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第2部 第ニ章 黄金郷を求めて
2-2-45.船員保険
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第四十五話
船員保険
イリーゼは64門の戦列艦を仕留めるようだ。
蛇行していたスループ船が、戦列艦の前から横に逸れた時、“アーサー王の復讐”号の船首のダブルカノン砲二門が火を吹いた。
なんと、ダブルカノン砲に散弾のぶどう弾なのか?
「まるで、拡散波○砲だ」
「ミーナちゃん、それはアンドロメダ?」
すると、散弾を喰らった64門鑑は、皮を剥いた果物の様に、装甲が剥がれてしまった。
貫通力は無いが、これは、もう、この船は使えないでは!
クルーたちがボートの用意をしているのだ。もう戦闘不能ということだ。
さて、私たちは100門鑑を沈めるつもりだ。
そして、あの船のクルーは、キャリアの浅い者が多いという事が、理解できた。
大佐が死んで艦長がいないのだろう。
チャンスだ!
「攻撃力の弱い艦尾に付けろ。船側はハリネズミだ。気をつけて」
そして、もたつく100門鑑の背後を取ると、
「突っ込め! 乗り込むぞ」と、船首を敵艦のケツに突っ込んだ!
それは、まるで敵艦が、飛び跳ねるようだった。
船首を伝い、ある者はロープを投げ入れ、スペインご自慢の戦列艦へ乗り込んだ。
そして、カノン砲弾をすべて頂いたのだ。
略奪が終わると、船首を抜き、後退する。
そしてトドメは、
「ダブルカノン砲、撃てぇー」
ドオオオォーーーン!
敵の艦尾は砕け散り、火を吹いている。
これによって、長い戦いに終止符を打つことが出来たのだ。
そして、あの“誰それのリベンジ”号と共にドーバー港へ帰還する。
あぁ、“アーサー王の復讐”号か!
変わった名前の船だな。
カランカランカラン!と入港の鐘がなる。
港には、ジャスミンの父が迎えに来ていた。
「おーい!」
「父さん! ただいま」
「また、こっぴどく壊したな」
ジャスミン親子を見て、マリーがソワソワしている。
父親を探しているのだろう。
突堤には来ていないようだ。
海軍は退役出来たのだろうか?
無事だろうか?
しかし、どこにもいないようだ。
いや!
突堤ではなく、アインス商会のスロープ船から降りてきたのは、マリーの父親だった。
「お父さん!」
「マリー!」
なんと先のスペイン戦列艦との戦いにいたのだな。
「なあ、クリスちぃ。皆、帰るべき所に帰っていくよなぁ」
「うん、そうね」
「私は、例の『海の孤児院』と『海の保険』とやらをやってみるよ」
「海賊船を孤児院にするの?」
「それも良いな」
「今回の旅の収益で商会を作るのは、どう?」
「それ良いね。ドーバーにロッテルダムに支店を作るか?」
「船の修理が終わったら、ロッテルダムに店舗を探しに行きましょうよ」
「よし、そうしよう」
保険で得た収益は孤児院へ回す、そんな感じかな。
上手く行けば、良いけど。
すると!
“じゃら~ん”とギターの音が!
「孤児院の音楽の先生は、ワタクシに、お任せ下さいませ」
「あっ! 頼むよ。アン」
ロッテルダムのアインス商会の支店に行くと、なんと、ベネディクタがいた。
「ベネ、ここで何をしている?」
「み、ミー…… どちら様でしたか? おほほ」
「ふられたんだな」
「な、何をおっしゃいます……」と泣き出すベネディクタ。
すると、イリーゼが奥から出て来て、
「ああ、追い出されたんだよ。インドから」と、説明をしてくれた。
バーナーからは、相手にされなかった様だ。
そして、陸路でオスマン帝国を通り、先に帰ってきたとのことだ。
笑うわ!
もっと、泣け!
ガハハ!
さて、その後、ヴィルヘルミーナたちが始めた、ジパングの海賊をヒントにした孤児院のための『海の保険』事業は、次の世紀、つまり18世紀に入り、海賊には労災保険があるのは当たり前となった。
そして、20世紀になり、海賊に限らず、海に出る者たちに保険をかけるのが、あたり前の時代が来る。
労災保険に医療保険に老齢年金や遺族年金などを一括する保険。※1
その保険の名前を、“船員保険”という。
大海原をかける者たちを守るための保険なのである。
その保険は、ある貴族令嬢が命を燃やして、そのキッカケを作ったなど、誰も知るまい。
そして、時は17世紀後半!
それは、海賊が最も輝いていた時代!
カリブの海賊こと、バッカニアの時代が始まろうとしていた。
それを見守る一人の老婆が言った。
私の胸に宿る『真紅の火』が灯る限り、この海を守る者となろう。
そう、炭が燃え尽きるまで、『真紅の火』を灯すように。
私は、ヴィルヘルミーナ。
女海賊団のキャプテン、キーナ・コスペルなのだから。
第二部
第二章 完
※1 今、日本の船員保険は、年金は厚生年金保険へ統合された。
第三部「永遠の海賊 エルメンヒルデ」も、よろしくおねがいしますね。
船員保険
イリーゼは64門の戦列艦を仕留めるようだ。
蛇行していたスループ船が、戦列艦の前から横に逸れた時、“アーサー王の復讐”号の船首のダブルカノン砲二門が火を吹いた。
なんと、ダブルカノン砲に散弾のぶどう弾なのか?
「まるで、拡散波○砲だ」
「ミーナちゃん、それはアンドロメダ?」
すると、散弾を喰らった64門鑑は、皮を剥いた果物の様に、装甲が剥がれてしまった。
貫通力は無いが、これは、もう、この船は使えないでは!
クルーたちがボートの用意をしているのだ。もう戦闘不能ということだ。
さて、私たちは100門鑑を沈めるつもりだ。
そして、あの船のクルーは、キャリアの浅い者が多いという事が、理解できた。
大佐が死んで艦長がいないのだろう。
チャンスだ!
「攻撃力の弱い艦尾に付けろ。船側はハリネズミだ。気をつけて」
そして、もたつく100門鑑の背後を取ると、
「突っ込め! 乗り込むぞ」と、船首を敵艦のケツに突っ込んだ!
それは、まるで敵艦が、飛び跳ねるようだった。
船首を伝い、ある者はロープを投げ入れ、スペインご自慢の戦列艦へ乗り込んだ。
そして、カノン砲弾をすべて頂いたのだ。
略奪が終わると、船首を抜き、後退する。
そしてトドメは、
「ダブルカノン砲、撃てぇー」
ドオオオォーーーン!
敵の艦尾は砕け散り、火を吹いている。
これによって、長い戦いに終止符を打つことが出来たのだ。
そして、あの“誰それのリベンジ”号と共にドーバー港へ帰還する。
あぁ、“アーサー王の復讐”号か!
変わった名前の船だな。
カランカランカラン!と入港の鐘がなる。
港には、ジャスミンの父が迎えに来ていた。
「おーい!」
「父さん! ただいま」
「また、こっぴどく壊したな」
ジャスミン親子を見て、マリーがソワソワしている。
父親を探しているのだろう。
突堤には来ていないようだ。
海軍は退役出来たのだろうか?
無事だろうか?
しかし、どこにもいないようだ。
いや!
突堤ではなく、アインス商会のスロープ船から降りてきたのは、マリーの父親だった。
「お父さん!」
「マリー!」
なんと先のスペイン戦列艦との戦いにいたのだな。
「なあ、クリスちぃ。皆、帰るべき所に帰っていくよなぁ」
「うん、そうね」
「私は、例の『海の孤児院』と『海の保険』とやらをやってみるよ」
「海賊船を孤児院にするの?」
「それも良いな」
「今回の旅の収益で商会を作るのは、どう?」
「それ良いね。ドーバーにロッテルダムに支店を作るか?」
「船の修理が終わったら、ロッテルダムに店舗を探しに行きましょうよ」
「よし、そうしよう」
保険で得た収益は孤児院へ回す、そんな感じかな。
上手く行けば、良いけど。
すると!
“じゃら~ん”とギターの音が!
「孤児院の音楽の先生は、ワタクシに、お任せ下さいませ」
「あっ! 頼むよ。アン」
ロッテルダムのアインス商会の支店に行くと、なんと、ベネディクタがいた。
「ベネ、ここで何をしている?」
「み、ミー…… どちら様でしたか? おほほ」
「ふられたんだな」
「な、何をおっしゃいます……」と泣き出すベネディクタ。
すると、イリーゼが奥から出て来て、
「ああ、追い出されたんだよ。インドから」と、説明をしてくれた。
バーナーからは、相手にされなかった様だ。
そして、陸路でオスマン帝国を通り、先に帰ってきたとのことだ。
笑うわ!
もっと、泣け!
ガハハ!
さて、その後、ヴィルヘルミーナたちが始めた、ジパングの海賊をヒントにした孤児院のための『海の保険』事業は、次の世紀、つまり18世紀に入り、海賊には労災保険があるのは当たり前となった。
そして、20世紀になり、海賊に限らず、海に出る者たちに保険をかけるのが、あたり前の時代が来る。
労災保険に医療保険に老齢年金や遺族年金などを一括する保険。※1
その保険の名前を、“船員保険”という。
大海原をかける者たちを守るための保険なのである。
その保険は、ある貴族令嬢が命を燃やして、そのキッカケを作ったなど、誰も知るまい。
そして、時は17世紀後半!
それは、海賊が最も輝いていた時代!
カリブの海賊こと、バッカニアの時代が始まろうとしていた。
それを見守る一人の老婆が言った。
私の胸に宿る『真紅の火』が灯る限り、この海を守る者となろう。
そう、炭が燃え尽きるまで、『真紅の火』を灯すように。
私は、ヴィルヘルミーナ。
女海賊団のキャプテン、キーナ・コスペルなのだから。
第二部
第二章 完
※1 今、日本の船員保険は、年金は厚生年金保険へ統合された。
第三部「永遠の海賊 エルメンヒルデ」も、よろしくおねがいしますね。
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