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第2部 第一章 お転婆令嬢、海賊になる!
2-1-16.ダブルカノン
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第十六話
ダブルカノン
海軍を振り切った私たちは、エディンバラまで、三日ほどの旅になる。
ロンドンとエディンバラは、概ね、陸では600キロ程度の距離だ。※1
なので、大きな荷物は海上輸送が主体となる。
しばらくは、平穏な海の旅であったが、雲行きが怪しくなってきた。
雨が降るのだろうか?
すると!
「まさか、あれは?」
「ヴァイキング?」
そうなのだ!
10世紀には、消滅したはずのヴァイキング船がイナゴの群れのように、こちらへ向かってくる。
しかも、四方八方からだ!
「亡霊でも現れたの?」
皆、驚きを隠せない。
「戦闘用意ッ」と言うイリーゼの声で、皆、正気に戻った。
あんなのに、襲われでもしたら、気味悪いじゃない。
「やるしか無いッ!」と、自己を鼓舞する。
すると、派手なギターの音が、ジャンジャカ鳴り出した。
戦いの歌だ! とでもいう感じがする。
おぉ、演奏していたのは、ジプシー・アンだ!
アンよ、自分の仕事を熟しとるねぇ。
感心、感心!
しかし、小さいヴァイキング船がウロチョロして、こちらの動きが悪くなる。
また、それなりの武装もしており、益々、苛立たさせられる。
船側のカノン砲の高価な砲弾を使うには、勿体なく、カルバリン砲の射程距離より近くに入る。
「先日の散弾は撃てませんか」とイリーゼに聞くも、どうやら、あれは帆やマストを撃つためのもので、上手くいくか分からないようだ。
「取り敢えずやってみます」とだけ言い、甲板からカルバリン砲を撃ってみた。
相手が早くて、的が絞る事ができない。
一本マストと櫓でこぐ機動力が、こんなにも厄介とは!
そこで、ふと、先日のライン川の賊をロングボウで撃退したことを思い出した。
そうだ!
砲でなく弓矢や銃だ!
しかも、こちらからは、上になるので簡単に狙撃出来る。
「なんだ、こんな簡単なことだったのか」
「ベネ! 弾込めをお願い。アガーテと私に渡して」
この時、この時代には、まだまだ珍しいフリントロック式マスケット銃を用意していた。
射程距離が500メートルから1キロ程度ならマスケット銃を。
200メートルから500メートル辺りまでなら、クロスボウで迎撃した。
指揮官が立って指示を出しているから狙いやすい。
また、指揮官に当たらなくとも、櫓を漕ぐ者に当たればバランスが崩れる。
大型船だから砲にこだわる事はない。
弓矢と銃で応戦した。
もちろん、相手もマスケット銃は用意していたが、マッチロック式だから、海では有効ではない。※2
それもそのはずで、彼らは端から、小型船から、この船に乗り込むつもりは無かったようだ。
彼らの目的は、この船を四方八方囲み、戦列艦の正面におびき寄せることだった。
そして、まんまと誘き寄せられたようだ。
柿色の武装特化ガレオン船、戦列艦が正面に現れたのだ。
「ジャスミン! 船首へ」と、イリーゼが指示した。
カノン砲のところにいたジャスミンが、大慌てで船首へ走っていくのがわかった。
船首?
「ミーナ、あれを使うよ。相手が打つ前に仕留める」
「つまり、この船の最大火力。ダブルカノンを使うと……」
通常のカノン砲弾が42ポンドに対して、ダブルカノンとは、68ポンドの砲弾を使用する。
この六割増しの重さは、数字以上に威力があり、戦列艦と言えども、無事ではあるまい。
それを船首に三門も、装備しているこの船は、戦列艦に匹敵すると言っても良いのではないか?
「最大船速!」と声と共に、帆はすべて張られ、加速する。
「撃てぇ」と、ジャスミンの声が甲板まで聞こえた。
ドォーン
ドォーン
ドォーン!
最大船速からのダブルカノンは、一発が着弾したようだ。
出火しているのが見える。
この隙に、最大船速でこの海域から離脱した。
戦列艦が小さくなった頃、先日のアインス商会からの移籍型出向者が甲板にいるのを見つけた。
「どうしたの?」と尋ねてみると、
「いえ、あの戦列艦に父が乗っていたかもしれないと……」
確かに、あれが海軍の戦列艦なら、さらわれた父親が海軍にいる以上、有り得るかもしれない。
もし、そうだとしたら、撃つのを止めるべきなのか?
その時が来たら、私は……
次回の女海賊団は、エディンバラです。
※1 ロンドンとエディンバラ
この時代、ロンドンとエディンバラ間を高速馬車を走らせ、三日で行けるようになったが、舗装が悪く乗り心地は悪かった。
しかし、この高速馬車が、後の“フライング・スコッツマン”の原型なのだ。
今、このイギリス人の魂とも言える列車を、日本の日立が製作しているのだから面白いではないか!
※2 フリントロック式とマッチロック式
フリントロックは撃鉄で燧石で着火する。
マッチロックは火縄で着火する。
フリントロック式は、扱いやすいが、当初、命中率が悪かった。
ダブルカノン
海軍を振り切った私たちは、エディンバラまで、三日ほどの旅になる。
ロンドンとエディンバラは、概ね、陸では600キロ程度の距離だ。※1
なので、大きな荷物は海上輸送が主体となる。
しばらくは、平穏な海の旅であったが、雲行きが怪しくなってきた。
雨が降るのだろうか?
すると!
「まさか、あれは?」
「ヴァイキング?」
そうなのだ!
10世紀には、消滅したはずのヴァイキング船がイナゴの群れのように、こちらへ向かってくる。
しかも、四方八方からだ!
「亡霊でも現れたの?」
皆、驚きを隠せない。
「戦闘用意ッ」と言うイリーゼの声で、皆、正気に戻った。
あんなのに、襲われでもしたら、気味悪いじゃない。
「やるしか無いッ!」と、自己を鼓舞する。
すると、派手なギターの音が、ジャンジャカ鳴り出した。
戦いの歌だ! とでもいう感じがする。
おぉ、演奏していたのは、ジプシー・アンだ!
アンよ、自分の仕事を熟しとるねぇ。
感心、感心!
しかし、小さいヴァイキング船がウロチョロして、こちらの動きが悪くなる。
また、それなりの武装もしており、益々、苛立たさせられる。
船側のカノン砲の高価な砲弾を使うには、勿体なく、カルバリン砲の射程距離より近くに入る。
「先日の散弾は撃てませんか」とイリーゼに聞くも、どうやら、あれは帆やマストを撃つためのもので、上手くいくか分からないようだ。
「取り敢えずやってみます」とだけ言い、甲板からカルバリン砲を撃ってみた。
相手が早くて、的が絞る事ができない。
一本マストと櫓でこぐ機動力が、こんなにも厄介とは!
そこで、ふと、先日のライン川の賊をロングボウで撃退したことを思い出した。
そうだ!
砲でなく弓矢や銃だ!
しかも、こちらからは、上になるので簡単に狙撃出来る。
「なんだ、こんな簡単なことだったのか」
「ベネ! 弾込めをお願い。アガーテと私に渡して」
この時、この時代には、まだまだ珍しいフリントロック式マスケット銃を用意していた。
射程距離が500メートルから1キロ程度ならマスケット銃を。
200メートルから500メートル辺りまでなら、クロスボウで迎撃した。
指揮官が立って指示を出しているから狙いやすい。
また、指揮官に当たらなくとも、櫓を漕ぐ者に当たればバランスが崩れる。
大型船だから砲にこだわる事はない。
弓矢と銃で応戦した。
もちろん、相手もマスケット銃は用意していたが、マッチロック式だから、海では有効ではない。※2
それもそのはずで、彼らは端から、小型船から、この船に乗り込むつもりは無かったようだ。
彼らの目的は、この船を四方八方囲み、戦列艦の正面におびき寄せることだった。
そして、まんまと誘き寄せられたようだ。
柿色の武装特化ガレオン船、戦列艦が正面に現れたのだ。
「ジャスミン! 船首へ」と、イリーゼが指示した。
カノン砲のところにいたジャスミンが、大慌てで船首へ走っていくのがわかった。
船首?
「ミーナ、あれを使うよ。相手が打つ前に仕留める」
「つまり、この船の最大火力。ダブルカノンを使うと……」
通常のカノン砲弾が42ポンドに対して、ダブルカノンとは、68ポンドの砲弾を使用する。
この六割増しの重さは、数字以上に威力があり、戦列艦と言えども、無事ではあるまい。
それを船首に三門も、装備しているこの船は、戦列艦に匹敵すると言っても良いのではないか?
「最大船速!」と声と共に、帆はすべて張られ、加速する。
「撃てぇ」と、ジャスミンの声が甲板まで聞こえた。
ドォーン
ドォーン
ドォーン!
最大船速からのダブルカノンは、一発が着弾したようだ。
出火しているのが見える。
この隙に、最大船速でこの海域から離脱した。
戦列艦が小さくなった頃、先日のアインス商会からの移籍型出向者が甲板にいるのを見つけた。
「どうしたの?」と尋ねてみると、
「いえ、あの戦列艦に父が乗っていたかもしれないと……」
確かに、あれが海軍の戦列艦なら、さらわれた父親が海軍にいる以上、有り得るかもしれない。
もし、そうだとしたら、撃つのを止めるべきなのか?
その時が来たら、私は……
次回の女海賊団は、エディンバラです。
※1 ロンドンとエディンバラ
この時代、ロンドンとエディンバラ間を高速馬車を走らせ、三日で行けるようになったが、舗装が悪く乗り心地は悪かった。
しかし、この高速馬車が、後の“フライング・スコッツマン”の原型なのだ。
今、このイギリス人の魂とも言える列車を、日本の日立が製作しているのだから面白いではないか!
※2 フリントロック式とマッチロック式
フリントロックは撃鉄で燧石で着火する。
マッチロックは火縄で着火する。
フリントロック式は、扱いやすいが、当初、命中率が悪かった。
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