【完結】ヴィルヘルミーナの白い海賊船 ―自由と冒険を愛する貴方へ― (海賊令嬢シリーズ1&2)

SHOTARO

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第2部 第ニ章 黄金郷を求めて

2-2-32.村上海賊衆 壱

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第三十二話
村上海賊衆 壱


 白いガレオン船は、少し怒っていた。
「この私を置いて行くだなんて!」と。

***

 さて、昭和のいつ頃だっただろうか?
“村上海賊衆”を“村上水軍”と呼ぶようになったのは?

 それと、村上海賊の旗印の『上』とは、『たてまつる』の意味である。


***

「と言う事で、船の見張りと大坂や京の都に買付に行く者に分けるわ」
「お頭、何か良い商品があるの?」

「刀よ! あのおかしいまでに斬れる刀を手に入れるわ。
 大坂の近くの堺にあると聞いたの。
 あとね、この国では、お茶もあるらしいわ。京の都の近くの宇治に銘茶があると聞いたのよ。ガハハ!」

「うぉぉぉ、お頭ッ。それって、すべて高額で売れるものばかりでは!」
「そうだろう。黄金は無かったけど、宝の山ではあったよ。高価な物に溢れている。この国は」

 そう、この国はヨーロッパとも、中東やインドとも、東アジアのどの国とも違うのだ。お宝にあふれた国なのだ。
 だが、街の人々を見ていると、そんな様子なく平凡に暮らしている。


「あと、赤い真珠があるという伝説がある。もし、見つかれば手に入れたいと思うんだ」と付け加えておいた。
 薔薇色の真珠なんて、見つけたら、どうしようか?
 売る?
 いや、自分の結婚式にだな……
 ふふふ。

 さて、見張りと買出し班に分ける。
 私が買出しの班長で、見張りの班長をクリスティアーネとした。

 アガーテは私のいるところが、家士の職場らしい。
 アンナがいないと船が動かせないので、見張りだ。

 ベネディクタは、バーナーのいるところへ行きたいので、買出し班に……

 調理人のアナとヘマは、この船の台所が良いらしい。
 移動用の小型船には、専属の料理人がいるのだから、問題なしだ。


 そして、シュベルツ商会のスループ船で、村上海運と待ち合わせ場所へ移動し、大坂へ買出しに行くことにした。

 通行料金も用意した。
 通訳の傭兵も同行するので、言葉の問題も無かろう。
 ふふふ、完璧だ。

 お茶に刀に真珠とヨーロッパでは、バカ売れするぞ!

 あとは、私自身の問題だな。
 バーナーも、初対面では「もっと美人のはず」とか言っていたが、それ以降は紳士的だ。

 あの失言は、シュベルツさんやエルハルト氏の話から、お祖母様への憧れみたいなものだろう。
 私も、同じようなものだ。
 シュベルツさんの孫に恋い焦がれていたのだから。

 それに、バーナーも、こうやって、間近で見ると、背が高くて良い男ではないか!

 うーん、私のことは、どう思っているんだろうか?
 気になるなぁ。

 しかし、先から、私とバーナーの周りをグルグルと月のように回っている奴がいるんだけど、ベネ! おどきなさい!

「ミーナちゃんだけ、バーナーさんをひとりじめしてズルい」
「何を言ってんだ?」
「バーナーさんは、ミーナちゃんより、もっと美人が、お好きなんですよね?」
「いや、ベネちゃん。それは……」と、バーナーが口ごもってしまった。

 うん?
 なんだろうか?

 その時、我々の船団は、突如、海賊の船団に包囲されてしまった。
 その船団は、“上”という海賊旗を上げている。
「村上海賊ッ」
 確か、海賊業は辞めたはずでは?

 我らは、気が付くと芸予諸島のチョークポイントへ入っていたのだ。

 瀬戸内海には、この芸予諸島の他にも、いくつかのチョークポイントがある。
 チョークポイントは海賊の巣であり、瀬戸内海も例に漏れない。
 例えば、明石海峡とかが有名だな。

 さて、ボートが、こちらにやってきた。
 まさか、海軍業を辞めて、海賊稼業に戻ったのか?
 もし、通行料金が必要なら出すつもりだ!

 私は、カネで命が買えるのなら、安いものだと思っている。
 命が尽きるということは、すぐさま“最後の審判”を受けなくてはならないのだから。
 神への言い訳など、まだ、考えてはいない。

「通行料金の用意を!」と、私は部下にカネの用意をさせた。

 さて、村上海賊のうち何人かが、スループ船に上がってきた。
 例の通訳が、リーダーらしき人物と何やら話し、対応している。
 双方、ウンウンと頷き、無事に話はまとまったようだ。

 すると、通訳がバーナーと私のところに来て、
「何やら、『遥々、南蛮からの客人を饗したい』と言っておられますが、如何されますか?」と、やや緊張した感じで話した。
 そして、小言で、「断るとマズイかもしれないです」と付け加えた。

「うん、わざわざの歓待。断る理由もない」と、バーナーが言ったので、「確かに、折角なのですから」と、私も部下に聞こえるように返答した。

 なので、アガーテ達は、察しただろう。
 仕込み傘が必要だと言うことを。

 そして、我らは、海賊衆に付いていくこととなった。

 すると、かつての拠点である能島の近くを通った。
 まさに島が既に要塞だ。
 要塞城だ。

「バーナー、これ……いち海賊団の根城ではないぞ」
「あぁ、これは領主の要塞だ。戦争が出来る代物だ」

 そこに通訳が説明を加えてくれた。
「ご主人、これは村上海賊の一派に過ぎません。村上海賊は三派あります」
「「なに!」」
「今、海賊は停止令により、表向きは停止し……ゲフンゲフン。因島城は、まだ建材です。
 また、陸に上がり、大名となり、久留島と姓を変えた者もおります」
「海賊から大名、つまり領主になったと……」

「さて、今から行く屋代島に我らの領主の元信殿が、おられます」

 確かに、ヨーロッパでも、ヴァイキングがノルマンディー公になったりと、海賊から領主になっているから、不思議ではないが、この連中は海賊というには雅で華やかだな。

 そして、屋代島で私が見たものが、私の人生観を変え、生涯を通して向き合うものに出会うとは、まだ知らなかったのです。


 次回の女海賊団は、瀬戸内の海賊です。
 なぜ、彼らは敵と共に生きるのか?
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