、霊らしきものは何も映っていなかった。
「んん……? 俺には何も視えないぞ」
動画の中のよく喋る若者たちは、古びた建物──多分廃墟の中で、皆同じ方向を指差して怖がっている。しかしそこにはなんの霊も映っていないのだった。
「なーんだヤラセか~。がっかり」
「俺に視えてないだけかもしれないけどな。……ていうか今ってこういう動画が人気あるんだな。何、心霊スポット巡り? こいつら全員頭おかしいの?」
礼二郎は思い切り怪訝な顔をして姫子に問いかけた。
「そ、そう言わないで。心霊動画は視えない人からすると人気なコンテンツなんだよぅ。その分ヤラセも多いけど……そういうのって素人じゃわかんないしね」
「視えないって幸せだな。──ていうか姫ちゃん、やっぱりこういうのが好きなんだな……」
「オカ研所属だからねえ。能天気にはしゃいじゃってごめんね」
「いや、別に謝ることはないけど……」
両親や兄もこういうのが大好きなので、共感は出来ないが理解は出来る礼二郎であった。
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