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6話 誓いの夜
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夜が更けても、王子ルイセルの身体からは、まだ微かな熱が引かぬままだった。
ミゼ・アガナの仕掛けた香の残り香が、皮膚の下にまで染み込み、特に腿の内側、彼の中心は熱く、未だに感覚が残っていた。
(……また、ここか……)
まるで火が灯るように、柔らかな布越しの刺激すら、じわりと意識に響いてくる。
椅子の座面に押し当てられた、あの熱、あの疼き――
何よりも、彼女の視線がそこに向けられていたのを、王子は知っていた。
⸻
扉の外で、控えめに音がする。
「……リリアか?」
「はい、殿下。お休み前に、冷水と清めの布をお持ちしました」
「入れ」
静かに扉が開くと、リリアが銀盆を抱え、柔らかな布を片手に入ってきた。
彼女の歩みは、いつもと違ってほんの少し、躊躇いを含んでいた。
「殿下……きょうは、とてもお辛そうでした」
「……少し、熱が残っていてな」
王子は、自ら椅子に腰を下ろした。
そして、ベルトをもどかしげに解き、腰まで覆う外套を脱ぎ捨てると、自らの熱く膨らむ箇所を指した。
「……ここが、まだ熱い。……触れてくれるか」
リリアは、驚きに目を見開いたが、すぐに小さくうなずく。
「……失礼いたします」
そっと膝を折って座ると、白い指が慎重に王子の中心へと伸びていく。
布を挟んだまま、まずはその輪郭を、なぞるように。
――熱い。
しかし、それは決して淫靡なものではない。
むしろ、芯から痛んだところを、冷やすような――清らかな癒しだった。
「……あの日も……でしたよね。あの女に、ここを……」
リリアの指が、王子の内腿の深いところへと、そっと滑った。
「……そうだ。……最初に、触れられたのも……このあたりだった」
わずかに吐息が漏れる。
リリアの冷えた布が、そっと肌の上を這い、火照りをなぞる。
「……殿下が、そのまま“あの方”の思い通りになってしまうのではと……とても怖かったです」
「……リリア。お前がいなければ、俺は……」
ふと、指先がある一点で止まった。
そこは、ミゼが何度も指を滑らせた、王子の“弱さ”の象徴のような場所――
「……ここが、一番熱い……」
リリアは、両手で彼自身をやさしく挟み込むようにして、そこに頬を寄せた。
肌に、少女の息がかかる。
王子の身体が、ぴくりと跳ねた。
「……っ、リリア……!」
「……お赦しください……でも、今夜だけは……こうしていたくて……」
彼女の言葉に、王子の中で、何かがほどけていった。
理性でも、官能でもない。
それは、深く閉じていた“痛み”に触れられたときの、解放。
中心に寄せられる頬。
滑るように動く指先と、布越しに冷たい水が滴るたび、王子の身体はゆっくりと安らぎを取り戻していく。
「……ありがとう、リリア」
「殿下のためなら、私は……何にでもなります」
彼女の声は涙ぐんでいた。
王子は静かに手を伸ばし、リリアの頬に触れた。
そして――
「では、誓ってくれ。“俺の雄の部分″に触れられるのは、おまえだけだと」
リリアは頬を染め、小さく、頷いた。
「……はい、殿下。私は……貴方の“守り手”になります」
その言葉に、王子は吹き出しそうになったが、こらえて笑みを浮かべた。
(この夜、俺は救われたのだ。おまえの白き手で――)
⸻
一方――
夜の中庭の奥。
ミゼ・アガナ侯爵夫人は、ほの暗いランプを見つめながら、紅いワインを舐めていた。
「ふふ……守りて、ね……」
女の口元に浮かんだ笑みは、ぞっとするほど甘美で、そして狂気に近かった。
「可愛い侍女……せいぜい、大切にすることね。奪うとき、もっと楽しいから」
月の光に照らされたドレスの裾が、ゆらりと風に揺れた。
ミゼ・アガナの仕掛けた香の残り香が、皮膚の下にまで染み込み、特に腿の内側、彼の中心は熱く、未だに感覚が残っていた。
(……また、ここか……)
まるで火が灯るように、柔らかな布越しの刺激すら、じわりと意識に響いてくる。
椅子の座面に押し当てられた、あの熱、あの疼き――
何よりも、彼女の視線がそこに向けられていたのを、王子は知っていた。
⸻
扉の外で、控えめに音がする。
「……リリアか?」
「はい、殿下。お休み前に、冷水と清めの布をお持ちしました」
「入れ」
静かに扉が開くと、リリアが銀盆を抱え、柔らかな布を片手に入ってきた。
彼女の歩みは、いつもと違ってほんの少し、躊躇いを含んでいた。
「殿下……きょうは、とてもお辛そうでした」
「……少し、熱が残っていてな」
王子は、自ら椅子に腰を下ろした。
そして、ベルトをもどかしげに解き、腰まで覆う外套を脱ぎ捨てると、自らの熱く膨らむ箇所を指した。
「……ここが、まだ熱い。……触れてくれるか」
リリアは、驚きに目を見開いたが、すぐに小さくうなずく。
「……失礼いたします」
そっと膝を折って座ると、白い指が慎重に王子の中心へと伸びていく。
布を挟んだまま、まずはその輪郭を、なぞるように。
――熱い。
しかし、それは決して淫靡なものではない。
むしろ、芯から痛んだところを、冷やすような――清らかな癒しだった。
「……あの日も……でしたよね。あの女に、ここを……」
リリアの指が、王子の内腿の深いところへと、そっと滑った。
「……そうだ。……最初に、触れられたのも……このあたりだった」
わずかに吐息が漏れる。
リリアの冷えた布が、そっと肌の上を這い、火照りをなぞる。
「……殿下が、そのまま“あの方”の思い通りになってしまうのではと……とても怖かったです」
「……リリア。お前がいなければ、俺は……」
ふと、指先がある一点で止まった。
そこは、ミゼが何度も指を滑らせた、王子の“弱さ”の象徴のような場所――
「……ここが、一番熱い……」
リリアは、両手で彼自身をやさしく挟み込むようにして、そこに頬を寄せた。
肌に、少女の息がかかる。
王子の身体が、ぴくりと跳ねた。
「……っ、リリア……!」
「……お赦しください……でも、今夜だけは……こうしていたくて……」
彼女の言葉に、王子の中で、何かがほどけていった。
理性でも、官能でもない。
それは、深く閉じていた“痛み”に触れられたときの、解放。
中心に寄せられる頬。
滑るように動く指先と、布越しに冷たい水が滴るたび、王子の身体はゆっくりと安らぎを取り戻していく。
「……ありがとう、リリア」
「殿下のためなら、私は……何にでもなります」
彼女の声は涙ぐんでいた。
王子は静かに手を伸ばし、リリアの頬に触れた。
そして――
「では、誓ってくれ。“俺の雄の部分″に触れられるのは、おまえだけだと」
リリアは頬を染め、小さく、頷いた。
「……はい、殿下。私は……貴方の“守り手”になります」
その言葉に、王子は吹き出しそうになったが、こらえて笑みを浮かべた。
(この夜、俺は救われたのだ。おまえの白き手で――)
⸻
一方――
夜の中庭の奥。
ミゼ・アガナ侯爵夫人は、ほの暗いランプを見つめながら、紅いワインを舐めていた。
「ふふ……守りて、ね……」
女の口元に浮かんだ笑みは、ぞっとするほど甘美で、そして狂気に近かった。
「可愛い侍女……せいぜい、大切にすることね。奪うとき、もっと楽しいから」
月の光に照らされたドレスの裾が、ゆらりと風に揺れた。
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