握力令嬢は握りつぶす。―社会のしがらみも、貴公子の掌も握りつぶす― (海賊令嬢シリーズ5)

SHOTARO

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第五章 アイルランドの女海賊と海賊団結成

5-2.不思議ですね。

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 一度、カレーの街により、そこからドーバー港へ行くことになる。
 下請け工場で武器弾薬の補充をするようだ。

「これはアインス商会のエマリーお嬢さん。いらっしゃいませ」
「フィッツジェラルドさん。ご無沙汰しております」

 フィッツジェラルド商会!

 武器の製造からメンテナンスに販売を行っている工場のようだ。
 そして、エマリーの入って行った工場は、いくつかある工場のうち、特別なお客、つまり、御用達専用のようだ。
 表の工場は、イギリス製の武器・兵器を扱っているが、ここの御用達専用では、各国の大砲や小銃のレプリカを製造している。

――まったく怪しい連中だ!

 私が工場見学をしていると、ヤスミンがフィッツジェラルド氏と会話しているようだ。
 お互い武器職人なので意見交換でもしているのだろう。
 そう言えば、ヤスミンは「世界の武器を見てみたい」と言っていたし、これは良い機会だろう。

 さて、女水夫の私は、街を他の水夫たちと見て回ることにした。

 これは、Public House?
 仕事帰りに一杯飲んで行こうと言う感じですね。
 そして、酒の種類も多い。
 まあ、ドイツ人としては、他国のビールは飲みたくはない。

 だって、エールは口に合わないのですもの。

 そう、ドイツと言えば、12世紀から何度もビール条例が発せられ、特に有名な条例としては、1516年にバイエルン公が発した「ビール純粋令」だろう。
 これにより、ドイツのビールは、「麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」というものなのですわ。

 で、イギリスのビールとは、ホップがなかったので、16世紀にドイツから手に入れるも、製造業者が嫌い、以前からあるグルートというハーブを使い続けている。
 だから、ビールの苦みはこのハーブによるものなので、なんか別の飲み物に仕上がっている。

 と言うか、イギリスの「エール」、オランダの「ビール」と言う具合に別扱いのようにも感じるわ。

 しかし、ドイツ人は不思議だ。
 アルコールはいくらでも問題ないのだが、お茶が濃すぎるとダメなのだ。
 のちにカフェイン耐性と言うらしいが、頭痛のもとになる。
 なぜ、ロンドンの連中が、平気でお茶を飲んでいるのかが分からなかったが、どうやら、アルコールとカフェインは反比例の関係にあるとか、ないとか……

 そうこうと、ドーバーを楽しんでから、ロンドンの営業所に行くことになった。

 ここでは、テムズ川下流に注意しないといけないらしい。
 のこのこと、ロンドンからテムズ川を下ってきたら、海賊や海軍に襲われる。
 海賊ならいざ知らず、海軍に襲われるって、どういうことなのか?
 まったく、不思議ですね。

 いや、実際にやっているので、説明など出来ないわ。
 海軍は、自国・他国問わず、商船や海賊を襲っても良い法律があるので、仕方がないということ。
 如何に、海軍にも海賊にも見つからず、テムズ川を往来するのかが問題だ。

 で、テムズ川って、河口が広がっているので、入ってくる船は見つかりやすい。
 なので、渡しのギルドに先導してもらう。
 この連中が海軍と、どうつながっているのかは知らないが、ギルドに頼む価値はあるようだ。
 必要経費と割り切って、エマリーは、こちらの商売を進めるようだ。

 そして、トラブル体質のこの私が、ケーニヒスベルクを出てから、大きなトラブルはなかった。
 小さい海賊とやり合ったことはあったが、大砲の射程が長くなると、見つけると撃てば良いので、これということは無かった。

 しかしなぁ。
 海軍艦が目の前で通せん坊をされては、話が違ってくるのではないか?

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