【完結】ヴィルヘルミーナの白い海賊船 ―自由と冒険を愛する貴方へ― (海賊令嬢シリーズ1&2)

SHOTARO

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第2部 第一章 お転婆令嬢、海賊になる!

2-1-7.逃亡者

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第七話
逃亡者


 白いガレオン船は、考えていた。

「宗教が、人を幸せに出来るのだろうか?」と。
「宗教が、この二人の女の行き場所を奪ったのだから。私のところに来るしか……」

***

「どうですか? イリーゼさん」と、聞いたのは私だ。
 何を聞いたのか?
 それは、この船がお祖母様の“白いガレオン船”“白い海賊船”なのかということだ。

 そして、船内には、船名の書いたプレートがあった。
 これは、間違いなくお祖母様の船だ!

「似ているが、違う様な気がする。レプリカにも、このプレートはあったし……」

 実は、お祖母様の人気が高まり、ガレオン船を白く塗り、レプリカの“Der Schlüssel zur Zukunft”号が売りに出されたのだ。

 そのうちの一つだと、かつてのクルーのイリーゼが言っているのだ。やはり、レプリカなのか?

「レプリカなら、要らぬか?」
「いえ、そんなことは……」

 すると、アインズ商会の社員から、
「支店長、武器を確認しました。ほぼ使えません」
「えっ」と、私は声を上げてしまった。

 確かにそうだろう。
 何十年前の大砲が、整備なしに稼働したらおかしいわな。
 さらに、詳しい報告を聞くことにした。


「五十砲台のうち、カノン砲とダブルカノンは使用出来るものはありません。
 カルバリン砲はいくつかは、使えそうなものもありましたが、一度、鍛冶屋に見てもらった方が良いと思われます」

「なら、ドーバーの鍛冶屋に見せに行くか。ミーナ、それで良い?」
「はい。ですが、イリーゼさん。父上に連絡をしないと。メイドの二人も連れています」
「手紙でも書けば、支店の者が領主殿に届けてくれる」

 そう!
 それが良い。

 父上に直接、手紙を書くより、アインス商会を通じて、書くほうが良いわ!

 なんと言っても、父上は生まれた頃より、イリーゼさんのお世話になっていて、イリーゼさんが結婚するときは、大泣きしたとか!

 ガハハ!

 初恋?
 子どもの時なのだから、まあ、父も可愛かったのでしょう。


 そして、ロッテルダムでカノン砲を数台購入し、古い物と取り替えたが、カルバリン砲とダブルカノンとやらは、手に入らなかった。
 どうやら、アインス商会の情報網では、やはり、ドーバーに行く必要があるようだ。

 白いガレオン船は、アインス商会御用達のドックで整備されていた。
 後で知ったのだけれど、費用は父上に請求されたようだけれども。

 許せ、父上!

「クリスちぃは、実家に帰るでしょう?」
「なら、アインス商会の馬車で送りましょう」
「……」

「クリスちぃ?」
「私も行くわ。ドーバーへ」
「なに言ってんのよ」
「わかっているわ。男爵令嬢なんて、今の帝国では、なんの価値も無いって」

 私たちは、何も言えなかった。

 クリスティアーネの家から、玉の輿は厳しい。

 他の男爵達も、楽では無い時代に突入しているのだから、他の男爵家に嫁いでも……

 また、南方からのオスマントルコ帝国の侵攻も厳しく、ハンガリー帝国は今や存亡の危機だ。
 それなのに、自分の領地は守れと!
 南部は厳しい。

「実家への手紙だけは、書いておいてよ。クリスちぃ」
「わかったわ」

 そして、数日後。

 ドックから白いガレオン船が出てきた。航海には問題がないが、武装に関しては、ドーバーで行うことになっている。

 取り敢えずは、カノン砲が十門とカルバリン砲四門が使えるとのことだ。


「おぉ、見違えるように美しくなったねぇ」と、笑みがこぼれ出てしまう。

 すると、二人の女性に声をかけられた。
「あ、あの。海賊さんですか?」

 初めてそんな言われ方をした。
 自分は海賊に見えるのか?

 返事に困った……

「すみません。船のオーナー様か、船長様でしょうか?」
「えぇ、オーナーです」
「あ、あの私たちを乗せてくれませんか?」

 見るからに、訳ありそうな身なりだ。
『関わるのは良くないのでは』と、思ったが、何故だろうか、無性に興味が湧いてきたのは、どうしてだろうか?

「実は私たち、スペインから逃亡してきました。もう、逃げ場がありません。ですから海の上ならと」
「はい、炊事、掃除なんでもやらせてもらいます。こき使って頂いて大丈夫です」

 ???
 こき使って大丈夫?
 こいつは、訳ありなのでは?

「理由が知りたいわ。スペインから逃亡した訳を」
「実は、カトリックのスペインでは、私たちは処刑されかねません」
「言いにくいのですが、私達は同性愛者なのです」

「はへぇ」と、私は間抜けな声を上げてしまった。
 同性愛か……


 次回の女海賊団は、海賊の掟です。
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