握力令嬢は握りつぶす。―社会のしがらみも、貴公子の掌も握りつぶす― (海賊令嬢シリーズ5)

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第四章 ヴィルヘルミーナ、海へ!

4-2.ヴィルヘルミーナとヴィルマ その2

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「はい、銀貨ね」
「ありがとうございます」
「では、マリーちゃんのお部屋に行くわよ」

 マリーの部屋の前に着き、銀貨で買収した使用人が、ノックする。
「はい、お水を取りに来ました」
「どうぞ」
「失礼いたします。マリー様、こちらは、今日から見習いのエラさんです」
「エラです。よろしくお願いします」
「マリーよ。よろしくね」
「はい」

 ということで、私は、エラと名乗り、マリーの部屋に侵入した。
 水を代えるということで、水の取り換えと、簡単な清掃を行って帰る。
 この際に、マリーの心情を聞ければ、良いのだけれど、そこまでは、なかなか聞きづらい……

 そこで、マリーがため息を付いたのだ。
 チャンス!
「マリー様、如何なされましたか?」と、いつもより高めの声で話すことにした。
「いえ、何でもないわ」
「……」
 あちゃー、初対面の使用人に話すわけないか。
 これは失敗だ。

***

 さて、部屋に戻ると、エマリーから手紙が届いてた。
 何やら、ケーニヒスベルクにも営業所があるらしい。
 そこに、ヤスミンに私の具合を見に行かせるので、剣の手入れもしてもらえという内容だった。

 そうね。ここ最近、この剣も酷使しているので、手入れをお願いすることにするわ。

 数日後、久しぶりにヤスミンに会った。
「お嬢さま、お久しぶりです」
「ヤスミン、お変わりなくて?」
 しかし、こんなところにアインス商会の営業所ってあったんだ!

 ヤスミンは、私の剣を手入れする間、代わりの剣をもって来てくれていた。
 なので、剣の鍔を入れ替えて帯剣した。

 そして、ここに来てからのことをヤスミンに話すと、笑われた……
「今は、一人二役、いや、三役ですか?」
「そうなのよ。なので食事の回数が増えて困っているわ」
「困るのは、それだけですか?」
「えっ?」
「いや、他に困ることは無いのですか?」と言うとヤスミンは、また笑いだした。

 そうこうしていると、エマリーも来るらしいが、その前に、ファン・ヴェルクホーヴェン家のバスティアーン様が帰国されるらしい。

 お見送りを行うということで、城で騎士団で見送りをするようだ。
 ご領主様とアンナとマリーが城から港まで馬車で送る予定だ。

 しかし、バスティアーン様が「ヴィルヘルミーナ嬢も来て欲しい」と、行ったもんだから、マリーが「私は行きません。お城でお見送りさせていただきます」とすねている。
 黙って見送られろよ、バスティアーン!

 となると、私は騎士団でヴィルマとして整列するつもりが、ヴィルヘルミーナとして、馬車で送らないといけないのか?
 どうしたものか?

 ヤスミンに相談するも、また、笑われた。
 まだ、銀貨はあるとしても、どうしたものか?

 正体を隠す必要もないのだけれど。騎士団に行けなくなるのは困る。
 皆、良い遊び相手なのだから。
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