握力令嬢は握りつぶす。―社会のしがらみも、貴公子の掌も握りつぶす― (海賊令嬢シリーズ5)

SHOTARO

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第三章 プロイセン公国へ(失われた栄光のために)

3-1.ウィーン再び

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 私は、ミュンヘンを通り、ウィーンまで五日程度の移動になる。

 この間、非常に長く感じたが五日間だ。
 また、夜は軽く、イリーゼと剣の稽古をした。
 私も騎士団で腕を上げたつもりだったが、イリーゼもまた腕を上げている。

 いよいよ、明日はウィーンに入る。
 お祖父さまのご容態は?
 また、我が家は?
 父上は?
 皆、大丈夫だろうか?

 翌日、宿を絶ち、お祖父さまのいる病院へ行くことにした。
「お嬢さまも狙われるかもしれませんので、私たちもお供させてください」とイリーゼが言う。
「それは、良いのか? 商売もあるのでは?」
「いえ、もともと、七日間で移動する予定を五日に短縮しておりますので、時間に余裕があります」
 うん、それはそれで、申し訳なかった。私のために急いでくれたのだな。

 そして、ウィーンの街中に入った。

 私は、ふと気が付いたのだな。
「なんだか、人が減ったような気がするわ」
「はい、ライン宮中伯さまが、この様なことになり、逃げ帰る貴族がいたようで、いつものこの時期より人が少なく感じます」

 なるほどな。

 となると、今年の結婚する貴族が減るのか?

 ちなみにだ!

 社交界は五月まで行われる。その間に、政略結婚などの話もまとまると、早ければ翌月に嫁に行く訳だ。
 また、庶民は、農作業が五月まで行われることが多い、例えば、じゃが芋の栽培とか。
 それが終わって結婚となる。

 なので、「六月の花嫁」と言うのは、この辺りから来ているのだろう。
 そして、社交界シーズンが短縮されると、もちろん、カップルも減ると言うもの。
 教会は、儲け損ねたか?

 イリーゼたちの護衛の下、病院へ着いた。

「お祖父さまは……」
「ヴィルッ! いつ、ここへ?」
「今、着いたところですわ。お祖父さまの容態は?」と、私は、従兄弟のアダルブレヒトお従兄さまたちに問いかけた。

「それが……」
「えっ!」
 私は、重体と言っても、死ぬはずがないと思っていた。
 それは、根拠のない自信だ。
 しかし、従兄弟の様子からすると、良くないことはわかる。

「日に日に、意識のある時間が短くなっている」と、従兄弟の話を聞くと、私は駆けだしていた。お祖父さまのいる病室に。

 イリーゼが、お従兄さまに一礼をして、私の後を付いてきた。

「お嬢さま、お嬢さま」
「イリーゼ!」
「宮中伯さまは、304号室です」
「ありがとう。イリーゼ」

 そして、304号室では、イリーゼは私を制して、ドアをノックした。
 さらに、「ライン宮中伯さま。ヴィルヘルミーナさまがご到着です」と、まるで使用人、いや護衛隊長のように振舞っている。

 私は、病室に入り驚いた。
 それは、お祖父さまが瀕死の重傷で、あと、数日しか持たないだろうということが、一目でわかった。

 当然、お祖父さまと会話などなく、その日は、我が屋敷に帰ることにした。
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