また、桜坂で(完結)

もちもち

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真帆の日記(真帆視点)〜その後

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4月12日 くもりのち晴れ

専門学校が始まって、もうすぐ二週間。

慣れない街、初めての電車通学、初対面のクラスメイトたち。
最初は緊張してばかりだったけど、少しずつ、日常になってきた。

それでも、教室のドアを開ける前の数秒間は、
あの高校の昇降口を思い出す。

“速見くんが、待っててくれた時間”

それが、心の支えになってるんだと思う。


今日の授業は、声優実技。
セリフ読みはまだ苦手だけど、ナレーションなら、少しだけ自信が持てるようになった。

録音が終わったあと、先生がひと言、

「あなたの声は、人の心をほどく力があるね」

……嬉しかった。
だけど、いちばんに聞かせたい人は、やっぱりあの人なんだって、すぐに思った。


放課後、スタジオから出ると、スマホに一通の通知。

【バイト終わった!今週土曜、会えそう?】
――雄太

胸がきゅっとした。

あの人が“会いたい”って言ってくれることが、
毎日頑張る理由になってる。


駅のホームで、イヤホンをつけて、あの録音ファイルを再生する。

「……春の風が、あなたの背中を押しますように」

自分の声なのに、少しだけ違って聞こえる。
まるで、誰かの物語のヒロインみたいだ。

(……私、ちゃんと前に進んでる?)

そう思ったとき、イヤホンの向こうに、あの人の声が浮かぶ。

『大丈夫。真帆は真帆のままで、ちゃんと前に行けるよ』

涙が出そうになる。


家に帰って、小さなノートに今日のことをメモする。

今までは「誰にも見せない日記」だったけど、
最近は、彼に読んでもらってもいいかなって思い始めてる。

だって、私の“声”を、いちばん近くで受け止めてくれるのは、
いつだって――雄太だから。


最後に、ベッドに入る前、メッセージを送った。

【録音、今日もできたよ。いつか、ラジオ番組でも読んであげたいな】
【……あなたにだけ届く声で】

返信はまだない。

でもきっと、明日の朝には届くって、私は知ってる。

(好きです。今も、ずっと)

今日の“好き”を、大切に抱きしめて、おやすみなさい。

――真帆
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