【完結】ヴィルヘルミーナの白い海賊船 ―自由と冒険を愛する貴方へ― (海賊令嬢シリーズ1&2)

SHOTARO

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第2部 第一章 お転婆令嬢、海賊になる!

2-1-10.イザベラパトロール艦隊

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第十話
イザベラパトロール艦隊


 アンを追っていた男たちは、南ネーデルラントの関係者だとわかった。
 税金の取立なら、代わりに払うつもりだったので、いつでもウエルカムなんだが、現れなかった。

 その間、気になっていた海賊の掟やルールのようなものを整備していた。

 まずは、

 クルーは全員、自由と平等の権利を有する。

 だから、いつでも誰でも、腹一杯、食事しても良しだ!※1
 まさに自由かつ平等だ!

 クルーは、人種も宗教も、自由かつ平等だ。
 恋愛もだな。クククッ。
 シュベルツの孫を見つけて、私は、私は……

 うん、続きは、また、後で考えよう。

 さて、アインス商会の社員を見ていると、何故か、慌ただしい。

 ドーバーで武装を行うので、今は、取り敢えずカノン砲が十門とカルバリン砲が四門しかないはずだが、実弾を積んでいるようだ。

 ここから、ドーバーなんて、すぐそこなのに、実弾が必要なのか?
 しかも、海を挟んでの同盟国同士なのに。

 例えるなら、ご近所に行くのに、歩きや自転車でなく、タクシーを呼ぶようなものだ。
 浜松から掛川に行くのに、在来線でなく新幹線で行くようなものだ。

 名古屋と岐阜羽島なら、在来線が無いというメリットがあるんだけど。


 そして、我らが白い船は、運河を抜けて、外海へ。一路、ドーバーを目指した。

 しばらくして、南ネーデルラント方面から、三隻のキャラベル船が高速で近づいてきた。
 そして、手旗信号で何やら言っているようだ。
 さっぱり、わからん。

「イリーゼ支店長。南ネーデルラント艦隊が『停船し、ロマを引き渡せ』と言っています」
「ミーナ、どうするんだい?」
「こんな海流の早い海峡で? 何をいってんの。ドーバーまで来なさいよ」

 いや、南ネーデルラントはスペインの領地なのだから、イングランドは敵だ。
 それは、不可能というもの。

 実際は、先日の海に落とされた男たちの腹いせのようだった。
 今頃、船の中では、仕返しをしてやるとでも思っているのだろう。

 イリーゼは、
「しかし、このままでは包囲されるね」
「どうすれば……」と、私には解決策は見つからなかった。

 すると、イリーゼとその部下は笑いだした。

「アンナ、私の言うとおりに動かして」と、イリーゼが言うと、部下に「総員、戦闘配備。カルバリン砲は甲板に上げて」

「戦闘配備ッ」の声でアインス商会の社員は慌ただしく走り回っている。

「まあ、ミーナ。よく見ておくように」と、イリーゼは椅子に腰掛け、足を組むと、さらに手の指を組み、私に、そう言った。

「敵艦発砲ォ」
「ふん、南ネーデルラントのイザベラのパトロール艦隊だろうさ。
 アンナッ、一時半の方向へ回頭」※2

 すると、三隻のパトロール艦隊も後を追ってきた。
 
 真ん中の船が隊長艦なのだろうか?
 少し前を走っている。

「アンナ、取舵ッ」
「とぉりかぁじっ」とアンナが答えたとき、イリーゼが左手を上げた。
 部下の一人が、
「カルバリン砲斉射だ」

 後部甲板に並べられたカルバリン砲が火を拭いた。

 なんと、驚いたことに、威力の弱いカルバリン砲は船でなく、帆とマストを撃ち抜いた。
 しかも、後に『ぶどう弾』と呼ばれる散弾に似ている。

 散弾なので、帆はボロ布と化し、隊長艦は失速した。
 それも取舵の最中にだ!
 なので、端の艦と盛大にぶつかった。
 沈没こそ免れたが、隊長艦が邪魔で後ろの艦は、前進も後退も出来ない。

「まずは二隻」とイリーゼは笑った。

 残ったのは左端の艦だ。

 指揮艦では無いため、判断が遅いだろうということで、残したようだ。

「取舵のまま、時計と反対周りに」とイリーゼが言うと、船は傾いた。
 これが狙いだ。

 船が傾くと、船側のカノン砲の高さが水面に近くなる。
 そこで斉射をする。

 砲撃を受けた船は水面近くを撃ち抜かれるので、浸水するわけだ。
 なので、船大工は修理をしないといけない。
 もう、戦闘どころではないのだ。

 イリーゼは、アッという間に、三隻のパトロール艦隊を戦闘不能にしてみせた。

 そして、イリーゼは立ち上がり、ミーナが見上げる中、
「これが海賊のやり方だ!」と、叫んだ。

 部下たちは、大声を上げた。
「うぉぉ、支店長!」
「イリーゼ支店長ッ!」という声が上がった。
「ふふふ、どうだい。私も、まだまだやれるだろう?」と、イリーゼは笑った。

 さて、私に、同じことが出来るだろうか?
 と思うと、少しばかり心が冷たくなってきた。
 私には、海での経験が不足している。

 だが、そんな事も含めてイリーゼは、「ドーバーに行く」と言ったことは、まだ、私には分からなかった。



※1 あのロバーツ海賊の掟にも、食事の自由が与えられている。

※2 イザベラ 南ネーデルラントの領主
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