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第一章 過去から来た者たち
8.ブルゴーニュ公国
しおりを挟むブルゴーニュ公国!
またの名をブルグント王国。
ワインの産地で知られるブルゴーニュ公国は、ブルゴーニュ戦争でアルザス公に大敗し、あれほどまで勢力を伸ばしたにもかかわらず、一夜で崩れ去った。
そのブルゴーニュ公国は、この帝国のいたるところに領地を広げ、北海はベルギー付近、南はライン川上流に及んでいた。
つまり、今、お祖父さまの領地に一部はブルゴーニュ公国だったということになる。
ブルゴーニュ公は、帝国内部に公国を作り、成長していった。
そして、彼らは隣りの王国でも同じことをしていた。
つまり、彼らの野望は、帝国も王国も支配する唯一無二の存在になることだ。
なので、帝国皇帝の座も狙っていた。
世界の野心家が行う、おなじみのやり方で!
そう、娘を皇帝やその息子のところへ嫁がせる!
そんな、尊大な野望は、やがて打ち破られる。
シャルル突進公のナンシーの戦いでの戦死で、一族の大いなる野望は費えることになる。
そこに、ここぞとばかりに帝国の貴族たちが、ブルゴーニュ公国の残った者に襲い掛かる。無論、お祖父さまの一族もその一派だ。
そして、ブルゴーニュ公国は滅亡することになる。
では、滅亡した公国の誰が暗躍しているのだろうか?
シャルル突進公には、娘しかいなかった。
シャルル突進公の父のフィリップ善良公は、シャルル突進公しか子供はいなかったが、その父であるジャン無怖公は子沢山の上、妾も数人いたようで、さらに妾達も子沢山ときている。
その子孫となると、もう把握できないだろう。
また、そのうちの一人、あるいは数人が暗躍などされたら、もう誰、何だか。
「ヴィル。ライン宮中伯の領地を受け継ぐ者と思われては、厄介ごとがおきるだろう。なら、私の一族を頼るのが良い。ブランデンブルク辺境伯領にお世話になろう」
先日、ブランデンブルク辺境伯は、プラハを皇帝派閥に奪われたという話を聞いたのだけれど、良いのだろうか?
とは言うものの、ブルゴーニュ公国からの追手を避けるには、お祖父さまと距離を取るしかない様だ。
そして、ブランデンブルク辺境伯領といえば、帝国でも東になり、生まれてからほぼライン川近辺の西の地で育った私には、やや不安であった。
また、辺境伯と言う、地方長官的な官職も父やお祖父さまとは違うだろう。
ちなみに、辺境伯とは伯爵の一種ではない。地方長官なのだから、公爵に近い。
公爵と辺境伯の違いというと、何だろうねぇ。
公爵が公国を作れるのに対し、辺境伯はあくまで帝国の長官なのだろうか?
日本では、侯爵とも訳しているみたいだね。
いずれにせよ、帝国内のトップに違いない。
そして、父は私に辺境伯領域を勧めてくれた。
よって、社交界では、
「最近、握力令嬢を見なくなったね」という噂が流れていたことを、私は知る由もなかった。
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